アポロの歌

ページ名:アポロの歌

登録日:2023/07/16 (日曜日) 21:40:34
更新日:2024/07/11 Thu 13:37:36NEW!
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『アポロの歌』とは、手塚治虫による漫画作品。1970年4月から11月に『週刊少年キング』(少年画報社)において連載された。



【序章 神々の結合】

大病院の精神科に少年・近石昭吾が送られてきた。
昭吾は愛を憎んでいた。愛し合うつがいの動物を殺し続けていたために、捕まってしまったのだった。


昭吾は、水商売の母親から生まれた。父親は誰なのかはわからず、母子家庭で育つ。
既成事実として金を得るためか、母親と肉体関係にある男少なくとも十数人を皆「パパ」と呼ぶように母親から躾けられた。
その母親からも愛情を注いでもらえず昭吾は寂しい幼少期を過ごす。


ある日、母親と「パパ」が入った部屋の扉を開けると、そこでは情事の真っ最中であった。
間もなく憤怒の形相を浮かべた母親に捕まり、何度も箒を振り下ろされ引っ叩かれた*1


「なんだってこんな子をうんじまったんだろう!!生むんじゃなかったよ……ばからしい」


「どうして……生まれたの……ぼく…… ママ生まなきゃよかったのに…」


以来昭吾は愛を、交尾を、セックスを、憎んだ。


【第1章 デイ・ブルーメン・ウント・ダス・ライヘ】

院内でショック療法を受けた昭吾が見た世界。
そこでの自分はドイツ軍人であり、囚人であるユダヤ人少女・エリーゼに片想いの感情を抱く。
しかしドイツ軍を憎む彼女に撃たれてしまい……


【第2章 人間番外地】

榎の催眠術を受けた昭吾が見た世界。
そこでの自分はパイロットであり、高飛車な女性カメラマン・ナオミを乗せ火山の撮影に赴いていた。
事故により墜落し辿り着いた無人島は、つがいの動物達が共同社会を形成する奇妙な島だった……


【第3章 コーチ】

ひょんなことから院内での殺人の嫌疑をかけられ追われる身となった昭吾。
そんな彼を匿うミステリアスな女性・渡ひろみ。
彼女にマラソンの素質を見出された昭吾は山荘で共同生活を送ることになるが……


【第4章 女王シグマ】

前章の最後で気絶した昭吾が見た、人間が合成人に虐げられる世界。
そこでの自分は暗殺者であり、合成人の代表・女王シグマを始末する命を受ける。
しかし昭吾はひろみと瓜二つのシグマに戸惑う。シグマもまた昭吾と「愛」に興味を持つ。
ついにシグマは昭吾と愛し合いたいがため合成人を捨て人間の体に整形してしまった!


【第5章 ふたりだけの丘】

気絶から回復した昭吾は再びマラソンのトレーニングを続けていた。
しかしそんなある日、心中した男女を発見。
辛うじて息があった女性に嘘をつき生きさせようとするが、間もなく女性も男性の後を追ってしまう。
昭吾は深いショックを受ける。そして、自分もひろみに対し恋愛感情を抱いてることを自覚する……



登場人物

  • 近石昭吾

第1章の描写から年齢は15~6歳。上述の過去から愛というものを憎んでおり、また苦しんでいる。
愛・性に対しての否定的な態度や下記折り畳み部記載のスターシステムでの印象からか暗く厭世的な性格に思われがちだが、
ノリノリで魚を獲ったりその際は動物に笑顔で手を振ったり、性が関わらない限りは年相応な少年として振舞っている。
これは幼少期でも同様で、母猫が子猫を喰ったことに驚き教師に尋ねたりしている。
体力・持久力に優れ、道を成してない山往復16kmを8時間で走りきったり、13kmを33分弱で走ったりとマラソンの才能の片鱗を見せる。


+ [[スターシステム]]的余談-

ブラック・ジャック』では第48話『電話が三度なった』、第88話『報復』、第103話『帰ってきたあいつ』、第194話『二人三脚』で計4話登場。
BJとも『報復』以外の3話で顔を合わせている。
『電話が三度なった』では渡ひろみも姉として登場する他、『帰ってきたあいつ』では『新宝島』のケン一と、『二人三脚』ではお馴染み伴俊作ことヒゲオヤジと共演を果たす。
しかしいずれの話でも自分か家族が死亡もしくは瀕死の重傷を負う結末を迎え、『BLACK JACK 300 STARS' Encyclopedia』(秋田書店)では「死の影が付きまとう」とまで形容された。


