アニマルガール情報
動物名: アカハライモリ(双頭胚)
愛称: イチカ(一次胚 - 分け目左)、ニナ(二次胚 - 分け目右)
所属: ジャパリパーク動物研究所
管理権限: 1
◆概要
生物学の「発生」分野における古典的実験、イモリを用いた二次胚形成実験(後半の”動物概要”で詳述)で生まれた「双頭の胚」のアニマルガールです。便宜上、一次胚* を名乗る個体を「イチカ」、二次胚** を名乗る個体を「ニナ」と名付けています。
* 移植を受けた側の胚から分化した部分。(元の部分)
** 移植片から分化した部分。(後付け部分)
◆特性及び注意事項
多頭の生物は、本来であれば多重人格、あるいは1つの頭が代表する形でアニマルガール化するのが通例ですが、この個体の場合は二次胚が比較的大きく形成されており、一次胚二次胚それぞれが別の個体と認識されて2体に分かれたと考えられています。
ただし、あくまでも彼女たちは「双頭胚」のアニマルガールであり、手を繋ぐなどして接触を保っていないと10~20秒ほどで消滅が始まってしまうことが確認されています。(これは、サンドスターとの接触の際に”双頭胚”としてアニマルガール化が起こったため、分離するとアイデンティティを失ってしまうためと分析されています。)
そのため、定期健診あるいは面談などの際にも、決して2人を引き離してはいけません。当現象に関する研究を無許可で行うことも禁止します。必ず倫理保安局・研究開発局に申請を行い、許可を得たうえで実行してください。
◆誕生経緯
20██年██月██日、朝出勤したジャパリパーク動物研究所の研究員が、研究室内の実験机上に2人のアニマルガールが座っているのを発見。机上にあった小型水槽が空になっていたことから、前日に研究員が作成に成功して放置していた双頭胚にサンドスターが接触、アニマルガール化したものと推定されました。
◆身体的特徴
外見は他の両生類アニマルガールと類似していますが、体色やエラ状の髪型等から、成体ではなくアカハライモリの「幼生」の身体的特徴を再現しているとみられます。これは元の双頭胚が幼生の状態であったこと、および双頭胚は一般に成体まで成長できないことが原因であると考えられています。
アカハライモリ自体の特性として高い再生能力を持っており、多少のケガであれば他のアニマルガールよりも早く治癒することがわかっています。(元動物から考えれば尾の切断や足の切断にも耐えると推定されていますが、倫理上の問題から検証は行われていません)
2人の体格は双方似通っており、大きな差異はみられません。発見時は前髪は乱れた状態で区別はありませんでしたが、区別しやすいようにとイチカは左分け目、ニナは右分け目、と自分たちで決めて分け目を維持しているようです。(ただし、時折こっそり分け目を入れ替えるイタズラを行うこともあるため、区別の際には十分に注意してください。)
◆性格及び行動
性格は体格より差が大きく、職員等による観察から、イチカの方が活発で悪戯好き、ニナの方がやや物静かで内向的な性格であるということが分かっています。性格は異なるものの二人の仲は良く、話す時にはセリフを分担するようにして喋ることもあります。
普段は発見場所である動物研究所内部に居ることが多く、職員と話す姿がよく見られます。しかし特性の研究が一段落してからは外に遊びに行くことも増え、パーク内各地を訪れているようです。
先述の特性を除けば身体能力等に異常はみられず、元気に辺りを走り回ってはちょっとした悪戯(主にイチカ主導で行うことが多いようですが、ニナも楽しんでいる節があります)を仕掛けているようです。
ただ、初対面の相手には驚かす程度の軽い悪戯で済ますことが多いため、被害は主に施設の研究員に及んでいるようです。
保管室内の標本の順番が地味に入れ替わっていました。2人の仕業かは不明ですが、状況からそうだと思われます |
冷蔵庫に入れてあったゼリー飲料の中身がマヨネーズに入れ替わっていた。あれはあれで美味しかったが、体に悪い |
