登録日:2020/07/16 Thu 00:04:24
更新日:2024/05/20 Mon 11:17:57NEW!
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▽タグ一覧
scp foundation scp-jp scp-2000-jpコンテスト safe 黄龍 日本支部オールスターズ 世界オカルト連合 如月工務店 日奉一族 日本生類創研 東弊重工 犀賀派 蒐集院 負号部隊 販売員ミヨコ 燃えるscp 要注意団体 五行結社 有村組
SCP-2501-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「廻り舞台」。JPのコードが示す通り日本支部の管轄にある。
オブジェクトクラスは「Safe」で、一応収容はされているオブジェクト……なのだが、こいつかなりの曲者である。
▽目次
はじめに
まず本オブジェクトはSCP-2000-JPコンテスト参加作品である。SCP-X000コンテストはいずれも何かしらのテーマが定められているが、2000-JPのテーマは「変遷」。
そのテーマ通り、SCP-2501-JPも「変遷」していく様を扱っているが、その意味を一読で読み解くのはかなり困難だろう。
というのもこのオブジェクト、2000-JPに相応しく、日本国内の要注意団体のほとんどが参加する(ただし後述するが、参加していてもおかしくないある一団体だけ一言も触れられていない)非常にゴージャスな報告書になっているが、そのせいでSCP初心者にはかなり難易度の高い記事にもなっているのだ。
さらに、読む際の前提となっているオブジェクトも非常に多い。
とりあえず、
SCP-280-JP 「縮小する時空間異常」
SCP-1280-JP 「ヒュームの穴」
SCP-1500-JP 「和魂祭」
辺りには目を通してからこの記事を読み進めてほしい。
……これらの記事を読み込んでいる人なら勘づいただろう。このオブジェクト、要注意団体の中でもトップクラスの警戒対象である「あの男」絡みの代物なのだ。
概要
本オブジェクトは、財団が要注意団体と協力して収容している富士山の麓、青木ヶ原樹海内に存在する、とある空間である。
そう、珍しく財団が他の団体と協力しているのだ。それだけヤバい代物ということなのだが。
この空間周辺には4つの建造物があり、それぞれに異なる要注意団体の意匠が存在する。
- 東……東弊重工の意匠が見られる工場。不明な金属音を響かせている。
- 南……日本生類創研の意匠が見られる鉄筋コンクリートの建物。鉄筋コンクリートなのに生物的な挙動をする。
- 西……穴熊*1の意匠が見られる長屋。内部は時空間異常が起きている。
- 北……蒐集院残党の意匠が見られるSCP-052-JP*2が貼られた寝殿造りの建物。財団の侵入はここからのみ可能。
北の建造物以外の場所は不可視の障壁が張られており、侵入することは不可能。
空間の直径は半径2キロ程度なのだが、内部は20キロほどあるとされており、明らかな時空間の拡張が行われている。
内部では「奇跡論的なエネルギーの選択的な流入」や、現実性の揺らぎが頻繁に起きており、普通の人間では専用の装備なしにとどまるのは不可能。
しかしそんな環境なのに、四季は普通に存在し、生態系も成立しているらしい。
SCP-2501-JP中心部には特殊な放射能を発する「ナニカ」が存在し、これはSCP-2501-JP-Aと称されている。
外見は観測者によって異なるものの、概ね東洋の「龍」、もしくは西洋の「ドラゴン」を模した姿として認識される。
ただし、この形は元々決まった姿のないものに後天的に無理矢理形を与えただけで、-A本来の姿ではない。
現在は活発な活動を行っておらず、おそらくは休眠状態にあると推測される。
SCP-2501-JP-Aの本来の姿は周囲のあらゆるものを吸い込む時空間異常であるとされており、財団はこれをSCP-2501-JP-A-αとしている。
それを現在の龍の姿に留めて休眠させるために、財団は複数の要注意団体と協力して「プロトコル-無常」を実施している。
プロトコル-無常の詳細は触れられていないが、音声を用いた奇跡論的儀式であるらしい。
これに関しては、実は機械化が可能なことが判明し、東弊重工、日本生類創研と共に機械化を行い、2000/1/1には西面以外の建築物は無人化させることに成功した。
SCP-2501-JPは元々蒐集院の管轄下にあったオブジェクトであり、財団への吸収合併の際に管理が移譲された複数のオブジェクトの一つである。
そのため、財団に管理が移譲される際に蒐集院の研儀官へのインタビューも行われている。
インタビューログを閲覧
聴取記録2501-JP-01 - 日付 19██/██/██
対象: ██研儀官
インタビュアー: ██博士
<再生開始>
██博士: ではあの空間について確認したい。あの空間は何だ? あの龍は?
