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「帰国便の到着まであと二時間を切りました!」
「報道のほうはどうなっている!?」
「クライン顧問、ヤマト隊長、御二方とも基地への御到着を確認しました!」
「報道の誘導、護衛の配置は全て完了!不足の事態に備えて各部署の再チェックを!!」
――『ソラ=ヒダカがとあるジャーナリストにより、誘拐先のレジスタンス組織から救出された』――
このニュースにより統一連合の情報管理省は蜂の巣を突付いたような騒ぎになっていた。それでも何時もの様に執務室でやる気なさげにコーヒーを啜っていたバルトフェルドの前に、大量の書類を抱えたダコスタが報告に現れる。
「はぁ……なんとか間に合いましたよ。あとは例の少女の到着を待つだけです」
「ほい、お疲れさん。どうだい、君も一杯。今日は新しいブレンドに挑戦してみたんだ」
「いえ、結構です」
間髪入れず断るダコスタにバルトフェルドは苦笑いする。
「でも今回は流石に疲れましたよ。急な話でしたし例の娘を見つけたのがよりにもよってあの『野次馬ジェス』ですからね。中途半端に抑えると何をするか分からない爆弾みたいな奴ですから、対処に困ります」
特に驚く様子も見せず、コーヒーをひと啜りしたバルトフェルドは男くさい笑みを浮かべる。
「彼は有名人だからねぇ。『野次馬』の相手が辛いと思うなら替ろうか、ダコスタ君?」
「いえいえ、馬一頭ぐらい見事に捌いてご覧に入れます」
バルトフェルドにからかわれると、ダコスタは即座に切り返す。
「……昔はもうちょっと可愛げがあったんだがなぁ」
「良い上司に揉まれましたので」
苦笑いするバルトフェルドにダコスタはすまして応える。
二人ともつい吹き出してしまった。
ソラ=ヒダカなる少女が帰還する日からさかのぼる事3日。その日の議会で、今回の救出劇――ソラ=ヒダカとジェス=リブルの処遇について――に関しては情報管理省が扱う事が決定した。
ちなみに情報管理省と治安警察省は決して一枚岩ではない。官僚機構では珍しくも無いが、むしろ反目しあっているのだ。
秩序ある社会の維持こそがともに至上の命題であるため業務の大部分も重複する。しかし、片や情報の統制で混乱を未然に防ぐことをよしとする穏健派、片や不穏分子の排除に実力行使も辞さない強権派と、その方法論が決定的に違うからだろう。
互いの印象については、一般職員たちがよく通う酒場に足を運べばよく分かる。
「治安警察省の奴らは、とりあえず思想犯を捕まえて、反政府組織を弾圧すれば社会は安定すると思ってやがる。人の口に戸は立てられないし、政府に対する反感だって消せやしないんだ。もう少し、スマートに物事を運ぶことを学びやがれ、ファシストの末裔ども!」
「情報管理省の奴ら口先だけで物事が動くとでも思っているのか?情報なんてコントロール不可能なシロモノを絶対視しやがって。現場に口出しなんぞせずに、国営放送のプロパガンダ番組でも作ってやがればいいんだ。耳年増の色白モヤシ野郎め!」
と、聞くに堪えない心の叫びがいくらでも収集できるはずである。今回の東ユーラシアで救助されたオーブ市民、すなわちソラの扱いをめぐっても当然の事ながら双方の意見は対立した。
彼女が救助されたと第一報が入って12時間後、治安警察省と情報管理省の合同の対策会議が開かれたのだが、たちまち会議は紛糾したのだ。
現地でソラを保護したのは情報管理省の部署の人間、一方テロリスト対策をしていた治安警察省もそれに一枚噛んだため、犬猿の仲の両組織がともに事にあたることになったのが面倒の始まりだった。
「テロリストから解放された少女、ソラ=ヒダカ。現在はモスクワに滞在中で3日後にオノゴロに到着する予定になっているのか」
「生育暦等を調べましたが、オーブの孤児院で育ったごくありきたりの戦災孤児です。思想的な背景もなし。テロリストの声明通り、単純に巻き込まれただけの一市民のようです」
「しかし、テロリストも存外お人よしだな。情報漏洩の危険が皆無というわけでもないだろう。一般市民を律儀に解放するとは」
「そこのところはテロリストも周到ですね。自分たちの所在を掴ませるような情報は取得されないように、上手く誤魔化していたようです。現地の駐在官が調べましたが、テロ組織……リヴァイブなる組織については、既に分かっている情報以上のものは、彼女の口からは聞けなかった、と報告がありました」
