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「ただいま帰還しました」
シンさんとコニールさんが声を合わせて机の向こうに座っている人に声をかけた。ふとその人を見たけれど、これが普通じゃない。仮面だよ?
仮面を普段からしている人なんて始めて見た。蒸れないのかな?あれ。
「ご苦労。今回の作戦は、まあ失敗だけど、大失敗じゃなかったよ」
その仮面の人がシンさんたちの敬礼に対して敬礼で返しながら答えました。
「仮面が珍しいですか?お嬢さん」
あ、まずい。そんなにじろじろみてたかな?あわてて目を伏せてみるけど、もう無駄だよね。
「はは、そう構えずに。この仮面はちょっと訳ありでね。このままで失礼しますよ」
案外、ちゃんとしたしゃべり方をする人なんだよね。仮面の人。もっとなんというか、変態っぽいしゃべり方をするのかと思った。
「彼女は、式典からの撤退中やむなく保護することになった民間人です。帰路の途中でオーブへ戻れるように、手を尽くしたのですが……」
「まあ、それはそうだろう。どこもそんな余裕はないしね」
コニールさんの報告をさえぎるように仮面の人が納得した感じ。きっと報告は事前に受けてたんだろうね。
「彼女は民間人です。何とかしてオーブに戻すことを検討いただけませんか?」
今度はシンさんが口を開く。前に二人が言い合いしていたときも私をどうやってオーブに戻すかを真剣に考えてくれてるっていうのは感じてたんだけど、私、どうしてもこのシンさんのことは好きになれそうにないんだよね。
なんか、乱暴っぽいし。何より目つきが怖いんだもん。
コニールさんは怖くないのかな? あの赤い瞳。
「さて、ミス・ヒダカ」
「は、はいっ」
突然ミスなんていわれてちょっとしどろもどろになっちゃった。
「ミス・ヒダカはこれからどうしたいですか?」
はい?
これからどうする?
「あの……、それって?」
「これから、ですよ。オーブに戻りたいですか?」
そんなの帰りたいに決まってるよね。こんな犯罪者の群に居続けられるほど図太くないもの、私。
「はい、それはもちろん。……帰れるんですか?」
「すぐにというのは難しいでしょうが、努力は約束しますよ。我々の落ち度もあるんですからね」
そういって仮面の人はシンさんのほうを見たんだ。シンさんはばつが悪そうにうつむいてた。
「ほ、本当ですか?」
「ええ、約束します」
なんだかそのとき、すっと気持ちが楽になった気がしたんだ。でもね、考えてみてよ。わらをもすがる気持ちってこういうことをいうんだと思うよ。普段ならテロリストの約束なんて信用置けるはずないって思うと思うけどね。
そう、この人たちはテロリストなんだよ。
そう思ったら、ふっと疑問がわいてきたんだ。
「あの……、一つ質問してもいいですか?」
「なんでしょうか?ミス・ヒダカ」
「何で、テロなんてしてるんです?」
言ってからしまったって思った。なんてバカなこと聞いてるんだろう、私。悪者になんで悪いことするのって聞くようなものじゃない。
「はは、これはなんとも手厳しいですね」
でも仮面の人は特に怒る様子もなく答えたんだ。
「そうですね。それに答えるために、一つ質問をしましょう。ラクス=クラインの目指す世界はどういう世界ですか?」
え?それはどういう意味だろう?
ラクス様の目指す世界?
「え……それは……」
「それは?」
私は少し考えて、答えた。出来るだけラクス様の言葉を正確に思い出そうとしながらね。
「それは、みんなが幸せになれる世界です」
そうだよ。ラクス様はみんなが幸せになれるようにがんばってるんだよ。
「なるほど。それはすばらしい世界ですね」
仮面の人はあっさりそう言ったんだ。え?どういうこと?レジスタンスの人がラクス様を認めた?
「では、先ほどの質問にお答えしましょう。ミス・ヒダカ」
仮面の人が私の真正面に立って答えた。
「我々は『みんなで』幸せになる世界を作ろうとしているんですよ」
え?それってラクス様の目指す世界と同じ?どういうこと?なんで?わけがわかんないよ。
「ふふ、ちょっと理解しにくい言い方かもしれないですね。では、こうしましょう。今度お会いするときまでの宿題にしましょう。考えてみてくださいね。―――ではシン、コニール。彼女を部屋にお連れして。詳しい報告は後で再度聞く」
そういうと、シンさんたちは軽く挨拶をして、私を部屋に連れて行ったんだ。
みんなで幸せになる世界?
それはラクス様の目指す世界とは違うの?
頭の中でぐるぐると言葉がめぐっている感じ。
私って頭が悪かったのかな?
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