おでんの「大多福」

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おでんの「大多福」さん~大提灯がお出迎え

“冬におでんは当たり前、夏におでん、春秋おでん、そしてまたおでんの冬…。これで一年締まりました”ってなもんで、いつもファンがいっぱいの「大多福」さん。

まっすぐ行くには、東京メトロ田原町駅から国際通りを北上して約10分、つくばエクスプレスで浅草においでの方々はラッキー。浅草駅A-2出口を出て左に国際通り沿いを行けば約5分で「大多福」さんに到着。どちらから来ても「西浅草三丁目」交差点を渡って左(東)へ1分、「さくらはちみつ」さんのビルを過ぎてすぐ右側に大きい提灯が下がっているのが「大多福」さんの入り口です(東京メトロ日比谷線入谷駅からは言問通りを東に歩いて約14分)。建物の入口にも大提灯がもう一つ。夕暮れ時になると、植栽が細かく施された入口にこの二つの提灯が見事に映え、今日のおいしいおでんへの期待感をやわらかく醸し出してくれます。戸口の暖簾にはにこにこのお多福さん。そして入口はスイングドア。引き戸ではありません。さあ、お邪魔しましょう。

入ってすぐ奥へと伸びるカウンター
一階奥のテーブル席
「大多福」さんの壁面インテリア

入ってすぐ右手に奥へと伸びるカウンター、白鶴の酒樽が突き当り角の柱脇に座っています。そこから左斜めにこじんまりしたカウンターがもう一つ。どちらのカウンターにも大きい角形おでん鍋が一台ずつ、すでにいい色合いをしたおでんたねが出番を待っています。酒樽の横にお燗専用の寸胴鍋。お酒は昔ながらの銅壺(どうこ)でいただきます。おちょこに注ぐとき、若干馴れが必要かもしれませんが、要領はカウンター越しに親切に教えてくれます。入った1Fカウンターは15席、鯉が泳ぐ池がしつらえられた坪庭を行った奥に小上がりとテーブル席合わせて35席、二階に20席、全部で70席と、少なくありません。(池は戦前から同じ場所にありますが、大きさが戦後およそ半分に、36年前の改築で更に半減して現在の大きさになったと若主人から伺いました。)

待ち遠しい大多福さんのおでん、あなたなら何から行きますか?

寸胴鍋で暖められる銅壷
カウンターの大型おでん鍋

①まずお芋類という向きなら、八ッ頭、エビ芋、じゃが芋…今日のお芋はなんでしょう、と伺って みましょう。

② 野菜系では、竹の子とくわいの季節もの、そして何といってもつゆの沁み具合がいつも口と舌を唸らせる大根、人参、小玉葱、ゆば、銀杏、しめじ、ぜんまい、ねぎま。それに圧巻のきゃべつ巻など。

③ 練り物系では、つみ入れ、はんぺん、こんにゃく、白滝、焼竹輪、竹輪麩に車麩、さつま揚げ、ごぼう巻、小しゅうまい揚、いかぼうる、揚ぼうるなど、多彩な横綱級がずらり。

④ 豆腐系では、もちろん湯葉、高野どうふに焼豆腐、加えて厚揚とがんもどき。

⑤ 大多福さんのお楽しみとして外せない袋ものには、お楽しみ袋(えびばくだん)、もち袋、いかばくだん、と並んで待っています。

⑥ 海産系では、昆布、ねぎまぐろ、たこ足にいいだこ、魚すじ、やりいか(季節もの)、帆立貝にばい貝、鯨のころとさえずりはお声掛けがお約束。

⑦たまご系は、うずらと鶏玉子。

⑧見逃せないアラカルトには、焼き鳥(十分時間を見ましょう。量感たっぷり、ジューシーな逸品)、もちろんお刺身は豊富なレパートリー。ぬた、塩辛なども。


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若旦那さんの笑顔

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大旦那さん・若旦那さんがそろい踏み

丁寧な筆書きのお品書きが置かれたカウンターでお客を迎えるのは、若主人の四代目、舩大工栄(ふなだいく・さかえ)さん。弟の茂(しげる)さんと三代目大旦那が時々応援に入りますが、茂さんは主に奥のホールと二階をご担当のようです。大旦那さんには、主に帳場を覗きこんでご挨拶させていただきましょう。はいりばなに「いらっしゃいませーっ」と明るいご案内の声が嬉しいですね。