██研儀官: あれはな、穴だ
██博士: それは概念的なものか?
██研儀官: いや、穴というよりほかにないのだ。『頭山』という落語を知っているか?
██博士: ああ、さくらんぼの種を飲み込んだ男の頭から桜が生えるという話だな?
██研儀官: あれと同じだ。桜主をひっこぬいた穴があれだ。もしくは桜主を生み出す和魂とするならば、あれはその別たれた荒魂なのかもしれんな
██博士: つまり、SCP-1500-JPを移譲する際に何らかの時空間異常が発生したということか? 最初からそうなると気づいてそれを行ったのか?
██研儀官: 馬鹿な。そもそも桜主の移譲は永久に世界を保たんとする意思の下だ。[5秒沈黙]もっとも、医局の連中や例の学者をはじめ、こうなることに気づいていた輩はいたのだろうが
██博士: 話を変えよう、その時空間異常をどのようにあの形にまで変化させた? 現実改変か?
██研儀官: あれは形を与えただけだ。正確には形を与えることで鎮めたのだ。あれはないというものがある状態だった。それは周囲のあるを侵食する。そちらの言葉で言うならば現実性の浸食か? ただ、あそこには何もない、長野の大ウツロも同じようなものだと聞く。もっとも、あれは何が原因で生まれたかは分からんらしいが
██博士: なるほど、現実性の侵食を形を見立てることで収めた、いや、あちらの現実改変を利用したのか? スクラントン現実錨での応用も可能だろうか
██研儀官: それはやめておいた方がいい。お前たちの技術は他の時空から意味を引き出しそれで固定しているのだろう。あれにそういった縁を与えるのは勧めない。あれは揺らぎ続けさせるべきだ。だから私たちは太極を両儀に分化し四象とした。そこから相性のいい五行を用い、陰陽から水と火を、そこから木と金を、最後に土を生み出しそれをあれの意味に当てた
██博士: どういうことだ?
██研儀官: 停滞させてはいけない。あれは秩序だった混沌だ。そちらの言葉で言うならば閉鎖された系の中で静止した粒子だ。土とは五行の中で最後に生まれるものだ。それでいながら五行を統べるものだ。生滅流転、五行はそれぞれに剋ち、それぞれを生む。それを見立てた。閉鎖された系の外部から熱を与え、それを形とする。あれを封じ込めるために必要なのは関係だ、意味だ。いずれ科学がそこに追いつく日も来るかもしれないが、今はまだ早い
██博士: 単なる機械による収容ではオブジェクトへの影響が単一となり、完全ではないということか。そのために複数の音声を使用し、パルスに変化を与え続けることで対抗されるのを防いでいると。他の要注意団体に協力を仰いでいるのもそれが理由か?
██研儀官: そうだ、我々は相互に作用する。人と人、組織と組織の関係はいわば巨大で不安定な場を形成する。その縁を五行という見立てでもってあの穴を黄龍として封じ込めている。桜主と四神の関係が深くあったことにも助けられたがな
██博士: 単刀直入に聞かせてもらいたい。その封じ込めは成功しているのか?
██研儀官: 完全にはしていないだろうな、穴をふさぐのは不可能だ。お前たちも心当たりの一つ二つはあるだろう、その穴を空けたのは私たちなのだから。『頭山』のオチは知っているか?
