初小川さんのうなぎ

ページ名:初小川さんのうなぎ
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浅草西部・南部下町案内

4.「初小川」さんのうなぎ

「ほていや中塚商店」さんを出て浅草通りを右手、駒形橋方向へちょっと歩くとすぐに駒形一丁目交差点。ここを左に入って辻二つ行くと右手ビルの間に二階家が一軒。長めの白い暖簾がかかっているのが“峠の我が家”。昼営業・夜営業とも、ほとんどいつも「本日満席です」と「SOLD OUT」の看板・貼紙が出ています。

暖簾の左手に味わいある浅草寺示現会のあんどん、戸口右手前に小さな水場のある坪庭。お店のお出迎えの心づくしが待ってます…。(あんどんの横に金魚鉢。金魚が一匹。何となく泳いでいるようですが…?)

ここがうなぎの「初小川」さん。浅草は歴史ある人気店がたくさんありますが、初小川さんほど満席が多い人気店は少ないでしょう。

「満席」「Sold Out~Thank You」のポスター
入口左の縁台には金魚鉢

店主は浅草で有名な美人おかみ、三代目ご当主の河合一恵さん。ご子息の一成(いっせい)さんと良(りょう)さんのご兄弟(二人ともイケメン!)が後継者として頑張っています。

こんもりとふっくら焼き上げたうなぎにピリッと辛めですっきりした味わいのたれ。皮が香ばしく、一口ほおばると舌から直接顎のあたりまで、うなぎ本体のうまみが一挙に広がります。う~ん、食べるのがもったいない!蒸して脂を落とし、それから丁寧に焼き上げる、食材に愛情を込めて仕上げる逸品です。肝吸いは大きい器にたっぷりと(肝吸いはいまだにたしか据え置きの五十円。ご店主の心意気。ただし、美味しくても、もう一杯のおかわりはご遠慮しましょう!)。このうなぎにこの肝吸い、それに絶対お薦めの肝焼き…。今日もごちそうさま。

特筆しなければならないのが初小川さんのご飯のおいしさ。お重でも蒲焼でも、ほんのり甘く香味が生き生き。お米の湯気が香り立って、口に含めばしっとり艶やかな米粒一つ一つの舌触りに箸が進みます。あんまりおいしいご飯なので、蒲焼ならお行儀は悪いけれど、ピリッとした蒲焼のたれを少しお皿に残しておいて、猫ご飯がしたくなります。

営業日ですが、基本的に不定休。三社祭や両国国技館の大相撲場所最中は特にに警戒警報。要注意です。必ず電話して、予約ができてからお邪魔しましょう!

なにしろ、全席でも12名だけ。それも2-6-4の三テーブルに別れているので大勢様はそれを承知で予約を柔軟にトライするのがお約束。もちろんこっちの都合を願ってみる事はできますが、忘れちゃならないのがお店の予定具合。よーく知らないと予約できるか心配です。幸運をお祈りします!ぶらりと行くとほとんど99%「本日満席です」「SOLD OUT」のあの看板にぶつかりますので予約をお忘れなく。

それともう一つ。ウナギが登場するまで30-40分は時間がかかることも覚えておきたいですね。それを意義深く過ごせる空間と静けさがあり、和やかさがあります。それなのに、待たされたと怒っては“場所違い”というもの。ゆっくり店内を見まわして、「う~ん浅草、初小川…」てな具合に余裕で天下一品のうなぎをご馳走になりましょう。

もちろん訳もなく時間をかけているのではありません。伺うところでは、厳選して用意されたその日のうなぎ一匹ずつ様子を見た上で、まず蒸して脂を適度に落とし、焼きに入っても何度も上下交互に火を当てて少しずつ適度な焼き加減に近づける。その過程は、美味しさをいただくこちらには想像もできない手の込みようなのでしょう。

ところが、お待たせ時間は、実感上、意外と短いのです。なぜかというと初小川さんには、これは、としばし時を忘れる驚きがいっぱいあるからです。

まず、静かな店内。入りばな右の小上がり二席、お店中央の囲炉裏席はぐるっと三方を囲む六席(右手のみ壁面)、奥に四席、全部合わせても十二席という心地よい“我が家感”。ゆっくりした気分で話しが出来ること請け合いです。囲炉裏カウンターは六席。冬場の囲炉裏は鉄瓶がちんちん🎶お燗もこちら。夏場は囲炉裏に木蓋が乗り、その中央には冬場竹ベンチにあった金魚鉢が囲炉裏中央に置かれて涼感たっぷりな存在感。金魚はもう起きているか確認してみることに…。)

