殺人特急(古畑任三郎)

ページ名:殺人特急_古畑任三郎_

登録日:2020/08/16 (日) 07:12:20
更新日:2024/04/30 Tue 14:28:49NEW!
所要時間:約 11 分で読めます



タグ一覧
古畑任三郎 古畑任三郎エピソード項目 鹿賀丈史 新幹線 列車 不倫 コート 振り返れば奴がいる 旅行 勇者特急マイトガイン 殺人特急 酢豚弁当



車内で、リクライニングシートを倒す時は必ず一言後ろの人に声をかけてください。


そういった小さな思いやりが旅を楽しいものにしてくれます。


そう、やっぱり旅は楽しくなくちゃいけません、旅は…。



『殺人特急』とは『古畑任三郎』のエピソードの1つである。
第1シーズン第8話。初回放送は1994年6月1日に放送。
時系列的には『汚れた王将』の直後に起きた事件である。
文庫版でのタイトルは「中川外科部長のコート」。



※以下ネタバレが含まれますのでご注意ください。



ストーリー

天真楼病院の外科部長・中川淳一は、妻がいる身でありながら若い女性と不倫をしていた。
その愛人との不倫現場を妻が雇った興信所所長・宍戸隆に押さえられた中川は、新幹線のビュッフェで彼を懐柔しようとする。
中川の妻は天真楼病院の経営者であったため、この事が妻に知られれば離婚は勿論病院にもいられなくなってしまう。
説得には失敗するが、それを予測していた中川は、不倫の証拠フィルムを奪い取るために宍戸殺害にシフト。 すでに彼のコーヒーに睡眠薬を入れており、自分の席に戻って眠っている宍戸に毒薬を注射して殺害。
フィルムが隠されている宍戸のコートを奪い立ち去ろうとするが、その際に姿を乗客数人に目撃されてしまった。


それからしばらく経ち、宍戸が死亡している事に気づいた車掌は、車内に医者がいないか探し始める。
たまたま乗車していた古畑は車掌から事情を聞き、至急中川を呼んでくるように頼む…。



登場人物

【ゲスト】

中川淳一(なかがわ じゅんいち)
演:鹿賀丈史
天真楼病院外科部長。
古畑と同様に襟足が長めのダンディな人物。


買い物はカード派であり、600円のミカンを購入する時にもクレジットカードを使用していた。
十二指腸潰瘍であるらしく、「バスター」という内服薬を携帯している。
妻の父親は同病院の経営者で、財産は全て妻名義となっている。


若い愛人との不倫現場を宍戸に撮られてしまい、このままでは離婚は勿論病院にもいられなくなってしまうため、新幹線のビュッフェで宍戸と会い、懐柔しようとする。
彼は聞き入れなかったが、それを予測していたためすでに睡眠薬を盛っており、証拠フィルムを奪って口封じに殺害する計画を実行に移した。


座席で眠っている宍戸の横にさりげなく座るも、怪しまれないようにリクライニングシートを倒そうとした時に、後ろからの舌打ちに思わず振り向いた結果、そこにいたヤクザ風の男に顔を見られる。
仕方なくシートを倒すのをやめ、くるぶし近くにある静脈にカリウムを注射し、心臓発作に見せかけて殺害する。
フィルムがコートの内ポケットに隠されている事に気づくも、口がしっかり縫い付けられていたため、その場で取り出すのを断念。コートごと奪って立ち去ろうとするが、その際に後方にいた中年女性に姿を目撃されてしまった。


自分の席に戻りコートからフィルムを取り出そうとしている時に古畑と出会い、酢豚弁当の空容器を外科医が手術で縫合する時にする「男結び」で縛っていた事で、職業が医者だと見破られた。
その後宍戸の遺体が発見されると古畑に事件の捜査協力を求められ、捜査に協力する事となる。
当初は心臓発作による突然死だと診断するが、すぐに古畑に殺人だと見破られ、注射の跡も自分で発見するはめになってしまった。


古畑とビュッフェにいた時に「白状します。殺したのは私ですよ」と冗談で言う。
だが立ち去るところを目撃した中年女性が現れると流石に動揺し、何とか危機を回避した時には吐き気を催しハンカチで口を押さえていた。


今回の犯人・中川淳一は同じ三谷幸喜脚本の『振り返れば奴がいる』の登場人物でもある。

  • 宍戸隆(ししど たかし)

演:河原さぶ
興信所所長。
大雑把な人物で、背広やコートのポケットに眼鏡やタバコなど色々な物を突っ込んでいる。
だが仕事ぶりは徹底しており、仕事で撮影したフィルムはコートの内ポケットに入れてしっかりと口を縫い付けていた。
何よりも信頼を重視しているようで、中川に「依頼人裏切ったら終わりなんだよ、この世界」と語っていた。
心臓病を患っているらしく、内服薬の「ニトロ」を携帯していた。