██博士: ああ、頭の穴に落ちて死ぬのだったか
██研儀官: そうだ、私たちはそれを先延ばしにしているだけだ。あの龍は今まで気づかなかったそれの象徴だ。永遠に世界があると思い込んだ傲慢の否定だ
██博士: だが、蒐集院は、そして他の団体も続けているのだな。あの龍を鎮めることを
██研儀官: そうだ。今ここにある意味を否定することはできない。あの龍がなにもないのにあるのだから、ここにある意味がなくともいい。だから我々は桜主を愛したのだ、揺れ動き、いつの日にか朽ち繋ぐことこそが縁であり、あれを縛る糸なのだから。機械仕掛けの神で満足してはならない、私たちは自らの手で廻り舞台を動かす権利がある。それがいつか壊れるものであろうとも
<録音終了>
このインタビューで、SCP-2501-JPの大体の性質が見えてきたのではないだろうか。
- もともとは、蒐集院がSCP-1500-JPの主体たる桜の木を管理していた場所だった
- 現在龍が存在する場所は、桜の木が元々植えられていた場所である
- 龍の元々の姿は、SCP-1280-JPに近い、「周囲から現実性をくみ取り続ける穴」である
- 機械を使って封じ込めるのはやめた方がいい。常に揺らいでいないと停滞してしまう
スクラントン現実錨の開発は、SCP-3001によると、2005年以降。
しかしこのインタビューは20世紀に行われているのに、現実錨の存在に触れている。
この辺はややこしい事情も絡むので、SCP-3001の蛇足部分も参照。
簡潔に言うと、「現実錨が19世紀に既に開発されているヘッドカノンもあり、SCP-2501-JPはそのヘッドカノンを採用している」と考えればいいだろう。
インシデント2501-JP発生
インシデント2501-JP(通称「廻り舞台」)とは、ある日発生したSCP-2501-JPへの複数の要注意団体の襲撃イベントである。
なお、項目名とインシデントの通称が同じだが、項目名はあくまで「メタタイトル*3」なのに対し、インシデントの通称は報告書内でも用いられているので、財団内部においては正式に存在する用語である、という違いがある。
この襲撃イベントだが、参加した勢力が非常にゴージャス。
- 五行結社…世界オカルト連合の加盟団体の一つだが、方法論の違いから実質半独立状態にある勢力。
- 負号部隊…かつて大日本帝国軍において異常存在を用いた兵器を研究していた部隊
- 日奉一族…「日奉」という人型異常存在の一族。現状アニヲタ支部に記事が存在するのはSCP-745-JPのみだが、その異常性から度々トラブルを起こしている。本オブジェクトでは、東弊重工から甲種警戒対象として指定されているPoI-0009"日奉 榊"及びPoI-0009-s"日奉 梻"が登場している(他に実質名前だけだが、「日奉茜」という人物も)。
- アマテラス機関…現状登場している報告書がこのオブジェクトのみであり、当報告書内でも詳細に触れられていない正体不明の組織。名前からして恐らく神道系の組織と思われる。
これに対し、財団はJAGPATO*4に従い、世界オカルト連合及び日本国政府へ協力を要請。
同時に、SCP-2501-JPを管理する他の要注意団体である東弊重工、日本生類創研とも会合を行い、インシデント2501-JPへの対処方法を話し合った。
会合の記録を閲覧
出席者:
◾財団所属 / 後清水博士兼収容スペシャリスト
◾東弊重工所属 / 赤金渉外員
◾日本生類創研所属 / 鮫島外来連絡調整担当室員
[再生開始]
[SCP] 後清水: 事実確認を行いましょう。現在、SCP-2501-JPは複数の団体の襲撃を受けている状態です。現地エージェントの報告から攻撃者は五行結社の独自機動部隊、大日本陸軍特別医療部隊、通称負号部隊を主体とした混成部隊であると推測されています。各団体はレイラインを通じ直接2501-JP内部に侵入したと推測されます。現在は各建造物から発されている音声を逆位相の音声で打ち消しているようです。我々はJAGPATOを通じ世界オカルト連合に共同事態宣言を行い連合もこれを了承、共に事態の鎮静に向かっています。侵入経路及び行動に何か疑問点などはありますか?
[THI] 赤金: 攻撃の経緯はこちらでも確認しました。各構造物はそれぞれ隠秘術により強固な結界が施されていますので、おそらく侵入の方角は北東、"黄龍"の範囲であるため、地面には結界が弱まることを利用されたと考えられます。そのため、内部に侵入している勢力ならびに遠方より霊的支援を行っている人員を排除すれば最悪の事態は免れると推測されます。また、内部での行動に関してはそちらで呼ぶ奇跡論的な儀式であるため、音声の喪失だけでは"黄龍"への結界を即時に弱めることはできないと推測されています
[JOI] 鮫島: ただ、龍の休眠が阻害されると事態は変わる可能性があると指摘がありました。生物としては有鱗目と同様の構造であるため、音声による効果が薄まり生物的な攻撃が行われた場合、変化が発生することは予想されます
[SCP] 後清水: ありがとうございます。では単刀直入に、この事案に対しての協力を願えますか?
