仮想第25話:ガルナハンの春(中編):第九幕A

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第九幕:幕間_温泉にて未来への布石



ギリアムがモスクワへと向かっていたその頃、ゴランボイ地熱プラントの傍らにひょっこりと現れた人造温泉。その男湯に一人の男がいた。


「はぁー、やっぱ温泉はいいよなぁー。」


 などと言っているのはリヴァイブの技術主任であるサイ=アーガイル。リヴァイブの技術主任として毎度毎度シンや尉官3人組によって大破寸前にまで破壊されたダストやシグナスを急ピッチで修理して戦場へ送り出している縁の下の力持ち。

特にモビルスーツ関連の技術ではサイは他者の追従を許さない、というより他者が付いていけない為、OSの微調整といった重要部分はほぼ一人で全てこなしているわけでリヴァイブ技術陣の中でも最も重要な位置に立つ人、つまり一番不遇な人という意味である。


「こっち(コーカサス州)へ来てから一度として、こんな清純な湯船に浸かった事なんて無かったからなぁー。スレイプニールとプラントの修理の手伝いはきつかったけど、おかげでこんな温泉に浸かれたわけだから、まあ良かったかな。はぁー、極楽極楽。」


 実際、ゴランボイ地熱プラント奪取前後のサイの労働は『きつかった』などという生ぬるいものではなかった。まずは、ジュール隊によって大ダメージを受けたスレイプニールの修理、続いていざという時の為の機動兵器の修理。

特にモビルスーツの修理は破損の激しい機体をスクラップにして残りの機体に貼り付けるという実質新規生産と同じような行程を踏んだ修理方法であり正規の設備のある軍事施設でのそれならともかく、設備も人員も圧倒的に足りないスレイプニール内のハンガーでは例え一機だけであろうともその労力は言語に絶するものがある。

しかも、それが3機もあったのである。後半には地熱プラントの有志技術者達やパイロット達の手を借りたとはいえ、最重要部分を一人だけで切り盛りしていたサイの疲労は全部の作業が終わった直後にいきなり気絶して10時間爆睡するほどであった。サイ以外の技術者達も作業が終わるなり各々長い休憩に入った事からもこの作業がどれだけしんどいものだったかが容易に想像が付くであろう。


 だが、例え自分達が疲れているといっても、メカニック達は今回の作業で最も疲労を蓄積した人間を見失う事は無かった。彼らは爆睡してもなお疲れが残っていたサイを不憫に思い、排湯を源泉とする地熱プラントの温泉にサイを運んだのである。

知っている人間に対してなら誰にでも開放されている温泉であったが、そこで敢えてサイに一番湯の権利を渡して自分達はその日一日敢えて自粛するところに彼らのサイへの思いが表れていた。


「みんなもわざわざ俺に遠慮しなくてもいいのに。まあ、今日ぐらいはこの世の王様気分でこの温泉で骨はおろか筋肉、内臓、頭脳、血液の一滴に至るまで休めるとするかー。」


 こうしてサイ一人の温泉道楽が始まった。



 で、1時間後。


「………」


 骨はおろか筋肉、内臓、頭脳、血液、果ては消化中のパンの一切れに至るまで十分に暖められて、これ以上湯に浸かっていては逆に疲労が溜まってしまうというほどに癒されたサイは、この温泉がまだ惜しいのか脳内まで火照(ほて)っている事を承知でまだ湯の中で粘っていた。


「(また入れるとはいっても、次はいつになるか分からないからな。湯治も兼ねているんだから、多少疲れても意地張って浸かってなきゃ損するし………)」


 湯治は基本的に短い入浴を複数回行うもので、そもそも発電の排湯で作った温泉に薬効などあるわけが無い。などという突っ込みはこの際言わないでおこう。冬に向けて頑張って脂肪を食い貯めるリスやクマみたいに未来に冬のイメージしか持てない現在のサイを哀れむ事になってしまうから。と、そんな中で誰かの足音が聞こえてくる。


