証言記録5

ページ名:証言記録5

ローレライ

 

駆除日時: 2047年8月10日   ホクリクエリアにて駆除。

 

インタビュー対象: 玉井ミナミ パークガイド(当時)

インタビュー場所: ██県所在の動物園跡地

インタビュー日時207█年8月██日

 

 

 

 

先月に比べて更に光が強くなり、じりじりと暑くなった夏休み真っ盛りの今日は、ある場所に来ていた。人気の無い自然のみの場所…いまや、そうなった動物園の廃墟に足を運んでいる。至る所に草が生い茂っているが、それでも周りの檻や建物はまだ形を保っている。

だが、今日この廃墟に来たのは、懐かしきジャパリパークに想いを馳せるためだけでは無い。ある女性から呼び出されて居たからだ。

 

 

…こんにちは。久しぶりだね、貴方と会うのも。

 

 

予定の時間通りに、呼び出してきた女性がどこからとも無く姿を現して来る。服は使い古されたパークガイドの服で、無情にも帽子の羽が欠けている。顔には目の隈が出来ていて、その顔からは元気も覇気も感じられるはずも無く、最早服を着た抜け殻といった有様だった。

見るからにネガティブな感情に満ち溢れているこの女性、玉井ミナミは一体何を思って、この廃墟に呼びつけたのだろうか。

 

パークも無くなった、いずれこの廃墟のようになる運命だったんだ。  わたしは、その中で出来るだけ楽しいひと時に浸りたかった。

あなたも分かるでしょ、あのパークには、腐りきった現実世界において、一際強い輝きを放っていたことが。

ウソだらけ、ホントだらけ。

良い人悪い人。

さりとて変わらぬ結末を背負った人間に背負われても、あの場所は真心でいっぱいだったんだ。

結局、変わらない、変われない世界はそれを手放すことになったけど。…良い迷惑。

 

淀んだ声はただひたすらに説教の様な言葉を吐き連ねる。やはりこうなったと。だがその中には自らも解決に向けて努力したような意志は感じられない。今回もこうなった、最初から分かっていたと言いたげな、諦観と形容すべき感情が伝わってくる。

 

…何言ってんだこの女、みたいな顔してる。…良いんだよ、人間はそんなもんですから。あなたもこの私も。 でもあの子たちは違う。何処までも純真な、何処までも信じられる存在。文字通り私たちの"フレンズ"だった。  時に遊んで時に笑って、時に一緒に戦って…。本当にかけがえのない友達なの。

私にとっては、唯一心から話すことができる存在。

そんな、そんな子たちとはもう会えない。 楽しく遊ぶことも、もう出来ないんだ。

 

顔も、悲しいというよりは気力がないといった表情をしていた。目には光が無く、何処を見ているのかさえ読み取れない。使い古されたぼろぼろのパークガイドの制服を未だに来ていることもあって、側から見れば危ない人間としか感じようが無いだろう。

 

 

…そんな前置きを聞いてもらっておいて悪いけど、今度は思い出話に付き合って欲しいな。

そう、私が友達と一緒に化け物をやっつけた話を。

あなたは色んな人からパークの話を聞いて回ってるって耳にしたから。

 

 

誰もがこの怪しい雰囲気の人間から話を聞きたがりはしないだろう。だが、こちらの答えは決まっていた。  ただ一つ…肯定の答えを彼女に返す。 きっと、僕自身としても耳を傾け、直面すべき事実がそこにあると感じたからだ。 そうだ、こんな身なりだが、こんな身なりだからこそ、彼女はパークガイドだったと分かる。 例の異変にも最前線で立ち向かった、数少ない人物だ。  そのガイドから話を聞いて欲しいと持ちかけて来たのだ、断る理由などあるはずが無い。

 

 

