登録日:2016/11/29 Tue 23:10:07
更新日:2024/01/29 Mon 13:49:41NEW!
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■愛染明王
『愛染明王』は大乗仏教(密教)の尊格。
代表的な明王部の尊格の一つであり、真言宗では金剛薩埵、金剛愛菩薩と同体とされる。
また、この尊格が不動尊と共に大日如来の脇持として配されるのは、愛染明王が金剛界の最高位の金剛であるからで、共に並べられる不動尊が胎蔵界最高位の金剛であるからだ、と解釈される場合もある。*1
忿怒相を浮かべた恐ろしげな姿ながら、一般的には恋愛・縁結び・家庭円満を司る尊格として知られている。
殊に、持物として弓矢を持つことから、恋愛成就を司る仏教版キューピッドと解釈される場合もある。こぇぇ……。*2
また、歴女ブームの火付け役の一つともなった直江兼続のネタ性ロマン溢れる兜に誂えられた一際大きな愛の一文字は、兼続が軍神として信仰していたこの尊格に由来する物である。
【由来】
梵名を“ラーガ・ラージャ”または“マハー・ラーガ”と云い、ラーガ(愛欲、赤)、ラージャ(王)となることから、その名が示すように[[赤い身>赤(イメージカラー)]]をしている。
“ラーガ”が染色を意味する詞でもある事から“愛染明王”と漢訳された。
ここから、染物屋の守り神としての信仰も受けたと云う。
真言密教の掲げる煩悩即菩提の内でも、普通は悟りを妨げると考えられる様な愛欲であっても悟りにまで至り得ると云う境地を顕しているのだと云う。……二次嫁への愛でも悟れますかね?
ここから“離愛金剛”の異名を持つ。
梵名からインド神話の愛欲の神カーマとの関連を考察する説もあるが、この名は古代の梵本(インド経典)には見られないことから、別地域*3で発生して中期~後期密教に組み込まれていった尊格であろうとの予想がされている。
日本密教は空海(弘法大師)が持ち帰った中期密教から、空海自身が独自の発展をさせていった系譜にあるが、愛染明王の名(ラーガ・ラージャ)は、よりヒンドゥー化した後期密教から発展した西蔵密教にも名前が見られる。
西蔵密教では“タキ・ラージャ”の名でも記されているとされ、これは愛染明王の真言=ウン・タキ・ウン・ジャクから吒枳尼尊者=吒枳王として、この名を愛染明王の事を示していると解釈されている。
日本でも後期密教のヒンドゥー化された性的要素を含むハタ・ヨーガの修法を取り入れて発展し、性魔術を使っているとの偏見から邪教と誤解された真言立川流や天台宗系の玄旨帰命壇にも通じる、西蔵密教の愛欲歓喜像を思わせる不動尊と合一した両頭愛染の様な異形も生まれている。
この場合には不動明王が父性を、愛染明王が母性を示していると説明もされるが、より直接的には男性性と女性性の合一(直喩)を顕した姿と見れるだろう。
この姿は厄神明王とも云い、秘仏として所蔵されている兵庫県の東光寺の伝説によれば、嵯峨天皇が霊夢の中であらゆる魔を倒し厄を祓うこの金剛を感得し、空海にこの仏尊に祈願をするように命じたという。*4
我が国に愛染明王信仰を持ち込んだのは弘法大師自身で、密教の重要経典である『金剛頂経』系の『金剛峯楼閣一切瑜伽瑜祇経(瑜祇経)』に姿を説かれ、金剛薩埵と金剛愛菩薩を象徴する持物を手にする事が記されている。
男女の愛のみならず、多くの人から敬愛を得る敬愛法の本尊としても知られている。
【愛染明王の12の誓願】
愛染明王が己に誓ったとされる12の功徳。
特に良縁を得れるとの信仰から女性からの信仰を集めたと云う。
- 智慧の弓、方便の矢を以って愛敬を与え幸運を授けよう。
- 悪心を加持して善果を得せしめよう。
- 三毒の煩悩を破って浄い心を起こさしめよう。
- 諸々の邪見驕慢の心を離れて正しい心に住せしめよう。
- 諸人との争いの縁を断って一生平和に送らせよう。
- 諸々の病苦と天災の難を去って天寿を全うさせよう。
- 貧弱飢渇の苦を除いて無量の福徳を与えよう。
- 悪鬼邪神の厄を払って安穏快楽ならしめよう。
- 子孫の繁栄と家運の増長を守って福緑を断たせまい。
- 前世の悪業の報いを清めて後生は浄土に生まれしめよう。
- 女人には愛を与えて良縁を結ばしめ善児を授けん。
- 女人にはお産の苦しみを免れしめ、生まれた子には福徳愛敬を授けん。
【像容】
最も基本となるのは一面六臂三眼で頭に獅子冠を戴き、背に日輪を象徴する赤い円相を背負い蓮華座に座す。
三眼は三世を見渡し、六本の腕は六道を救うと解説される。
持物は左右第一手に金剛薩埵を象徴する五鈷杵・五鈷鈴を、左右第二手に金剛愛菩薩を象徴する弓・矢を、右第三手には未敷蓮華を、左第三手は何も持たずに金剛拳とする。
天台系の『阿娑縛抄』では左第三手に目的に応じて持物を執らせるとあり、息災法には日輪、増益法には珠、敬愛法には蓮などと定められている。
異形の愛染明王として有名なのは、弓矢を天に向かって構える“天弓愛染”や前述の不動尊と合体した“両頭愛染”等がある。
【真言】
■オン マカラギャ バゾロウシュニシャ バザラサトバ ジャク ウン バク(大咒)
■ウン タキ ウン ジャク ウン(中咒)
■ウン シッチ(小咒)
【種字】
■ウン
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▷ コメント欄
- 父性の不動尊、母性の愛染尊の合体系、厄神明王という尊格も日本に一体だけ存在します -- 名無しさん (2016-11-29 23:23:59)
- 初代ペルソナにおける南条くんの初期ペルソナ -- 名無しさん (2016-11-30 06:16:12)
- 錯覚だ -- 名無しさん (2016-11-30 14:48:29)
#comment
*2 ※ネタ的な意味ではなく起源がマジで同じなのでは、とも見られている。
*3 西城地域等と予想されている。
*4 ※空海は白檀を素材として三体の厄神明王像を作成し、寺社に収めた。高野山の天野大社には国家安泰を願った像、京都の石清水八幡宮には天皇家安泰を願った像、東光寺には国民安泰を願った像が奉納されたが、現存するのは東光寺のものだけだとされる。
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