任我行

ページ名:任我行

登録日:2012/06/12(火) 18:14:11
更新日:2023/11/20 Mon 12:30:03NEW!
所要時間:約 8 分で読めます



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笑傲江湖 達人 金庸 片目 武侠 眼帯 ネタキャラ 武術 中国 任我行



任我行(じん がこう)とは金庸の武侠作品「笑傲江湖」の登場人物。



【概説】


邪派の武術集団「日月神教」の先代教主。
かつては非常に恐れられていた人間だったが、東方不敗のクーデターによって長い間監禁されていたので若手達には知られていない。


良くも悪くも荒くれの頭領といった気質で、「任我行=我が行うに任せる」という名の通りに強引な部分があり、思い上がりも激しい。
その一方で、けっこう深いことも言うなど一筋縄ではいかない人物。


得意技は敵の内力(気)を吸収する「吸星大法」



【劇中での活躍】


彼の登場は物語中盤。
主人公の令狐冲が旅の途中で兄弟分になった向門天という男に連れられて杭州は西湖の梅荘という所を訪れた時のこと。


梅荘には江南四友という芸術に傾倒した四人の武術家がおり、令狐冲は向門天の持つ貴重な書や楽譜を賭けて彼らと武術勝負をさせられた。
令狐冲が勝利したのだが、諦めきれなかった彼らは令狐冲と任我行を戦わせようと画策する。
…それこそが向門天の策略とも知らずに。



さて地下牢に連れられた令狐冲は任我行と剣術勝利をすることになる(もちろん令狐冲は敵が誰だかしらない。)
この時、令狐冲は独孤九剣を学んで以来初めて互角の勝負をする人間に出会い驚く。


そして戦いの最中、任我行は大声を張り上げて令狐冲と梅荘の連中を気絶させ、令狐冲とこっそり入れ替わって悠々と脱出するのであった。
脱出して2ヶ月は日月神教の実権を取り戻すために向門天と各地で暗躍、後に令狐冲を脱出させようと梅荘に帰還した。
この時、令狐冲は令狐冲でちょうどタイミングよく脱獄しており、ここで二人は初めて正式に顔を合わせることになった。
普通なら令狐冲がキレてもおかしくはないが、その場の雰囲気と向門天から「お前の内傷を治すためだった」と明かされたので大事にはならなかった。


令狐冲は複数の人間の内力を注ぎこまれていたことが原因で重い内傷(内力が原因で起きる不調)に悩まされており、それを治す為に任我行の「吸星大法」を学ばせようとしたのである(吸星大法の習得法は牢屋に残されていた)


復活した任我行は令狐冲を日月神教に幹部待遇で誘うが、令狐冲は元々自分が所属していた華山派に未練があったために辞退した。


任我行も一旦は引き、とりあえず令狐冲と別れて少林寺に捕らえられた娘の盈盈の救出に向かった。
盈盈は令狐冲を慕っており、以前危篤状態に合った彼を救うために少林寺に自ら捕らえられていたのだ(この事は彼には秘密にされていた)。


少林寺にて盈盈は無事解放されたが、そこで正派の総帥達とトラブルになり、話し合いの結果、2本先取の3対3勝負を行うことになった。


任我行は少林寺総帥との戦いに劣勢になるも卑怯な手で何とか勝つが、直後の左冷禅戦には敗北。
任我行は吸星大法を逆手に取られ寒氷真気という内力で相手に冷気を送り込む技で低温状態にされ、戦闘不能になってしまったのである。


