◆登場キャラクター
ユートリアム・斎条
ジェイデン・ミラー
斎賀 青利
斎賀 青利
[ ゴコクエリア ナリモン水族館 12:30 ]
[ あいも変わらず賑やかな水族館の中で、今日もセーターの女性は施設の中を見回しながら巡っていた ]
[ その顔には歩き回っていたからかすでに疲れが見え始め、目の動きも座る場所を探す動きに変わりつつある ]
……なんかエエとこ無いかな…
[ 先ほども、シャチのアニマルガールにナンパされたばかり。多少疲れが出るのも無理はないのだろう ]
……ん?
[ とぼとぼ動いていた足のつま先に何かが当たった感覚を覚え、ふと下を見下ろす ]
( ……はーん )
[ ぱっと見金ピカの趣味が悪そうな柄の財布が落ちて居るではないか。またこんなものを落とすとは間抜けな所有者だ、なんてことを考えながら、彼女は金ピカの財布を拾い上げた ]
…
( 落とした人居るかな )
[ 拾ったからには借りパクせず元の持ち主に渡すか、案内所に届け出るつもりで、あたりにそれらしき人物が居ないか見渡し始める ]
ジェイデン・ミラー
あ"ぁ…よっこいしょ…
[ 斎賀の視界に、1人の老人がしんどそうにベンチに座り込むのが目に入った ]
斎賀 青利
……
[ その老人は、今しがた拾った財布と似たような金ピカのベルトを身につけて居るのが、はっきりと嫌でも分かった ]
( まさかこのジジイ? )
[ いくらなんでも安直すぎるとは思ったが、もし持ち主だったら… ]
……
( 聞いて見るか )
[ そんな居た堪れない結末を想像してか、彼女は老人に近寄り、自ら声をかけにいった ]
あのう。
そこのじいさん。
ジェイデン・ミラー
んん?
[ 声をかけられ顔を上げる ]
…どなたかな??
[ 素っ頓狂な様子で斎賀に問い掛ける ]
斎賀 青利
あの。ええと。
斎賀 青利
これじいさんのですか。
[ 拾った財布を彼の目の前に持っていく ]
ジェイデン・ミラー
…?
[ 少し身を乗り出して斎賀の差し出した財布を見やる ]
いかにも、私の財布と同じものですが…
私のはちゃんとここに……あれ
どこにしまったかな…
[ ズボンの左右後ろのポケットを探す ]
斎賀 青利
…あの、だから、これ自分のやと違いますか?
じいさん、これ落としてもうたんじゃないですか?
ジェイデン・ミラー
…かもしれない。
念の為、中身を確認させてもらっていいかな。
[ 手を出して財布を催促する ]
斎賀 青利
はいよ。
[ 催促する手に、キラッキラとした財布を載せるように渡した ]
ジェイデン・ミラー
ふぅむ…。
…
間違いない。私の財布だ。
すまないね…、わざわざ届けて貰ってしまって。
斎賀 青利
もう。全財産なんやからしっかりと保護してくださいよ。
命支えるためなんですから、"反故"にしたらイカンでしょ。
…次からはしっかり身体にくっつけてください。
[ ふうと溜息を吐いて、財布と彼の間で視線を交互させる ]
ジェイデン・ミラー
はっは…ほんとうにね…。
…おっと、それじゃあ、
お返しをせんといかんな。
[ 自分の財布をごそごそと漁る ]
確か……4割だったなかなぁ…3割?
半分だったかな…
斎賀 青利
んっ、え。くれるんですか、お返し。
そりゃ、こっちも嬉しいですけど。
[ 巡って来た報酬の存在を感じてか、心なしか声に気合が入り始める ]
ユートリアム・斎条
[ ふと、少し離れたところから大きな声が聞こえる ]
……ぁーーー!!!
石田ぁーーー!!どこにいるのよーーーー!!
まったく……いっつも私が離れると大慌てで探し回りに行くんだから。
斎賀 青利
…?