ありがと。

じゃあ、長々とお話しさせてもらうね。

…知っているとは思うけど、パークにセルリアンが現れたのは、実の所あれが初めてという訳じゃないの。もっと前にも奴らは現れていた。  最初に現れたのがいつだったかはもう覚えてない。でもすんごい大騒ぎになって、対処が済むまではパークは開けないってなったの。それを決定づけたのは、やっぱり"女王"(注1)が現れたあの時。  ある日突然女王がパークセントラルを襲撃して、あの場所の輝きを根こそぎ奪っていった。 あの場でフレンズの避難を指示していたカコ博士もセルリアンの群れに襲われて、…沢山の輝きを奪われた状態で見つかったんだ。  カコ博士の"輝き"がどんだけ凄いものだったか分かるよね。 なにせ擬似的にだけど絶滅した動物の再生、架空の生き物の具現化を成功させたんだ。命の星…サンドスターを一番正しく使った、偉大な博士だよ(注2)。

 

話が逸れたけど、パークセントラルはすでにその輝きを奪った女王、そしてそれを守るセルリアンの群れによって制圧されている。開園の為にパークの各地に点在するセルリアンを調査、最終的にパークセントラルを奪還せよ…ってのが当時の私達パークガイド──あの時はパーク広域調査隊って呼ばれてた──に課せられていた役目だった。

色々と無茶な役目だなと、怠くなるような役目を認識するたびに溜息をついてたのを覚えてるよ。あんなテカテカしたよく分かんない生き物とどう戦うのって、あの仕事やるまでは考えてたんだ…。

でもね、ぶっちゃけると楽しかった。 だって人とあんまり付き合わずに、フレンズと付き合えるんだから。正直、たくさんの来園者が来てた頃より楽しかったなって思う。あの数年間は、私の中で一番良い時間だったんだ。フレンズと近くで一日中触れ合えて、たまにセルリアンをやっつけて…たとえそれが、水泡に帰すような無駄なものだったとしても。 私の中ではいっぱい大好きな時間なんだ。

そりゃ当然、苦労した時期もあったよ、でもヒトと付き合う事を考えなくても良いって、ホント最高なんだよ。私にとってはね。 …一番印象に残ってんのは、大型セルリアンをやっつけた時だったかな。

あの時の私たちはホクリクを担当してたんだ…そうそう、自衛隊基地(注3)とか、リバーパークシンノウ(注4)とか、そういうとこがあった場所でセルリアンの調査、必要ならばぶっ潰せって仕事をしてたんだ。そうすれば場所、フレンズから奪った輝きを女王に捧げられる事態が防げる、それどころか輝きを取り戻せる場合だってある…そんな訳で、見つけたらとりあえず片っ端から殲滅してくのが定石になっていた。

今まで色んな奴を倒したなあ、蛇と人魚を混ぜたようなセルリアン、粉と臭い汁をかけてくるだけのセルリアン、蜘蛛みたいなセルリアン…ホクリクにもそりゃわんさかいたんだ、だから意外とセルリアンは結構見て来たんだ。流石にミライ先輩ほどじゃないけどね。

 

そんなある日、落ち込んだ様子の鳥のフレンズを見つけて、私と仲間のフレンズはその子から話を聞き出したんだ。 どうも前に大きな魚のセルリアンに「歌」の輝きを奪われて歌えなくなっちゃったんだって。 すごく困ってるみたいだったから、私たちはその魚のセルリアンを探すことにしたって訳。  鳥の子から聞いた話だとそのセルリアンは海にいるって聞いたから海でも泳げるフレンズ、空から海上を見て探せるフレンズ。そんな人材が求められた。海は陸とは違う、しっかり準備しないと痛い目みるから…でも、その辺のフレンズを見つけ出すのは割と難しかったんだ、特に海を泳ぐフレンズって、あの時そんなに確認されていた訳じゃなかったから…最終的に見つけ出せたのはイロワケイルカのフレンズだった。 今でこそ数が少ないかもって思うけど…あの時は、あれが海に精通した一番の腕っこき。活発で元気溢れるイロワケイルカ。 海の中という第2の宇宙に挑むにはこれ以上ないメンバーが入ってきた。心強い仲間が1人も出来た、恐れる事はない。