起きたら顔に猫髭が書いてありました。何て古典的な ー ミズメ上級研究員 |
作業中に驚かされて、空の水槽の水を辺り一面に零してしまいました。2人もまさかそうなるとは思っていなかったのか、この時はばつが悪そうに謝ってくれました。根はいい子達なんだなあと思いました―サガミ助手
ー……作文? ―イワヒラ研究員 |
◆野生解放能力
不明です。
・当該個体の分離から消滅開始までは平均で14秒。
・分離後2人の距離が離れるほど消滅しやすくなるが、一定以上離れるとそれ以上時間が短くなることは無い。
・消滅自体の所要時間はおよそ5分~10分程と推定される。(消滅開始時のサンドスター放出量から算出)
・手を繋いでいなくとも、何らかの接触で「1個体」と見做せる状態になっていれば消滅は開始しない。
・必要な接触は直接接触であり、物体を介しての接触(同じ棒を持つ、手錠で繋ぐなど)は先述の接触とは見做されない。
(元動物では一次胚と二次胚がある意味で”非常に密接に”直接接触しているためだと思われる)
・消滅は双方に同じように起こる。
ーこのメモは当該AGの負担等を考慮しない、不当な実験によって得られたものです。検証を行うことは禁止します。
あくまでも対応時の参考に利用するにとどめてください。
実験を行ったキシマ研究員他数名には、退職処分を課しました ー研究開発局 ミズメ上級研究員
動物情報
動物名: アカハライモリ
学名: Cynops pyrrhogaster
分布: 本州、四国、九州とその周囲の島嶼
IUCNによる保全状況: 軽度懸念(LC)
環境省レッドリスト: 準絶滅危惧(NT)
動物概要: アカハライモリは有尾目イモリ科イモリ属に分類される両生類の一種です。アカハラと呼ばれるほか、日本で単にイモリと呼ぶ場合は主に本種を指します。ニホンイモリ(日本井守、日本蠑螈)という別名も存在します。
アカハライモリをはじめとするイモリ属は生物学者のシュペーマンらが発生(特に誘導)の研究に使用したことで有名であり、現在でも学校や研究機関などで同様の実験が行われることがあります。
中でも有名なのが「原口背唇移植実験」(下図)であり、この実験では、イモリの原腸胚初期* の 原口背唇部** を他の胚に移植します。その結果、移植片が周辺の細胞から周囲の組織を 誘導*** してもう一つの頭部(及びそれに付随する各種組織・器官)が形成され、見た目には 双頭の胚(下図) となります。この時誘導によって発生した部分、つまり後付けの頭や神経を二次胚、もとの胚を一次胚と呼びます。
*イモリの成長段階のうち、原腸と呼ばれる器官が形成されてきた段階を言う。見た目はまだ只の球体。
**原口(原腸の入り口)を囲む細胞のうち、上側の部分。形成体と呼ばれる重要な部位
***ある部位が、別の部位に対して、特定の構造への分化を促すこと。この場合、原口背唇部が周囲の外胚葉に働きかけて神経板に分化させている。
移植を正確に行うのが難しいため形成される二次胚の差異も大きいですが、時にはほぼ完全な1つの胚が形成され、2体のイモリの幼生が腹部でくっついたような形となることもあります。
移植位置や周囲の環境などによって寿命は様々ですが、基本的に成体まで成長することはほとんどなく、各種記事等における写真も幼生時のものが大半を占めています。
なお、シュペーマンらはこの実験をクシイモリとスジイモリを用いて行っていますが、日本においては入手の手軽さからアカハライモリを使用する例が多くみられます。
◆画像出典
・写真= 清心女子高等学校ホームページ
・実験図版= 筆者による (原図はJ. Holtfreler and V. Hamburger, Analysys of Development, B.H.Willer, P.Weiss and V. Hamburger編ほか)
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