Aと (博)

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ティラノ「……皆さん、博士のラボにお集まりいただきありがとうございます」

峰岸「この真夜中の招集には意味があります。事は皆様が思うよりも『深刻』です」

たにし「……ただらならぬ事態なのだろうな、剣呑としているぞ」

クマムシ「フン、何が起ころうとも我らには神がおわすのだ。何も心配することなど無い」

プラナリア「あははー!そうですねぇ。でもちゃんと予測は立てておくのですよ、準備して覚悟をもつのです」

田沼「この集められた面子を見れば……大抵予測なんてできそうだけれどね」

筋肉仮面「不具合の中でも、ことより関係性の濃い者が集められているな」

K歌手「あぁ?不具合だじゃねぇ、宿泊中の私らも呼び出してんだ、誰が絡みかは一発だろうが」

K学生「だねぇ、賭ける事もないじゃん?共通項は一つしか無いし、ねぇ?御惨家さん?」

道明寺リカ「…………強行手段に出たのだろう、あのどうしようもない者が」

ティラノ「こんな真夜中にお呼び出ししたのは他でもありません、K博士の事です」

峰岸「ここには関係者のみ集められています。他の不具合の皆様は別室別の場所で無線にて音声を拝聴しています」

K歌手「なぁそれは、ウチの愚妹が今日一向に私らの前に現れない事と関係してんだろ?」

峰岸「はい。……ご家族の方には本来ならば周知するはずのない情報ですが……あなた方姉妹なら問題ないと判断しました」

ティラノ「つまりは最後の一線を超えないだろうという予測です。貴女方は聡い、ならばその有用さにも一定の価値が生じます」

K学生「……利用って、いいねぇ。きな臭くなってきたじゃん」

田沼「私は嫌な予感しかしなけどね」

ティラノ「事は一刻を争います。イノベーションを高めている暇もありません」

峰岸「十分前、私とティラノサウルスのPCに『殺害予告』が送りつけられました、今日お呼びした貴方方の名前を指名して」

筋肉仮面「……あまり、穏やかではないな」

クマムシ「穏やかでないだと?我らが聖体を破壊せんとする背徳者が出現したのだぞ」

ティラノ「だからこそ。冷静にそして最短で計画を実行する必要があるのです」

峰岸「現状を説明しましょう。本日未明、K博士が何者かに拉致監禁されました」

たにし「…………。監禁とは、何故そこまで推察が可能なのだ?」

峰岸「冷静な対応感謝致します。なぜなら、その殺害予告に監禁されたK博士の映像が付随してあったからです、今現在は無事のようでした」

ティラノ「不具合の管轄している施設の監視カメラのデータには、博士の拉致は確認されておりません。パーク内であればどこかに博士の姿を確認する事は出来るでしょうが……」

プラナリア「このパーク全土、いや一つのエリアでも膨大な監視体制がありますからね。探すのは骨でしょう」

峰岸「よって私とティラノサウルスで一つの仮設を立てました。K博士は乱暴に強制的に拉致されたのではなく、ある種の合意の元に行われたのではないのかと」

筋肉仮面「……むぅ、ならばパークを漁っても確たる証拠も出現しないか」

K学生「ねぇねぇ。パークの殺害予告っていつドカンするかってわかんないの?」

ティラノ「本日3時に殺害開始、とだけ」

峰岸「残り2時間です。警備機構への協力はそのまま『無差別殺害』だと脅迫文が添えられております」

道明寺「……すまぬ。我という王がいながら……このような失態を……!」

峰岸「いえ、貴女が例えどんな権力を持っていようとこの事態は避けられなかったでしょう」

ティラノ「これは……K博士の望みです。博士は殺害予告と釣り合うだけの何かを得に姿を消したのです。私にはそう思えます、確実な根拠はありませんが……」

筋肉仮面「いや、君の予測はおおよそ当たっているよ。無論私も根拠など無いが」

田沼「それで?他に手がかりは?感傷に浸るのは死んでからでも出来るんだけど?さっさとしようよ時間が無いんだよ」

峰岸「K博士のPCには、たったひとつのテキストファイルがあり、そこには……『後は任せた』という一文のみ残されていました」

ティラノ「ならば私は、私達は、博士の残したミッションを遂行するまででしょう」

峰岸「ヒントは数える程もありません、残り時間は2時間、これから訪れる明確な殺意の前に私たちは対抗しなければなりません」

ティラノ「故に博士には。博士の事を任せましょう、私達は私達の出来ることを成しましょう」


ティラノ「――――5分でディスカッションを終了させます。脳細胞を酷使ししてください、死ぬよりマシです」

 

