登録日:2016/06/29 (水) 22:28:05
更新日:2024/01/25 Thu 13:43:41NEW!
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星新一 小説 短編小説 短編 ショートショート 美味 マイ国家 sf sf小説 安全な味 有能な隊長 退屈こそが安全
連日にわたって同じものばかりでは、楽しみも感激もありはしない。
【概要】
「安全な味」とは、星新一による短編小説である。
『マイ国家(新潮文庫)』『星新一ちょっと長めのショートショート 6 ねずみ小僧六世』などにSSとして収録されている。
星新一が大得意とする、宇宙及び宇宙人の生息する惑星を舞台としたSF小説。
読者に対して『当たり前・退屈(の味)』の有り難さを訴えているのが特徴。
【短いあらすじ】
まだ見ぬ惑星を探しながら宇宙を漂流する地球人の探検隊。
だが、果て無い宇宙旅行は暇潰しの道具を無意味な物とさせ、隊員たちは退屈していた。
何より、宇宙船で提供される食事にその長い旅の悪影響が及んでおり、毎日変わらぬ食事に対してかなりの不満が募っていた。
そんな探検隊員達を隊長は励ましながら、彼らは目標の惑星に足を踏み入れるのだが……
【登場人物】
◇探検隊員と隊長
宇宙空間を飛び続けている探検隊員たちで、主人公達。
宇宙旅行も良いとする一方で、退屈さに苦痛を感じていた。
暇潰し用に地球から持ち込んだ映像は十回ずつ繰り返して視聴し、本も読みつくし、睡眠にも飽きてしまっていた。
しかし、彼らが最も飽きていたのは宇宙船で提供される宇宙食である。
栄養は豊富で味も悪くないのだが、毎回同じ物を提供する事に不満を募らせていた。
リーダーである隊長は、新たな惑星の動植物を手にすれば新鮮な料理を味わえると探検隊を鼓舞するリーダーの鏡。
物語を見れば分かるが、この隊長は慎重さと観察眼に優れた星新一作品でも屈指に有能なお方。
作中の文章でも、『よく気の付く性格で、どんな場面でも油断しない(要約)』と紹介されている。
惑星を旅するだけではなく、目標の星の状況を調べる観測室の人員も存在するようだ。
◇惑星の住民達
探検隊一行が訪れた地球に近い環境に住んでいる宇宙人。
地球にはいない家畜を飼育しているが、村が存在するなど文明の価値観は我々地球人に近い様子。
惑星自体が大気と水と植物があるようだから、地球人に近い性質になるのはある意味当然か。
性格は初見であろう地球人たちにも友好的に接してくるなど、穏やかな性質の模様。
見た目に関する言及はないが、使用する用語は当然違うようで、作中では翻訳機を用いて会話に成功している。
彼らが生産している肥料(陶器に入っていて、どろりとしているが美味そうな匂いがするらしい)は地球人でも美味だと感じるほど。
肥料ですら美味というのは、隊員たちの舌の感覚が麻痺しているという訳でもないようだ。
(肥料だと言われた後は、有害でないにしろ隊長は嫌悪感を覚えていた)
その惑星の食事も相当レベルが高いらしく、隊員達も感心するほど。
上記の肥料によって、惑星の果物や植物の味が良い物となっているようだ。
さらには、植物性の食品だけではなく肉料理なども『宇宙最高』と絶賛されるほどの美味である。
この美味の秘密について「旨いたい肥を使って育てた植物は旨くなる。それをエサにして育てた家畜はさらに旨くなる」という理論を発見したのだと語る。
こんな感じで、異種族同士ながら良い関係を築けるようにも見えるが……。
【ストーリーの結末(ネタバレ注意!)】
惑星の食品文明に感動する探検隊員一行。
住民達は宿舎を提供すると友好的な姿勢を見せ続けるが、隊長は何故か宇宙船を引きあげさせる。
全員が戻ると、急ぐかのように出発を命じる隊長。
良環境と友好的な住民達という要素のある惑星からの即座の退却には、隊員達も疑問をぶつける。
(誰も指摘していないが、よくよく考えるとそもそも惑星の調査が重要な任務のはずである)
その疑問を否定はしない隊長だが、上司の命令だと口にする。
隊長以外の全員が不満を見せたが、宇宙船を渋々惑星から発射させた。
遠ざかってく美味の惑星を振り返りながら、隊長は撤退の理由について口を開いた。