絶対絶命に思われたが、令狐冲が盈盈を助けに少林寺に潜入していることに気づいていた任我行は彼を戦わせようと呼び出した。


すると対戦相手の沖虚道人が「令狐冲には少林寺に来る直前に手合わせして負けたから、自分の不戦敗でおk」といった為にあっさり解放されることに。


まあ、どこぞの偽君子がいちゃもんつけてきたが、そこはスルー。


が、無事に解放されたものの、任我行は低温状態が治らず、あわや凍死寸前になる。
しかし向門天、令狐冲、盈盈の手によって救われた。
盈盈も助かり、令狐冲という強力な味方を得た任我行はいよいよ日月神教の実権を取り戻しに東方不敗に戦いを挑むことにした。
この辺の件は東方不敗を参照されたし。


さて、辛くも東方不敗に勝利した任我行は皆の前で自らの復活を高らかに宣言する。


すると居並ぶ部下達は任我行の前で


教主は永遠に栄え、江湖を支配す!!


と唱和して跪くではないか。


この言葉と動作は東方不敗時代に行われていたものであり、任我行は元々これを「皇帝じゃあるまいし、馬鹿馬鹿しい」と嫌っていた。
任我行は残忍だが、部下とは兄弟のように交わることを好んでいたのである。


が、目の前で自らを讃え跪く部下達を見た彼は調子に乗ってしまい以前からの考えを180度転換して自らが絶対的支配者になることを望むようになってしまった。



彼は江湖を我が物にせんとし、手始めに五岳剣派(道教の聖地である五つの山を拠点にする剣術集団)を従えようと華山へと進軍した。



…が、そこで彼が見たものは内輪の争いで恒山派を除き殆ど壊滅した五岳剣派の姿だった。


これには拍子抜けしたものの、恒山派の中に令狐冲の姿を見ると降伏を勧める(令狐沖は故あって恒山派の総帥をやらされていた)
しかし彼がこれを拒否したため、仁我行は1ヶ月後に恒山派を滅ぼしに再び現れると告げた。


恒山派以外の五岳剣派はほぼ壊滅状態、残る恒山派も圧倒的な戦力差で容易に打ち勝てる。
少林寺や武当の総帥は令狐冲の知己であり、彼の危機を見過ごすはずがないので、主力が応援に向かい本部が手薄になった所へ兵を送ればこちらも容易い。
こう考えて日月神教本部に帰る途中、正派に対する勝利を確信した任我行は小高い岩の上に立ち、自らを関羽のような偉人より素晴らしいと称える周囲のおべっか使いの言葉に気分を良くし呵々大笑するのだった。






以下、最大のネタバレ注意













……その直後、内傷の発作が起き任我行はそのまま滑り落ちて死んだ。



…そう、死んだのである。ラスボスが。勝手に。



こうして正派と邪派の戦いは終わりを告げたのだった。



なん…だと!?と思うかもしれないが、マジである。


この後は娘である盈盈が一時的に教主になって令狐冲の下に嫁入りし、そして向門天が正式に教主を継いで戦いは終わり、令狐沖と盈盈の夫婦の会話で物語は終わる。



単行本だと残りページ数で急展開なのは察しはつくが、元々これは新聞連載されていた小説なので、当時読んでいた読者は驚いただろう。


だが任我行が発作を起こしたのにも理由はちゃんとあるので、彼の技「吸星大法」と共に紹介する。



【吸星大法】


任我行の最大奥義。触れた相手の内力(気)を吸収して己の力に変えるという技。要するにDBの人造人間アレ
習熟度によってはある程度の距離からでも内力を吸収できる。
武侠世界の内力はDBの気RPGのMPなどと違って自然回復はせず、修行によってのみ練れるもの。
いわば筋肉と同じようなもので、吸星大法を使うという事は他人の修行の成果を盗み取るに等しい。
そのため、この技は非常に危険視されている。


ただ吸星大法も万能という訳ではなく、デメリットも大きい。


  • 少林寺総帥・方証大師のように極限まで修練された内功の持ち主には通用しない。

  • 他人の内力は自分から使おうとしないと防御には使えない(自分の内力ならば勝手に防御力にプラスされる。)