ユートリアム・斎条
[ 赤ブレザーの少女が、ため息をついて歩いている ]
ジェイデン・ミラー
迷子かな…?
[ 財布に付ける手が止まる ]
ユートリアム・斎条
ねえおばさん!
[ 斎賀に向かって声を掛ける ]
このあたりで背の高いタキシードの人を見なかった?
斎賀 青利
…あー。
知らんなあ。
大体誰やねんキミ。
先ず名前名乗りや。
[ つんとユートリアムのでこをつつく ]
ユートリアム・斎条
っちょ! この私に向かって何するのよ!?
[ 突かれたデコを軽く押さえ、喚くように言う ]
斎賀 青利
へえ「このわたしにむかってなにするのよ」が名前なんか。聞いたことないわそんな名前。
[ 一方彼女はどこかおちょくって居るような口ぶりと声色、そして何より既に揶揄う意図が抑えきれて居ない顔を浮かべて居た ]
ユートリアム・斎条
ぬぐぐぐぐぅぅぅ……!!
良いわよ、私の名前を聞けばすぐにどれだけ無礼だったか分かるわ!
私の名前はユートリアム・斎条。かの有名な斎条財閥の次期当主よ?
[ へへん、とドヤ顔で腰に手を当てて自己紹介 ]
斎賀 青利
あー。斎条財閥。
ジェイデン・ミラー
斎条…?
斎賀 青利
なんやキミいいトコのお嬢様かいな。
そりゃあ確かに失礼したわ。
ユートリアム・斎条
分かればいいのよ。
ジェイデン・ミラー
( はて…どこかで会ったかな )
斎賀 青利
( 単純過ぎかよ )
…僭越ながらぁ、ウチは斎賀青利と申しますわ。
キミんとこの会社…でエエんかな、有名やで。
[ 満足げにしている小さな次期当主を見下ろしたまま、話を続ける ]
ユートリアム・斎条
当然よ。世界168カ国にあらゆる業種に精通してるもの!
名前を知らない国なんて存在しないわ!
[ まるで自分自身の業績であるかのように大きくふんぞり返っている ]
斎賀 青利
ウチみたいなおばはんでも知ってるくらいやしなあ。
[ ひとまず話に乗って程よく煽てるような言動を取って居た ]
そんなキミはなんでここに。
ユートリアム・斎条
……あ、そうだった。
[ 端末を取り出す ]
[ 写真を開く ]
画像見せたほうが早いわね。この人を探してるのよ。見なかった?
[ 2人に見えるようにかざす ]
ジェイデン・ミラー
どれどれ…
……
…お嬢さん。
[ 斎賀にちょいちょいと手招きをする ]
ユートリアム・斎条
……?
[ 端末をしまい、ジェイデンに近づく ]
ジェイデン・ミラー
すまないが、私の虫眼鏡を取ってくれるかな…?
リュックに刺さってると思うんだが…。
ユートリアム・斎条
……。
斎賀 青利
…。
ユートリアム・斎条
わ、私にそんな事させようっていうの?
斎賀 青利
はーしょうがないなあ。
これだからおじいさんは…っで虫眼鏡どこ。
[ ずけずけと彼のリュックに近づく ]
ジェイデン・ミラー
どこだったかな…
多分左サイド…だと思う
ユートリアム・斎条
……。
[ じっと2人の様子を伺っている ]
[ どうもそこそこ困っている様子だった老人を見て、そしてその老人を助けようとしている斎賀を見て、少し申し訳無さを感じているようだ ]
斎賀 青利
左、左…
[ ごそごそと左のあたりを弄って居る ]
ユートリアム・斎条
……そこよ。
[ おもむろに左側に回り込み、はみ出ている虫眼鏡を取り出す ]
はい、これ。
斎賀 青利
おおッ、ジーニアスやん。
ジェイデン・ミラー
おぉ、ありがとう…!
