Aと死と不死身と隠した優しさ

ページ名:Aと死と不死身と隠した優しさ


プラナリア「――はーい! それじゃさよならでーす!」

プラナリア「んー、いい事をすると気持ちがいいですねぇ」

プラナリア「……まさか、あのご夫妻がK博士のご両親だとは……あの親にしてこの子ありといった感じでしょうか!」

老婆「あら……困ったわね……」

プラナリア「ん? どうかしましたか?」

老婆「あぁ、貴女は……尼さん?」

プラナリア「惜しい! でも殆ど正解なので合格です!」

老婆「あら、それは良かった!」

プラナリア「私はフレンズのプラナリアって言います! 何かお困りでしたら力になりますよ!」

老婆「可愛らしいフレンズさんね。なら、少し頼まれてくれるかしら?」

プラナリア「もちろん!」

老婆「実は人を探しているのだけれど……あの、ちょっと卑屈そうな目をした子で、このパークに居るって話なのね?」

プラナリア「んー、その人のお名前は?」

老婆「ごめんなさい、それは言えないの。分かって頂戴な」

プラナリア「それは中々難しいですねぇ……でもパークの外の知り合いさんならフレンズじゃなさそうです」

老婆「ねぇ、私もう行かなくちゃいけないのね? だからもしその子に会ったらコレを」

プラナリア「手紙?」

老婆「その子がその手紙見れば分かるわ。その便箋にひまわりの絵がかかれているから」

プラナリア「なら大丈夫ですね!任せて下さい!」

老婆「ふふっとっても頼もしいわね」

プラナリア「修道女ですからね!頼られてナンボです!あはははは!」

老婆「それじゃあ、よろしくお願いするわね」

プラナリア「はい! 貴女に神のご加護がありますように!」

老婆「ふふっ、なら私はその子に加護がいくように祈っているわ。さようなら」

プラナリア「……。――――あの!」

老婆「なにかしら?」

プラナリア「ええと、こんな事私が言うことでもないんですけど…………」

老婆「…………あぁ。そういうこと。貴女はとっても優しいフレンズさんなのね。ありがとう」

プラナリア「……やっぱり」

老婆「そんなお顔しないで。貴女はお日さまみたいなお顔が似合うわ、軒先で日向ぼっこできるくらいのね」

プラナリア「…………」

老婆「では、今度こそ。さようならね」

プラナリア「またの……またのご来園をお待ちしていますよ!」

老婆「えぇ。もちろん。私は約束を破った事がないのが自慢なの」

プラナリア「…………」

プラナリア「……行ってしまいましたか」

プラナリア「……祈りましょう。心から。私は私にできることを」

田沼「はぁ……はぁ……!こ、ここまでくれば……」

プラナリア「おや!田沼千恵ちゃんじゃないですか!こんにちわ!」

田沼「アンタは……え、周りにあの天才いない!?」

プラナリア「えぇ、博士はお仕事中です。それにしても凄い汗ですけど」

田沼「ラボにK博士の姉妹が来てて……いやもう全部クマムシと後から来たたにしに押し付けてきた……」

プラナリア「あははは!それは災難でしたね!」

田沼「笑い事じゃないよ全く……とんだ目に合った……一人が恋しい」

プラナリア「引きこもりオーラ半端ないですね! なんか似てる人この前みましたよ!」

田沼「引きこもり+天才ハッカーと言ってほしいね。私に似てるとか、ご愁傷様だ……ん、それは?」

プラナリア「あー、えっと、千恵ちゃんって、昔……知り合いのおばあさんとか居ました?」

田沼「いたけど?」

プラナリア「なら今すぐ――――」

田沼「あ!! それ! その便箋!」

プラナリア「ですよね!ならもう早く後を追って」

田沼「もー、あのババアまたこんな事しやがって。嘘だよあれ」

プラナリア「へ?」

田沼「あのいけすかないババアに何言われたか、何を勝手に『悟らせた』かは知らないけど、全部ウソだから」

プラナリア「えぇええええええ!!!?」

田沼「昔から嘘が得意なババアだよ……多分いまごろニヤニヤ笑ってる」

プラナリア「で、でもそのようなお方には見えませんでした……

田沼「ならアンタが騙されたってだけ。ったく、ほら手紙」

プラナリア「は、はい。どうぞ」

田沼「はぁ。よくもまぁ、こんな事するよなぁ、SNSでクソリプ送る奴と同等だからこんなの」

プラナリア「クソリプって……あのおばあさんは一体……」

田沼「あのババアは、私が小さい頃。まだ両親に棄てられてすぐの頃にであった近所の老いぼれだよ」

プラナリア「…………千恵ちゃん、私、貴女のプロフィールを見たことありますが……貴女のご両親は貴女を棄てたのではなく…………」

田沼「だから?……私を置いていった事には変わりない。K博士もアンタもババアも。知ったように察する奴、嫌いなんだよ。だからなんだ、それで、私の境遇胸中さっして満足かよ、強者感出して自己満足に浸ってなよ」

プラナリア「……ごめんなさい」

田沼「…………」

プラナリア「とでも言うと思いましたか!!」

田沼「!?」

プラナリア「田沼千恵ちゃん!!貴女は生きているのでしょう!そんなジメジメじゃ絶対後悔するんですよ!」

田沼「し、知ったような口をきかないでよ!」

プラナリア「いいから聞きなさい!説法でなく説教です!アナタは生きています!ならそのジメジメは悪影響でしかありません!」

田沼「これは私の性格だ!性格まで否定するとかアンタも何も分かってないよね!」

プラナリア「大人になれとはいいません!引きこもりも大いに結構!!でも……そのじめじめは性格じゃないです!ただの意地です!」

田沼「……っ、そんなこと!」

プラナリア「いいですか!貴女は生きているんです!これからたくさんの幸せな時間があります!だったら止まっている『時間』が勿体ないでしょう!」

田沼「どんな時間を過ごそうが私の自由だ!!」

プラナリア「だから不幸せになる時間を過ごさないよう私が声を上げているのです!迷える子羊を導く私(シスター)が!」

プラナリア「声を上げねば伝わりません!想いは形にしないと相手に感じられません!それを察してとか何だとかウダウダ悩む時間で自らの時間を縮めるのは絶対にやってはいけません!!」