[JOI] 鮫島: JOICLE全体としては現在協議中ですが、各人員が個別に協力を申請する分には問題ないと判断されています
[THI] 赤金: 東弊重工としても同様です。全体的な支援は反対意見が出たものの、八百万社長ならびに役員会議において構成部門が各自の判断で支援を行うこと、各企業の裁量の範囲で物資並びに兵器を使用することは不問とすると決議されました
[SCP] 後清水: 分かりました。賢明かつ即時の判断、感謝します。しかし
[THI] 赤金: 我々に疑念を抱いているのですね。我々も同様ですが、現状は協力体制であった方がお互いにとってのメリットが多いでしょう。それにこれは、我々が納めなければならないような気がするのですよ
[JOI] 鮫島: 東弊に賛同します。感情の面で納得できないのは理解しますが、現状は我々にとっての迷惑でもあるのです、逃げるという選択肢は周到な用意の下に行われるべきもの、夜逃げ同然の逃走は誰も望みません。現状、そちらとしても我々を敵に回す選択肢は取りたくないでしょうし
[SCP] 後清水: 少なくとも夜逃げの準備が整うまでは協力するということですか。分かりました、余計な逡巡でしたね。今は何より時間が惜しい。他に聞いておくことは?
[JOI] 鮫島: 直接の交戦は行われていますか? また、連合から五行への接触は?
[SCP] 後清水: "穴熊"構成団体構成員の一部が死傷したと報告は受けていますが、人的被害は不明です。五行結社に関しては離脱者が独自に行ったものとして関与を否定しているとの証言が得られています
赤金渉外員の端末に連絡が入る。ほとんど間を置かず後清水博士の端末にも連絡が確認される
[JOI] 鮫島: どうされました?
[THI] 赤金: 面倒事は立て続けに起こります。"穴熊"の連中から日奉の関与が確認されました。こちらでの甲種警戒人物、"日奉榊"、"日奉梻"です
[SCP] 後清水: こちらでは"アマテラス機関"の関与が確認されました。既に内部に侵入していると推測されます
[THI] 赤金: 考えうる限り最悪の展開に転がりかけているようですね。だがこれで目的はかなり明確になりました
[JOI] 鮫島: "黄龍"、正確にはあの穴をどうにかしようということでしょうか
[SCP] 後清水: 連合に向け緊急事態宣言を発布します。SCP-2501-JP-Aはどれくらい持たせることができるでしょうか?
[THI] 赤金: 不明です。日奉が関与している以上、何をしてくるかすら予想できない。まずは黄龍への接触を防ぐべきしょう。加えて、黄龍の保護を行う必要があります
[SCP] 後清水: 直接的な交戦は我々と連合が行うことになるでしょう。組織規模が小さい"穴熊"構成組織にはSCP-2501-JP外部への対処を主に行ってもらうことになると考えています
[THI] 赤金: 正しい判断です。我々の武力部隊もありますが、そちらに比べれば大規模作戦への練度及び経験は少ない。補助戦力と考えていただくべきでしょう。我々は機材、武器の支援、その供給路の再構築、敵術師及び戦闘員に対する妨害がメインとなるでしょう
[JOI] 鮫島: "穴熊"にも通達を行いました。各構成団体が順次行動を開始します。組織編成は東弊の言う通りそちらに分がある。お任せします
[SCP] 後清水: では至急人員の招集を。特別条約の締結を行ったうえで協力体制に移行、作戦を開始します
[記録終了]
全面的とは言えないまでも、両団体の協力を取り付けた財団は、続けて「穴熊」の構成団体にも協力を要請。
蒐集院残党を始め、イワナガ美容組合*5、有村組*6、九十九機関*7からも応援が派遣された。暴力団はともかく、美容品セールスマンの組合が何の役に立つのか微妙に謎だが……
そして、日本国内のあらゆる要注意団体同士の頂上戦争が始まった。
00:00: 作戦開始。上空からの掃射、爆撃はSCP-2501-JP隔壁により失敗。呪的攻撃として"四方祓え"を実行するも術者の錯乱により失敗。これを受け、南面、北面より第一陣として財団=連合=諸団体部隊10隊がSCP-2501-JP内部に侵入、展開する。東面より東弊重工による対低現実UAV"千代包"3基、LAWSドローン"御霊会"1基を投入する。これと同時にSCP-2501-JP外部の術者捜索が日本政府の協力を受け行われる。