…それじゃあ…見てみようかね。
ユートリアム・斎条
あ、ちょっとまってね……。
[ 端末を再度開く ]
( ……石田の顔を見るために、虫眼鏡を? )
ジェイデン・ミラー
[ 虫眼鏡越しに端末を凝視する ]
ふむ…
斎賀 青利
[ 一緒に覗き込む ]
ジェイデン・ミラー
…
うーん…
身なりの整った男性だね。
[ 見当違いの答えを出す ]
ユートリアム・斎条
だはぁ……ちょっとねぇ!
わざわざ虫眼鏡を取らせて言うことがそれって何なのよ!!
斎賀 青利
なんでやねん…。
ジェイデン・ミラー
ごめんよ…。
[ よく分からないが指摘されたことに謝罪する ]
…ところで、この方は?
[ 端末の男性を指差す ]
ユートリアム・斎条
この人は石田よ。私の執事。
普段は後ろでいつも待機してるけれど、混雑した場所だと時々見失うからこうやって探し回ってるのよ。
[ 終始呆れた様子だ ]
斎賀 青利
執事ねえ。
色々大変そうやなあ。
ウチはぶっちゃけ一人が楽やけどな。
ジェイデン・ミラー
…1人はやっぱりさみしいよ。
石田さん?もユートリアムちゃんを、探してるんじゃないかな?
ユートリアム・斎条
だと思うけど……。
[ 端末をまたしまい込み、周囲を見回す ]
全然見つからないのよ。
電話もつながらないし。
ジェイデン・ミラー
ふむ…
なら、下手に動かないほうがいいと思うよ。
斎賀 青利
まあな。
あんまり動かんほうがエエと思う。
ここにでも座ろか。
[ いつのまにかジェイデンの隣に座り、ぽんぽんと隣のスペースをたたく ]
ジェイデン・ミラー
うん、うん。
じゃあ、ちょっと横に詰めようね…。
[ ベンチの端にずれる ]
ユートリアム・斎条
……はぁ、しょうがないわ。隣りに座ってやるわよ。
[ 眉間にシワを寄せたまま、空いた部分にポフッ、と腰掛ける ]
斎賀 青利
( お嬢様ってみんな偉そうな言葉遣いなんやろか )
[ 自分が一番高い場所にいる、そんなユートリアムの態度を見て、若干冷めた目で思考を巡らせる ]
( …すっごく唯我独尊っぽいオーラ感じるわ )
ユートリアム・斎条
……なによ?じっと私の顔を見て。
なにかついてるかしら?
斎賀 青利
…いいや別にぃ?
[ やけに煽るような声色だ ]
…てかさ、パークには何しに来たの。
やっぱアニマルガール目当てなん?
ユートリアム・斎条
……。ふんっ。
私は斎条財閥の当主になって、このジャパリパークを買収した時の為に事前の視察に来てるのよ。
遊びに来てるわけじゃないんだから。
斎賀 青利
へー、買収。
それまたなんで。
[ 随分と野心的な心を持っているなと、ちょっぴり驚きが隠せないようだ ]
ユートリアム・斎条
それは勿論、ここに住むフレンズたちともっと仲良くするためよ!
[ 巨大な野望の目的は、やや小さすぎるようにも思える ]
斎賀 青利
…へえ。
[ 子供くさい純粋な目的と、巨大な野望のミスマッチさに、開いた口を閉じるのをしばし忘れている ]
ユートリアム・斎条
今のジャパリパークは、ルールが多すぎてちゃんと遊べるタイミングが少ないんだもの。
フレンズを守るためだってパークの人は言ってるけど、絶対退屈よ!
この前なんて、ジャングルツアーでジャガーのフレンズと話そうとしてたら怒られたし!
斎賀 青利
…ああ、倫理規定やっけ。
確かにあんまりアニマルガールと話すタイミングあらへんな。そういや。
[ それは普段自分が端末ばかりいじっているからなのだが、そんなことは思考の片隅にもないようだ ]
ユートリアム・斎条
おじさんもあんまりフレンズとお話しないんじゃない?
大人の人はもっと話すタイミングとかルールが多いハズよ?