「おやっ、これは我らがメカニックチーフのサイじゃねえか。お仕事お疲れさん。お前さんも骨休めかい?」


「失礼しますね、サイさん。少し場所を借りますね。」


 それはリヴァイブの誇る三位一体の権化、本名不詳の匿名チーム、シグナスを駆るパイロット、大尉、中尉、少尉。の3人ではなくて、大尉と中尉の2人だけであった。


「あれ?大尉と中尉、だけですか。少尉はどうされたんですか?」


「おいおいおい。確かに俺達はシグナスのパーティを組んじゃいるが、年頃の小娘じゃあるまいし、四六時中3人で肩組んで歩いているわけじゃないんだぜ。」


 男湯で一体何を隠すものがある。とでも言わんばかりに、肩幅の十分に広い逆三角形のがっちりとした肉体を惜しげもなく晒しながらどんどんと湯の中に入っていく大尉。ちなみに、一応タオルは持っているがそんなものは右手でぐしゃりと力強く握っており湯に浸す以外の用途を想定していない事は明らかである。


「まあ、かく言いつつも実は少尉とは地熱プラントの近くで出会っていて一緒に温泉に行かないかと誘ってはいたんですけどね。『俺は遠慮しときます。』って断られてしまいましたがね。」


 一方、最低限の礼儀とばかりに薄手ながら長めのタオルを腰に巻き付けて、余分な脂肪も過剰な筋肉も無い端正な身体をすらりと湯に浸すのは中尉。たかが温泉への入り方だけでここまで人格が現れるというのは恐怖である。さて、少尉であればどんな風に温泉に入るであろうか。そんな余分な思考を働かせていたサイは、そのせいで唐突な中尉の質問に驚く事になる。


「ところでサイさん。長丁場の作業の疲れを癒す為に来ている温泉でこんな話をするのも申し訳ないとは思いますが、いかんせん私も少し引っかかるものがあって少しお聞きしたい事があるのですが、いいですか?」


 中尉の緩慢な問いはひとえにサイを慮(おもんばか)っての事である。しかし、そのような前置きを置く、つまりサイに不快な思いをさせてしまうかもしれない、そんな危険を考慮してもなお聞きたいという質問である事はサイも予想する事ができた。


「いいですけど、何ですか?中尉。」


 サイが許諾の返答を返すと、中尉は冷静さを放つ普段の顔から少しだけ目を鋭くした真剣な顔になった。



「私達がスレイプニールのハンガーに最初に入った時、確か2機の奇妙なモビルスーツがあったはずです。ゲイツに似たガンダムタイプのモビルスーツと、青を基調としたM1アストレイ似のモビルスーツ。

最初見た時はアストレイ似の方はともかくとしてゲイツ似の方は損傷が激しくて実用に耐えそうではありませんでしたから、ジャンク品の一種かと自分で納得していましたが、よくよく考えると実に奇妙な話です。

何せ、スレイプニールにはモビルスーツのパイロットが2人も余っている。それも旧ザフトレッドのエースパイロット達です。ラドル艦長であればすぐさまあの機体を修復して2人に充てそうなものですが、統一連合軍との戦いに至るまで彼女達2人はエゼキエルに乗っていた。そして、私は不思議に思ってスレイプニールのハンガーを見渡してみたら、今度はあの2機が無くなっていた。」


「………」


「スレイプニール隊と合流してから、再三はスレイプニール側のシグナスやエゼキエルも監督するメカニックの総チーフ役となっている。スレイプニールからあの2機が消えた事はサイさんも分かっていたはずです。

別にサイさんを責めるとかそういう話ではありません。ただ、戦力を大幅に失った私達としては、あの”限りなく完成品に近い”ジャンク品の行方が知りたいんです。サイさんは、何か知っていますか?」


 中尉の質問に対して、サイは何となく気難しそうな顔をしている。


「あのー、その話なんですけれども―――――」


「サイ、それ以上はご法度だ。」


 答えを探して脳内を右往左往するサイの言葉を大尉が制した。


「大尉?」


 中尉の顔が急激に真剣みを増していく。大尉はこのリヴァイブチームの数少ない幹部クラスである。チームの行動指針を決断し、それを各部署で実行していく幹部。時には、幹部しか知らない極秘情報も胸中に収める事になる。現在のリヴァイブチームの幹部は次の6人である。


ロマ=ギリアム:リーダー。最終的な決断と政治分野の担当。ヨアヒム=ラドル:スレイプニール艦長。軍司令官としての戦略戦術指導を担当。大尉:筆頭パイロット。モビルスーツ隊の実戦での運用を担当。イスカンダル=テルグ:スレイプニール副長。スレイプニール隊の統括を担当。ウマル=アリヴィチ=マリケフ:事務部長。リヴァイブ支持勢力との調整を担当。センセイ:カウンセラー。チームの精神面を担当。最近はギリアムの副官役も。


