◇第十二話:崩壊
吸収された金色の輝きは、徐々に紅い光へと変わっていく。
星の命が、超次元のエネルギーへと変換されているのだろうか。
再び画面が点灯した。
息を吹き返すように、動力炉の駆動音が響き渡った。
P.I SYSTEM ACTIVATION...READY.
D SYSTEM ACTIVATION...READY.
ALLSYSTEMS COMPLETE.
変わらず攻撃を受け続けているが、周囲に貼られた薄い膜に遮られて、光弾が消えていく。
機体の損傷がみるみるうちに塞がっていった。
私はふと思いつき、ちぎれ飛んだ腕を拾い上げて断面に添えると、元通りに修復された。
どんどん周囲からオーラが集まっていく。
「すごい……ミリーちゃん……。」
膝元を見ると、ミリーちゃんは力を使い果たして眠ってしまっていた。
「ありがとう。」
私はミリーちゃんの頭をひとなでし、敵に向き直る。
射撃では効果がないことを理解したためか、3機とも突撃してきた。
私は姿勢を屈め、一番近い機体の下に潜り込んで右フックを叩き込んだ。
そのままゼロ距離でツイン・ブラスターを連射した。
弾はすべて貫通し、通り抜けた弾が壁面をえぐっていく。
ハチの巣になった機体が崩れ落ちた。
連射力も威力も桁違いだった。
これがセプテントリオンの本来の力なんだ。
その様子を見た残りの2機は私の前後に散り、挟み撃ちを仕掛けてきた。
背中のブースターで急加速をかけ、すれ違いざまに切りつけてくる。速い。
機体に切断跡がつくが、すぐに修復された。バリアは剣の攻撃を防いではくれないみたいだ。
敵が接近してきたときに捕まえようと手を伸ばすが、躱されてしまった。
ツイン・ブラスターを連射するも、銃口を向けたとたんに軌道を逸らして回避してしまう。
この対応力の高さ……確かに今までの無人機との違いを感じる。
再びすれ違い、背を切られた。すぐに金色のオーラが取り込まれ、損傷が塞がった。
今は大丈夫だが、これが続くとどんな影響があるかわからない。
「こっちの方が力は上なのに!」
じりじりとした戦いに、焦りを感じる。
機体は完全に回復したものの、私は消耗していた。
「飛んで……。」
いつの間にか目を覚ましたミリーちゃんが、小さくつぶやいた。
その言葉を聞いた私は、半ば無意識に足元のスイッチレバーを入れ、ペダルを踏み込んだ。
セプテントリオンの背中にある武器ラックが展開し、納めてあったダンプシューターをはじき飛ばした。
銃を保持するために追加で装着した金具が崩れ落ちる。
そのまま先端が開き、紅い光を噴射した。機体が浮き上がる。
背中の突起は武器ラックじゃなくて、飛行用のブースターだったらしい。
「ぐっ!……すごい加速!」
機体に装備されている何らかの機能で慣性が軽減されているものの、それでもなお強いGを感じた。
「でも、これなら追いつける!」
私は更に加速し、ライトニングソードを抜いた。以前よりも刀身が伸びている。
速度を上げ、振り切ろうとする1機に追いすがり、切り裂いた。2つに分かれた機体が地面に落ち、大爆発を起こす。
「あとひとつ!」
後方を振り返り、背後から接近してきた機体に回し蹴りを喰らわせた。
金属が激しくぶつかり合う音が響く。敵はものすごい勢いで吹き飛び、壁に激突した。
そのまま急加速をかけ、剣を深々と突き刺した。
敵機は僅かにもがくような動きを見せたが、やがて完全に停止した。
「はー、はー……っ。」
…………。
再び静寂が訪れ、コックピット内には自分の呼吸音だけが響いていた。
セプテントリオンに引き寄せられていた金のオーラも、いつのまにか消えていた。
周りの様子を伺う。特に、今のところは変わった様子がない。
「急いで戻ろう。」
セプテントリオンが吸収したことで惑星の命が尽きてしまったとして、どんな影響があるかわからない。
侵入口を見ると、先ほどの激戦で崩落が起き、完全に塞がっているみたいだった。
地下の動力炉が動いている様子もない。故障したのだろうか?
無理に進んでも、エレベーターは動かないだろう。
でも、何か違和感がある……なんだろう。
「どうしよう……。」
どうやって脱出するかを考えていると、上から光が差した。見上げると、太陽の光が入ってきている。
そうだ、そういえばここは大砲の中だった。今、丁度正午になったんだろう。
「……あっ!」
その時、違和感の正体に気付いた。
慌てて周囲を確認すると、視界を歪ませていた陽炎やガスのもやがなくなっている。
モニターの表示を見ると、外気温は10度まで下がっていた。おかしい。
発電機も壊れたのではなく、地熱が無くなってしまったから止まったんじゃないか。
ゾッとした。明らかに、この星にとって良くないことが起きている。
「早くみんなの所に行かなきゃ……!」
そう決断した瞬間、地鳴りが起こった。周囲に亀裂が入っていく。
私はセプテントリオンのブースターを起動し、垂直に飛び立った。
振り返ると、床が崩落していく様子が見えた。
ばらばらになった施設が、奈落に向かって吸い込まれていく。まるで、星の中心が空っぽになってしまったようだった。
私はスロットルを全開にし、更に加速をかけた。巨大な砲身を、ものすごい速さで駆け上がっていく。
壁面を見ると、等間隔に設置された電磁加速器の間隔がどんどん短くなっていき、ついにつながって見えるようになった。
出口がどんどん近づいていく。
外の状況はどうなっているんだろう、みんなは無事なのかな。
ブラシカは……。
空の光が円形にどんどんと広がっていく。
砲身から飛び出すと同時に、視界が眩い光で包まれた。
外だ。

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