斎賀 青利
[ ジェイデンに目を向ける ]
…。
もしもしもし。
[ ジェイデンに声をかける ]
ひらひらひらー
[ 目の前で手をひらひらさせる ]
ジェイデン・ミラー
…んえ?
あー…そうだね。
私はあんまり、フレンズたちとお話はしないかなあ…。
斎賀 青利
んーそっか。
らしいでユートピアムはん。
[ くるっと視線を少女の方に戻す ]
ユートリアム・斎条
仲介役にならなくてもいいわよ。そんなに私の日本語は通じにくい?
……ってこれでも一応日系人よ?!
斎賀 青利
ああそうなの。
なんかすごい強烈な名前しとるから外人なんかと。
ジェイデン・ミラー
如何にも、アメリカ人だよ。
[ 自分が言われたと勘違いする ]
ユートリアム・斎条
んぇ? じゃあ私と同じ国なのね。
日本語すごい上手……。
ジェイデン・ミラー
はは…、ありがとうね。
斎賀 青利
最近のアメリカ人日本語上手いんやなあ。
ジェイデン・ミラー
日本に住むって時に、練習したんだ。
ユートリアム・斎条
へぇー……
斎賀 青利
じいさんもじいさんで色々事情あるんやな。
…ああせや、流れそうになってるけど、財布拾ったご褒美まだ貰ってないわ。
ユートリアム・斎条
ご褒美? おばさん何かやったの?
斎賀 青利
ああ、じいさんの財布拾ったんや。
ベルトと同じでピッカピカしとったから直ぐにわかった。
ユートリアム・斎条
なるほどねー……意外だわ。
斎賀 青利
まつたく、財布落とすなんて有り得へんわあ。
ちゃんとお財布は大事にせんと。
なあ?じいさん。
ジェイデン・ミラー
そうだね…。
はて、何割だったっけ…
[ 財布を見て悩む ]
斎賀 青利
何割でもエエよウチは。
ユートリアム・斎条
……。
( 結局お金欲しさに人助けしたのね、このおばさん )
( ちょっとがっかりだわ…… )
ジェイデン・ミラー
3…3だった気がする。
えーと…
[ ごそごそと財布を探し、斎賀に3万円を手渡す ]
はい、拾ってくれてありがとうね…!
斎賀 青利
おおきに。
もう落とさんでよ。
[ 受け取った3万円を満足げに眺めると、既に札が詰まった自分の財布の中にしまっていく ]
いやあ臨時収入臨時収入。これこそ労働やわ。
ユートリアム・斎条
このご時世に現金って……。
それに、やっぱり善意で人助けじゃなかったのね。
ちょっとイメージ通りで逆に安心したわ。
斎賀 青利
まあ全財産無くしてるやんコイツって思って探したのは間違っとらんで、キミ。
でもウチはボランティアやタダ働きみたいな事はイヤやからな、絶対。
ほんのちょっとでもエエ、見返りが欲しいんや。
ユートリアム・斎条
ふーん。
お金にはがめついのね。
斎賀 青利
「こういう労働して損はなかったなあ」って思えるくらいのな。
そういう対価は労働においては重要やで。キミ。
ジェイデン・ミラー
このお財布は妻から貰った大切なものでね…、中身よりも大切なものなんだ。
[ 財布をリュックにしまう ]
斎賀 青利
…ほーん。
なら尚更落としたらアカンやん。
しっかりガードせんと。
ユートリアム・斎条
ホントよ! そんなに重要なものならどうして落っことしちゃったのよ……?!
ジェイデン・ミラー
どうしてだろう…。
[ 頭をかいて考える ]
斎賀 青利
……
( トシ、かあ )
ユートリアム・斎条
……。
[ いまいちよく分かっていない ]
斎賀 青利
ウチが見つけるとも限らんし、しっかりしてやホンマ。
ジェイデン・ミラー
はは…、そうするよ…。
ユートリアム・斎条
ふーむぅ……
斎賀 青利
[ ユートリアムの耳元に小さな声を送り込む ]
トシやな、アレ。
ジェイデン・ミラー
最近物忘れがひどくてね…。
[ 小さな声にはもちろん気づかずに話す ]
ユートリアム・斎条
トシ……あ、あぁ……
そ、そういうことなのね。
……って、それでも物は大事にしなさいよね!?