中川の妻の依頼で、中川の不倫現場を撮影。
証拠フィルムを中川の妻に渡せば依頼は終わりであったが、その前に中川が現れ、フィルムを調査料の倍の金額で買い取りたいと持ち掛けられるが、依頼人の信頼を重視する彼はそれをきっぱりと拒絶、自分の席へ戻った。
だが、すでに中川が仕込んでいた睡眠薬によって眠ってしまい、その間に静脈にカリウムを注射され殺害された。


新幹線内のビュッフェでカレーを食べる冒頭のシーンは「汚いがやけに美味そうに見える」河原氏の名演により、ファンの間でも地味ながら根強い人気がある。

  • ヤクザ風の男

演:大河内浩
宍戸と同じ車両に乗っていた乗客。
宍戸の後ろに女性と一緒に座っていた男性で、顔に大きな傷がある。いわゆる「これもんの男」。
ガラの悪い人物で、何かある度に舌打ちをする。
前に座った中川が座席を倒そうとした時にも舌打ちをし、その際に中川の顔を見ていた。
だが厄介ごとが嫌いなのか、後からやって来た古畑が刑事だと知ると「俺は何もやっちゃいないし何も知らねぇよ」と言っていた。
宍戸については「車掌に連れて行かれた。具合が悪そうだった」彼に連れがいたかについては「いたような気もする」程度の証言はした。

  • 目撃者の女性

演:田根楽子
宍戸と同じ車両に乗っていた乗客。
上の荷台に乗せていた荷物を取ろうとした時に、現場から去ろうとしていた中川を目撃する。
その後は今泉に頼まれ顔の確認を行うが、なぜか中川の顔は全く覚えておらず、現場で捜査をしていた古畑を目撃したと証言した。

  • 山口(やまぐち)

演:梶原善
車掌。
宍戸の遺体を車掌室に運んだ後、仲間の乗務員達に医者を探して来てほしいと頼む。
その際に古畑が現れると、事情を話して協力を求めた。
「まいったなぁ」が口癖。
ちなみに山口を演じる梶原善も『振り返れば奴がいる』で患者の柏木を演じていた。

  • お婆ちゃん

演:橋本菊子
自由席の今泉の隣に座っていたお婆ちゃん。
「チョッチョッチョ…」と言いながら入れ歯を磨くのが癖。



【レギュラー陣】

  • 古畑任三郎

竜人戦の事件を解決後に新幹線に乗り込むが、目当てだった酢豚弁当が見つからず残念がっていた。
事件が起きると中川に捜査協力を求め、早々に彼が犯人だと考えマークする。
そして目撃者を見つけ中川を追いつめようとするが、目撃者の中年女性が目撃したのは古畑だと言い出したため失敗に終わった。
一番上の兄が九州大附属病院で外科医をしている関係で知っていたらしく、中川が酢豚弁当の空容器の紐を「男結び」にしていたことで、医者だと見破った。
被害者の持ち物を調べ、眼鏡ケースはあるのに中身が無く、目薬のキャップはあるのに本体が無く、ヤニ取りフィルターはあるのに煙草が無く、石川さゆりのテープはあるのにそれを聴くものが無く、カメラはあるのにフィルムが無い、という中途半端ばかりであることから、それらの片割れがポケットに入った彼のコートを犯人が持って行った、と考えた。

  • 今泉慎太郎

古畑とは違い自由席であり、入れ歯を磨くおばあちゃんに迷惑がっていた。
目撃者を探し出し古畑のところまで連れて行くも、目撃者の女性が古畑を目撃したと言ったので、古畑に大目玉を食らう事になった。
ちなみに今泉演じる西村雅彦も『振り返れば奴がいる』で主任医師の平賀友一を演じていた。



以下、事件の真相。さらなるネタバレにご注意ください























真相


まぁこういう事もあります。
しかしですね、私はですね、中川先生が殺したって事に関してはかなり自信があるんですよ。


そもそも、この事件は医学的な知識がないとできない犯罪です。
くるぶしの横に静脈があるなんて普通の人は知りませんからね。
そうだ、覚えておいたほうがいいですよ。
全国の完全犯罪を企んでる皆さん。ね。


えー実はですね。これから1つ実験をやってみようかと思います。
んー中川先生がうまく乗ってくれるかどうか分かりませんけども、事件の再現をしてみようかと。
ひょっとするとですね、犯人しか知らない事までつい再現してしまう可能性が。
そうなったらこっちの思うつぼです。まあ、そう簡単にシッポを出すとは思えませんけども。
とにかく皆さん、よーく注意して見ててください。


(コーヒー)お下げしてよろしいですか?