過信だとか、慢心とかじゃない。あとはやりきってしまうだけだと思ってたからね。

そして海鳥のフレンズも5人が協力してくれる事になって…さあ探すぞ、大きな魚のセルリアンの調査が始まったの。

あの時はホクリクに行く際、用意してもらった小型船舶を目撃があった海域まで飛ばして、早速泳いで調査する事にしたんだ。

まず居るのかどうかの裏付けを取らないことには始まらないし、自分もその実態をその目で確認する必要がある!って思ったから。…今思うと素人丸出しの考えなんだけどね。  …きっと、流出した記録でその時のことはしってるでしょ?  2047年7月29日の事なんだよ。

イロワケちゃんに助けられてなんとかあの場はしのげたけどね。…でも海に沈んで、私は奴の姿をはっきりと眼に焼き付けた。  あれは、魚っていうよりは…むしろ"魚竜"だった。そうとしか見えなかった。全長は15mくらいだったかな、四枚のヒレがあって、小さい背ビレまであって、見た目はほとんどショニサウルス(注5)だったけど色が黒かった。艶と、よく分からない虹色に光る模様が身体の所々で見られた。身体の上半分のスペースには青く光る目玉模様まであるような、おかしな魚竜。一眼でそいつはセルリアンと分かるような見た目をしてるんだ、そいつは。

間違いない、こいつこそがあの子を襲った犯人だ。かなり無茶をしたけど、無駄に終わりこそしなかったんだ。

 

それからは海の近くに住むフレンズに、改めて片っ端から聞き込みする事から物事が進んでいったのね、最初の手がかりは聞いての通り。でもそれを確定させるには海をいつも見てる子達から聞いた方が早いと思って。

手分けして情報を集めた結果、「ホクリクの海に少し前から存在は確認されていた」事と、「歌の輝きを奪ってからは歌い出した」こと、「歌に引き寄せられたフレンズが襲われてる」ってことが改めて分かった。

音声記録も含め目的のセルリアンの情報を纏め、「古代の魚竜の姿を模した大型セルリアンが歌を奪った」と推定して、一応本部に報告したんだ、連絡は大事だしね。それに、駆除するなら必要な物資も融通して欲しかったし。

そして、本部からの返事はその日の夜に来た。まあ当時のパークの状況を考えたらかなり早い対応だったんじゃない?

 

 

「当該エリアで確認された大型セルリアン "ローレライ"の駆除を要請します」

 

木を鼻でくくったような事務的な答えが返って来たよ。でも何にも返事がないよりは大分大分マシだ。 その指示を受けてまた小型のボートを用意してもらった。…それでどうしたかって?その時は私もあんまり頭が良くなくてさ、取り敢えず挑んでみようってみんなを連れ出したのね。私が囮になって、ローレライを逆に炙り出してやろうって。水上まで連れ込んで水揚げしたところをタコ殴りにしてやればいい。なんて考えて再びローレライを見つけた海域に向かった。  2047年7月30日のことだったかな。

当初はミライ先輩と…トワさんがかなり活躍していたから、まあ何というか同じように出来るって思ったんだろうね。私は歌が聞こえた地点までフレンズを連れて急行してた。この日は波が少し荒れていて、間違えて海に叩きおとされようものなら大変なことになる。そんな事を波の音や強い風、揺れる船が何回にも渡って執拗に警告を発している。 恐怖を煽られはしたけど、素直に逃げ出したいと思うほど私の頭は賢しくなかったから突き進んじゃったけどね。

歌が早速聞こえた。相変わらず歌詞はわからない。  すぐにもダイビングスーツに着替えて万が一に備えた。後列のフレンズたちも歌を聞いて俄かに色めき立っているのが見えた。  舵を握る手に汗がこもり出した時に、奴が現れた。

すぐ真横を奴の嘴が霞めるようにして現れ、影がイロワケちゃんに向かって突撃していく。やばいやばい!早速囮としては無視されてるじゃないか。どうにかして気を引かないと!

