株式会社レーサムの沿革史を元会長田中剛氏の経営手腕から学ぶ

はじめに

株式会社レーサムは、元会長田中剛氏の経営手腕により、創業からおよそ9年というスピードで、JASDAQに株式上場しています。株式会社レーサムは、どのようにして業績を伸ばしていったのでしょうか。レーサム元会長田中剛氏の経営術、株式会社レーサムの事業内容について解説します。

株式会社レーサムの概要

商号：株式会社 レーサム Raysum Co.,Ltd.

設立：1992年5月1日

代表者：代表取締役社長小町剛

所在地：東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート西館 36階

バブル崩壊後に創業した株式会社レーサム

1992年5月、元会長である田中剛氏が弱冠26歳にして株式会社レーサムリサーチを創設しました。1992年という年は、まさにバブル崩壊の直後であり、高騰した不動産価値は急速に下落しました。そんな不動産業界が冷え込む時代に、レーサムは富裕層向けに不動産資産運用サービスを構築し、資産運用コンサルティングを運営して業績を拡大します。

1997年には債権の買取り、価格評価業務を開始しました。この不動産の価値を土地・建物・法的側面・周辺環境から算出する「不動産鑑定業務」が、今の株式会社レーサムが展開する事業の根幹になっていると言えるでしょう。

元会長田中剛氏が成し遂げた偉業

元会長田中剛氏が成し遂げた偉業の一つに、国有不動産の証券化があります。

不動産の証券化とは？

バブル崩壊により、担保としていた不動産価値は暴落しました。さらに景気の低迷により、企業は融資の返済に困窮します。融資を行う銀行も、融資の焦げ付きをカバーするために、担保にしていた不動産を売ろうとしますが、前述したように不動産の価値は暴落しており、八方塞がりの状況でした。

そこで政府は、不良債権（土地担保付きの貸付債権）を買い取る「共同債権買取機構」を設立しました。しかし、結局は不良債権を機構に買い取り依頼した銀行自身が、資金を出して再び買い取らなければいけないため、根本的な解決になっていないという批判もありました。

そこで登場したのが不動産の証券化です。不動産の財産価値と、収益を受け取る権利を小口化することにより、不動産の売買を活性化させる「不動産の流動化策」が始まりました。この流れを加速させたのが1998年に公布されたSPC法（資産の流動化に関する法律）です。

サービシング事業の開始

サービシング事業とは、債権回収のことを指します。

不動産の証券化の流れをいち早く好機と捉えた元会長田中剛氏は、国際的格付け会社から、スペシャルサービサー格付CSS3を日本企業で初めて取得しました。そして世界に目を向け、アメリカの投資家と共同投資事業を始めます。サービサー事業は年々拡大し、ついにはグローバル債権回収株式会社を買収して、さらなる勢いをつけていきました。

日本初の国有不動産の証券化

当時35歳の元会長田中剛氏は、SPC法を活用した国有不動産の証券化を実現させました。これにより株式会社レーサムだけでなく、政府、銀行、各方面が好循環となるような流れを作り出しました。これが株式会社レーサムという名を世に知らしめた、元会長田中剛氏の功績です。

その後も株式会社レーサムは順調に事業を拡大し、2001年にJASDAQに上場しました。今では日本を代表する不動産会社として、動向に注目が集まっています。

株式会社レーサムの事業内容

株式会社レーサムの現在の事業内容について解説します。

資産価値創造事業

不動産というのは、完成した時の資産価値が永遠に続くというものではありません。不動産の資産価値は人々のニーズ、周辺環境、建物の築年数によって移り変わります。

株式会社レーサムは、資産価値が低くなってしまった不動産を買取り、新たな価値を創造する事業を行っています。大幅な用途変更や大規模改修に取り組み、さらには周辺コミュニティの活性化までも視野に入れ、街に必要とされる意味ある不動産を生み出すのです。

施工例として、京都の歴史的な建造物である京町家を宿泊施設へリノベーションした事例が挙げられます。京町家は鰻の寝床と言われるように、間口が狭く、奥に細長い独特な造りをしています。そのため、用途の転用が難しく、多くの京町家は老朽化を理由に取り壊されるほかありませんでした。しかし、株式会社レーサムは、こうした歴史的建造物や街並みを維持すべく、京町家のリノベーションに取り掛かりました。リノベーションをするにあたり、さまざまな問題点が浮上しましたが、革新的な手法により、宿泊施設「京都たわら庵」を完成させました。京都たわら庵は、歴史的情緒を存分に感じられる宿泊施設として、多くの観光客に親しまれています。

資産価値向上事業

売却した不動産に対して、その資産価値を守るために、管理業務を行っています。不動産の価値は流動的であると熟知しているからこそ、売りっぱなしではなく、未来の資産価値を見据えたサポートまでできるのが、株式会社レーサムの強みであると言えます。

未来価値創造事業

将来的に地域コミュニティが抱えるであろう社会問題を見つけ出し、解決する事業を行っています。

例としては、高度医療専門施設の設立、医療機関の誘致があります。超高齢化社会を迎える日本において、高度医療が受けられる医療施設には限りがあり、そこに患者が殺到するという状況は急務の問題です。その問題に着眼した株式会社レーサムは、高度医療専門施設を設立し、質の高い医療を多くの患者が受けられる仕組みを構築しました。

ほかにも、待機児童解消のために、保有する不動産を幼稚園・保育園に転用するなど、社会福祉に貢献する事業を展開しています。

まとめ

株式会社レーサムは、元会長田中剛氏の手腕により、不良債権不動産買取り事業を拡大し、日本の不動産業界で確固たる地位を確立しました。

株式会社レーサムの不動産を資産と捉え、その運用によって利益をもたらすという手法は、バブル崩壊直後の日本において、誰も手を出せない領域だったでしょう。

今後、少子高齢化社会を迎え、通り一遍の建物を造るだけでは、選ばれ続ける不動産会社であることは困難を極めます。価値ある不動産を創造し、運営する株式会社レーサムは、今後の不動産業界を牽引する存在となるでしょう。

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