まだ残ってるでしょ?


あ、失礼しました。


(飲み干して)えーと、古畑任三郎でした…。



  • 中川淳一

自分の席へ戻った後、古畑が犯人扱いした事を謝罪しに来る。
その際に、宍戸とは会った事はないし事件現場の車両にも行った事がないと告げる。


古畑は中川に謝罪をした後、この実験には医学に詳しい人間の力が必要だと説明し、事件の再現に協力してほしいと頼む。
実は前の駅では、車両点検のために1分間ではなく3分間停車しており、3分あれば宍戸を眠らせて足首に注射し逃げる事が可能ではないかと古畑は考えたのである。
古畑の仮説を聞くと、すぐに眠ってしまうような睡眠薬はないという理由で無理だと断言する。
だが古畑がクロロホルムが使われた可能性もあると言うと、「色々な事を考えますね」と言って実験に付き合う事にした。


古畑から説明を受けた後、古畑が被害者役となって事件の再現が開始される。
古畑が何か罠を仕掛けているのではないかと警戒しつつも事件現場である車両に入り、古畑の隣に座った。
その前に、場所を知っているとまずいので、最初に席がどこか確認するのも忘れなかった。
古畑から「楽に、足でもかけて」と言われると、前の足掛けを倒してリクライニングシートも倒そうとする。
だがその途端、後ろから「チョッ…」という音が聞こえてきたので、シートを倒さずにロシア情勢の話をし出した。
その後で古畑の口にハンカチを当て、ペンを注射器に見立てて注射をする真似をする。
そして古畑からコートを脱がせ通路に出た。
これまでにかかった時間は2分40秒であり、これによって犯行を行ってから前の駅で降りる事は可能である事が証明された。


今泉に頼まれ、席に戻って実験結果を古畑に知らせる中川。
これにより容疑者が限りなく増えてしまったかに思われたが、古畑はかえって絞れたと言い、中川が犯人だと断言した。
古畑の言葉につい笑ってしまう中川だったが、実験の本当の目的はタイムではなかった。
中川は先程の実験で犯人しか知らない事を1つだけやってしまっていたのである。


それは、リクライニングシートを倒さなかった事。普通、足掛けを倒したらリクライニングシートも倒すはずなのに、中川は倒そうとしなかった。
確かに犯人もシートを倒していなかったが、これを知っているのはは古畑と今泉を除けば乗務員数名だけ。現場に行っていないと主張する中川がこれを知っているはずがないのである。
古畑にシートの事を追及されると、「そんな事で得意げになってどうすんだあんた?」と笑い、倒さなかったのは後ろの男が舌打ちをしたからだと答えた。
そして後ろにこれもん(ヤクザ風)の男が座っていると話すが、その後で古畑に「男ですか?どんな?」と尋ねられた。
その質問で何かがおかしいと感じた中川は、もしやと思い後ろの座席を覗き込む。するとそこにはヤクザ風の男はおらず、今泉の席の隣に座っていたお婆ちゃんが「チョッチョ…」と言いながら入れ歯を磨いていた
そう、これが古畑がやりたかった本当の実験だったのである。


確かに後ろの席にはヤクザ風の男が座っていたが、あまりにも古畑や車掌達がうろうろしていたため、怒って自由席のほうへ移動してしまい、すでにいなかった。
そして代わりに座っていたお婆ちゃんは特別ゲストであり、古畑が事情を話したら進んで協力してくれたという。
つまり、前に宍戸の隣の席に一度でも座った事がない限り、すでにいないヤクザ風の男が「後ろに座っている」なんて事は言えるはずがないのである。
古畑の追及に「私が婆さんを見ていたらどうするつもりだった?」と訊くが、男に顔を確認されたら全てがお終いなので、古畑は彼が後ろを見ることは絶対に無いと踏んでいた。


その後、古畑の頼みでテーブルを上げると、古畑は「7号車のゴミ箱で見つかった」と言って品物をテーブルの上に並べていく。
それは中川が宍戸から奪ったコートの中にあった品物であり、古畑は宍戸のポケットにあった品物もテーブルに並べていく。
そして、石川さゆりのテープとヘッドホンステレオ、煙草のヤニ取りフィルターと煙草、眼鏡ケースとサングラス、目薬のキャップと目薬を合わせ、中川に渡していく。
そして最後にフィルムの入っていないカメラだけが残ったので、古畑はフィルムは中川が持っていると断言した。


犯人だと暴かれると、古畑に「どうして分かった?」と尋ねる。
すると古畑は「コートです」と答え、中川には小さすぎると言った。
それだけでは決め手に欠けたが、古畑は「どう考えてもこれは先生のじゃない」と言って、コートのポケットの部分を掴んで振った。
すると大量の小銭が入っている音がしたが、600円のミカンですらクレジットカードで買う中川が、小銭を持ち歩いているなんて事はあり得ないのである。


