「はぁ…なんだ?」
「あら、せっかくお土産持ってきたのに、そっけないわね」
ここは第三研究室、宮本室長は今日もせっせと書類整理
だが今日は珍しい来客が来たようだ……
「パークガイドの仕事を終わらせて来たのに……冷たいわね」
パークガイド「桐島美根子」
パークガイドとしての腕がよく、男性ファンも多いため
ジャパリパークの人気パークガイドの一人でもある。
「ほら、お土産のジャパリ印のジャパリまんじゅうみそ味」
「いらん」
「あらら……そういえば小さな主任さんはどうしたのかしら?」
「シャーリィなら長期の研究の応援に駆り出されている、今頃はホッカイのど真ん中だ」
「そう……」
少し残念がる美根子
「……で、俺に何の用だ?」
「あら、お土産以外になにかあるかしら?」
「とぼけるな、こういう時は厄介事を持ってくるに決まってる」
「……ちょっと手伝ってほしいことがあるのよ」
「………なんだ?」
「私が鹿川源三としてアクチャーズ・ホールディングスに潜入していることは知ってるわよね?」
「ああ、要監視対象のうちの一社だな」
「かつて、アクチャーズはジャパリグループの企業理念に賛同し提携、パークのアニマルガールの関係のイベント・企画などを担当していた」
「が、アニマルガールに対する乱暴な取り扱い、そして重大な倫理違反により裁判が行われた上で提携を解除した……」
「だがアクチャーズはその後、勢いを取り戻しつつある」
「ええ、ジャパリグループのほうにもパークの一部運営権の譲渡を毎回要求しているわ……」
「で、そのアクチャーズがどうしたんだ?」
「最近、アクチャーズが新たに研究所を建てたのよ」
「どこにだ?」
「アメリカのカリフォルニアよ」
「アメリカの?」
「表向きには普通の生物を研究するところだけど……どうやら裏ではアニマルガールについて汚いことをやってるようよ」
「サンドスター技術がまた流出したのか?」
「その可能性もあるけど、どうやらそれ以上のことをやっているらしいわ……」
「それ以上?」
宮本は首を傾げた
「クローン技術……それについては知ってるわよね?」
「ああ……尚かつ均一な遺伝情報を持つ個体を作る技術……専門ではないが知識はある」
「どうやらそれとアニマルガール達が関わっているらしいわ………」
「何?」
「アクチャーズはここ数年で普通の動物のクローン技術を成功させて……そしてアクチャーズ関係者がここ数ヶ月で何回もジャパリパークに来ている……理事長曰くなにかあるらしいわ」
「理事長の勘か……」
「で、俺は何をすればいいんだ?」
「私は鹿川源三として研究所に招待されているから、あなたにはその源三の秘書「佐々木浩司」として同行してもらいたいのよ……私だけだと研究のことは覚えきれないしね」
「ああ、わかった」
「あら、物分りが珍しく早いのね」
「フレンズ達に関しては話は別だ……面倒な任務であることに変わりはないけどな……」
「じゃあ、明日の午後に発つわよ。休暇届は既に理事長に承認貰ってるから」
「はいよ……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌々日
カルフォルニア サンディエゴ国際空港
「やっとついたわね」
「飛行機は慣れないな……」
「で、どうするんだ?」
「私の「ファン」が確かあそこに……いた」
一人の男が近づいてくる
「お待ちしておりました……美根子様の「ファン」の者でございます……宮本様、美根子様、フライトはいかがでしたでしょうか?」
(この人が彼女の支援者の一人か……)
「まあ、本当はファーストがよかったのだけど、たまにはビジネスもいいわね」
(そう軽々言えるものなのか…?)
「そうでございますか………では、「お化粧」の場を用意させていただきましたのでこちらへ」
「ええ、ありがとうね」
(しかしまあ、よく支援者がこんなに集まるんだか……)
(女って凄い……)
とあるホテルの一室
「さて、どうかしら?」
「どこからどうみても古臭いおじさんだな……」
「ゴホン……ワシが源三だ」
「声までおじさんだ……で、俺の変装は?」
「あなたは……ここをちょいちょいちょい……っと」
「……見るからに老けたな俺」
「しょうがないじゃない、若いと不審がられるかもしれないし」
「まあ、そうか……」
少し残念がる宮本さん
「……よし、完成よ」
「ではこちらへどうぞ……運転手が待っております」
黒塗りの高級車が裏の入口で待っていた
いかにも役員の車だ
「お待ちしておりました、専属運転手の「ジョーンズ」と申します」
「早速頼むぞ」
ここからは役員「鹿川源三」になりきる美根子
「了解いたしました」
(本当に役員専属の運転手だな……)
早速宮本と美根子は乗り込み、車は走り出す――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ブルルルルッ
「随分と市街地を離れるんだな」
「いかにも怪しいこと研究してそうなところに建てているようよ……」
「まあ、市街地に近いと怪しまれるかもしれないからなぁ……」
「鹿川様、もうそろそろでお付きになります」
「ああ、わかった」
「………」
(一体何があるのだろうか?)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ここがアクチャーズの新たな研究所………)
「お待ちしておりました、鹿川取締役様」
「わたくし、「アクチャーズ・カルフォルニア生物研究所」所長の米沢泰蔵と申します」
いかにも所長という方が出てきた
「いやいや、出迎えご苦労さん」
「わざわざ日本から来たそうで……」
「ワシも生物の研究については興味がある、アクチャーズの未来には生物も必要だからな」
「さっそく案内してもらいたい」
「承知いたしました」
「というわけで、このモルモットがこうなったということです」
(なんの変哲もない研究ばかりだな……これだけなら日本でも出来る)
宮本は心のなかでつぶやく
(本番はこれからよ)
「これにて研究所の研究内容は以上でございます……」
「おやおや、もう終わりかね?」
「せっかくカルフォルニアまで来たのに、こんなのはつまらんな……もっと刺激が欲しいんだが……」
(煽ってるな……)
「………でしたら、「地下」のほうも案内できますが」
「地下?」
(かかった!)