00:20: 内部において複数の敵戦闘員と交戦。戦闘員の一部は死体を利用していると推測2され、銃火器による無力化が困難であるため、蒐集院残党及び連合の排撃班を中心とした戦闘が行われる。
00:45: 敵戦闘員の攻撃を受けた部隊員が炭疽症に似た症状を発症。敵戦闘員が生物兵器を使用していることが確認され、ドローンを通し日本生類創研による緊急処置が行われる。これにより2隊が戦線離脱。
01:33: 中心部の方向から突如軽度の奇跡論的パルスの放出及び現実性の乱れが観測される。これを受け、敵戦闘員の一部が消滅。3隊が被害を受け撤退、"千代包"2基が通信途絶。同時にSCP-2501-JP内部に断続的な降雪及び熱波が確認される。小型スクラントン現実錨(Scranton Reality Anchor, 以降SRAと略記)の使用を許可。第二陣として新たに10隊を投入。また、東弊重工からも"千代包"2基、対高度神霊二足駆動兵器"蚩尤"1基、日本生類創研からSCP-030-JP及びSCP-373-JPに類似した生物兵器が追加投入される。
02:49: 部隊が中心部に到着、現実性の乱れが増加し周囲のHm値が著しく減少したことにより、境界が不安定となっている様子が確認される。また、周囲に桜の花弁が散乱していることが確認される。SCP-2501-JP-Aは休眠から目覚め、五行結社と推測される人員から弓矢による呪的攻撃を受けている。PoI-0009及びPoI-0009-sは確認されず。本部からの指揮により到達部隊が人員に攻撃するも、高度の奇跡論的攻撃により失敗、1隊と数十名が消失。これを受け第一陣に撤退の勧告が行われる。
03:14: 有村組構成員により外部の術者が捕捉される。イワナガ美容組合と日本政府の協力により捕縛することに成功。使用したとされるレイラインは"堤体"の打ち込みが即時決議、九十九機関の援助により実行され、現在では使用不可。これにより、外部からの敵戦力注入は停止されるも内部の抵抗が激化。
04:41: 西面を不明な人員2名が突破、内部へ侵入する。侵入した人員は第二陣を補佐、所属に関する確認には応答しないものの、司令部の判断によりこれとの協力を決定。不明人員の攻撃により敵戦闘員の3割が損耗。これより不明人員は敵戦闘員の不死性に対し対抗手段を持っていると推測される。不明人員が戦線を維持することにより第二陣の行動が大幅に前進する。
互いにあらゆる超常能力を駆使しての全面戦争である。財団からオブジェクト指定されている代物も複数体投入されている。それだけの価値がSCP-2501-JPにはある、ということだが。そして地味に美容組合がファインプレーをしている
なお、SCP-030-JPとSCP-374-JPについては詳しくは項目を参照して欲しいが、どっちも文明を滅ぼしかねない特級のKeterクラス生物オブジェクトである。外部に流出しなくて本当に良かった……
ちなみに、04:41に侵入した不明な人員2名は、「超電救助隊HERO」の所属メンバーと推測されている。あのお騒がせ救命部隊も、この危機的状況に座して滅びを待つほど愚かではない、ということか。まぁ方法論が間違っているだけで、彼らの正義の心自体は疑いようのないものであるし。
しかし、ここで作戦本部に不審な通信が入る。
05:10: 作戦本部に不明な人物からの通信。内容は"カモノハシの真なる存在理由とは何か?"の一文。
……カモノハシ?一体何を言いたいのだろうか。
06:12: 第二陣が中央部へ到達。空間全体が白くぼやけており、視認は困難。桜の花弁が吹き荒んでいることが確認される。この段階でSCP-2501-JP-Aの外観は曖昧なものとなっており、SCP-2501-JP-A-αへの遡及が進行していると推測される。前述の人員は不明な石室によって隔離されていることが確認された。カント計数機の反応より現実性の崩壊が危険域に達していると推測され、SRA及び連合による試作段階の対神霊装置(秘匿により詳細不明)が使用されるも、突如出現したPoI-0009に率いられた一団との交戦により中断。