プラナリア「時間は……どうやっても戻らないのですよ!!」

田沼「……うるさい……!フレンズに人間の気持ちがわかるか!人間じゃないクセに!!」

プラナリア「人間じゃないから人間に見えないモノが見えるんです、価値観の違いが愛を生むのです」

田沼「愛なんて……私には……必要ない、今までずっと無かったものだ」

プラナリア「いいえ。それは違います。辛いこともあったでしょう、悲しい事も、全部を諦めて投げ出したくなった時もあったでしょう」

田沼「……」

プラナリア「でも、貴女は生きている。明確な死という終わりを持った立派な生命として懸命に生きている。その中で、一度も愛を感じなかったとは言わせません」

田沼「……私は、鬱屈してる」

プラナリア「本当に鬱屈して全部を嫌っている人は、この手紙を見た時嬉しような顔しませんし、自分のご両親を思う時に悲しげな目もしませんよ」

田沼「…………どうせ、全部無駄なんだよ。私には何も出来ない」

プラナリア「そんな事ありません。大きな結末は変わらないかもしれない、けれどその結末に至る道は、どうにでもできます」

田沼「…………でも」

プラナリア「……はぁ」

田沼「……え、アンタなんでそんな髪がウネウネ」

プラナリア「はーーもう!!これだから思春期真っ盛りな少女は!変身!」

田沼「え、ちょ、なに大人体型になって!?」

プラナリア「私はある意味太陽の子!シスタープラナリア!!パーフェクトフォーム!」

田沼「いや知らないけどそれ!?」

プラナリア「コンテニューするまでもないからクリアする!」

田沼「そりゃ不死身だからコンテニューしないよね!?というかその体型ってヤバいんじゃ!?」

プラナリア「体型変化だけなら何ら問題はありません!私の本気ならワリと洒落にならないくらいヤバい事になりますが!今必要なのは愛の導きです!」

田沼「あ、愛って……そ、そういうのが鬱陶しいんだってば!」

プラナリア「そうですか。それはそれで良いのです!!」

田沼「でしょ?だからもう」

プラナリア「ならもう私の意地で!貴女を抱えておばあさんの後を追います!!」

田沼「いやだってもう追いつかな」

プラナリア「それは人間の話です!私は、人間じゃない。フレンズさんなんですよ?」

田沼「どうして姿勢が低いの?どうして私をラグビーボールみたいに抱えるの?」

プラナリア「舌噛みちぎりたく無かったらお静かに。一瞬だけ脚元だけ、ちょっぴり本気出しますから」

田沼「え?どういう?」

プラナリア「そうですねぇ……人って、身体が壊れちゃうから常に全力出せないって話、知ってます?」

田沼「そ、そんなの常識で……」

プラナリア「では問題です。私の野性解放時の能力は……なんでしょう?」

田沼「……!!待っ」

プラナリア「さぁプラナリアたる再生の力を御開帳です!!――――ハレルヤ!!」

田沼「きゃああああああああああ!!!!??」

 


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プラナリア「……ふぅ、やはりこの公園は良いですねぇ」