 

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――――東京都、とある施設

 

K博士「おや、これは随分な待遇だね。この世紀の天才に対してさ」

K博士「それで……こんな天才の時間をこうして使わせてまさか無報酬って事はないだろう?」

K博士「こんな上も下も真っ白な部屋に閉じ込めておいてさ」

K博士「ねぇ?魅来(みくる)くん」

魅来『無駄話はするつもりは無いわ、K博士。貴方は私の指示に従えばいい』

K博士「やあやあスピーカー越しからこんにちわ!御惨家が一家としてこんなスマートじゃない強行手段……実に魅来らしい、あははは!」

魅来『貴女が産まれた家をそう笑ってどうするの』

K博士「おいおい、私がいつ魅来に帰化したと?私の名字は、父が母の家に婿入りした時から変わりない」

魅来『……家長は、貴女という才能を欲しているわ。家に戻ってきなさい』

K博士「君も災難だ、あんな死にかけの家の犬だなんて。君にも君の人生があったろうに!それに、戻れっていうけど私の家はいついかなるときも私が決める」

魅来『民川はなびはどうなってもいいの?彼女を治療する算段はもう整っているのよ』

K博士「はっはー!その言葉がなければこうして私はのうのうと拉致られなかっただろうね」

魅来『私が送ったビデオを見たでしょう?彼女は遂に意識を取り戻したのよ』

K博士「いいや、それは違う。君たちが起こしたんじゃない。彼女が自力で起きたんだ」

魅来『どっちも同じよ』

K博士「いいや?天と地程に違うさ、凡才には見えぬ思考の線があるのだよ。故に君の提案なんかのるもんか」

魅来『価値の無い天才に意味は無いわ。今この部屋における立場は私のが上よ』

K博士「へぇ、言うねぇ。では述べてみたまえ、君の希望を改めて」

魅来『K博士。魅来家に戻りなさい、帰化しなさい。そして民川はなびと共に魅来家に貢献しなさい』

K博士「もし断ったら?」

魅来『貴方の大事な者を民川はなびを含めた命を屠る』

K博士「やーい犯罪者!」

魅来『その為の私よ。犯罪者になる代わりに貴方は全てを失うの』

K博士「ふーん?でもつまり私は死なないって事だろう?」

魅来『貴女が死ななくても、大切な人が』

K博士「見くびるなよ、私が本気を出せば死人の一人や二人天国から連れ戻せるんだ」

魅来『戯言を』

K博士「君は私や民川はなびに代わる代替案だろう?養子だろう?そこまでして家に尽くしたいかい?」

魅来『私はそうあれと言われた、だからそうしたまでよ』

K博士「道明寺の子はもうちょっと歯切れよく自分の言葉で言っていたよ、魅来くん」

魅来『反抗的な態度ね、民川はなびはこっちで監禁しているしパークの仲間の命も私の手の中よ。そしてここはパーク外、フレンズの協力も望めない』

K博士「だから?」

魅来『その強がりもいつまで持つかしら、私の号令一つで全てが台無しになるの』

K博士「へぇ、それは怖いねぇ。確かあの殺害予告まで残り2時間かい?ならその間に適当に脱出してみせるさ」

魅来『ふふ……ふふふ……』

K博士「うん?」

魅来『素直ね、とっても素直。まるで子供だわK博士、もしかして本当にその時間を信じているの?』

K博士「……なんだと?」

魅来『二時間も与えるワケないじゃない、処刑執行まであと『5分』よ』

K博士「……!!」

魅来『あははははは! そう、驚くのね!あの天才でさえそう目を剥いて、実に滑稽だわ!』

魅来『タイムリミットはもう無いのよ、そして……最後の質問(チャンス)もない』


魅来『提案が不成立なら、博士もろとも皆殺しと命が出ているわ』


K博士「…………」

魅来『貴女のそのいつもの無邪気さが、大人になりきれない子供が。みんなを滅ぼすのよ、後悔の底で知りなさい』

K博士「…………あと3分あるかな?」

魅来『いいえ、その時間は前倒しよ』


魅来『音声通過、広域。――――作戦執行』

 

 

 

最終話

https://wiki3.jp/japari-group/page/732


Tale

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