  • 複数の人間の内功をとりこむと内功の制御が難しくなり、他人の内功が体内で暴れ内傷を負ってしまう。

などがそれである。
特に3番目は深刻であり、一時的に誤魔化すことはできても完治は困難。


ぶっちゃけ任我行が死んだのも3番目によるものが大きい。
任我行は本編開始時点では3番目の欠点を克服していたのだが、克服するまでに受けたダメージは深刻だったようで
脱獄後に急にハッスルしたことや左冷禅に受けたダメージが原因でぶり返してしまい、そして死んだのである。


こんな欠点がありながら敢えて任我行が吸星大法に拘ったのは、一度習得すると無意識的についつい使ってしまうことと葵花宝典を毛嫌いしていたのというのがある。よほど玉を切りたくなかったのだろう。


ちなみに令狐沖も吸星大法を会得したので何時かは同じ運命をたどるはずで、それ故に任我行は副作用への対処法を餌に彼を引き込もうとした。
しかし彼の場合は少林寺に伝わる奥義「易筋教」を(彼を心配する方証大師に騙される形で)学んだことでこれを回避している。



【映像版】


武侠ドラマの常か、色々ネタ化が進行している。


特に日月神教の実権を取り戻して部下達に己の名前を改めて告げる場面では



任我行だー!!
\(^O^)/



任我行だー!!
(/ ^O^)/



任我行だー!!
\(^▽^)/


と何故か3カットで繰り返し高々と名乗りをあげる。
それに対して居並ぶ大勢の部下達が


(・ω・)


とノーリアクションなのだからシュール。


ちなみに死に方も変更されている。


また吸星大法がダイソン並の物理的吸引力を得ている。


【関連人物】



任我行が唯一恐れた人間。


  • 方証大師

任我行が認める人間その一。
少林寺総帥に恥じぬ実力者であり、特に易筋教によって鍛え上げられた内功には吸星大法も通用しない。



  • 風清楊

認める人間その二。令狐冲に独孤九剣を教えた華山派の先達。明確な実力は不明だが、令狐冲以上に独孤九剣を極めていることを考えれば推して知るべし。


  • 沖虚道人

4分の3認められている人。太極拳でお馴染みの武当派の総帥で、人格実力共に優れているが指導が下手な為に半分しか認められていなかった。
しかし万人の前で令狐冲に敗北していた事を明かした度量を認められ少し株が上がった。



  • 左冷禅

軽蔑されている人。
嵩山派総帥で任我行の宿敵。



  • 岳不群

軽蔑されている人その二。彼の本性を見抜き「偽君子」と徹底的にこき下ろすが、嫁の寧中則の事は評価しており丁寧に接する。


  • 余ソウ海

軽蔑するにも値しない人。



  • 任盈盈

娘。任我行からはけっこう愛されている。


  • 向門天

部下。賢明で忠実と理想の部下なのだが、任我行はだいたい増長して彼を蔑ろにするのだった。


  • 令狐冲

自分や娘のこともあって気に入っており、しばしば彼を引きこもうとする。





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  • 復権するまでは強引で残忍だけど、一角の英雄好漢らしい気風の良さがあったんだよねぇ。いやはや、権力は怖い。 -- 名無しさん (2015-03-31 11:56:35)
  • 多分、増長した後は、発作で死ななくても恐怖や恨みで毒盛られて死にそうな気がする -- 名無しさん (2017-08-08 20:45:13)
  • 周囲はもちろん当人にとっても幸せな最期だったのかもしれない -- 名無しさん (2018-11-22 16:50:57)
  • 原型はやっぱ毛沢東かな?一度倒された後に復権するあたりそっくりだよな -- 名無しさん (2019-01-22 12:02:21)
  • 一見豪傑だけど内心に陰険なところがあり権力に溺れる、という人物像は劉邦、朱元璋など中国史の英傑には散見される特徴だな。もちろん毛沢東もその一人。 -- 名無しさん (2019-01-22 12:11:48)

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