マスター
[ ドッグカフェ ファミリアリス 22:12 ]
[ 一日の営業も終え、静まり返った店内で一人、売り上げの計算を行なっている ]
[ 頼りになるアニマルガール達は、いつも以上のお客さんの数に、疲れ切ったのか部屋で寝ている ]
ふぅ……。
[ 窓の外には夜の静まり返った通りが見える。少ない明かりの店内に月の光が差し込んでいる ]
クルトー
[ すると、窓辺に一筋の影が差す ]
[ それはオオカミの姿をしている ]
マスター
ん……?
[ 伸びる影に何かの気配を感じる。ゆっくりと立ち上がると窓へと近寄る ]
オオカミ……。あぁ、クルトーさん……?
[ オオカミの影。こんな街中まで入ってくるオオカミは彼の仲間達しかいない。窓から外を確認する ]
クルトー
[ はたして、窓の向こうには狼たちを連れたクルトーの姿があった ]
[ 入っていいかな?というジェスチャーをする ]
マスター
[ 優しく笑顔を向けると小さくうなずいて、扉の方へと向かう ]
[ 鍵を開けると、扉を開いて ]
クルトーさん? どうしました?
[ 時間外の来客に、首を傾げて ]
クルトー
......ちょっと相談したいことがあってね...公には言いにくい事だから、こんな時間だけど来ちゃったんだ。
[ そういう顔はなんだか少し暗い ]
マスター
えぇ、いいですよ。相談ならいつでも。
ここではなんですから中へ。暖かくなったとはいえ、夜は冷えますからね。
[ 貴女を店内へと招き入れて。もちろんオオカミたちも招き入れ ]
ロボ
[ するとそんなクルトーの横にもう1人大きな人影が近づいてくる ]
…まだ開いているか。
クルトー
うぇ!?ロボさん!?
[ オオカミ共々かなり驚いた様子で ]
マスター
ロボさんっ! お久しぶりですね……♪
[ 突然現れた姿に驚きつつも、また会えた嬉しさに満面の笑みで ]
ロボ
ああ、今日は気まぐれだが…俺も入れるか?
[ 驚く2人に片手を上げ、会釈を見せる ]
マスター
えっと……。私は構わないですが……。
クルトーさん、どうしますか?
[ 相談に来たという言葉を思い出し、同席はいいの?とクルトーに問いかけ ]
クルトー
......うん、いいよ。
ロボさんにも話したかったことだから。
マスター
わかりました。
ではお二人とも、カウンター席にどうぞ。
[ 二人と大勢のオオカミが店内に入ることを確認してから、扉を閉めると鍵をかけた ]
ロボ
…そうか。
[ クルトーからのっぴきならない何かを感じて、ゆっくりと先に入る ]
クルトー
[ あとから入ったクルトーはカウンター席に座る ]
[ 他のオオカミ達は少しクルトーから距離を取っているように感じる ]
マスター
[ カウンターの中に戻ると、二人のためにコーヒーの用意を始め ]
しかし公には出来ない相談って……、何があったんですか?
[ 何処と無く暗い表情のクルトー。そしてオオカミ達のいつにない余所余所しい雰囲気に心配そうに ]
クルトー
......マスターさん、前にホッカイで新月の日に会った時、僕が何をしたか、覚えてるよね?
ロボ
[ カウンター席に座ると、クルトーの方を見たまま沈黙を守っている ]
マスター
えぇ、覚えていますよ。あの夜は……なかなかにスリリングでした。
[ 噛まれた方の手を動かして見せて。あんな目にあったのに、表情は笑顔だ ]
ロボ
…ふむ。
[ マスターとクルトーの間で視線が交互する ]
クルトー
...ボクがああなったのはあれが初めてじゃないし、何人か犠牲になってるんだ。
ほとんどは悪い人だったけど......ボクの事を調べていた職員さんも、殺した事がある。
[ 表情がさらに暗くなる ]
マスター
なるほど……その事でしたか……。あの時も確か一人……。
職員も……辛いですね……。
如何にかそうならないように成ればいいのですが……。
[ そっと二人にコーヒーを差し出して ]
クルトー
......それだけじゃないんだ。
最近、夢を見るんだ...。
マスター
夢……ですか?
