p.m.10:30

ページ名:22時30分 idola

 

もうすっかり空も暗くなり、アパートの玄関前の灯りが足元に疲れた猫の影を落とす。

 

 


玄関の扉を開け、疲れた身体をベッドに放り投げる。
暗く映し出される天井は、眠気のせいで何度も何度もぱちぱちと黒く姿を消す。

 


今日のラーメンは格別に美味しかった。
それも、いつも通りのチャーシュー麺だったが、大将がお肉をサービスしてくれたおかげだ。
お腹いっぱい、腹十二分目まで食べることができた。

 

 

「……はぁ……………………」

 

 

眠い。眠い。このまま寝たい。寝てしまいたい。

容赦なく私を照り付ける電灯が、「やらなければいけないことがあるだろう」と容赦なく目覚めを促す。
お風呂とか。片付けとか。アニメとか。ゲームとか。

 

 

とりあえずお風呂には入らなきゃ、と身体を起こしたところで。

 

「………………あーーー……」

 

露骨に隠れるように、隅に溜まったごみ袋。……いや隠すように押し退けたのは私なんだけど。

 

カントー区のごみ収集の曜日はいつだったか。
冷蔵庫に貼ってあるポスターを確認しようと視線を向け、そこで誰に言われた訳でもなくぎくりと表情が固まる。

冷蔵庫の中身も、いつか整理しないといけない。

 

 

 

思い直し、眉をひそめる。今すべきことはごみの片付けでも、冷蔵庫の片付けでもない。お風呂の準備だ。

※こうしてまた、冷蔵庫を片付ける日が遠のいたのであった。

 

 

床に散らばった(雑ではあるが一応畳まれてはいる)衣類をかき分け、パジャマとタオルを探す。

 

数分後。


「ふぅ、……よし!」

 

タオルよし。着替えよし。新しく買ってきたシャンプーも詰め替えた。よし、入ろう。

 

 

 

「っ……あー………………はぁ……」
「ああぁぁぁぁ……!!!」

 

せっかく全部脱いだのに!!

 

 

湯船にお湯が張るまで何をしていようか。
ゲームでもしていようかな。

再び服を着るのが面倒になって、ジャージだけ羽織ってリビングへ歩いた。

 

テレビのワイドショーの笑い声が、まるで自分を嘲笑しているように聞こえてくる。
リモコンを持ち、画面が暗くなった事を確認してこたつに座り込む。

 

 

(あー……これ……寝ちゃうやつ……)

 

 

足を包む温もりが睡魔となって、再び私を襲う。

 

眠たい目でパソコンの画面を覗き込むが、うまく情報が頭に入ってこない。
瞬きの回数を増やすという気休め対抗策で、なんとかお風呂のアナウンスまで耐えようとする。

明日の天気を調べて、メールの確認をして、けもノートのログを流し読みして、充電残量通知の✕マークを押して。オンラインゲームにログインする。

 

(今日は何のイベントがあったっけ……)

 

それにしてもしまったな、たっぷり満たされたお腹で潜り込むべきじゃなかった。
ベッドに寝転がっていた時の数倍眠い。

 

そのまま、ラーメンで膨れたお腹をさすりながら目を閉じる。

 

 

 

(……はっ)

 

 

いつの間に潜り込んで、寝そべってしまっていたのか。
ご丁寧なことに、パソコンは座布団の上に置かれている。

慌ててこたつから身体を射出させ、パソコンを机上に置き直す。

 

危なかった。もう少しで寝てしまうところだった。

コントローラーよし。サイダーよし。ヘッドホンよし。音量設定よし。突然の画面暗転。

 

 

「えっ」

 

 

充電ケーブル、挿してなかった。残り少なかった充電が、ついに0%になったのだ。

 

「っっ……あーもーぉぉぉ……!」

 

 

 

''お風呂が湧きました。保温設定は40℃です。''


登場人物

筆者: idola
お読みいただきありがとうございます。


tale カントー 試験解放区

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