出席者の一人、治安警察省の制服を着た男が苛立ったように言う。
「なにを勿体ぶった話をしている。このままではテロリストの人道的行為への賛美が沸き起こる可能性も懸念されるのだ。小娘の一人くらい適当に処分してしまえばよいだろう。テロリストの爆破事件でも仕立て上げればそれでいい」
「極端過ぎますね」
すかさず、対面に座った情報管理省の女性官吏が反対する。
「主権返上が遅々として進まずに閉塞感が漂っています。加えて主席暗殺未遂、シドニーの暴徒鎮圧と続いては、政府がいくら取り繕っても、暗い雰囲気までは隠せません。このうえ、テロリストによって少女が命を落とす事件など起こってごらんなさい。世論がわれわれにとって不都合な方向に流れる可能性も出ています」
「それではどうしろと?諸手を挙げて歓迎しろとでも言うのか?」
「そのまま受け入れればいいでしょう。いや、むしろマスコミにはその情報を流すのです。テロリストの巣窟から奇跡的に生還した少女、となれば奴らは喜んで食いつくのですから。ちょうどよいガス抜きになります」
別の男がそれに反発する。
「何を言うか、まずはテロリストの情報を聞き出すのが先だ!帰国したら即刻尋問すべきだろう!」
間髪入れずに反論が起きる。
「先ほど申し上げたようにすでに現地で駐在官が尋問済みです。これ以上問い詰めても、さしたる情報も出てこないでしょうに」
「ふん、尋問をやったのは東ユーラシアの無能どもや、情報管理省の素人たちだろう。そんな生ぬるい追及で何が分かるものか!」
「ほほう、治安警察省の方は、いたいけな女の子を虐めることには大層な自信があるようですな。頼もしい限りです。今回も都合よく相手が自白してくれることが期待できますな」
そこからは会議とは名ばかりの皮肉と中傷の応酬となる。喜劇の始まりである。
「……この程度の仕事で、何で僕らが出張る必要があるのかねぇ」
『仕方あるまい。無能な部下の尻拭いは責任者の義務だ。我慢するんだな』
結局会議ではお互いの意見が平行するばかりで実りある結論が出なかったため、双方のトップ同士が話し合って決着を付けることになったのだ。
モニター越しに話すバルトフェルドとライヒはともに、さっさと問題を片付けたい気持ちだった。
組織同士の仲が悪いのと同様、トップの二人もバルトフェルドは「あのタイプはなんとなく生理的に受け付けない」とダコスタに漏らしている。
片やライヒも「ああいう性格の男は考えが読めなくて不快だ」と評しているように相手に対して大きな不満があるわけではないのだが、反りが合わないのだ。
それでも部下たちと違って、必要ならば個人的な感情を押し殺して意義のある話し合いができるのはさすがというべきか。
「じゃ、さっさと決めよう。彼女の帰国については、基本的にこちらのプロパガンダに利用させてもらう。ただし所在を含めて治安警察省に情報は全て渡す。目立たない範囲で監視もしてもらって結構。けど強引な尋問はNG。こういう折衷案でいいね?」
『十分だ。細部の詰めについては後で情報管理省に部下を寄越す。そちらと直接に調整してくれ』
モニターの向こうのバルトフェルドの言葉を待たずに、ライヒは通信を切った。必要最低限を超えた話し合いは一切しないという意思の表れだったか。
「ほい、これで一件落着。やれやれ、疲れるねえ。こういう役回りは」
「給料泥棒と言われたくなければ、たまには疲れるくらいの仕事をしてください」
脇に控えていたダコスタの皮肉も、バルトフェルドは意に介さない。
「僕は、給料泥棒の身分でまったく不満は無いんだけどね」
ダコスタはため息をついた。結局のところ、治安警察省と実務上の調整をやるのが誰なのかは明白だったからだ。
「こちらの要求をそのまま受け入れるなんて珍しい事もあるもんだなんて思ってたけど……」
先日のやり取りを思い出し露骨に顔を顰めるバルトフェルド。今回の件に関する取り決めを記した書類を斜め読みする。治安警察省から回って来たものだが、バルトフェルドはやや大げさにため息をついた。
「『野次馬』のオマケ付きと来た。やれやれ、全くやっかいなものを押し付けてくれたよライヒ長官は。まあ、せめて件の少女で世論を盛り上げさせてもらうとするかね」
それでも貴方が働くわけではないでしょう、というツッコミを心の中で行いつつダコスタは答える。