ジェイデン・ミラー
大事にしてるつもり、なんだけどなあ…。
[ 申し訳なさそうに微笑む ]
斎賀 青利
…まあ、よる年波には敵わんやろな。
負けんようにな、トシに。
[ 少しいたたまれないような顔で、そう告げる ]
ユートリアム・斎条
おばさんもトシに負けないようにするのよ〜?
[ 出会った時の態度へのやり返しだろうか。少しニヤついた悪戯な顔で斎賀に言う ]
斎賀 青利
…せやなあ、もう三十路終わりそうやし。
[ だがどうなら彼女はその意趣返しの言葉を真剣に捉えていたようだ ]
( 38やしなあ、ヤバくなりそう )
ユートリアム・斎条
……。
[ 少し深刻な顔になってるのを見て、またもやいたたまれなくなる ]
あ、アメリカンジョークよ。
真に受けないでよね、もう……。
斎賀 青利
人生は偶にジョークみたいなイベントが起きるから油断ならんわ。
おとんとおかんには事故で先立たれたし。
ジェイデン・ミラー
…。
ユートリアム・斎条
……。
ジェイデン・ミラー
まだ若いのに、かわいそうに。
ユートリアム・斎条
( ちょ、ちょ……な、なんでこんな重たい空気になってるのよーーーーーっ!? )
( 勘弁してよ、私、そんなつもりで言ったんじゃないのに……っ )
斎賀 青利
もう若くないわ、あと12年で半世紀生きちゃうんやぞ。
ユートリアム・斎条
[ 次第に悲しげな表情になっていく ]
ジェイデン・ミラー
はっはっは…、私に比べれば若い若い…。
まだ、まだまださ。
斎賀 青利
( まあ、両親がいないから多少吹っ切れられた部分はあるけど…なあ )
[ それでもどこか、寂しげな雰囲気を纏わせている ]
…
ユートリアム・斎条
……。
( 何よ、何よ何よ何よ……2人してしんみりした態度になって…… )
……うぅ……。
斎賀 青利
….…ん?
ユートリアム・斎条
( ……石田、どこにいるのよ…… )
[ 俯く ]
ジェイデン・ミラー
だからね、お嬢さん…
これからもたくさん楽しい事や嬉しい事があるんだから、楽しみにしていなさい。
斎賀 青利
…。
まあ、期待しとくわ。
ユートリアム・斎条
[ ぽろぽろ、ぽろぽろ…… ]
斎賀 青利
正直キミらと話してるのはそんなつまんないもんやないからな。
…ん
…
( あれ、泣いてる? )
斎賀 青利
[ ぽたぽたと輝く水滴を見て、ハッとなったような顔に変わっていく ]
ジェイデン・ミラー
どうしたんだい…?
ユートリアム・斎条
……な、なんでもないわよ。
[ 裾でこする ]
ジェイデン・ミラー
そうか…
お嬢ちゃんも強かだねえ…。
斎賀 青利
( あーやめてまって視線が痛くなるやめてやめろ )
[ 今度はこちらがいたたまれなくなり、カバンからハンカチを出してユートリアムに差し出す ]
ホラ。
ユートリアム・斎条
……泣いてなんか無いわ。この私が、泣いてなんか……っっ
[ 顔を反対側にそむける ]
斎賀 青利
泣いてるし。
いいから使えばエエやん。
( ウチが虐めたみたいに見えるし勘弁して )
ユートリアム・斎条
……っっ
[ 手渡される刺繍入りのハンカチを一瞥して、しばらく何も言わなくなる ]
……私、寂しくなんか……辛くなんか……うぅっ、うっ……
『お嬢様!』
[ 水槽の方からの声 ]
斎賀 青利
…。
( 寂しい、ねぇ )
ユートリアム・斎条
っ!!!
いっ、石田っ!!?