食事に隊員達が夢中になっている最中、隊長だけは住民の表情に気づいていた。
そう、彼ら住民は食欲をそそられているような顔つきをしていたのだ。
友好的ではあっても所詮は異種族、いずれ食欲に負けてその態度が表面化するかもしれないと考察する隊長。
この隊長の推察には隊員達も納得の意思を示す。
しかし、探検隊が気が付かなかった点はもう一つあるらしい。
あの惑星にしばらく滞在すれば、いずれ自分達にも美味に対して同じ感情・衝動が生まれるはずだと。
どちらが食欲に目覚めようが、両方に不幸な結末がもたらされるであろうことは間違いない。
そうなると、早く引き上げるのが危険と悲劇を避ける唯一の方法だろうと。
理由を聞いて完全に納得し、隊員らは理性を取り戻した表情となる。
話を交わした後、食事の時刻となった。
探検隊一行は、宇宙船内の機械が作り出した単調極まる料理を口にする。
それは、美味の惑星にたどり着く前に既に皆が感じていた、飽き飽きする味だった。
だが、その味こそが安全な味でもあるのだ。
早く追記・修正をするのが、間違いと荒らしを逃れる唯一の道だ。
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▷ コメント欄
- 安全な妹と見間違えた -- 名無しさん (2016-06-29 23:32:36)
- 内容や流れ的に、ともすれば後味や胸糞が悪くなりかねないバッドエンドに直行してもおかしくないところを、完璧に回避して見せたこの隊長マジで有能すぎる -- 名無しさん (2016-06-29 23:50:44)
- 美味い肥料で育った美味い料理を食べた宇宙船の乗組員は美味い -- 名無しさん (2016-06-30 00:14:17)
- ↑2ただ隊長が有能過ぎて話に面白みがない。そもそも隊長の勘違いだった可能性だってあるわけだし -- 名無しさん (2016-06-30 10:50:29)
- 旨い肥料で育った食物を食べた生物も旨いに決まってるジュルリって訳か -- 名無しさん (2016-06-30 11:08:23)
- ↑↑バッドエンドを回避しないとオチの一文に繋がらないからね -- 名無しさん (2016-06-30 12:10:19)
- この後この隊長と隊員は探検なんてリスクのあることは二度としないだろうな。宇宙での仕事を辞めて、退屈だけれど「安全な場所」「安全な暮らし」「安全な時間」を過ごすことになるのだろう -- 名無しさん (2016-06-30 14:43:17)
- 安全な妹かと思って開いた -- 名無しさん (2016-07-01 13:11:26)
- 安全な妹じゃなくてがっかりした。・・・って俺もう書き込んだっけ・・・?一番上と上。 -- 名無しさん (2016-07-01 13:28:20)
- ミノタウロスの皿か何かを思い出した。 -- 名無しさん (2016-07-02 02:55:33)
- ↑藤子ネタだと「味のもとのもと」を想起させるなあ、その肥料・・・ -- 名無しさん (2016-07-03 00:12:36)
- 星新一が「安全な妹」と書いてたとしても別に違和感はない。そして読みたい -- 名無しさん (2016-07-03 00:29:28)
- 宇宙探検隊には「味ラジオ」を標準装備に加えるべきであろう。 -- 名無しさん (2016-10-08 20:32:46)
- 美味しんぼっぽいタイトルだと思ったら星新一だった。そう知ると皮肉っぽいタイトルに思えてくるから不思議だ。 -- 名無しさん (2016-10-08 20:44:01)
- キノの旅の安全な国も通じる物がある。危険な物は何でも排除する国。つまり危険な思想も…ってやつ。 -- 名無しさん (2020-04-30 17:38:40)
- 安全な妹って見間違えた人他にもいて安心した(( -- 名無しさん (2021-06-03 00:17:50)
- ボッコちゃん等を差し置いて1発目に建てられたのがこの話とは -- 名無しさん (2024-01-01 07:56:19)
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