「でも、ラクス様が出迎えですか。明日の朝刊はこれ一色になりますね」
「本当はお嬢……アスハ主席が適任だったんだが、どうにも予定が合わなくてね。政府のトップが一国民を出迎えるという構図がマスコミや世論に受けるんだよ。なんと情に深い政府だろう、とね」
「……そこでラクス様にお出ましいただいたわけですか」
「ちょっと無理なお願いしてしまったが快く引き受けてくれたよ。予想外だったのがキラ君が一緒に行くと言い出した事かな。まあ仕掛けをするなら派手な方がいいから、こちらとしては願ったり叶ったりだったがね」
と、コーヒーをひと啜りするが、双方次の瞬間には表情を引き締める。
「でも例の少女がレジスタンス側に『仕込まれていた』場合マズイ事になりませんか?」
「ダコスタ君はどう見る?」
「五分五分でしょうかね。まあ、最終的にはライヒ長官が判断するんでしょうけど」
「議会がこちらに投げてきた以上、ライヒもその危険性は少ないと判断したんだろう。あいつがそんなヘマをするとは考えにくいからな。逆にこっちに『取り込もう』とか企んでいるかもしれん」
「ラクス様との面会についても治安警察省は何も言ってきませんでしたからね。通常ならクレームなり介入なりして来るでしょうに」
仮に件の少女が仕込まれているとしても、帰国を一大イベントで仕立て上げる事で世論は彼女に注目するから、自然と動きにくくなるし、護衛だの何だのと名目をつければ政府としても監視し易い。セレモニーとはいえラクスと出会うなら、身辺、思想調査も公然と出来る上に、場合によっては逆洗脳も手段としては選択可能だ。
カガリではなくラクスを使うというのは相手を上手く絡め取る手段としては最良かもしれない、とバルトフェルドは内心自画自賛していた。
「ただ……」
「ただ?」
「帰国イベントが成功するまでは『可哀想な少女』のままで居てくれんと、コッチとしても困るんだがなぁ」
「そうですね。これ以上面倒は御免です」
「面倒事は君の仕事になるからね。君には本当に苦労かけるねえ、ダコスタ君」
「もっと貴方が働いてくれれば、私の苦労も減るんですけどね」
ダコスタにそう斬り返されて、バルトフェルドはたまらず笑った。
「ソラ、無事に着いたかなぁ……」
シゲトがダストの整備、と言うより修理、いや、復元?の手を休めて呟いた。
「あー、無事に着いたんじゃないか?」
作業する手は止めずに、投げやりに相槌を打つサイ。実に、本日113回目である。流石にサイとてウンザリしてくる。第一、サイにとってはソラの帰国より気がかりな事があった。
(シンの奴……大丈夫なのか?)
ボロボロになってアジトに戻ってきた時にはシンが無事だった喜びで気にならなかったが、いざ整備する段階になり改めてダストを見た瞬間、サイとシゲトはそのまま昏倒しかけた。動いているのが奇跡としか思えない惨状で、元通りに修理するまでどれだけ時間と手間が掛かるか想像も出来なかったからだ。
が、そのダストからシンが降りて来た時。何時もなら悪態やら品のない冗談やらで迎えるスタッフが、ロクに声を掛けられなかった。それ程までにシンの纏う空気は他者に近づき難いものであったのだ。シンは二言三言言葉を交わしただけで部屋に閉じこもってしまった。扉が施錠される音がサイにはシンが全てを拒絶する叫びに聞こえた。
コニールは焦っていた。シンの事を気にかけていたが食事など必要最低限の事以外では部屋から出てくることは無く、コニールはコニールでソラの送り出しや後始末などやる事が山積みでシンに構う暇が無かったからだ。だが、何日経っても様子の変わらないシンに、これでは流石に不味いと思ったコニールは意を決して声をかける事にした。
「シ、シン……?」
おずおずと声を掛けるコニールに、ようやく気付いたといった風のシンが振り向く。次の瞬間、コニールは絶句した。
(ここに来た頃のシンと同じ……)
暗い、奈落のような眼。能面のような顔。
「どうしたんだよ、コニール?」
コニールの様子に気が付いているのかいないのか、シンが穏やかに微笑む。無理矢理に顔を『笑顔』と言う鋳型に押し込める様に。
「あ、いや、調子悪そうだったから、もしかして怪我でも……」
次の瞬間、シンの表情が一変した。憎悪と軽蔑に口元が歪み、目が釣り上がる。
「俺が?あんな連中に?あの程度の奴らに?あんな、抵抗できない奴しか殺せないような奴らにかよ?」
クックックッ、と愉しそうに嘲笑う。
(シン……!)