そんな一心で、気づいたら握っていた信号弾をローレライに向けて打ち込んでいた。光る玉があいつの目玉に向かって飛んでいくのが見えたよ。当たった。当たりはした。でもローレライは直ぐに水の中に潜り、爆発で目が潰れるのを回避したんだ。なんて頭の回る奴なんだと思わされた。奴には間違いなく知性がある。けれどもそれだけでは、私達が驚くには早すぎたんだ。次に奴は何をしたと思う?

 

あのおおきいサカナは海の中からジャンプしてきたんだ。

しかもちょっとやそっとのジャンプじゃない。詳しい高さはわからないけど、海面からかなり離れた距離に奴の身体が飛んでいて…飛んで居た海鳥の子達に嘴が当たりそうな、本当にサメやイルカがやったみたいな高さで、頭上を通り過ぎていった。後ろから聞こえてきた大きな物が海に着水する音と悲鳴が背中を逆撫でして、凍らせて行く。どうやらとことんまでフレンズにしか興味がないらしい。

海鳥たちが懸命に奴の背ビレに攻撃を加えているのを見て無力感が襲ってくる中、いったいどうすればアイツの気を引くことが出来るのか。私はそればかり考えていた時にある考えに至った。

さっきのジャンプ、奴が長い間水から離れるその時に目玉を狙う事が出来たなら?…いいや、もしかしたらジャンプした時くらいしか、目玉を攻撃出来ないかもしれない、って。

中々良い考えが浮かんだ時、ボートの横をイロワケちゃんが元気よく飛び跳ね、こっちに向かって声をかけてきた。

 

「ミナミさんー!大丈夫ー!?」

 

大丈夫と答えられそうにない状況だったけど、声を聞いただけで不思議と心に冷静さが戻ってきた。

ぴょんぴょんと水面を跳ねるように泳ぎながらこっちを見る彼女に親指を立てて、再び残っていた信号弾を握った。

 

「ローレライは今何処に居るの?」

 

水に潜って30秒後、直ぐに顔を出してきたイロワケちゃんは「すぐこっちに向かってきてる」と叫んできた。一瞬の賭けに、握る指に力が入る。

 

「そのまま右に泳いで躱して!今度こそは一太刀を浴びせるから!」

 

私の声を聞いたイロワケちゃんがそのまま右に向かってジャンプした瞬間、ローレライがその巨体を海面から跳躍させてきた。轟音、雨のような水しぶき、それらが降りかかる。それに対して私が出した答えは、引き金を引くことだった。

 

「あたれっ!」

 

小気味の良い音を立ててそれはローレライの目玉に再び着弾した。"しめた"とわたしの声が出たのが聞こえた。

 

ゆっくりと海に向かい、巨体が水面に戻る前に…それは爆発した。重々しく響くような叫び声が上から聞こえた。ゆったりと着水しようとしていた身体が揺れ、ローレライは海へ落ちていった。

海面が畝りボートが飛び上がって、舵を握り踏ん張った…怖かったよ。でも、攻撃が通用したとき、それと同じように気持ちが上がったんだ。

 

「やった、やった!」

 

思わず喜びの声が私の口から飛び出してきた。兎にも角にも後は逃げてしまうだけだ!

