彼女の名前は胡間シバリ、とある屋敷のメイドである。
いつもは優しいメイドの彼女だが、今日は雰囲気が違っていた。
場所は屋敷、2階のベランダ。
手には物騒な得物______そう、銃だ。
見る人が見ればそれは分かる、フランス、MAS小銃の改良型、FR F2狙撃銃だ。
正門から真っ直ぐに続く道、彼女は門を睨みつける。
発砲音、先程から主人の命を狙う侵入者が、この屋敷の門で発砲している。
「ご主人様には……」
ボルトハンドルを操作、薬室に初弾を流し込む。
尻尾がピクッと震え、スコープを覗く。十字線の中心が、侵入者の頭に合わせられた。
ゆっくりと呼吸、力まず静かに息を止める。
そして静かに、引き金に触れた。
銃声、空気が震え、弾丸が空を裂く。
スコープの向こうの男の頭が吹き飛び、仰け反るように倒れた。
「指一本、触れさせません」
彼女の役目は、主人が館で安全に紅茶を楽しめる様にする事。
ボルトハンドルを再び操作し、次弾を送り込む。
「例え私の……」
再びスコープを覗き込み、もう1人の侵入者に照準を合わせる。
先程同様呼吸を整え、引き金を絞る。
ドンッ!
銃声と反動、次の瞬間、スコープの向こうの侵入者の頭が消え去った。
「……命に、変えてでも」
ボルトハンドルを引く、排出された空薬莢がベランダに落ちて澄んだ金属音を奏でる。
入り口の侵入者は排除、残りは2名。耳が良いので聞こえた、裏の窓を割られる音だ。
傍にある銃を手に取る、FN P90と呼ばれる、室内での取り回しが良い銃だ。
「ご主人様……こまが守ります……」
コッキングレバーを引き、ベランダから室内に戻って素早く裏口へと走る。
ダイニングに続く廊下、そこに侵入者がいた。
「この屋敷は!ご主人様の物だ!」
セレクターをセミオートに、引き金を絞った。
パンパンと引き金を引く度に軽い音、銃の下から空薬莢が廊下にばら撒かれる。
拳銃だけを持った侵入者は、彼女のスピードに付いて来られなかった。
「ぐぁっ!」
侵入者が悲鳴を上げる、蜂の巣にした侵入者を飛び越え、今度はセレクターをフルオートに。
パラララッ!と銃弾の嵐が、侵入者を貫き床に倒れさせた。
倒れた侵入者の頭に、セミオートで更に2発を撃ち込んで完全に無力化する。
侵入者を全て撃破した彼女は、部屋の中を振り返る。
死体に血痕、空薬莢、弾痕……それを見てため息を吐く。
「はぁ……お掃除が大変……」
胡間シバリは、屋敷の主人に仕えるメイドである。
そして主人が快適に過ごせる環境を用意するのも、仕事なのだ。
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