この皆さんの温かなおもてなしが、今日も大多福おでんの楽しみの一つです。

若主人は十二歳の時からカウンターで三代目から教えを受け、推薦三本を蹴って食材や料理の研究ができる専門学校に進んだそうです。その研究熱心さが郷土史、地理・地勢学、人物史などにまで及んで、その研究熱心なお話しが店を訪れる客を楽しませています。

当然地元浅草周辺の歴史・伝承などは掘り下げかたも相当なもの。どの地図にも出ていない「浅草追分」はどこなのか?という当サイト推薦人の長年の疑問に、「昔浅草一帯が“浅草田圃”とよばれた田圃だったころ、このあたりで見られたあぜ道が何本も交差しているところを浅草追分と云っていました。一か所に限りません。」との明快な説明に、すっかり感心して納得でした(11)。


〽おでんとかけて、道楽者ととく
(その心は)甘さも辛さも持ち合わせる…


大多福さんの品書き最初の見開きにこの問答があります。大多福さんが用意してくれるおでんは、出しのきいた旨み主体のつゆと素材の馴染み具合がしっとり深く、食材とだし汁の味の良さがジーンと口に溶け出してきます。この柔らかさ、豊かさが日本料理味付けの奥深さを思い知らせてくれるように思われます。甘さ・辛さを押し付けてくるタイプのおでんつゆと全く違います。

そういった雰囲気を見事に演出している素材の一つが店内に響く「音」。お気づきですか?小さく、小さく、たまに響いてくる弦をはじくような、ぽろーん♪…ぴーん♪…ぽろーん♪…と続く、単純ながら変化し、幽玄に誘うようなBGM。「水琴窟」といって手水鉢から見て低い傍の地面に逆さに埋め込んだ甕(かめ)の上部から水を少量ずつ落とし、中にたまった水量としずくの落ち方や落ちる位置で音色が変化する装置らしく、これを聞くために竹筒などを差し込んであるところもあります。大多福さんのお客さんがお店に合うと提供されたそうですが、それまでは普通の邦楽曲などが流されていたそうです。今では想像できませんね。

大多福さんの創業は明治の中頃、大阪法善寺横丁のお店と伝えられているそうです。当時の名前は「お多福」でしたが、大正4年(1915)に大阪法善寺境内の店舗から浅草に移転したとき、新天地の東京でがんばろうと「大多福」に変えたそうです。「浅草大多福」として新たに出発たわけですが、お店自慢の味は関東大震災(1923)、東京大空襲(1945)などを乗り越え、初代から受け継がれています。

ちなみに、開店5時をめざして4時45分ころ、そわそわお店の前に集まる人々は、カウンター席がお目当て。予約済みでテーブル席が準備されている方々は余裕ですが、カウンター席はふつう予約できないので、皆さん早めに出掛けるわけです。開店時間ちかくに「西浅草三丁目」交差点に差し掛かった時、「隣、周りのこの人(たち)、大多福さんのカウンター席に向かっているんじゃないか?」と気になって、小走りに言問通りを渡るようになったら、もうあなたも間違いなく大多福さんの“カウンター席愛好シンドローム”になってます!

また、例年11月~翌年2月は年末年始を除き無休、日祭は昼も営業(12~14時)し、夜の部は1時間繰り上げの4時開店となります。おでんの季節感いっぱいの営業時間で、ファンには何とも嬉しい心遣いですね。


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熊手交代劇


上写真は大多福さんの熊手2016年版の交代。三の酉の十一月二十九日は、この一年ご利益をいただいた熊手を鷲神社にお納めして新しい熊手をいただいてくる特別な日となるため、その間空白の時間帯が生まれます。この間に写真の“白い貼紙”がピンチヒッターとして登場します。(若主人のフェイスブックページから許可をいただいて転載させていただきました。貴重な写真、ご協力感謝いたします。)




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