コニールの中で何かが切れた。コニールは唇を噛み締めると、シンを手招きする。
「なんだよコニール?」
ジェスチャーで自分と同じ目線になる様にシンを誘導。シンはいぶかしみながらも、コニールと目線を合わせる。そして、そっと目を閉じ、シンへ顔を近づけ……
シンとて朴念仁と言われてはいるが、ここまでされて気付かないほどの阿呆ではない。コニールと同様、そっと瞳を閉ざし……た次の瞬間
「いい加減正気に返れ、このバカ!!」
怒声と鈍い衝突音と共に、シンの額に物凄い衝撃が奔る。
コニールが頭突きを食らわしたのだ。
「コ、コニール……なに考えてんだよ……」
衝撃でふら付きながら起ち上がると、コニールは額を押さえて蹲っていた。
「うう……シン、お前……アタマ馬鹿みたいに硬いのな……どんなコーディネイトしたらそこまで硬くなるんだよ……もしかして、頭突きに特化したコーディネイターなのかお前……」
涙目で見当違いな文句を言ってくる。
「頭突きに特化したコーディネイターなんかいねぇよ!むしろそんな奴居たら怖いだろ!」
「いや、世の中広いから中にはそんなヤツだって……」
「コーディネイトだってタダじゃないんだ、そんな事に金掛けねぇよ!第一、論点間違ってるだろ!」
「なんだよ!」
「なんだと!」
一瞬睨み合う二人。がどちらからとも無く笑い出す。
そのまま二人して笑い転げ、ひとしきり笑うとコニールは立ち上がった。先程までシンを包んでいた虚無的な雰囲気は消え、憑き物が落ちたような顔をしており、コニールは安堵する。
「あー、コニール?」
「なにさ?」
「気、使わせたみたいだな……悪ィ」
《実際、大したものだ。俺ではシンのメンタルケアは無理だった》
いままで黙っていたレイもコニールに頭を下げた。……姿は誰にも見えないが。
「……あのさ、シン。ソラの事なんだけど……」
「俺に関わり続けると不幸になる。……これで良かったのさ」
《言う程には割り切れていないようだか?》
自室のベットの上で一人ごちるシンに、机に置かれた端末からレイが指摘する。
「いや、オーブに返す事は良いんだ。元々その為に一緒に居たんだから。たださ、こう……」
《あんな態度を取っていたが本当はちゃんとした別れの挨拶をしたかった、か?だが、事態が動いたんだ。今度のチャンスを逃したらいつ帰れるか判らなかったろう。それを怠ったのは自業自得としか言い様がない》
「ソレはそうなんだけど、な」
煮え切らないシンにレイは呆れたように言う。
《そんなに気にしているなら手紙でも書いてやれば良い。ジェス=リブル経由ならなんとかなるだろう》
「手紙、ね。偽名で送るのか?」
《お前がここにいるのは誰にも否定できない事実なのだがな。……何とも世知辛い世の中だ》
シンの言葉を受けどこか寂しそうに呟くレイ。
「……俺はここにいる、か。レイ、俺はこれからもここにいていいのか……?」
《どうした?急に》
「……いや、何でもない」
そういうとシンは背を向けてしまい、それ以上何も言わなかった。
そしてレイも黙ったままだった。
オーブへ戻る飛行機内で、ソラでずっと黙り込んでいた。ジェスやカイト、果てはハチまでアレコレと気を使って話し掛けて来てくれたが、とても誰かと会話する気分では無かったのだ。
(みんなとちゃんとお別れしたかったのに……)
来るはずのない時期に襲撃されたことで正規軍の動きが読めなくなり、今帰国しなければ次のチャンスがいつか判らないからと慌しく出立せざるを得なかったのだ。軽く挨拶を交わす程度の別れしか出来なかった事がソラの心にしこりとなっていたのだ。
特にシンとは最後まで会えなかったのが大きい。
確かに、好んでガルナハンへ連れて行かれた訳ではなかった。だがそれでも、親しくなった人達と別れるのは寂しいものだ。攫われてきた当初はどういう目に合わされるのか恐ろしくて仕方がなかったが、そんな事は僅かもなかった。むしろリヴァイブにいた人たちはみんないい人ばかりで、楽しい思い出もたくさん出来た。
(リーダー、センセイ、コニールさん、ナラ君、レイ、大尉さん、中尉さん、少尉さん…………それに、シンさん)
