ジャパリコインとオマキザル

ページ名:Capitalized_Capuchin_Monkey

でんしまねー


「『フレカ』、でんしまねー、『ジャパリコイン』、こいん。」

「この『フレカ』に、『コイン』が100枚も入ってるってこと?」

「あーと、まあ、そうだな、カードの中のICチップにデータが…って言ってもわかんないか。」

「で、こっちが『日本円』。なんだかおじさんの顔が書いてあるねぇ。」

「パークの外で使う「お金」だよ。『コイン』とおんなじで、色んな物と交換できる。この『日本円』いっこで、『ジャパリコイン』いっこ分だ。」

「ふーん…。どう違うの?」

「「日本円」は内地で使えるお金で、「ジャパリコイン」はパークでしか使えない。」

「で、お客さんがパークに来たら、「日本円」で「ジャパリコイン」を買うわけさ。どれくらい「ジャパリコイン」を持ってるかは、『フレカ』に記録される。」

「この、コインの『ジャパリコイン』を買う物好きもいるけど、たとえばこの銀色「コイン」なら4%は手数料で取られちゃうから、あんまりやる人はいないな。記念に持って帰る人もいるみたいだ。」

「へー?4ぱーせんと。4分の100ね?」

「正解だ。100コイン買うには、104コイン分の「日本円」を払わなくちゃいけない。」

「100コイン分の「日本円」を出しても、96てん15くらいコインしかもらえない。」

「あーっと…合ってるな。計算速いな。」

「えへん。」

「なんで4ぱーせんと取られるの?」

「『コイン』を作るのも大変だからさ。金属を集めないといけないし、ニセモノが作られないように特別な印を付けないといけない。それに、『コイン』は土に還らないからね。」

「なーんだ。『コイン』をいっぱい作れば、ジャパリまんじゅういっぱい食べられるなーって思ったのに。」

「ははは、残念だな?だけど、良いところに目をつけてる。」

「「日本円」は、内地の「日本銀行」とかが作るお金で、「ジャパリコイン」はパークが作ってる。」

「なんでパークが『コイン』を作るかって、作った分は自分のものになるからだよ。」

「ずるい!私にも分けてよ!」

「分けてるんだよ。この前街に出たときも渡されただろ?『おこづかい』。」

「あれ、でも、『フレカ』のジャパリコインは「データ」でしょ?なら、たくさん作れるんじゃないの?」

「たくさん作ればお金持ちだよ!」

「受け取ってくれる人がいない。『フレカ』の「ジャパリコイン」はパークでしか使えないからな。」

「内地では「日本円」が必要だから、結局「ジャパリコイン」をお客さんに売って、「日本円」にしないといけないのさ。」

「はー…。だから、『日本円』の代わりに『フレカ』を作ったのね?」

「その通り。あともう1つの理由としては、『フレカ』があれば、誰がどこで何を買ったのか、交換したのか、全部記録が残るというのがある。」

「『コイン』がたくさんあると、数えるのが大変だし、誰が買ってったのかいちいち覚えてられないからね。」

「そんなの覚えてどうするのさ。」

「それでそのお客さんの好みが分かるだろう?おまんじゅうをよく買う人には新作のおまんじゅうを見せたり、写真をいっぱい買う人には写真をいっぱい見せたり。」

「うっわ、ストーカーだね!」

「否定はしない。僕らパークは、お客さんみんなのストーカーなのさ。」


 

硬貨鋳造の意義について


 新入課員にまず認識頂きたいのは、われわれが作るのは「お金」というよりもむしろ、「教育ツール」だということだ。

 そもそも『硬貨』はほとんど使われない。まず買うだけで5%の手数料がかかるし、端数切り上げでお釣りももらえないから買い物するにも損だ。お客さんも職員もだいたい『フレカ』で済ませてしまう。だいたい、今どき現金決済は流行らない。内地では生体認証が普及しているから、財布も『フレカ』もなし、手ぶらで買い物できてしまう。

 では『硬貨』は何のために使われるか?実は、新たに見つかったアニマルガールに、『貨幣』『通貨』の概念を教えるために使われているのだ。

 アニマルガールにいきなりカードを渡して、「この中に100コインが入っているから、そこのお店で買い物しておいで」と言っても、理解してもらえない。彼女たちはカードそのものと商品を交換しようとするか、あるいは、カードを端末に置いて決済は済ませて来るものの、自分が何か代価を払ったという意識は無い。親切心で商品をもらったものだと思いこんでいたりする。

 だから、価値標章としての『硬貨』が必要なのだ。『硬貨』と商品を交換してもらうことで、『硬貨』が色んな物と交換できるものだと理解してもらえる。

 かつて2005年に、オマキザルに貨幣という概念を教え込もうという実験がイェール大学で行われたことがある。

 オマキザルたちは最初、学者たちが置いた銀色の円盤にまったく興味を示さず、手渡されても食べられないと見るや放り捨ててしまっていた。しかし、あるときオマキザルの1匹が、渡された『コイン』を学者に投げつけたところ、学者がブドウの実を差し出したことから、貨幣概念の学習が始まった。やがてオマキザルたちは、価格の概念や物価の変動も理解するようになり、さらに【検閲削除】という行動も見られたそうだ。

 便利な電子マネーの『フレカ』も、やはり根底に『硬貨』があるということだ。アニマルガールたちが『フレカ』に慣れるようになるまでの教育ツールとして、この『硬貨』は必要不可欠なのだ。「造幣課は金食い虫」だなどと揶揄されることもあるが、諸君にはこの仕事の意義を理解して職務にあたってもらいたい。

 次項からは、硬貨そのものの性質について解説する。誤飲時の安全性や環境影響抑止などにいかにわれわれが注意を払っているか、認識してもらいたい。


 

【Coffee Break】ジャパリコイン「仮想通貨」計画の顛末

 『フレカ』開発にあたっては、ジャパリコインを日本円から独立した「仮想通貨」として発行する案も検討されていた。しかし、実証実験までは漕ぎ着けたものの、パーク特有の事情により、結局頓挫してしまっている。というのも、仮想通貨というのはネットワーク上の複数ノードで「誰がいくら持っているか」の台帳を共有し続けるものなので、決済で常用するにはネットワーク環境への安定した接続が不可欠だったのだ。対してパークは、環境保護の観点から基地局の数は都市部ほど多くはないし、山岳や高地も多い。今後の技術革新で、離島部や山岳部でもネットワーク通信が安定するようになれば、あるいは仮想通貨化の芽もあるかもしれない。

 

郵政局造幣課 業務マニュアル Ver. 1.3.1より抜粋

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