また『どろんこ先生』でも不良中学生のボスとして登場。
不良ではあるが、他校生徒の自分たちにも真摯に向き合うどろんこ先生に誠意を見せるなど筋を通す性分。
またこちらの世界では父親のチンドン屋業を手伝うこともあり、少なくとも『アポロの歌』世界よりはよっぽど恵まれた家庭環境であると思われる。


  • 昭吾の母

現在はスナックを経営している。まだ若いようで「あんな大きな子がいるなんて」と従業員に驚かれていた。
前述の仕打ちに加え現在も昭吾を厄介に扱っており、どう贔屓目に見てもろくでなしな親。
だがかつて昭吾が車に轢かれかけた時に慌てて駆け寄り安堵するなど、無自覚でも母としての意識はあるようだ。


精神科の老医師。昭吾曰く「ゴリラみたいな顔」。
荒治療を起こすこともあるが、昭吾のことを患者そして一人の人間として親身に向き合い励ます。
かつて両想いの女性との仲を引き裂かれてしまった過去*2、そして戦争で人を殺した過去がある。


  • 渡ひろみ

箱根の山荘でひっそりくらす女性。昭吾にマラソン選手としての才能を見出しコーチとして匿いだす。
本人もマラソンランナーとして鍛えていたことがあり、昭吾に負けず劣らずの脚力を見せている。
一方で俺にキスしてくれ、と言った昭吾にドライ・キスとウエット・キス(ディープキス)をしてみせるなど愛情を注ぐ献身を示す。
第5章で心中を図った女性相手に、まるでカウンセラーのように真面目で冷静な対応を見せていたが……?


+ その正体-

榎の教え子の医者であり、昭吾を匿ったのは榎と協力してのリハビリ、そして昭吾に愛情というものを教えるためであった。
「昭吾は自分にとってただの患者でしかない」と言い切るがその表情はどこか辛そうで……


キャラデザインはふしぎなメルモの大人メルモ。リンク先の通りメルモ母と同姓同名である。世に出たのはこちらの方がちょっとだけ早い*3


  • 山部

ひろみの許嫁。凄腕のマラソン選手でボストンマラソンに2回出場し2位に入賞したこともある。
5年前当時高2だったひろみと婚約するも、裏で他の女性複数と関係を持っていたのを見られ逃げられてしまう。
ひろみに未練を引きずっている他同棲する昭吾にも嫉妬を見せ二人を引き離そうと画策する。
また引き離すためとはいえ、マラソンに関して昭吾にアドバイスするなど一応本業に関しては真面目な描写もある。


  • 下田警部

『バンパイヤ』や『七色いんこ』でお馴染み四角顔の警察官。殺人容疑のかかった昭吾を追う。


第2章で1ページのみ登場している。



余談

当時は永井豪氏による『ハレンチ学園』はじめ少年漫画にお色気を入れるのがブームとなっていた。
そのため愛と性をテーマとした上で、昭吾やひろみの裸体、キスシーン、動物の交尾シーンなどが存分に取り入れられている。
しかし残念なことに、連載中に神奈川県で有害図書に指定されてしまった。


榎が昭吾に精神科内を案内し患者を紹介する場面があるが、類似したシーンは手塚先生の初期作品『妖怪探偵団』にもみられる。
もっとも向こうは封印作品と化してしまったが。


漫画家・喜国雅彦氏は昭吾母の情事・昭吾虐待シーンを「性の目覚め」と語っており、
氏によって該当シーンのリメイク版が『COMIC CUE』(イースト・プレス社)で発表されている。
そして次話が島本和彦氏のマグマ大使なので温度差が激しい。*4



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  • 僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう -- 名無しさん (2023-07-17 01:46:28)
  • アポロ マーブル チョコベイビーの歌のことかと思った -- 名無しさん (2023-07-17 02:02:17)
  • ポルグラのあれかと思ったら違った -- 名無しさん (2023-07-17 02:54:37)
  • お色気を入れるのがブームなので入れたのが動物の交尾シーン・・・さすがケモナー手塚治虫。 -- 名無しさん (2023-07-17 09:59:38)
  • ↑別の漫画じゃ刑罰で獣にされた恋人と逢引する青年ってシチュエーションもあるしぶっとんでるよな神 -- 名無しさん (2023-07-18 10:19:23)

#comment(striction)

*1 連載版では何発もビンタされるコマもある
*2 連載版では「いやしい身分のため」と言っている
*3 『アポロの歌』での渡ひろみ登場は1970年6月、『ふしぎなメルモ』(初タイトル『ママァちゃん』)が始まったのが1970年9月。
*4 タイトルは「マグマ大使 地上最大のロケット人間の巻」。「鉄腕アトム」の「地上最大のロボット」のパロディ。

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