二番目はもちろんおつまみ(アラカルト)の一流さ。味噌豆(納豆になる少し前といった趣ですが味噌味が微妙で豆もしんなり柔らかで嬉しい味わい)、いたわさなど、厳選された旨さが粒ぞろい。そして極め付きが“おつまみ以上の一品”。うなぎの肝焼きです。ぎっしり串に並んだ量感にまずびっくりですが、噛みごたえありつつ、柔らかなうなぎ肝の旨みに初小川さん得意のピリッとしたたれツユが光る絶品です(お店の中央付近、入って左側か正面の鴨居に「肝焼きあり〼(ます)」とあれば肝焼きがいただける「本日ラッキーデイ」が確定)。

入ってすぐ右の小上がりは2名席
中央いろり席と壁面
この貼紙が名物きも焼きOKサイン

お料理にお酒が松竹梅、よく合います。もちろんビールもOK。「魚河岸ワイン」も料理によく合います。うなぎを待つ間、“熱燗で一杯”が極上の時間になります。ただし焼酎は今のところ用意がないようです。

…待ち時間を楽しむ初小川さん三番目のおもてなしは何といってもインテリアに飾り物。壁や障子に貼られたたくさんの千社札(江戸火消千組の政五郎さんとか大鵬関とか)。壁をはみ出し(たように見える)、柱や鴨居まで進出。初小川を愛した人々の豊かな広がりが醸し出されます。

反対側の壁にはご店主が踊ってきた浅草寺三舞の二つ、「福聚の舞」と「白鷺の舞」の立派な招木(まねぎ)と呼ばれる看板。鴨居の上には初代からずっと集めてきた江戸時代からの骨董がずらり。ご店主河合さんがずっと応援してきた勘三郎さんとのご縁は平成中村座の記念提灯ミニチュアやご祝儀品が網戸のついた戸棚に大切に収まっています。スポットライトなどわざとらしい彩りがないところが素晴らしい!コレクションの一つ一つが肩を寄せ合うように、初代からの愛情を受けてひっそり並んでいます。

飾り棚の一部。平成中村座のミニチュア提灯を始め様々なコレクション
初小川さんのうなぎを愛した人たちが残した千社札

浅草生まれの浅草育ち、ご店主河合さんは気さくで魅力いっぱい。千社札の交換会にも良く出席されていたという千社札の専門家で、相撲の大ファン(相撲中継で砂かぶりに見えることも)、踊りと小唄は師匠の腕前。笛も三社祭に欠かせないお囃子「あやめ連」のトップクルーのメンバー。それにうなぎもこの味わい。天は二物も三物も授けることってあるんですねー。でも、本当のところ、当サイトの推薦人個人としては、努力と気合の人と思います。

そうそう、年末大晦日はフル営業!おかみさんは浅草寺で除夜の鐘を撞いて一年を送るのが恒例なので、その前にお店を閉めるなんてとんでもない!という、これもおかみさんの心意気なのではないでしょうか。後継者の息子さんたちにはまだ一回しか客席でお会いしたことがないけれど、おかみさんの教えを生かして“うなぎの匠”(「うな匠」と云いましょうか…)の腕はもうすっかり四代目の準備完了と見ました。

初小川さんでは、ご店主だけでなく、おもてなしに活躍する男性がいます。訪れるお客にとって、“番頭さん” といった存在。厨房横に入って器の準備にお酒の用意、冷蔵庫から小鉢・小皿料理の取り出し。見えないはずなのに、テーブルごとにお客さんの次のサービスを頭において手筈を読む。割り勘で会計と領収書をお願いしても「わかりました」の一言でサッと個々の領収書がトレーに乗ってくる、しかもこれが頑固な手書き。一方、最新のギャジッツ(気が利いた小物、目新しい機器の複数形(6))情報に詳しく、これを使いこなす達人。ただ今PCウィンドウズの調子が悪いそうで、“スマートTV”を駆使して凌いでおいでとか。何やらテレビとパソコンのキーボードがくっついて使える“ギャジット”らしい!

いつまでいても心地良い初小川さんですが、そろそろお暇しましょう。

【脚注】

(6)ギャジッツ:最新の便利グッズといった意味でgadgetの複数形をカタカナ表記したもの。gadgetはこれから流行りそうな英単語ですが、ギャゼットで日本語として定着しそうで心配。どちらかと云えばギャジットが普通の発音なので、ギャゼットは覚えない方が実用英語には便利でしょう。こういったカタカナ英語の弊害の例を見ると、「ベビーカー」が困った定着ぶり。ベビーカー(baby car)では製造途中でまだ完成していない自動車の赤ちゃんといった意味合いになってしまいかねません。




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