[ パッと斎条が顔を上げると、ずっと探し続けていた人がそこにいることに気づいた ]
ジェイデン・ミラー
どうやら見つかったみたいだね。
よかった、よかった…。
[ 2人の方を見て微笑む ]
ユートリアム・斎条
[ 椅子から飛び降り、タッタッタっと元気よく駆け寄っていく ]
[ が、しばらくするとその速度も遅くなり、やがては手前で立ち止まる ]
『お嬢様、ご無事で
……どこで今まで油売ってたのよ!! 私になにかあったらどうするつもりだったの!? ずっと心配で探し回ったんだからね!?
『……申し訳ございません。なにぶん、この施設は広いものですから、ボディガードにも捜索を手配しておりました』
斎賀 青利
…
[ 唐突に怒鳴り散らし始めたユートリアムの様子にすくなからず異変があったと見たのか、椅子から立ち上がって二人の元へと近づき始めた ]
( あーれ、てっきり泣きつくんかと思ったけど )
ユートリアム・斎条
『……こちらの方は』
石田がどこかで油売ってた間にお話してくれた人よ。
[ 石田の問いに、涙目になって答える ]
斎賀 青利
( って涙目やんけ )
ユートリアム・斎条
『そうでございましたか……本当に申し訳ございません、お嬢様。石田は今ここにおります』
[ 膝立ちになった石田は、優しく斎条を抱きしめる ]
ジェイデン・ミラー
[ やっと立ち上がり歩いてきたという様子で、3人に合流する ]
いやあ…私の話し相手をしてくれていたんです。しっかりしたお嬢さんだ。
斎賀 青利
まあ、話していて面白い子でした。
ユートリアム・斎条
[ よしよし、とようやく泣き縋り始めた斎条を介抱しつつ、石田は立ち上がって一礼する ]
『お二方とも、この度はお嬢様のお話相手になってくださり、ありがとうございました』
[ 一切崩さぬ穏やかな笑顔で礼を言う ]
斎賀 青利
エエですよ。時間は潰せましたし。
( なあるほど、コイツが石田… )
ジェイデン・ミラー
[ 石田に微笑み返す ]
ユートリアム・斎条
『お嬢様も、きちんとお礼を言うのですよ』
石田っ、石田っ……
『……おやおや、本当に寂しかったようですね……』
斎賀 青利
………。
あの、石田さん。でエエんでしょうか。
[ 泣きじゃくるユートリアムをから、石田に目を向ける ]
ユートリアム・斎条
『はい、私が石田でございます』
斎賀 青利
…ユートリアムにちゃんと構ってやれてはりますか。
いや、声とか口ぶりが割と寂しそうなんで。
ユートリアム・斎条
『……。』
[ 石田は泣き疲れてウトウトしつつある斎条を撫でながら、斎賀を見やる ]
『お嬢様は、ご両親による愛情が希薄な中で生活しておられるのです。お嬢様の御母上は若くして亡くなられ、御父上は日々の業務ゆえに世界中を飛び回っておられます。お嬢様の唯一の拠り所は、この私石田に託されているのです。そのために、今日のようにはぐれてしまうと、このように……』
ジェイデン・ミラー
私達が口を出していい事じゃないかもしれないけど…、やっぱり一人は寂しいし、危ないですよ。
子供がすぐにどこかへ行ってしまうのも、わかりますけども…。
ユートリアム・斎条
『重々承知しております。このようなことはできる限り無いよう、細心の注意を払っておるのですが、如何せん私も還暦を過ぎておりまして……』
ジェイデン・ミラー
お気持ちはわかります…。
斎賀 青利
……中々、のっぴきならない事情があるんやなあ。
( それ言わなかった、てことはかなり意地っ張りなんやなコイツ )
ユートリアム・斎条
『本当なら、もっとお嬢様と寄り添わねばならない事は良くわかっておるのです。しかし、この私めの体力を上回るほどにお嬢様はお強くなられた。このような事があれど、私は非常に喜ばしく思っております』
斎賀 青利
…つまり、こいつには友達とか、いっぱい必要なんか。
この子をジャパリパークに行かせてるのも、それが理由なんですか。
