幻影-オリジン・2

ページ名:ファントムオリジン2

 

「はぁぁ......」

 

―じゃぱりまん欲しさに人間からの質問に答えてしまった。

 

―こんな調子じゃ、私と関わる人間は増える一方...。大した意味もなくただ生きてるだけの
 私と関わっても時間の無駄。他に行ってほしい。

 

―なのに、なぜこうなるの...。

 

 

「......!」

 

 

―足音。それも複数人。

 

―すぐに茂みに身を隠す。来たのは......妙な服装の人間たち。それと......

 

 

「っぅ......」

「ん、起きたか?」

 

「...いや、まだ起きてない。とっとと運ぶぞ」

 

 

―...よりによってこの間会った奴......何があったのこれ?

 

―...人間たちは森の中にある廃墟っぽい建物の中に入っていく。

 

―気付けば、私もなぜか後を追っていた。
 なんで追いかけるのかわからない。あの男の事は別に好きでもなかったし、興味はなかった。

 

 


 

 

―入り口は別の人間に見張られている。 仕方がないので木に登り、水平に瞬間移動して屋根の上に移った。

 

―元々何に使われてたかは知らないけど、一角が吹き抜けの倉庫。抜け落ちている屋根の隙間から、下を
 覗いてみる。

 

 

「足りん! まだ足りんか!」

 

「足りないも何も、根拠がないだろ...がッ!」

 

「アニマルガールは本来あるべき動物の姿だ! 進化論は間違っている!

 ジャパリ群島こそあらゆる生命の回帰の地なのだ! アニマルガール達をもっと敬え! 不敬者め!」

 

「それをわからせるために相手を殴ったら意味ないだ......ろゴッ!?」

 

「認めろ! 我々人類が崇めるべき神はアニマルガールと、それを現すサンドスターを恵んでくださる
 大いなる神であると!」

 

 

 

 

 

「......ッ...」

 

―馬鹿馬鹿しい、虫唾が走る。

 

―神の使いに私みたいないてもいなくてもいい奴がいるわけがない。

 

―何もわかっていないくせに、偉そうにそれを吹聴してあまつさえ相手に押し付ける。

 

 

 

―ぶっ飛ばす。

 

―そう思った時には、屋根から倉庫の中に飛び降りていた。

 

 

 

「んっ......!?」

 

「おお、もしや......アニマルガール! 神の使者!

 見ろ、お前の間違いを見かねて神使自ら正しに...」

 

 

「......黙れ。」

 

「え?」

 

「黙れと言ってるんだクソ人間がぁぁぁぁ!!!」

 

 

―リーダー格らしい男を思い切り殴り飛ばした。

 

ー全く身構えてなかった男は面白いようにぶっ飛んで棚を吹っ飛ばし崩れ落ちた。

 

 

「な...ぁ!?」

 

「教祖様!?」

「クソ、奴はアニマルガールの皮を被った悪魔か! 叩き潰せ!」

 

 

「フン、都合が悪くなれば悪魔呼ばわり。本当に人間は勝手だね...」

 

 

―鉄パイプを持って殴りかかってきた男をカウンターで殴り飛ばす。
 振り向きざまに後ろから掴みかかるやつも回し蹴り。

 

―よく見たら、周りで縛られてる人間もいる。なるほど、集団誘拐......何やってるのか。

 

 

「がぁっ!?」

「ヤバいこいつ、強いぞ!?」

「ぐぅぅっ......こんなところで邪魔されてたまるか...ッ」

「教祖様! ...そ、それは...!?」

 

 

―教祖とか言われてる男が取り出したのは、穴と引き金のついた黒光りする小さな武器。

 

 

「...へぇ、物騒なもの持ってるじゃない」

「これを知っているとは......やはり貴様はただの動物ではないな、悪鬼め......消えろッ!」

 

 

―穴から火を噴く。瞬間、私は教祖の背後に『跳ぶ』。

 

 

「......!?」

「いきがるんじゃない『人間』。お前たちのやり方は百も承知なんだよ!」

 

 

―もう一度ぶっ飛び&棚破壊コース。教祖はぐったりして動かなくなった。

 

 

「教祖様ー!?」

「貴様ぁッ...!」

 

「まだやるの? いいわ、私もムシャクシャしてたところよ。手加減なしでぶっ飛ばしてやるわ...」

 

 

 


 

 

 

―気付けば、教祖の仲間を全員倒していた。

 

―何人か加減間違えて殴ったかもしれないわね......まぁ、いいか。

 

 

 

「いつつ......誰かと思ったら君か...」

「あ、起きた。 だいぶ蹴られてたけど?」

「あぁ...右腕がかなり痛い。 折れてるかもしれないな...」

「...じゃあちょっと動かないで」

 

 

―落ちていた固めの木の板を、殴り倒した男のシャツを破り裂いて包帯代わりにした布と一緒に腕に巻いて
 固定しておいた。

 

 

「おぉ...応急処置を知ってるのか。すごいな君は...」

「そんなに驚くことなの? 私は知ってて当然だと思うけど」

「いやいや、人間ならともかくフレンズでは初めて見たよ。もちろんこんな目に遭ったのも。

 パークには何度か来てるんだけどね...」

「私に関わるからこういう目に遭うのよ」

「おいおい、君は追われてるわけじゃないだろ?

 ...あと、僕が言うのもなんだけど、どうせなら他の被害者の方々にも応急処置、頼めるかな?」

「......はぁ」

 

 

―思えば私、なんで応急処置したんだか...自分から人間に関わりに行ってるって大丈夫なの私?

 

―結局、怪我してた全員にやってるし。

 

 

「...今日はもう帰る」

「え? ...あぁ、人間はまずいんだったっけな?」

「人間そのものじゃなくて目立つのが嫌なのよ。私に存在価値なんてないでしょ」

「そんな事はないって言ってるだろ?ここにいる被害者は君に助けられたんだからさ」

「...ただの気まぐれよ。ムシャクシャしてなかったらこんなことしてないし」

 

 

 

―私はそう言い残して、『跳んだ』。

 

―もうあの男とは会わないだろうと、その時は思っていた。

 

 

~続く~

 


tale 負の遺産

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