そう思って回れ右して帰ろうとしたとき、また大きな衝撃と浮遊感が襲った。

その勢いで運悪く頭の後ろをぶつけちゃって、そっからは……覚えてないよ。

 

意識が戻る頃には、浜辺で介抱されてて、まず夕方になっていたこととイロワケちゃんを含めた皆が無事だった事が順番に、朧げだけどアタマが理解していった。 

私がローレライのことを尋ねると、…やっぱりというか、まだ生きてた事を教えてくれた。大型のセルリアンだもの、そう簡単にうまくいくなんて誰が思う?それでもあの時の私は、非常にやりきった気持ちで溢れていた。やればなんとかなっちゃうんだって。  そこが変わらない人間社会との違いで、すごい病みつきになっちゃった。私はあの危機にあって、危険が沢山ある"自然"に巻き込まれたのに、胸がスッとする感覚を覚えてしまっていたんだ。

 

やっぱり、私はここがいい。

信じられる仲間たちと、度胸を見せれば何とかなる時がある場所。最高だ。信じられる仲間も居なきゃ、度胸見せてもダメな時はダメな場所。どっちがいいかなんて決まりきってる。なんて思ってたよ。

…まあ、アズマお姉ちゃんが凄い必死に説得してきたからイヤなんて言えなくてさ。

 

 

…それで、ローレライを倒すために色々準備が必要だった。新しいボートとか、討伐班の増員、ガスボンベとか信号弾の準備。後は私の治療で、もう一度討伐作戦を行う為の準備に11日くらい掛かっちゃって、結局は2047/08/10日まで大きな行動には出れなかった。その間もローレライは、ずっと歌を歌い続けてたんだってさ。不思議な話だよね。…もしかしたら、歌うのが楽しかったのかもね。

…結果は、流出した報告書で知ってるとは思うけどさあ、聞きたい?どうやって倒したのか。聞きたいなら手短に話すよ?

 

是非お願いします、結末も、貴女の口から語って欲しいんです。

 

ハイハイ。…それで、どうやってホクリクの海を牛耳っていた魚竜をやっつけたかって?

簡単な話、私が命をかけて無茶したからだよ。

さっき二回目にローレライと出会った時に、信号弾を目にぶち当てたのは覚えてるよね?あいつ、11日も経ってたのにまだ私のことを覚えてたんだ、自分の目潰した外敵だって。 結果的に囮として働けたのは良かったけど、かなり執拗に追いかけてくるから中々皆が攻撃を加えられなくてさ。そこで私は、貧乏クジを千切って強奪する事にしたんだ。

 

 

 

あはは、そんな感じだよ。  ただ難しかったのがガスボンベで大きなダメージをどう与えるか…そこが問題だった。

…無茶ってのは必ずしも特攻隊紛いのことをするとは限らないんだ。私がやったのはもっと先をいった、自ら物になりに行くような行為。

 

作戦開始から何時間たったんだろうか。ボートの燃料も残り少ない。そう長くは作動してはくれないだろう。周りには海中から放たれたブレスがでかい水柱を作っている。ただそれでもローレライにいっぱつ食べさせるためにはタイミングが必要だった。多分向こうも躱し続ける外敵に痺れを切らしたんでしょう。とうとう正面から、大きな口を開いて向かってきた。

 

私は咄嗟に速度を"上げて"、ライターで持ってきた爆竹に火を付けてガスボンベの近くに放り投げ、そのままボートから海に飛び降りた。  海に飛び込む瞬間、奴が口を閉じるのを間に合わずにボートを丸呑みしたのが見えた。私はただ祈った。…お寺なんて、何年も行って居なかったのに。

 

 

 

次の瞬間、ローレライから大きな爆発音、衝撃が発せられた。海の中で吹っ飛ばされながらも私は響くような悲鳴を聞き逃すことはなかった。命をかけた行為がまた実を結んだんだ、心の中じゃ凄い爽快感が私を支配してたよ!やっぱり薬は注射より飲むのに限るんだよ。

 

体内でガスボンベ3本の同時爆発を食らったローレライは、海面でひっくり返って暴れて居た。まだ生きているのが凄い驚きだったんだけど、ボートの燃料にも引火したりで体内も焼き切られて居たはずだから、相当にダメージは負っていたはず。後はフレンズの皆にトドメを任せてもらった。大ダメージを負った今なら倒せるって。