しかし一方でソラはこうも思う。組織としてのリヴァイブのやり方は今でも全てを肯定する事が出来ない、と。理想のため、生活のために戦わなければならないというのは分かった。でも戦っている相手も同じ人間なのだ。銃を取れば誰かが傷つき、死ぬ。それがどうしても受け入れられなかったのだ。
(ターニャ……)
自分の腕の中で息絶えた、少女の事が頭を過ぎる。初めてできた同性の親友との早すぎる別れ。あの時流れた血の匂いは今でも鮮明に覚えている。
誰も傷つけず、誰からも傷つけられない方法があるんじゃないだろうか?そう思い、自室でリーダーから借りた本を何冊も読み必死に勉強してみた。
でももうそれを誰かと話す機会は永遠に来ないだろう。おそらくもう二度と会う事はないのだから。もっとたくさん時間があって、もっといろいろ話し合えれば、もっと何かが違ったかもしれない。もう出来るはずは無いのに、それでもつい何度も同じ想いがよぎる。
どこか心のカケラを置き忘れたような――そんな悔いが胸の奥底に残る。
落ち込むソラを見て、ジェスは今はそっとしておく事にした。
そんな折、三人の元に情報が入った。オーブ本国からの命令が通信で入ったという。
「オロファトの……軍の方に着陸しろ?」
「ああ、また情報管理省がなにかイベントを企画したんだろう」
「俺達は客寄せパンダじゃないんだけどな」
カイトの言葉に、不快そうに答えるジェス。
「だが、ソラが有名になれば治安警察も迂闊な事は出来なくなる」
「安全を保障する替りに多少の不自由は我慢しろってか。まったく……」
「不満そうだな。なら、他にアイデアがあるのか?」
「無いから腹が立つんだよ!」
そんな彼らのやり取りを他所に飛行機はオロファトの空軍基地に到着した。タラップが機体に接続すると、開け放たれた気密ドアから熱帯の空気が流れ込んでくる。黙り込んでいたソラも、懐かしい匂いを感じて心が躍りだした。
懐かしい。
懐かしい祖国オーブ。
一歩一歩を踏みしめるようにソラはタラップを降りる。
(ああ、オーブに着いたんだ……ちゃんと帰ってこれたんだ!)
やっと全てが終わった。
そんな気がした。
カイトにエスコートされ、そのままソラは空軍基地のVIP用ロビーに通された。するとそこには信じられない光景が広がっていた。
〔おかえりなさい、ソラおねえちゃん〕
孤児院の「兄弟」達が手書きの横断幕(所々誤字があるのはご愛嬌だ)を持って一斉にソラを出迎えたのだ。
「おねえちゃん、おかえりなさーい」
「おつかれさまー」
「おつとめごくろうさんです」
「おみやげはー?」
もはや声にならない。ソラはそのまましゃがみ込んでしまった。ぼろぼろ涙が止まらなくなり、我知らずにしゃくりあげていた。
「おねえちゃんなんでないてるの?」
「泣かないでお姉ちゃん」
そんなソラにそっとハンカチを差出す人物があった。それを受け取り涙を拭い。礼を述べようと顔を上げると、そこには。
「き、き、き、き、き、き」
「き?」
「キ、キラ様っっ!?な、なんで?ど、どうしてっっっ!?」
そこにいた青年はあの軍神キラ=ヤマト。
オーブの守り刀にして伝説の英雄。
「なんで、って……君を迎えに来たんだよ」
「え、あ、その」
舌が回らない。言葉が出てこない。たちまちソラはパニックに陥り卒倒しかけるが、次にかけられた声が、彼女にさらなる追い討ちをかけた。
ここに来ていたのは――キラだけではなかったのだ。
「本当に無事に帰ってこれてよかったですわ」
ふわりと柔らかい桃色の髪、風のように透き通る涼やかな声、優しく見つめる慈愛に満ちた瞳――。
見間違うはずも無い。
いつもいつも敬愛し憧れていたあの人――。
平和の歌姫ラクス=クライン。
「ら、ラクス様ーーーーーーーーっ!?」
ずっと雲の上の人と思っていた人が、今ソラの目前に立っていた。
「ソラ=ヒダガさん、ですね。はじめまして。ラクス=クラインです」
「……!?!?!?……ぁあ……えっと……ソ、ソラ=ヒダカですっっ!!」
緊張は一気に臨界点を突破するが、なんとか挨拶だけはする。でも今はそれが精一杯。喉がカラカラで、何も考えられない。体は一ミリも動かず、視界がグルグル回る。
(えーっ!?えーっ!?えーっ!?嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!??なんでなんでラクス様までここにいらっしゃるのっっっ!!??)