不審な通信は気になるが、作戦は続行。遂に「黄龍」の本体へと到達。しかし……
06:13: 作戦本部に不明な人物からの通信。内容は"緞帳の紐を引け"の一文。
再度の不明な人物からの通信。どうやら何か事情を知っている人物のようだが……
06:14: PoI-0009-sが出現。SCP-2501-JP-Aの頸部を切断する。
ここまで動向不明だった日奉梻が混乱に乗じて突然の闇討ちを敢行。大本命である黄龍の首を切断することに成功する。
06:15: SCP-2501-JP-Aの崩壊と同時にSCP-2501-JP-A-αが発生し、大規模な現実崩壊が発生。部隊を含めた周囲の現実が崩壊する。不明な人型実体の出現が確認される。以降、10:55まで関連する全職員、関連者の意識及び記憶が喪失。何らかの改変が発生したと推測される。
黄龍が形を失ったことで、「現実性を飲み込むウツロ」はその本来の形に戻り、現実性を飲み込み始める。
このまま世界はウツロに飲み込まれ消え果てるかと思われたが……
10:55: 全職員の意識が復帰。本部に所属していた人員は"プロトコル - 無常"における文言を唱えており、部隊員は数名を除き消失が確認された。SCP-2501-JP-Aは再び休眠状態に移行していることが確認され、敵部隊員は確認されず。周辺の調査が行われたのち、異常性の復帰が確認される。これを受け、部隊及び本部が解散。作戦は終了したとされ、各団体による事態収拾への調整が行われる。
事態は突然の収束を迎える。失われた命は戻ってこなかったが、全てはかつてあったままのように戻された。
大山鳴動して鼠一匹。財団としては、元通り収容することに成功したので一応の勝利と言えるが、多数の優秀な人材を失ったことを考えれば実質的に痛み分けに近い状態である。
財団がこの戦争で得たものは、複数の要注意団体に関する重要なデータ。しかし、それは同時に要注意団体側にも財団のデータが流出したであろうことを意味している。
結局、財団、東弊重工、日本生類創研は、かつてのアドバイス通り機械に頼った収容プロトコルを中断し、人員により「プロトコル-無常」を行い続けるプロトコルに変更された。
何か釈然としないものを残しながらも、財団はこれからも黄龍の収容を続けていくのだろう。今まで通り、これからも。
Saigaの兆候が確認されませんでした。データを開示します
インシデント2501-JPの後、SCP-2501-JP内部から発見された文書
親愛なる財団諸君
最初に言っておこう。こんなことになってしまって申し訳なく思う。ここにある孔は桜の抜けた頭山、長野の大ウツロになりかねない"無"だ。本来なら私たちがどうにかするべきものだった。だが、どうしてもそれはできなかった。君たちがそれをどう表現するかは分からないが、方舟を見つけられなかったように、何故だろうか、あの場所へ君たちがたどり着けなかったように、ここへ私たちは辿り着けなかった。やるべきことが分かっているのに、宇宙を救う方法も手段も分かっているのに、手だけが伸びない。緞帳の幕を降ろすことができない。
だから私は驚いたんだ。私たちの撒いた異常存在の種が青龍を崩し、朱雀を祓い、白虎を落とし、玄武を番わせ、そして孔を龍と定めたことには。それは必要なステップだった、理解していたのに私たちにはできなかったことだった。君たちは疑問をことごとく見逃していたはずだ。カモノハシの存在意義に気付くこともなく、全ての伏線を読み飛ばし、職人はモノを作り、学者は研究し、呪術師は祓い………、定められた役割を果たすだけで、ただ絢爛と飾られた効果に目を奪われていたはずだ。結果だけがここに辿り着いた、私たちがたどり着くことのできなかった結果に。称賛しよう、その幸運を、その奇跡を、その結末を。
そして安心してくれ、君たちの大立ち回りの結果私たちはここに来ることができた。この孔は閉じなければならない。『頭山』のオチがどうなるかは知っているかな。