「はい、とても良い刺激があるモノがあります」
少しニヤケながら話始めている……
「ただし内容がちょっと………なので他言無用としていただきたいのですが……」
「この源三、口は堅いつもりだ」
「他人に漏らすつもりはサラサラない」
「でしたら安心ですね……ではこちらに……」
ガシャン
ガチャ
「ほうこんなところに隠し階段が……」
(なにかあるか……)
「厳重にしないといけませんからね」
ガチャ
カンカンカン
カンカンカン
「ではこの扉を開けますと、良い物があります」
「ほう……」
(くるか!)
「早速開けてくれ」
「はい……」
ガチャッ
ドシン
(ゴクリ)
宮本は一気に息を呑んだ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ここは………」
「ある「物」の実験場です」
悲鳴が地下に響いている……
(なんだこの声は……)
(まさかっ……)
「ところで何故アニマルガール達がこのような?」
「こちらの研究所ではなんとアニマルガール達のクローンを作成することに成功しまして、それをつかってちょっとした実験をしているのです」
(クローン!?)
宮本は驚いた
アニマルガール達のクローンは理論上では確立されていたものの、実用例はなく、なにより倫理違反のため
作成は禁止されていた。
(酷いわ……人扱いすらされていないようね……)
美根子は心のなかで呟く
見るからに無残なアニマルガール達の姿があった。
「酷い」
この言葉だけでこの状況を表せた。
しかも使えない個体がでたらそれを容赦なく捨てており、まるでベルトコンベアでの作業のようだ
「しかし、サンドスターとか言うのがなければ、アニマルガール達は存在できないのでは?」
「心配無用です、我々は試作ながらサンドスター製造機を製造することが出来ました」
「これによりアニマルガール達の存在を維持することが出来るようになったのです」
「あの冷風機のようなものが散布装置です」
「なるほど……」
「ちなみにこのビデオはどこへ?」
「研究目的のため、保管したり……外部への購入者もいるのでそこへ」
「値段は?」
「そうですね……確か前の取引は1000万ほどかと」
(裏ルートでの取引か……)
アニマルガール達の悲鳴がずっと響いている。
(くっ!……)
助けて……助けて………と声が聞こえる
(助けてやりたいが……っ!)
(すまない……)
「うむ……ところで、一本もらえるかな?」
「どうぞどうぞ、取締役からはもちろんお金はいただきません」
「それは助かる」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うむ、ここの研究所は問題なさそうだな」
「ありがとうございます……研究所へはまたどうぞ」
「ああ、また来よう」
「では……」
宮本達が乗った車が走り去る
「……はぁはぁはぁっ………」
「頑張ったわね、吐くなら袋あるわよ」
「これくらいは大丈夫だ……だが」
「理事長の勘は当たってたわね…しかも最悪な形で」
「ああ、まさかクローンで作成したアニマルガール達で非合法な実験していたとはな……しかもそれをビデオで撮り裏ルートで多額の取引とはな」
「クローンのアニマルガール達は確認できただけで色々な種類があった……」
「しかもサンドスターの技術まで流出していたとはね……サンドスター研究所の不手際のせいかしらね……」
「ともかく、理事長にはすぐに報告しなければ……すぐに連絡を」
「ええ」
・・・・・・・・・・・
『やはりそうでしたか………』
鷹峰 遥
パークの最高責任者であり、美根子達の上司でもある。
この件についての情報を薄々ながら知っていたため、今回の調査を美根子に依頼した
『前にアクチャーズのIPからサンドスター研究所へのデータベースへ不正アクセスが確認され』
『その時に一部サンドスター技術が流出したようです』
「どうするんですか?理事長」
『あれを放置することは出来ません、こちらで策を考えておきます』
『美根子さん達はこちらへ戻ってきてください』
「了解しました」
ピッ
「多額の金が動くとは言え、何故あんな大規模な施設をこんなところに建てる必要があったのかしら……」
「大規模な施設でなければあの装置を動かせないのだろう」
宮本は冷静に話す
「しかし、同じ人間とは思えないやり方ね………」
「ああ………」
(俺も何かを間違えれば……ああなったかもしれないな………)
「…………」
(そういえば、奥の方に水槽があったけど……その中に何かが居たような………)
(気になるわ………)
美根子達はすぐに特殊メイクを解き、空港からジャパリパークに戻っていくのであった
続く
・・・・・・・・・・・
「ここは…どこ……?」
「私は…………何を……」
「わからない……」
「助けての声?……水槽の外から聞こえる声……?」
「悲鳴…?」
作・ダイヤモンド
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