登録日:2021/04/30 Fri 04:43:18
更新日:2024/05/27 Mon 10:44:10NEW!
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黒史郎 十字 満月 皮膜 クトゥルー神話 クトゥルフ神話 蛭子 神 月 火車 神隠し ラゴゼ=ヒイヨ 託宣無き月 羅睺星 オシラ様 ドゥアルヴィヴィ 飲力 よつばり月 ルリム・シャイコース? チクワ 虎魚飛楊 ラゴゼヒイヨ 月割れの晩 ひとだまさま 天蛹 ufo?
ラゴゼ=ヒイヨはクトゥルー神話に登場する神性または何か。
初出は掌編小説アンソロジー『リトル・リトル・クトゥルー―史上最小の神話小説集』に収録の黒史郎の作品『ラゴゼ=ヒイヨ』である。
■この神の姿形や特徴について
同じ名、似た実体を持ちながらも、その本質は登場する作品によって異なるものとなっている。
いずれの作品でも、表面に十字が現れた満月は何らかの形で登場している。
『ラゴゼ=ヒイヨ』~『未完少女ラヴクラフト』までの描写では、
満月の夜に、月を四分割するかのように黒い十字が現れ、
それと同時に地球の各所に所々に穴が空いた円筒状の白い皮膜が落ちる。
満月・十字・皮膜のどれかが本体なのか、全て含めてラゴゼ=ヒイヨなのかは不明とされている。
皮膜には人間を含む生き物を穴の中に入るように引き寄せる精神干渉性がある。
穴の中に生き物が入ると顔だけが穴の外に出るように、ぴったり張り付くように萎んでいく。その後、中の生き物ごと何処かに去ってしまう。
一方、皮膜の影響を全く受けていない者も描写されている。
ラゴゼ=ヒイヨの判断、偶然、体質など理由は幾つか考えられるが真相は不明。
生き物を拐う動機や拐われた者達の行き先は不明だが、この神の信者や影響を受けた者は我先に穴に入ろうとし、入った者は恍惚の表情を浮かべる。
ラゴゼ=ヒイヨの名は、
『ラゴゼ=ヒイヨ』では、砂漠の遺跡に住む言葉を持たない民の言葉*1、『未完少女ラヴクラフト』では古代ウルタール語で「託宣無き月」を意味するとされる。
『童提灯』では羅睺星や魚のオコゼとの関連が示唆される。
■この神に関わる魔導書・書物
- 異神御来迎略記
日本に現れたラゴゼ=ヒイヨについて記された書物。
ただし著者が山に潜む別の異形と混合しており、その神或いは化け物についての記述も混ざる。
- 前足で掴む十字(Une croix saisir dans un forepaw)
エンボス加工で満月と十字が刻まれた革本。
書を手にした人間から声を奪い、ラゴゼ=ヒイヨの活動に併せ詠唱を行う。
■各作品での動向
- 『ラゴゼ=ヒイヨ』
この神を崇拝する言葉なき民の元に筒を落とす。
第三者の語り部は影響を受けていない。
- 『歓喜する贄』
海上に出現。人間を包み込んだ皮膜は海の怪物ドゥアルヴィヴィに類似する。
船上にいた全員が精神干渉を受けたが語り部は全く影響を受けていない。
- 『未完少女ラヴクラフト』
陸海空、全世界同時に起こる現象。
その本体は何なのか、その正体は神なのか怪物なのか生物なのか、神話的知識に長けたものでも意見は分かれ「それが何かと考えるだけナンセンス」
ともされるが、月の飲み込む力《飲力》そのものという考察が示されている。
- 『童提灯』
養蚕の神であるオシラ様と習合されており、作中ではオシラ様と呼ばれる。
蟲のような姿をした本体が存在。あちこちに白く細い糸を伸ばしまるで世界を紡ぎ直すかのような行動を行っている。
月面の十字は本体が山上に現れた結果生じる影で、単なる自然現象として一般的に認識されており「よつばり月」と呼ばれている。
筒は人間を拐う「鬼布団」と呼ばれる別の怪異*2。
前述の『異神御来迎略記』が登場し、その中で出自は、
遠き異郷より氷塊と共に渡来した手足も顔もない蛭子の神が山を白糸で覆い尽くし繭となり羽化した結果、醜き翅無き異形のものに変じたと伝えられる。
その他、
- 人々を山に誘い鬼に変える
- オコゼを好物とする。オコゼが月に向かい飛ぶ様が虎魚飛楊と呼ばれる
- 醜きものを好む