私は終わらせるためにここへ来た。
孔は墜ちるためにある。
あとは任せてくれ。
廻り続けろ
変わり続けろ
交わり続けろ
財団は、インシデント-2501-JPから生還した職員にインタビューを行っている。
ここから先の文章は、あなたが「犀賀」の一派ではない、と確認された場合のみ閲覧することができる。
インシデント-2501-JPにおいて、黄龍の首が切断された直後、突如として現れた謎の人型実体……彼は自らをこう名乗った。
「犀賀六巳」と。
複数の世界を渡り歩く謎の男。
「全ての世界を滅びから救う」ことを目的とする救世主。
「最も多くの世界」を救うためならば、「少数の世界」を切り捨てることを厭わない危険人物。
そんな男が、このバカ騒ぎを収めるために現れたのだ。
謎の機械……恐らくはSCP-802-JPと同種の機械らしきものを携えて。
彼は生き残った人員にこう告げた。
「もう大丈夫」
「私が全てを救おう」
「君たちは助かる」
……彼にはそれを為すだけの力があった。そしてそのために自らの命を捨て去る覚悟も。
その言葉を聞いた生存者たちの心に一つの感情が浮かび上がる。
助けてくれたことへの感謝……? ―否
その尊い自己犠牲の精神への感動……? ―否
自らを犠牲に世界を救う姿への悲哀……? ''―否''
彼らの心に浮かび上がったのは、最も原始的で最も強い感情。
ふざけるな
怒りであった。
まるでどうしようもなくなった物語を機械仕掛けの神様が無理矢理締めくくるような、「全ては何もなかったかのように」整えられてしまうような、そんな大団円など誰も望んではいなかった。
―鋼の兵器が吠えた。
―生物兵器が蠢いた。
―祝詞が紡がれた。
―呪詛が吐かれた。
普段ならばいがみ合い、時には殺し合う者達……犀賀六巳に言わせれば、彼が撒いた「種」たちが、一斉にその身に宿した異能を用いて、犀賀六巳を止めようとした。
例えこの世界が趣味の悪いホラー作家たちが作ったものだったとしても
例えこの世界を作った誰かがハッピーエンドを望んでいなかったとしても
それでも、幸福も、不幸も、全てはこの世界に生きる「俺たち」のものだと、「外の世界」からいきなりやってきた機械仕掛けの神に物語の結末を奪われる謂れなどないと、その時全ての者の心が一つになった。
……誰かの叫びか、宇宙が割れる音か、クジラの歌か、全てが吠え続けた。
「俺たちはここにある」と。
「機械仕掛けの神などに居場所を奪われてはならない」と。
SCP-2501-JPに元からそういった異常性があったのか、あるいは数えきれないほど使われたいずれかの異常物品が作用したのか……
人々の決死の抵抗は少しずつ「現実性」を手繰り寄せていった。
全ては、例えこのために犀賀六巳が撒いた「種」だったとしても、交わり、動かし、変わり続けて行った彼らが作った可能性だった。
やがて、犀賀六巳は驚いたように頷くと、「それもまた一つだ」と笑った。
そして、桜の花と酒の香りと共にSCP-2501-JP-A-αは裂け、人々は元に戻った。SCP-2501-JPもまた。
……舞台を選ぶ権利はない。脚本を選ぶ権利はない。役者を選ぶ権利はない。
それでも、舞台を廻し続ける権利だけは私たちのものなのだ。
SCP-2501-JP
廻り舞台
余談
日本支部要注意団体オールスターともいえる本オブジェクトだが、ここまで読んでいただけた方なら冒頭で示した「関わっていてもおかしくないのに影も形もないある人物」に思い当たるだろう。
「博士」である。
他にも直接かかわっていない要注意団体はいくつかある(闇寿司とか)が、本オブジェクトの元になったと思われるSCP-1500-JPに関わっている要注意団体で、本オブジェクトに登場していないのはコイツだけ。
SCP-1500-JPの成立にも直接関わった節がある「博士」がこのお祭り騒ぎに一切関与していないのは、いささか以上に不自然に思える。
さしもの愉快犯も、世界の存亡をかけた戦いを茶化すほど野暮ではなかったか……?
あの狂人にとって、この乱痴気騒ぎは興味を示す対象ではなかったのか……?
あるいはもっと別の可能性も……?