ここにはそれが出来るアニマルガールがたくさんやないですか。
ユートリアム・斎条
『お嬢様はいつも買収のための視察と申されておりますが、ジャパリパークこそが何よりの居場所となっておられるのかもしれません。この地を自身の手で掌握したいのも、居場所やお友達を失いたくないからこそなのでは、と......』
[ 少し間を置いて ]
『ところで、お二方のお名前をお伺いしておりませんでしたね』
ジェイデン・ミラー
あー…えー…
( 名乗るほどでもないけど…それはそれで不審者か… )
ミラーです。
斎賀 青利
…斎賀青利です。
その子にも、そう名乗りました。
( そういや名乗って良かったんやろか。所属とかバレへんかな )
ユートリアム・斎条
『ミラー様と斎賀様、ですね。本日は本当にありがとうございました。こちらは御礼でございます。ポケットマネーですが』
[ そういうと、石田は内ポケットからチャージカードが取り出される。60万円と書かれた表示があることから、その金額分がチャージされているものと思われる ]
斎賀 青利
おほっ…
( やった、またまた臨時収入やん! )
[ 色々と募っていた考えは、手渡されたカードの数字を見て一瞬で吹き飛んだ。やはりこいつは良いとこのお嬢様なのだと痛感し、単純にも喜びの声をあげたのだ ]
ジェイデン・ミラー
え"っ
いやいや…受け取れませんよそんな大金…!
ユートリアム・斎条
『いえいえ、遠慮はなさらないでください。こちらはお嬢様とお相手していただいた御礼ですから』
ジェイデン・ミラー
私は…、ほら…。ユー…ト?
ユート…リアムちゃんに話し相手になってもらっていただけですから…。
斎賀 青利
…
( マジかよ、ユートリアムヤバいやん )
[ 改めて自分とは違う次元に、目の前の二人は居るのだと痛感した ]
……おおきに、ありがとうございます。
[ もうチョロっと彼女たちに対する好感度が上がった青利は愚直にも礼を返した ]
ジェイデン・ミラー
ええ…。
[ 斎賀と石田を交互に見る ]
ユートリアム・斎条
『ともかく、ミラー様』
[ そっとジェイデンの手を取って、カードをその手に握らせる ]
『お嬢様のお気持ちも含め、お受け取りください』
ジェイデン・ミラー
は、はぁ…。ありがとうございます。
大切に使わせてもらいますね…。
[ フリーズする ]
ユートリアム・斎条
[ いつしか石田の後ろには5、6名ほどの黒服の巨漢が集まっている。石田に耳打ちで何かを伝えているようだ ]
『それでは、ミラー様、斎賀様、私どもはこれにて失礼いたします』
斎賀 青利
( うわっすごい、ホンモノのSPやないか )
ユートリアム・斎条
[ 丁寧に一礼すると、いつしかぐっすりと眠るお嬢様を抱え込む ]
ジェイデン・ミラー
あっ、待って!
ユートリアム・斎条
『...どうなされましたか』
ジェイデン・ミラー
[ リュックを地面に降ろし、袋からごそごそと何かを取り出し、石田に手渡そうとする ]
…忘れなくてよかった。
[ それは小さな8枚のコインだった ]
斎賀 青利
( コイン…? )
ユートリアム・斎条
『コイン、ですか』
ジェイデン・ミラー
私は東京でしがない彫金師をしていまして…、ここでお知り合いになってくれた方々に、作品を贈っているんです。
[ コインはよく見ると動物の模様が細かく彫られており、チェーンを通す穴も開いている。装飾店に並ぶ商品に見劣りしない出来栄えだ ]
斎賀 青利
( うわ模様とか良くできてる )
ユートリアム・斎条
『ほう......では、ありがたく頂戴致しましょう。お嬢様もきっとお喜びになられます』
ジェイデン・ミラー
はは、喜んでくれたら嬉しいですね…。
…お嬢さんの分もあるからね。
[ 聞かれる前に斎賀に話しかける ]
斎賀 青利
えっ、ウチにもくれるんですか。
( なんか今日やけに運回ってんなあ )
[ ちょっと驚いたような顔で見返す ]
ジェイデン・ミラー
もちろん!