もっと何か話さなくちゃ、何か答えなきゃと思う。でもそうは思ってみても体も頭もまるでいう事を聞かない。騒がしいはずの周囲の声がまるで耳に届かない。心臓がバクバクと大きく脈打ち、その音だけが異様なほど響いてくる。すぐ目の前に立つ”あの御方”とたった二人だけで世界から切り取られたように思えてくる。
「ソラさん……」
歌姫はそんなソラの様子を知ってか知らずか、静かに語りかけてきた。
「……わたくし達の力が及ばなかったために、貴女には今まで大変な苦しみを背負わせてしまいました。本当にごめんなさい」
気遣うように、いとおしむ様に、歌姫はゆっくりと話す。ひとつひとつ言葉を選んで。
「あの日に貴女がテロリストに誘拐されたと聞いて、とても心配しました。狙われたのはカガリさんやわたくし達ですのに、全く無関係な貴女があんな目にあわせてしまい申し訳ないと思っています。ですがもう大丈夫ですよ。たった一人見知らぬ土地で良く頑張りましたね」
そしてラクスはソラの両手を優しく取り、ニコリと微笑んでこう言った。
「……お帰りなさい、ソラさん」
その言葉を聞いた瞬間、今まで張り詰めていたものがぷつりと切れたのか、ソラはその場で
――気を失ってしまった。
くたりと崩れた体が、そのままラクスに受け止められる。
「……ソ、ソラさん!?大丈夫ですか、ソラさん!?」
「誰か、担架を早く!それからドクターも呼んで来てくれ!」
よもやの事態にさすがのキラやラクスも驚きを隠せない。突然のアクシデントに空軍基地VIP用ロビーは騒然となる。報道陣のフラッシュが幾重も焚かれ、SPや憲兵達が慌しく取り囲む。
だがそんな騒ぎを他所に、ラクスの腕の中に抱きかかえられたソラの表情は、とても安らぎに満ちていた。
まるで母に抱かれる幼子のように。
意識を失う寸前、彼女の心を一つの想いが駆け抜けていた。
――私、本当に帰ってきたんだ。オーブに――
もちろんこの様子はTVで生中継され、当然の事ながら情報管理省のトップを勤める例の二人も見ていたのだが――。
「あちゃー」
「ワッハッハッハッハッ!!こりゃ傑作だ!」
ダコスタは額に手を当て空を見上げ、バルトフェルドは腹を抱えて笑い転げている。
「……笑っている場合じゃありませんよ。たぶんソラ=ヒダカはこのまま2~3日病院で静養という事になるでしょう。おかげでこのあとの公式記者会見は『野次馬』の独壇場になりますよ」
「そりゃ困ったな。ちょっと趣向を懲らしすぎたかな?」
「きっとラクス様も大層面食らった事でしょうから、多少のお小言ぐらいは覚悟しておいた方がいいと思いますよ」
「……ま、その辺は適当に取り成しておくさ」
上司のいつもの調子に、ダコスタは肩をすくめて呆れるしかない。もっともバルトフェルドとラクスの付き合いの長さを考えれば、この程度のトラブルはトラブルの内にも入らないだろう、と大方の予想はつけていたが。
一方、空軍基地と情報管理省がソラの扱いで上を下への大騒ぎをしていた頃、治安警察省では同じく彼女の処遇について様々な会話がなされていた。これもそのひとつだ。
「ソラ=ヒダカはお咎め無し?」
治安警察本部内のエレベータ内部にて話し合う男女3人。ライヒ直属の部下で、曲者揃いの治安警察内でも色々な意味で恐れ、尊敬されている。
「情報管理省の連中に貸しを作るつもりですか……」
エレベーターの壁に凭れながら細身の男、オスカーが呟く。慇懃無礼、人に媚びるような、それでいて高みから見下すような態度で、言葉を交わしたもの全てに不快感を与えて来た男。治安維持局保安部に属し、いわゆる「裏仕事」を生業としてきた。
だがその「普段の」オスカー=サザーランドを知る者が見たならば、そこにいる容姿こそ整っているが、まるで覇気が無く面倒臭そうにしている地味な男がオスカー=サザーランドとはとても同一人物とは思えなかっただろう。心を許した人間といる時の彼はこうなのである。
「ジェス=リブルが現地で配信した記事を、今更間違っていると報道出来ませんから。現時点での市民の情報管理省と『野次馬』へ対する信頼性を比較した場合、彼に軍配が上がります」
と冷めた匂いを含んだ男装の少女が答える。ライヒ長官の姪、エルスティン=ライヒだ。叔父と同じくどこか冷たい印象の少女はまるで機械仕掛けの人形のような正確さと、無慈悲さで分析する。
オスカーとエルスティン、この二人は何所か似ていた。性別が違う。年齢が違う。他人に対する態度が違う。だが、何故かよく似た、同時に決定的に違う「匂い」を二人は共有していた。
すると褐色の巨漢、エイガー=グレゴリーが面白そうに口を挟む。