全ては謎である。
ちなみに、SCP-2501-JPを囲う4つの建物はそれぞれ四神に対応している。
- 北……かつて蒐集院が蒐集していた、「玄武」に対応するSCP-777-JP
- 東……玩具の恐竜の中に入れられた魂だけの「青龍」、SCP-173-JP*8
- 南……日本生類創研が研究し復活させた、魂だけの「朱雀」、SCP-444-JP
- 西……大穴に突き落とされた「白虎」、SCP-040-JP
追記・修正お願いします。
CC BY-SA 3.0に基づく表示
SCP-2501-JP - 廻り舞台
by kyougoku08
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2501-jp
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▷ コメント欄
- 襲撃してきた連中は結局何がしたかったんだろう -- 名無しさん (2020-07-16 15:44:43)
- この記事は、このwikiでもしばしば上がる「全てが犀賀の掌の上なことに違和感を覚える」って意見へのアンサーなのかも -- 名無しさん (2020-07-16 22:49:07)
- 「発見された文書」の「青龍を崩し」に付いてたリンクを編集しました(-JPを加えました)。余談の記述を参考にしたんですが、もし間違いだったらスイマセン -- 名無しさん (2020-07-17 00:44:21)
- ↑デッドリンクになっていますよ。「SCP-173」にリンクされているのはそこに「-JP」の記述があるからです。リンクをJPにするのであれば実際に記事を作成してからにしましょう。 -- 名無しさん (2020-07-17 00:59:54)
- 失礼。もしかしたら違ったかもしれませんが…とりあえずまだ作成されていない記事へのリンクはやめましょう。 -- 名無しさん (2020-07-17 01:10:34)
- ガ、ガイアドラグーン…! -- 名無しさん (2020-07-17 02:35:54)
- SCP-030-JPとSCP-373-JPの完成品投入とか、さらに熱くなる展開だなぁ。 -- 名無しさん (2020-07-17 16:58:09)
- 「大団円」に対しての一つのアンサーとも言えるんだろうか。たとえ幸せな結末だったとしても、与えられたハッピーエンドは要らない!みたいな感じの -- 名無しさん (2020-07-17 18:41:35)
- >日本生類創研からSCP-030-JP及びSCP-373-JPに類似した生物兵器が追加投入される。 ここで爆笑した。なんてもん投入してやがる -- 名無しさん (2020-07-18 02:14:55)
- うーん、いくつかの関連記事はあるんだけど結局「超電救助隊HERO」についての説明がどこにもない…「あのお騒がせ」と言われてもなかなかピンとこない -- 名無しさん (2020-07-18 15:09:32)
- 多くの部分で、「日本生類創研」が「日本生類創研」になっています。また、SCP-373-JPを「374」と表記している部分がありました。編集できる方、修正をお願いします。 -- 名無しさん (2020-07-20 10:34:54)
- たまに出てくる「イワナガ美容組合」の文字に笑ってしまうw -- 名無しさん (2020-07-27 15:00:03)
- 方舟のオブジェクトで犀賀が博士について言及してなかったから出て来なかったのか? -- 名無しさん (2020-08-09 00:10:25)
- ↑9 -- 名無しさん (2020-08-24 17:25:45)
- 何か凄い事が起きたけど全ての記憶を失って何事も無かったように元に戻されて終わるSCPって他でも見たような -- 名無しさん (2020-09-02 14:17:14)
- ↑ SCP-1363-JPだろ。あっちは完全にもやもやする系だけど。 -- 名無しさん (2020-11-10 21:35:09)
- SCP-173-JPにすべきであろうリンク先がSCP-173になってますよ -- 名無しさん (2021-07-26 19:22:11)
- 萎える -- 名無しさん (2022-02-12 07:19:36)
- イワナガ美容組合(と日本政府)が何をどうやって術者をとっ捕まえたんだろうか… -- 名無しさん (2022-02-12 07:36:15)
- 超電救助隊HEROについては本家の脚注に書いてあるぞ -- 名無しさん (2022-02-18 12:56:13)
- 東弊重工からも"千代包"2基、対高度神霊二足駆動兵器"蚩尤"1基 -- 名無しさん (2022-10-23 11:05:59)
- が投入される ガンダムのパーツとGOCに対抗できる戦艦の応用技術はヤバいw -- 名無しさん (2022-10-23 11:11:37)
- イワナガ美容組合の異常性の元に名前の通りイワナガヒメが絡んでるとしたら、桜主(に推定されるコノハナサクヤヒメ)のライバル神としてむしろ登場団体の中で蒐集院の次くらいに縁のある団体だぞ -- 名無しさん (2023-03-20 21:23:12)
#comment(striction)
*2 貼った空間内に「異物」を除去する結界を形成するお札。「異物」の判定基準は不明。
*3 あくまで第四の壁の向こうにいる我々が付けたもので、財団世界において存在しているかどうかは定かではない。
*4 財団、世界オカルト連合、日本国政府による、日本国内での対異常存在プロトコルを定めた友好協定。
*5 販売員ミヨコを始めとしたセールスマンが不可思議な美容品を売りさばいている組合。
*6 異常存在を活用している暴力団。
*7 詳細不明。一部の記事では幕末から戦前にかけ活動した三菱財閥関連の正常性維持機関で、戦後は財団に合流したともされる
*8 ただし、これの元記事では東弊重工の関与は示されていない。あくまで「SCP-2501-JPのヘッドカノンでは関わっている」というだけに留めた方がいいだろう。
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