 大尉はこの6人の内の3番目に当たる位置にいる。元のリヴァイブ組とスレイプニール隊のリーダーであるギリアムとラドルに次ぐポジションでありそれだけチーム内での信頼が厚いという事でもある。その大尉が口止めをするという事は事が単なるメカニック内の内輪話に収まっていないという事であった。


「悪いな中尉。ここから先は実務に関わったサイ以下の連中と俺達幹部衆だけの秘密だ。別に中尉を信頼していないわけじゃねえけど、事が事だからな。核心を逸(そ)らして概要だけを説明する事になるが、それで勘弁してくれ。」


「構いませんよ。元から『ご法度』と聞いた時点で繊細な話題である事は分かっていましたから。何も教えられない事に比べれば概要だけでも教えてもらえるのならそれだけで十分です。それとも、私がその程度の事でいきり立つような人間だと大尉は思っていたのですか?」


 中尉の切り返しに大尉は豪快に笑う。


「そりゃ悪い。確かに今のは中尉を過小評価した言い方だった。すまんすまん。」


 と、大尉の方も笑いを止めて本題に入る。


「スレイプニールにあったモビルスーツ、中尉はゲイツに似ているって言ったな。」


「はい。円柱型のパーツの組み合わせと背後のZAFT軍特有のバーニア。ゲイツの改良形か旧ZAFT系設計局開発のモビルスーツと見るのが妥当でしょう。」


「これもご法度に掠(かす)るかも知れねえが、まあいいだろう。中尉の言う通り、あれがゲイツの系譜を汲(く)んだモビルスーツである事は事実だ。

そして、重要な事はあのモビルスーツがゲイツの改良版ではなく、ゲイツの進化系である事だ。早い話が最新版のモビルスーツってわけだ。そして、俺達のスポンサーの一部は軍事技術に目が無い。俺から話せる事はこれが限界だ。分かったか?」


 しばらく中尉は考え込む。ゲイツ系の最新鋭モビルスーツ、軍事技術を欲するスポンサー。大尉はこの2つだけを提示した。その間の関係というものが幹部内での機密事項という事なのだろう。ならば。

「ゲイツ系の最新鋭機を作るという事ならばプラントの旧ZAFT系設計局の協力は必須。そして、現在プラントはオーブの自治区となっている。つまり、そのゲイツ系の最新機体はオーブ、即ち統一連合の新型機の一つ。

統一連合の新型機、それも実戦に未だほとんど投入された事の無い機体であれば分解して解析するだけで大量の新技術を手に入れる事ができる。つまり、私達のスポンサーの誰かがあの機体を支援の代償としてもらい受けたという事ですか。」


 大尉はにやりと笑う。


「やれやれ。ちっとばかり言っただけでほとんど分かっちまうとは。今度からは中尉の前で下手な事は喋れねえな。」


 それを受けて中尉も唇で半円を作る。


「一応、これでも大尉との付き合いは長いですからね。呼吸の合間を読むぐらいはできますよ。」


 気心の知れた同僚。今までも彼らのその連携を戦果としては理解していたサイであったが、この温泉での一幕にて彼らが普段から気を置く必要も無いほどの関係である事を理解したのであった。それはきっと、大尉と中尉の関係だけではなく、大尉と少尉、中尉と少尉との関係も同じような言葉さえ余計となる関係であろう事にサイはふと羨望を覚えた。



(そういえば何だかんだいって、今のところ俺の周りには十分信頼はできる『仲間』はいるけど、大尉達みたいに気心の隅々まで知っているような『友達』っていないよな。)

昔はそこまで友情というものに高いレベルを求めていなかっただけなのかもしれないとサイは思う。求めて何かあるわけでも、求める必要も無かったわけだから、普通に『友達』と一括(ひとくく)りにしていたのだった。

(そんな関係じゃやってられなくなっているから今は『仲間』ではあっても『友達』じゃないんだろうな。)

かつては仕事上の十分な信頼関係である『仲間』の域を超えて『友達』であった者達もいたなとサイは思い出した。


 ヘリオポリスで共に過ごした友達。彼らと共にアークエンジェルに乗り、そして2回の汎地球圏大戦を生き延びてきた。離れ離れになってしまった『友達』もいる。二度と会えない関係となってしまった『友達』もいる。