ロボ
…
[ 何も言わず、静かに相槌を打つ ]
クルトー
...ボクは真っ赤な雪の上に立ってるんだ。
周りで何人も人間やフレンズが死んでる。
目の前には瀕死のマスターさんがいて、ボクは必死に衝動を抑えようとするんだけど、最後には殺す...。
...いつか、それが現実になる気がするんだ...。
マスター
悪夢……ですねそれは……。
でもそれは夢ですよ。ただの夢……。
現実にはなってない、ただの夢の世界の出来事。
[ カウンターから少し乗り出すと、クルトーの頭を撫でて ]
前回死ななかったんです。私はあれぐらいじゃ死なないですよ。
貴女達を残して死ぬつもりもありませんし。
と、言えどそんな夢を見ていたら寝覚めも悪いですよね……。
ロボ
( …また難儀な悩みだな )
クルトー
......ボクが人を襲って食べようとするのは、もう本能になっちゃってるんだ。
ボクが...『狼王クルトー』が、そういう動物だったから。
だから普段は抑えるようにしていて、抑えきれなくなる前に誰もいないところでさらけ出しているんだ。
それでもボクは人を殺してしまう......。
どうすればいいのかな。本当は誰も殺したくなんかないのに。
どうやったら、誰も殺さずに済むのかな...。
[ とても悲しそうな表情だ ]
マスター
クルトーさん……。
( やはり一回詳しく調べるべきでしょうね……。サンドスター由来で語り継がれて話を強く表してしまってるのか……それとも獣の本能か…… )
[ 軽く俯いて真剣な表情で悩み ]
私が……必ず私が見つけます。貴女が誰も殺さなくて済む方法を。
必ず何か理由があるはずなんです。オオカミと人は形は変われど長い間共存して来たのですから。
ロボさんも協力してくれますよね?
[ 隣で話しを聞くロボにも協力を仰いで ]
ロボ
…ああ。
同じ王だ、付き合ってやるさ。
…なあに。俺でさえ変われたんだ。
クルトー、お前も変われるはずだよ。
[ そう告げると、渡されたコーヒーを一気飲みする ]
( ふむ…すこし苦いな )
クルトー
...変われる、かな...。
[ コーヒーのカップの水面に映った自分を見ながら ]
マスター
変われますよ。共に生きることは出来るんです。
クルトーさんだけが変わるのではなくて、周りも一緒に変わっていくんです。
そうすることできっと道は開けるんですよ。
クルトー
......ありがとう、マスターさん、ロボさん...。
[ コーヒーを少し飲む ]
...苦い......。
[ 苦手な味だったようだ ]
マスター
コーヒーだってその人に合わせて変われるんですよ。
[ 砂糖とミルクを差し出して ]
共に支える仲間がいればすぐにでも……ね。
[ 砂糖の入った瓶とミルクを指差して ]
まずはクルトーさんのことについて調べないといけませんね。
クルトー
...ボクの何を調べるの?
[ 砂糖とミルクを入れて混ぜながら ]
マスター
そうですね……。
例えば、そうなってしまうときに何か予兆があるのか……。
決まって新月の時ですし、月が関係している可能せもありますよね……。屋内でも屋外でもその衝動は起きるのか……。
人の肉でなければいけないのか。代用できるのか。その辺りですかね……
[ うーんと小さく唸って ]
クルトー
...あ、新月なのはボクがそうしているからなんだ。一番わかりやすい目印だから...。
......代用?
ロボ
( …ふむ )
マスター
周期は関係ない……と。
では予防策から考えてみましょう。
人肉は必要か否か。
食べると落ち着くんですよね? その話からすると……。
クルトー
うん...そんな感じ。
[ コーヒーを再び一口 ]
( わぁ...甘くなった )
マスター
なるほど……。前回のケースを考えると……。
確かクルトーさん私を噛んで暫くしたら落ち着きましたよね……。
さすがに肉は残ってますし……。
[ 腕をさすり ]
そこから現状考えられることとしては……。やはり血なんでしょうかね……。
ロボ
血、か。
( …そういや、似たような悩みを背負ったやつも居るらしいが… )
マスター
もしくはあの時の状況を考えれば……。
匂いとかですかね……。思いっきり抱きしめてましたし……。
クルトー
......あの時は、なんだかマスターさんをすごく暖かく感じた気がする。
[ ぽつりと呟く ]
マスター
暖かく……。
これは少し難しい話になりますが……。
もしかしたらホルモンが関係してるのでしょうか……。
クルトー
ほ、ホルモン...?
ロボ
ほう。
マスター
緊張、ストレスにはコルチゾールっていうホルモンが分泌されるんです。
実はこれは真逆の働きをするオキシトシンという物質があるんですよ。
心を安らげる。俗に愛情ホルモンと呼ばれてるんですが……。
人とイヌが一緒にいると、このホルモンが分泌されるんですよ。
絆を育むのに一役買ってるってことなんです。
もしかしたら似たような作用があるのなら……。
あの時の状況を考えれば、この影響の可能性はある気がしますね。
ロボ
…ふむ。
クルトー
...愛情......うーん...。
[ どこか腑に落ちない感じの顔をしている ]
マスター
今まで言ったのは一つの仮説です。今度はクルトーさんの話から考えてみましょうか
クルトー
ボクの話......って言うと、さらけ出している時の?
マスター
いえ昔の話です。
15世紀、戦乱の続く時代です。
森すらも焼かれて狼達は獲物に困っていた。
そこから弱った人を襲うようになった……。それがクルトーの話なんですが……。
これはフランスの話なんですよ。
クルトーさんは予想ではイベリアオオカミなんですが……。
[ 何か閃いたように ]
あっ、暖かい……? イベリア半島とフランス……。
[ 何か閃いたようにさっきの言葉を思い出す ]
クルトー
......何かわかったの?