- 羅睺星(ラーフ)と同一の存在
などと記されているが前述の通り山の神についての記述が混ざり何処までが真実かは不明。
記述を信用するならルリム・シャイコースと思われる神性の成虫ということになる。
- 『ボギー 怪異考察士の憶測』
本作で取り上げられた怪異譚は、一つの怪現象を様々な角度から捉えたもので、一見無関係なようでほとんどが繋がっている。ラゴゼ=ヒイヨもその側面の一つとして描かれている。
壁や硝子など物質的な障害を無視して人間を拐う吸引力を持った光に、空へと拐われた人間が十字に裂けた月を目撃する。
怪現象の全容
空に座す正体不明の何かが、光を使い人間を空へと拐い、複製を造り地上へと返す。複製は外見や記憶も本人と寸分違わず自覚もないが、脳に宿る蛹から羽化し直すことで永遠に生きることが可能な人外の存在となっている。
また、死体を授けられると変質させて返却すると共に妙薬を授けてもいる。
以上が黒氏の書籍での登場。
以下は別の著者による作品を記す。
- 『月がこんなにも近い夜は』 著:葦原崇貴
皮膜の定員を争い信者同士の殺し合いが起こる。
- 『食の接吻』 著:愛造創
語り部の前に皮膜を落とすが、既にバグ=シャースに魅いられていた語り部を引き込むことは出来なかった。
- 『フォリ・デ・ラ・フォレ』 著:ささがに
アヴェロワーニュに出現。月蜻蛉と呼ばれている。
皮膜ではなく月光を浴びた者達の肉体を蝋燭のように溶け合わせ白い柱のような塊にして空に吸い上げる。
■余談
初出となるアンソロジー『リトル・リトル・クトゥルー』の収録作は、800字クトゥルー作品コンテストの入選作集。
すなわちオリキャラでコンテストに殴り込み、その上で最優秀賞の栄誉に輝いている。
著者の黒氏はTwitterや公演などで度々、円筒について言及している。それによると「チクワ味」らしい。
黒氏は民俗学に造詣があり自身の作品にも取り入れており、作品ごとに相違する描写は意図的なもの。
よろしければ自由にラゴゼ=ヒイヨを使っていただきたいです。設定も考えてあげてください。 僕は作品ごとに変えてます。その方が「らしい」からです。 一つの名前が、各地で全く同じように語られることって、まずないと思っているので、 土地々々の「都合」に良い姿・行動・言い伝えがあると考えてます。
2021年9月3日のTweetを引用
名に特に由来はなく、声に出した時に普通ではない響きになるものとして考えだされた。
追記・修正は皮膜に入ってからお願いします。
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▷ コメント欄
- ノヴィスワールドで見た(ティリス民並みの感想) -- 名無しさん (2021-04-30 09:37:22)
- 被膜を落とすのはただの捕食行為だったりして… -- 名無しさん (2021-04-30 12:07:20)
- ルリム・シャイコースって死んでなかったっけ?それともルリム・シャイコースは種族名で別個体がいて -- 名無しさん (2021-05-01 21:28:02)
- 途中送信失礼。そいつが成虫になったら、ラゴゼ=ヒイヨになるってことかな?日本の作者の作った神性は海外だと認知されてないのか、あまりそういう本に載ってないからここぐらいでしか情報得られんわ -- 名無しさん (2021-05-01 21:30:12)
- 新作のボギーにも出てきたね -- 名無しさん (2021-07-26 00:46:48)
- 今ではクトゥルー神話の軛からは外れたけど、それでより良くなった印象 -- 名無しさん (2021-10-14 14:59:57)
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*2 元人間の異形。その名の通り布団の怪異で包み込むように人間を殺す。一度に犠牲になるのは一人。犠牲者は恍惚どころか苦痛に苛まれるなど他作品の皮膜とは描写が異なる
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