「今更、情報管理省が何をしようが慌てるものでもあるまい。それはそうとオスカー。お前さん、またなんか『仕掛け』たな?ルタンドを二個中隊、こっちでカリカリに仕上げた上に東ユーラシア仕様に偽装して送ったろう。パイロットも含めてな」
老兵にそう問われてオスカーは気だるげに応える。
「ああ、ソレですか。ちょっとした嫌がらせをレジスタンスの皆さんにしようかと。なにせ、前任者があんな目に遭わされた訳ですから」
「オスカー、長官の意向を無視する積もりですか。重大な背任行為ですよ」
エルスティンが剣呑な空気を含んで二人の会話に割って入ってきた。
「別に長官の決定に不服があるわけではありませんよ。打てる手は打っておく、それが私のポリシーですからね。万が一に備えて準備させてもらっただけです。長官の許可が下りるまでは仕掛けたりしませんから御心配なく」
それぞれが上層部の決定に含むところがありながらも、その判断には一応の納得を見せていた。
しかしここにそれを不服として、上司に直接問いだたしに来ていた者がいた。メイリン=ザラである。彼女は治安警察省長官ライヒにソラ=ヒダカの処遇について、直接具申したいと申し出たのだ。
「このままでよろしいのですか?」
報告書類を眺めていたライヒが目を上げる。
「現地警察によるソラ=ヒダガへの事情聴取でも、特に目立った報告は上がってきていないが?」
「ですが彼女がテロリストによって依然オーブ内部での協力者に仕立て上げられた可能性は消えていません」
「だが『S』が君の報告通りの人物ならば、洗脳などの可能性はまず無かろう。違うかね?」
「……万が一という事も在ります。『S』がそう考えても、組織の者が同じ事を考えるとは限りません。したがって可能性0ではない以上、最悪の状況を想定して行動すべきです!」
一気にまくし立てたあと、メイリンは一呼吸してライヒに要求した。
「ソラ=ヒダカへの尋問、ならびに専従捜査班の編成を要請します」
しかしライヒはそんな部下の求めに対して、まるで興味を見せなかった。ともすればどうでもよい事を聞かれてているようなそぶりだ。一瞬、瞑目した後、ゆっくりと返す。
「ソラ=ヒダガの処遇についてはすでに情報管理省に一任する事が決定されている」
「ですが長官!!」
血相を変えるメイリンにライヒはさらに追い討ちを告げた。
「なお現在東ユーラシア共和国コーカサス州で発生しているテロ等社会的騒乱の鎮圧任務、ならびにその関連任務は治安警察省に代わって国防省、すなわち統一連合地上軍が担当する事になった。どちらも昨日議会で承認された決定事項だ。貴官もその決定を尊重し、行動してもらいたい」
「!?」
信じられない。メイリンの表情がみるみる内に強張る。だがライヒはわずかな揺らぎも見せない。ドーベルマン亡き後、リヴァイブ追討の任を受けるのは自分。メイリンはそう自認していた。だからこそ最重要機密事項に該当する『カテゴリーS』の情報も与えられたのだと。そして予想通りドーベルマンは、精鋭ドムクルセイダー部隊のヒルダ達も巻き添えにする形で失敗した。
顔にこそ出さなかったが、ドーベルマンの失敗はメイリンにとって歓喜すべき状況だった。単に力押しでは駄目な事がこれで実証された。おそらく次は敵に精通する者が責任者として選ばれ――そしてそれは自分を置いて他に無いのは明らかだ。
主席暗殺事件があった当日、逃げるサイドカーに乗っていたのはシンとソラだった。ならばソラはシンについて何かの情報を持っているだろう。それを引き出し、利用し、場合によってはソラ自身も使って――シン=アスカをおびき出し、引導を渡す。
そう考えていたのに。
「……納得の出来る説明をお願いします」
心の動揺がこれ以上表に出ないように抑える。傍目には平静を装いつつメイリンはライヒに問いただす。上官の命令に異を唱える――、組織としてはあってはならない問い。
しかしライヒはそれすらも予想の範疇だったのか、一片の逡巡すら見せずに、あっさりと彼女の疑問に答えた。
「状況が悪化しすぎた――とでも言えばいいだろうか。ヒルダ=ハーケン率いる第三特務隊がレジスタンスに敗北したのは知っているな」
「はい」
「第三特務隊の使用機種はドムクルセイダー。すなわちピースガーディアンを除けばおよそ最高の戦力を持った部隊だ。対して敵は旧式機を改造した中古モビルスーツが一機。戦力比は圧倒的に第三特務隊の方が上だった。にも関わらずたった一機の中古品に最新鋭モビルスーツ三機が敗れるという有様だ」
「……」