マスター
これは本当に単純な話なんですが……。
クルトーさんはホッカイ以外でその衝動に襲われたことはあるんですか?
クルトー
え......?
...えーっと、冬に一度だけホートクではあったかな...? そこ以外は全部ホッカイだったと思うよ。
そもそもここに来る時以外はあんまりホッカイから出ないから。
ロボ
ふむ…。
じゃあ、いっぺん暖かい場所に引っ越して見るのはどうだ。
[ 聞き手に回って居たロボが、一つの結論を提示した ]
[ しっかりと話を聞いて、自分なりに答えを探して居たのだろう ]
クルトー
暖かい場所に?
...寒さのせいって事?
ロボ
ああ。
元々暖かい場所に居たんだろう?クルトーの一族は。
ならば一回寒くない場所で過ごして見るのはどうだ?
[ 人差し指を立て、くるくると円を描かせる ]
マスター
気候の可能性は十分あり得ると思いますよ。
さすがに実証してないですから確実とは言えませんが。
ロボ
それでも駄目だったら…あれだ。
俺の様に妻を作るのもありかもしれんぞ?
[ 頬杖をつきながら、冗談ふかして告げる ]
クルトー
......寒さ、か。
[ 本能を覚醒させているときの事を思い出す ]
......そういえば、ああいう時はいつも寒かった気がする。
本当にそうなのかも...。
奥さんは......う〜ん、イベリアオオカミのフレンズがいるなら考えるかも...?
マスター
寒さをどうにかすればいいのなら……。
なんなら暫くこのカフェにいますか?
ここには強い子達も多いですし。何よりロボさんが協力してくれると言ったんです。
何かあったら守ってもらえますし。
[ 二人の会話にクスッと笑って ]
ロボ
俺も近くにいる時は、何かしらフォローはしてやれると考えている。
遠い場所に行かなくてはならなくなった時は難しいが……
…ただ、出来るだけ顔は見せに行く。
[ ごきゅ、ごきゅ ]
…んっ。
…可能ならブランカも連れて行こうか。
念の為に夫としての付き合い方をなんとなくでもイメージ出来た方がいいだろう、クルトー。
クルトー
......ふふっ。そうかもね...。
[ 露骨な嫁自慢に少し笑ってしまう ]
ファミリアリスにしばらくいるのは...マスターさんが良いなら、試してみたい。
こんなに大所帯だけど...
[ 後ろのオオカミたちを見ながら ]
ロボ
確かに何十匹も居るしな…
お前はどうだ、マスター。
マスター
裏にはドッグランもありますし、この子達も大丈夫だと思いますよ。
[ カウンターから出ると、少し離れたオオカミ達に近づいて ]
もちろん大歓迎です♪
[ 小さな一匹を抱きかかえて、笑顔で答える ]
ロボ
( 幸せそうな顔だな )
[ 心底から嬉しそうな気持ちを感じ取ったのか、思わず笑いが溢れる ]
けものに囲まれるのは好きか。マスター?
マスター
ふふっ、嫌いに見えますか♪
[ 顔をもふっとオオカミに埋めて。オオカミはなんとも言えない表情をしている ]
ロボ
くははっ…
心の底から幸せそうだと感じたからだ。
また随分と濃ゆいヒトなのだな。
改めて実感したよ、お前のけものに対する熱意を。
[ 飲みかけのカップを小さく揺らす ]
ロボ
ヒトの営みより、けものの群れの1人として暮らす方が幸せと見える。
[ 少し笑いながら言ったが、本気の嫌味ではない。感じたことを率直に伝えたまでだ ]
マスター
どうなんでしょうね……。確かに私も人よりは付き合いやすいと思いますが……。
[ 顔をロボに向けると微笑みを浮かべ ]
というわけでクルトーさん? 暫くよろしくお願いしますね?
[ オオカミを下ろすと、クルトーに近寄って視線を合わせ ]
ロボ
[ クルトーに向けてサムズアップを返す ]
クルトー
うん......よろしく...!
[ 優しく微笑んだ。その顔に、さっきのような暗さはない ]
マスター
[ 微笑み合う二人。そっとクルトーの頭を撫でる ]
[ 静かになった部屋の中に響く楽しそうな声。いつしか夜も更けていく ]
[ オオカミ達は一部はマスターの部屋に、一部は下の店で寝ることになった。用意もできなかったため、クルトーはマスターと相部屋だ ]
[ 次の日、ここの妖狐が驚愕の表情とともに、マスターのお人好しに抗議したのは……言うまでもないだろう ]
[ これ以降、様子を見にロボも訪れることになったと言う ]
[ さらに賑やかになったファミリアリスだった…… ]
fin.
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