あとで好きなのを、選んでいいからね。
斎賀 青利
いやあ、財布拾っただけなんやけど何から何まで…いやあ、嬉しいですわ、ここまで来ると。
[ 無理もないだろう、彼女はこの時点で63万もの臨時収入を得て居るのだから ]
ユートリアム・斎条
[ いただいたコインを丁重にお嬢様のポケットに忍ばせる ]
[ ユートリアムが好きな、とある有名な話に出てくるメキシコオオカミのデザインがあしらわれたものが選ばれたようだ ]
『本当に感無量です、ありがとうございます』
ジェイデン・ミラー
いやぁ…、とんでもない。
私こそ、ユートリアムさんにお礼を伝えておいてください。
斎賀 青利
( コインなあ…なんか出来るってエエなあ )
[ ジェイデンにちょっと羨望の目を向けるが、振り払うように目を閉じて首を振って、目の前の執事を見やる ]
…ウチには何もしてやれませんけど。
そん子には、次ウチ見かけたら容赦無く声掛けるように、っといてくださいな。
( …言っちゃったよ )
ユートリアム・斎条
『......承知いたしました、伝言承りました』
[ 優しく微笑む ]
『それでは改めて、私どもはこれにて失礼致します』
『またどこかでお会いできた時は、よろしくお願いします』
[ 軽くまた一礼すると、SPたちに囲まれながらその場から立ち去っていった ]
斎賀 青利
[ いつしか、彼女たちには少なからず抱く思いがあるのか。青利は釣られて手を振っていた ]
……苦労してんなあ、あの子。
ジェイデン・ミラー
[ 石田たちに手を振る ]
ふむ…。
…少ししか話していないけど、お嬢ちゃんもお嬢さんも、しっかりしてるから大丈夫だよ。
私の友人のぴー……
[ "鸚哥(ぴー)ちゃん"と言いかけて止まる ]
斎賀 青利
ぴー…
( あれなんかそういう名前聞いたような )
…あっ。ああ。
( あっアレや、あのヤクザのメガネ )
ジェイデン・ミラー
……
私の友人にもそういう女性がいてね。
[ 上手に誤魔化した気でいる ]
斎賀 青利
( ……おいおい… )
…まあ、ウチはなんも聞かなかったことにします。
ジェイデン・ミラー
なんのことだろう…。
…
…そうだ。
それより、コインを選ぼうね。
斎賀 青利
せやった。
ウチとしたことが…どれにしようかな。
[ へらへらとした笑いを浮かべ終えると、手に乗せられているコインたちを吟味して行く ]
ジェイデン・ミラー
パークでお友達になった人がいたら、お土産にも何枚かもっていきなさい。
斎賀 青利
んー。
( だったら悠介と鯖猫はんやな )
[ そう思案し、まず自分の分にイヌのコインを取り、自身が友人・知り合いと聞いて思い浮かんだ二人の分に、トラとサーバルのコインを取って行く ]
こんなもんかな。
ありがと。
ジェイデン・ミラー
うん、うん。
じゃあ、私はこれで。
お財布を拾ってくれて、ありがとうね。
[ 斎賀に手を振る ]
斎賀 青利
んっ、いえいえ。
[ 去りゆくジェイデンに手を振る ]
…さあて、今日は中々エエ日やったな。
大漁大漁っ。
[ こうして、先ほどの話の中で感じたシリアスな思考は別にして、今は沢山土産物という報酬をゲットした幸運を痛感しながら、ルンルン気分で水族館の奥へと足を進めていった ]
[ 図らずして斎条財閥とのコネを手にした青利は、後々ユートリアムから接触される頻度が増えたというが、それはまた別の話 ]
( 元気でエエけど、これいつかこのガキ預かれって言われたらどうしよ )
おしまい
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