もうすっかり空も暗くなり、アパートの玄関前の灯りが足元に疲れた猫の影を落とす。
玄関の扉を開け、疲れた身体をベッドに放り投げる。
暗く映し出される天井は、眠気のせいで何度も何度もぱちぱちと黒く姿を消す。
今日のラーメンは格別に美味しかった。
それも、いつも通りのチャーシュー麺だったが、大将がお肉をサービスしてくれたおかげだ。
お腹いっぱい、腹十二分目まで食べることができた。
「……はぁ……………………」
眠い。眠い。このまま寝たい。寝てしまいたい。
容赦なく私を照り付ける電灯が、「やらなければいけないことがあるだろう」と容赦なく目覚めを促す。
お風呂とか。片付けとか。アニメとか。ゲームとか。
とりあえずお風呂には入らなきゃ、と身体を起こしたところで。
「………………あーーー……」
露骨に隠れるように、隅に溜まったごみ袋。……いや隠すように押し退けたのは私なんだけど。
カントー区のごみ収集の曜日はいつだったか。
冷蔵庫に貼ってあるポスターを確認しようと視線を向け、そこで誰に言われた訳でもなくぎくりと表情が固まる。
冷蔵庫の中身も、いつか整理しないといけない。
思い直し、眉をひそめる。今すべきことはごみの片付けでも、冷蔵庫の片付けでもない。お風呂の準備だ。
※こうしてまた、冷蔵庫を片付ける日が遠のいたのであった。
床に散らばった(雑ではあるが一応畳まれてはいる)衣類をかき分け、パジャマとタオルを探す。
数分後。
「ふぅ、……よし!」
タオルよし。着替えよし。新しく買ってきたシャンプーも詰め替えた。よし、入ろう。
「っ……あー………………はぁ……」
「ああぁぁぁぁ……!!!」
「せっかく全部脱いだのに!!」
湯船にお湯が張るまで何をしていようか。
ゲームでもしていようかな。
再び服を着るのが面倒になって、ジャージだけ羽織ってリビングへ歩いた。
テレビのワイドショーの笑い声が、まるで自分を嘲笑しているように聞こえてくる。
リモコンを持ち、画面が暗くなった事を確認してこたつに座り込む。
(あー……これ……寝ちゃうやつ……)
足を包む温もりが睡魔となって、再び私を襲う。
眠たい目でパソコンの画面を覗き込むが、うまく情報が頭に入ってこない。
瞬きの回数を増やすという気休め対抗策で、なんとかお風呂のアナウンスまで耐えようとする。
明日の天気を調べて、メールの確認をして、けもノートのログを流し読みして、充電残量通知の✕マークを押して。オンラインゲームにログインする。
(今日は何のイベントがあったっけ……)
それにしてもしまったな、たっぷり満たされたお腹で潜り込むべきじゃなかった。
ベッドに寝転がっていた時の数倍眠い。
そのまま、ラーメンで膨れたお腹をさすりながら目を閉じる。
(……はっ)
いつの間に潜り込んで、寝そべってしまっていたのか。
ご丁寧なことに、パソコンは座布団の上に置かれている。
慌ててこたつから身体を射出させ、パソコンを机上に置き直す。
危なかった。もう少しで寝てしまうところだった。
コントローラーよし。サイダーよし。ヘッドホンよし。音量設定よし。突然の画面暗転。
「えっ」
充電ケーブル、挿してなかった。残り少なかった充電が、ついに0%になったのだ。
「っっ……あーもーぉぉぉ……!」
''お風呂が湧きました。保温設定は40℃です。''
登場人物
筆者: idola
お読みいただきありがとうございます。
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