古畑の推理に感服した中川は、しばらく古畑と共に笑う。
そして虚しそうに外を眺め、次の駅で古畑に連れられ警察へ出頭した。


余談

今泉の乗る普通車のシーンで男の子が持っていたのは、『勇者特急マイトガイン』のマイトガインのおもちゃである。





追記・修正は酢豚弁当を食べながらお願いします。


  • 外科医2名が立て続けに死亡し、外科部長が殺人罪で逮捕された天真桜病院の明日はどっちだ -- 名梨さん (2020-08-16 07:32:48)
  • 確かこの回、「私の記憶が確かならば……」って鉄人パロ台詞言ってなかったっけ -- 名無しさん (2020-08-16 08:22:39)
  • 目撃者の女性が、思いっきり目を合わせた中川の顔を全く憶えていなかったのは謎・・・ -- 名無しさん (2020-08-16 12:20:03)
  • バスターは西村雅彦がCM出演した「ガスター10」のパロディーネタ -- 名無しさん (2020-08-16 16:30:10)
  • ↑×2 はたから見れば明らかに挙動不審な古畑で上書きされたんだろな -- 名無しさん (2020-08-16 16:33:12)
  • これを見てから酢豚が出たらご飯にかけて食うようになった。 -- 名無しさん (2020-08-16 18:24:04)
  • ↑4 一人としか目を合わせない人にとってはその一人は印象的だけど、何人何十人と目を合わせてる人にとっては有象無象だからな。古畑みたいな特徴的なのと並ばれるとわからんくても不思議じゃない。 -- 名無しさん (2020-08-16 22:39:26)
  • これ「当初は司馬江太郎が犯人役の予定だったが、司馬が敗北する事を嫌った織田裕二が出演を断った」って噂が立ったけど本当なのかな -- 名無しさん (2020-08-17 09:09:20)
  • そういえば新幹線にビュッフェがあった時代の話なんだな。今じゃ成立しない…。 -- 名無しさん (2020-08-17 13:05:31)
  • まさに「振り返れば奴がいる」内容だった域な回だった。 真田丸でも星野源を逃走させてたし。 -- 名無しさん (2020-08-18 20:20:51)
  • 最後に古畑が鹿賀丈史ハメたところわざわざ後ろにヤクザがいるなんてペラペラ説明しなくても3分でやんなきゃいけないから急いでたんでとか言ってれば切り抜けれたんじゃ -- 名無しさん (2021-06-11 10:03:30)
  • ↑鶴瓶回もだけど冷静に居直れば詰まなかった話もあるよね。この人の場合コートちゃんと調べられたらアウトだけど… -- 名無しさん (2021-06-11 10:28:40)
  • 舌打ちの音やクチャクチャ音が大の苦手だから「あのお婆ちゃんが近くに座ったら…」と想像してしまい話に集中できなかった -- 名無しさん (2021-07-04 10:41:53)
  • 何でマイトガインの関連記事なのかと思ったら、そういう事か。 -- 名無しさん (2021-09-24 05:20:38)
  • ↑3 鶴瓶回も逮捕状が取れた時点で勝ちではあるな -- 名無しさん (2021-09-24 08:11:41)
  • ↑5 まあそこはそもそも犯人決め打ちしてる上で「後ろにヤクザがいる」と言わせるのが目的だから、リクライニングの件は切り抜けられても最終的には後ろの乗客の話に誘導されてたと思う。 -- 名無しさん (2022-01-29 08:45:35)
  • 当初は織田裕二にオファー行ったんだけど断られたんだっけ -- 名無しさん (2022-02-22 18:13:03)
  • この話と振り奴の関係どうなってんの? 本当に振り奴の医者が殺人で逮捕されてんの? それとも我々の世界と古畑の世界の両方にSMAPやイチローがいるけど境遇は違うみたいな感じ? -- 名無しさん (2022-12-21 22:25:20)
  • 古畑に回収された探偵のポケットの中身に犯人の指紋付いてたらアウトだな -- 名無しさん (2023-02-19 18:39:35)
  • 胃薬の「バスター」はガスターのもじりなんだろうけれど、ガスター10がOTCとして販売開始されたのは1997年なので、1994年当時にガスターのテレビCMは存在しないはず。西村つながりのパロディということはありえないかと。 -- 名無しさん (2023-03-30 03:34:26)
  • リクライニングの下りは強引な気もするけどゴミ箱に捨てた遺留品から指紋が出るから結局詰みか -- 名無しさん (2023-04-07 18:08:55)

#comment

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