最後はイロワケちゃんが、ボロボロになったローレライの身体を尾ビレでぶん殴って終了、って感じなんだ。結局は人間だけじゃ倒せなかったけど、フレンズが居たから倒せた奴なんだよ。

でもあの後、イロワケちゃんと私はローレライをやっつけた!って駆け寄ってきたフレンズの皆にもみくちゃにされちゃってさ。

今まで色んな子から純粋に褒められた事なんか無かったから、凄く嬉しくて。

あれが、今までの人生でいっちばん嬉しかったことかな。

 

 

(そこまで語った玉井ミナミの目は、いつの間にやら光を取り戻しているように見えたが、実際は涙が光をうっすらと反射して居たようだ)

 

 

やっぱり、ずっとあそこに居たかった。…でもあそこには、ヒトはいちゃいけないのかもしれない。私だって例外じゃない。

だってあそこは、もう新しい時代が、新しい世界が始まっているんだから。完成に独立した歴史が、始まっているんだから。

私たちの路に沿わない未来が、あの場所にはあるんだ。

 

退廃した。なんてのはヒトの言い様に過ぎないって私は思ってる。

お偉いさん、それに従う人々たちが挑んだ乾坤一擲の勝負。一度きりの賭場。相手は幾千幾万の理不尽な敵。

それに敗れ、無駄に被害を広げ、被った"ヒーローたち"。  でも、あの島にはまだフレンズが生きている。 あの敗北の後もヒトの手を離れて、ヒトの遺したものと一緒に好き勝手に自由に暮らしている。まるで野生動物みたいに。

 

 

良いんじゃないかな、それで。

本当なら手付かずのままに生きていくべきだった自然、命。  それがヒトの都合に縛られるっていうのは、やっぱり悲劇と呼ぶべきじゃないかな。

今、私達が立って居る廃墟の様な運命を辿りはしたけど…あの島は廃墟になってなんか居ない。あるべき本来の姿に戻っただけなんだ。

 

 

あそこを退廃した、危険だ、手に負えない…そう形容するヒトだけが、あの場所に戻れずにいるんだよ。

 

 

 


追記1: CEL-1-409/OC、通称"ローレライ"はショニサウルスの姿を模した第1世代の大型セルリアンである。報告書の記述では駆除されたことだけが分かって居たが、今回のインタビューで駆除時の明確な背景が明らかになった。歌を歌うといった能力を持つが、これに関しての特殊な効果はなく、戦闘時も肉弾戦が主な戦法だったようだ。

 

 

注1: このセルリアンに関する情報は未だに見つかっておらず、文書も公表されていない為詳細な通称、性質、番号などは不明だが、一時パークを休園状態に陥らせた個体が"セルリアンの女王"と呼称されている様だ。 余談だが玉井氏によると外見は後述のカコ博士と似ているらしい。

 

注2: カコ博士はジャパリパーク動物研究所の副所長に所属している研究員の1人でサンドスターやアニマルガールに関する研究に於いて多大なる功績を残してきた。その輝かしい経歴には必然的に苦難も絶えなかったが、詳細は割愛する。

 

注3: 航空自衛隊ホクリク基地(JASDF Hokuriku Airbase)の事。基地司令直轄部隊として「ホクリク航空安全隊」が配置され、ホクリク基地周辺を飛ぶ動物やアニマルガールへの航空機との衝突予防注意喚起や、広報活動を主な任務としていた。

 

注4: リバーパーク・シンノウ(river park shinnou)とはホクリクエリアの施設で、三角州エリアや氾濫域エリアなどといった川の環境が再現されたエリアが並ぶ施設。川というものを取り扱っているゆえか、パークの施設の中でもかなりの面積を誇る。

 

注5: ショニサウルス(Shonisaurus 「ショショーニ山脈のトカゲ」の意)は三畳紀後期に生息していた水棲爬虫類である。ローレライと同じく15mの全長を有していたが、派手派手しい体色であったかと言われるとイエスと言い難い。


tale クライシス・オブ・ジャパリパーク 負の遺産

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