「これが新兵の暴走であれば言い訳のしようもあっただろう。だがヒルダ=ハーケン達は数々の武勲を挙げてきた歴戦の勇士だった。負ける要素はただの一片も無かったのだよ。それが無様に敗北してしまった。この事態に一番衝撃を受けたのは国防省でね、議会にコーカサス州への地上軍の全面投入を真っ先に提案してきたよ」
「……!?」
「独断で出撃したとはいえ第三特務隊を倒してしまった事が国防省と軍の面子を完全に潰してしまったのだ。日頃国民の目からは何かとピースガーディアンの影に隠れがちな上、式典での失態も記憶に新しい。こうなってしまうと国防省としても引くに引けない。辺境のテロリストごときに敗北する情けない正規軍というレッテルを貼られてしまっては、その存在意義すら疑われかねないからな」
メイリンはギリッと奥歯をかみ締めた。シンの異常なまでの戦闘能力が、ついに軍を本気にさせてしまったらしい。
「国防省はリヴァイブを始めとしたレジスタンスが治安警察の手に余る戦力を有している事を議会に報告し、軍による事態の解決を主張してきた。折りしも誘拐されていたソラ=ヒダカが無事保護された事で、躊躇無く大規模な攻撃も行える大義名分もできた。まあ、向こうに言わせれば『人質の少女の持つ僅かな情報など今更不要。全面攻勢をかけ一気に叩き潰してやる』という所だろう」
「所詮は地方ゲリラ。軍が本気になれば、と考えているわけですか」
「そうだ。それにかねてより、近日コーカサス州で稼動予定の大規模地下エネルギープラントを、地上軍に管理させるかどうかという案も議会で検討されてきたが、リヴァイブが重大な脅威と認知された以上は、この観点からも地上軍の投入は止むを得ない。そう判断されたわけだ」
「……それで用の無くなった彼女を世論対策にと、情報管理省に任せたというわけですね」
「そういう事だ」
そこでライヒは「ただし」と前置きをした上で、さらに続けた。
「『カテゴリーS』の調査に関しては引き続き、治安警察省が担当する。無論、国防省と連携していく事になるが」
メイリンは理解した。一言で言えば、事態が大きくなりすぎて、世論対策以外にソラ=ヒダカは使えなくなってしまったのだと。そして治安警察の受けた傷がこれ以上深くなる前に、一旦手を引いたというのが真相だろうと、メイリンは推測した。
国防省の面子を立てる形で引けば、治安警察の傷も目立たずに済む。代わりに矢面に立つのは国防省と地上軍だ。その一方で『カテゴリーS』という最重要事項は手放さないのはさすがといおうか。
だがメイリンにとってそれは何の慰めにもならない。
――ドーベルマンめ、余計な事をして――
一時は前任者の失敗を喜んだ事もあったが、まさかこういう形で我が身に降りかかってくる事になるのは予想外だった。このままシン=アスカを討つ機会をみすみす逃すというのだろうか。今更そのチャンスを他人の手に委ねなければならないのか。言いようの無い怒りがメイリンの中で膨れ上がる。
「ですが長官!シン=アスカは彼を知る者でなくては倒す事は出来ません!それは長官もご存知のはずです!だからこそわざわざ私に最重要機密事項にあたる『カテゴリーS』の資料を見せたのではないのですか!?」
日頃の冷静さが嘘のように捲し立てるメイリン。しかし熱くなるメイリンをライヒは軽くいなした。
「ザラ参事官。これはすでに決定事項なのだよ。今更変更は認められない。それにシン=アスカを知る者は君ひとりではないと思うがね」
「………」
メイリンの中で疑念がわきあがる。
「夫が……。アスランが何か言ってきたのですか……?」
統一連合でシン=アスカを自分以上に知る者。自分を除けば一人しかいない。だがライヒは静かに首を横に振った。
「それは邪推というものだ。今回の方針決定は状況の変化に伴う高度な政治判断に過ぎない。ゆえに君の御夫君の意思が介在する余地も無い」
そこまで言われては、メイリンももう何も言う事は出来なかった。
「君の今後の任務は追って伝える。それまで待機していたまえ」
「了解……しました」
今は引き下がるしかない。だがメイリンも完全に諦めたわけではなかった。ソラ=ヒダカの先にはシン=アスカがいる。まだその糸は切れていない。メイリンはそう確信していた。執念にも似た光が瞳に宿る。
「……では一応、警備名目で監視班を1チーム張り付けます。それぐらいはよろしいですね?」
「好きにしたまえ」
すっと敬礼をするとメイリンは踵を返し退室する。一人残された長官執務室で、ライヒは静かに呟いた。
「女だな。メイリン=ザラ」
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