第七話 作戦会議

ページ名:第七話 作戦会議

 ◇第七話:作戦会議

「あっ、また通った。」
「ミリーちゃん、あれで何回目だっけ?」
「18回目。」
「おっけー。」
 
 ミリーちゃんは前髪を息で吹いて遊んでいる。
 時計を確認すると、きっかり3時間が経過していた。
 
 私達はコックピット内から、遠くに見えるドローンを望遠モードで監視していた。双眼鏡よりもよく見える。
 どうやら、彼らは3機を1グループとして、10分おきに同じコースを巡回しているらしい。
 観察の結果、谷を越えなければ襲われないという事がわかった。

 更に遠く、塔のふもとにはおびただしい数の大型ドローンが巡回している。
 一体どれだけの数がいるんだろうか。一斉に攻撃されたらと思うと、身震いした。

 地形をよく見ると、塔を中心に、きれいな円を描くような形の盆地になっている。
 自然に出来た地形と考えると、少しヘンな気がした。
 
「ベルちゃーん、様子はどおー?」
 
 無線機からメイズさんの声がした。
 
 「ダメ。ずっと同じ間隔で回って来るよ。」
 
「厳しいわね……。」
「そうだね、こっそり抜けるのは無理かも。」
「ティフが話したい事があるって。戻ってきてもらってもいい?」
「わかった、すぐ行くよ。」

「帰るの?」
「うん、1度みんなと話し合おう。」
 
 私が操縦桿を倒すと、セプテントリオンはゆっくりと旋回し、歩き出した。
 この機体には不思議な事が多い。私の呼びかけに応じて来てくれたけれど、私1人じゃ動かせなかった。
 ミリーちゃんは何者なんだろうか。この子を送ってきたのは誰なんだろう?
 それに、どうしてあのタイミングでプラネットイーターが現れたんだろう——。

 私はミリーちゃんの頭を撫でまわしながら、答えのない問題に考えを巡らせていた。
 
 ――――――

 墜落した巡洋艦に戻ると、ティフがブラシカと一緒にエンジンの分解作業をしていた。

 「もう少し右だ。よし、上げろ!」

 ブラシカは緊張した様子で両手を上げている。手先から薄く金のオーラが走っている。
 宇宙船の後部から無数にあるエンジンの1つが引き抜かれた。

 「いいぞ、ゆっくり降ろせ。横向きだぞ。」
 
 汗がブラシカの額を伝う。
 たっぷりと時間をかけ、エンジンが地面に置かれた。

 「……ぷはー!緊張した!細かい動きは苦手だよー。」
 「よくやった!」

 ティフは背伸びをして、ブラシカの背をポンポンと叩いた。
 ブラシカは頭の羽をぱたぱたとさせ、嬉しそうにしている。
 
 「ティフ!」
 「お、帰ったか!」

 私たちはコックピットを降り、ティフに駆け寄った。
 
 「駄目だった。見つからずに通り抜けるのは難しいと思うよ。」
 「そうか……だめか。」

 ティフは考え込んでしまった。

 「ね、ちょっといいかな?」
 「どうしたの?」

 ブラシカが話しかけてきた。

 「その子の事なんだけど——。」
 「ミリーちゃん?」

 ブラシカに指をさされると、ミリーちゃんは首を傾げた。

 「そう、ミリーちゃん。なんだか気になっちゃって。その子はなんだか私に似てるっていうか。」
 「そうかな?全然違う様に見えるよ。」
 
 ブラシカちゃんは背が高く、私が一緒に並ぶと見上げるほどだ。
 対するミリーちゃんは、しゃがまないと視線が合わないほど小さい。性格も真反対な気がする。

 ミリーちゃんは、私とブラシカを交互に見ていた。

 「うーん、上手く言えないんだけど、君は私とおんなじ……星と繋がってるような感じがしてたんだ。」
 「そうなの?」

 私はミリーちゃんを覗き込んだ。確かに、この子には不思議な力がありそうだ。
 
 「うーん、そうかも。そうかな?……ちょっとだけそうだと思う。」

 ミリーちゃんは困ったように、ものすごく曖昧な返事をした。
 嘘をついているような様子はない。ただ、ブラシカの言葉に心当たりはあるみたいだった。
 
 「そっか、話してくれてありがとう。」
 「うん。」

 「うーん、隠れて通り抜けられないとなると、作戦その2しかないな……。」

 考え込んでいたティフが口を開いた。
 
 「その2……?」
 「ああ。ベルとちびには話してなかったな。今から説明しよう、全員こっちに来てくれ。」

 ————————
 
 巡洋艦の艦橋で会議が開かれた。
 
 「作戦には、この艦の動力炉であるパルスエンジンを使う。」
 「さっき取り出してたやつの事?」
 「そうだ。あのエンジンを暴走させると、爆発と共にEMPが発生する。そうすると、周りの機械は全部動かなくなる。」
 「え、じゃあ塔の周りにある宇宙船も壊されちゃわない?」

 「その点は問題ないわね。宇宙船を保管する場所は、電磁波が通らないようになっているの。ほら、星に何か大変な事があったとき、脱出できないと大変でしょ?」

 メイズさんが補足した。
 
 「へぇー、それじゃあ、セプテントリオンは大丈夫なの?」
 「その点に関しては問題ないぜ。セプテントリオンはハルディナスっていう巨大兵器の一種で、特殊な内部構造をしている。」
 「つまり、電子機器とは全く違う回路で動いているから、影響を受けないんだ。プラネットイーターなどのフロンティアデバイスも同じだな。」
 「そうなんだ……。」
 
 あの怪物と同じなのか……。ちょっと複雑だなぁ。

 「EMP爆発に関しては、かなり広範囲に効果はあるものの、ここからだとまだ遠い。だから目標に十分近づく必要がある。」
 「だからセプテントリオンで運ぶって事?」
 「いや、運ぶのはブラシカにやってもらう。」
 「大丈夫なの?」

 ブラシカの方を見ると、彼女は神妙な面持ちで頷いた。

 「うん、あのくらいの大きさなら動かせるよ。運びながら戦うのはさすがに無理だけど。ベルの方が大変だから、私も出来るだけ頑張るよ。」
 「へ?私が大変?」
 「あー……。あの、だな。」
 
 ティフはしばらく視線を泳がせた後、申し訳なさそうに続けた。

 「ベルにはおとりをやってもらう。」
 「うん。……?」

 今、なんて言った?

 「つまり……でかいやつらを引き付けてほしいんだ。」
 「えぇ~~!!?」
 
 艦内に、私の叫びがこだました。
 

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