そして、本人達は知らないであろうがサイはその『友達』の多くと実質的に袂(たもと)を分かっている。『友達』はオーブで統一連合の一部として働いており、そしてサイはその統一連合と対立するリヴァイブのメカニック主任として統一連合の人と物を破壊する兵器の整備を行っている。

(みんなは多分、俺がイザナギ辺りに引っ越しているって思っているだろうけど、もし俺がこんなところでみんなと対立する勢力の一員として頑張っているなんて知ったらどんな顔をするかな。)

ふと想像を巡らす。


『何でサイはこんなところでそんな事をしているのよ!とっととオーブかイザナギに帰って来なさい!心配するじゃない!』


 ミリアリア辺りならこう怒られるかもしれない。意外と激情家な女性である。普段の顔を知る者はあまり分からないであろうが、捕虜にナイフを突き立てようとした事を知る身としてはせめて脳天に叩き付けられるものがナイフではなく拳骨である事を祈るばかりである。


『まあ、いいんじゃない?サイの生き方なんだしさ。オーブの敵?だからってサイが俺達を嫌ってるってわけじゃないんだし、別にいいじゃん。』


 トール辺りならこう言うだろう。何事に付けて軽い男子だったが自分の思うところはしっかりと突き通す男子であり、そして何より友人をこよなく愛する人間であった。彼ならば、一通りサイがレジスタンスに加わっている理由を委細々かく説明してやれば、それならばサイの自由だと認めてくれるに違いない。


『ねえサイ。確かにそうなのかもしれないけどさ、何でわざわざサイがレジスタンスになんか参加するのさ。何であんな奴らと一緒になって。』


 カズイ辺りと話したらこう返ってくる気がする。臆病なせいで少し疑(うたぐ)り深いが仲間の事を思ってくれている優しい男性である。サイの事を思ってレジスタンスなどという得体の知れないものから離れるように忠告してくれるだろう。


『………サイ、あたしのところへなんか来ないでね。』


 ふと、フレイの声が聞こえた気がした。トールと同じく二度と会えなくなってしまった『友達』の一人であり元彼女でもある。

結局、彼女との別れは互いにとって清算を済ませたものとはならなかった。いずれまた会った時に、そう思って納得していたその『いずれ』は永久に来なくなってしまった。一期一会という言葉を苦味と共にサイの心に焼き付けた女子である。夢か現(うつつ)か幻かは定かではないが、もし本当にフレイがそのように言ってくれたのであれば、サイは暖かい表情で『ありがとう。』と言えるであろう。


『サイ………』


 そして、最後の一人。アークエンジェルで共に戦った『友達』であり、何度も命を救ってもらった恩人、そして一時は恋敵となり、今では相手の方は知らずとも明確に対立している統一連合の象徴、キラ=ヤマト。彼の言葉は最早サイには思い付けない。思い付けないからこそ、この場にいるのであるが、脳裏に浮かんだキラは何かを喋ろうとする。


『やめてよね。本気になって対立したら―――――』


 昔に聞いた事のある一節が脳裏に蘇る。やめてくれ。これ以上その先を言わないでくれ。脳裏に浮かぶキラにそう言いたかった。その心境は正しくキラの『やめてよね。』と同一であった。


『サイ”達”が僕に敵(かな)うはずが無いだろ。』


 余りにも残酷な一言。かつてフレイの事で言われた一言であり、それはサイの内心に深く突き刺さった。そして今また、思い至れないはずのキラの心と思(おぼ)しき何かは同じ残酷さを以って『サイ達』を脅迫した。

(馬鹿な!)

サイは自分でその虚像を振り払う。

(俺にキラの何が分かる?俺にはキラの何もかもが分からなくなったからこそ、袂を分かったんだ。なのに何故、何故こんなにも鮮明に俺はキラの台詞を思い出せるんだ?しかも、しかもあの残酷なキラの台詞を!)


 サイは自問自答する。だが、明確な答えが出るはずも無い。その答えはサイがキラに会ってみて初めて分かるものであろう。だが、サイとキラが出会う事はまだ無い。しかし、そのキラの送り込んだ使徒は着実にサイのいるゴランボイへと接近していた。






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