プラナリア「たにしちゃんは、ここでいい感じの即興劇を繰り広げたといいますが、周りの視線は気にならなかったのでしょうか?」

プラナリア「アダルトモード、もといパーフェクトモードの私なら魅惑の美人シスターとして視線を集めたのでしょうが、いかんせんロリモードですからねぇ」

田沼「あ、いた!」

プラナリア「あ、こんにちわ!千恵ちゃん!」

田沼「こんにちわじゃないよ、昨日私をあのババアのトコに放置して姿くらまして……」

プラナリア「だってその方が千恵ちゃんは、千恵ちゃんになれたでしょう?あのおばあちゃんと会った時も、会った後も」

田沼「……そういう全部を見透かして動いて、いい気になるの嫌いだよ」

プラナリア「でも止めません。私はシスターですからね!」

田沼「そっか…………。……いい天気、だね」

プラナリア「…………ええ、とっても」

田沼「…………今日」

プラナリア「えぇ」

田沼「……。…………今日の、朝方にさ。あのババア、くたばったって。電話」

プラナリア「……えぇ」

田沼「昨日まで元気だったんだって。それで、なんか今朝、急に死んだらしいよ。なんか知らないけど」

プラナリア「痛み無くお亡くなりになったのなら、何よりです」

田沼「まぁアレだね、天涯孤独の身で孫も誰も居ないひとりぼっちだったからか、私の事をべらべら看護婦とかに話してたんだって」

田沼「可哀想なババアだよねぇ、私の事しか話題無いとかホントうける。引きこもりでももっと話題あるもん」

田沼「なんか私に会いに来るのも急だったんだって、今思えば死ぬ前に変な集団の仲間入りした私を冷やかしてやろうみたいな感じだったのかな。嫌味なババアだよね」

プラナリア「……。えぇ」

田沼「もっとウケるのがさ、あのババア自分の事一切話さないの。私今朝知ったよ、死を迎える為の病院があるって」

プラナリア「…………」

田沼「もう昨日も、ちゃんと食べてるかとか、学校行かなくてもいい男みつけりゃ勝ちだとか、金は心配するなとか、くっそうるさい、迷惑でまさに老害って感じでさ」

田沼「アンタ他人だろって、親戚でも家族でも無いだろ構うなよって何度言っても、いいからってさ、笑ってんだよ。なに笑ってんだなにが面白いんだって感じじゃん?」

田沼「ならあのババアさ。いいからとしか言わないの、私は十分楽しかったからって。貴女に会えてよかったからって」

田沼「答えになってないよね。意味分かんない、あのババアずっとそうだ」

田沼「何も話さない、何も自分の事言わない、そのくせ哀れに思ったのか私には構ってきてさ。いい迷惑だ」

田沼「まぁ、親の金に加えてババアの金も入るし私金持ちなんだよね。だからまぁありがたいといえば有り難い」

田沼「……ほんっといい迷惑だった、ほんと死んでせいせいした。あんな嘘つき……。自分はずっと元気だって言ったのに、全然持病とかあったらしいし。金持ちだから学費とか生活費出すって言ったのに全然金持ちじゃないし、普通だし。意味分かんないから」

田沼「…………」

田沼「……手紙、読んだんだ。…………私、あのババアに、名前教えて無かったんだ。ぜっったい教えるもんかって、こんなババア信用しないって」

田沼「………でも、最期に……文の最後に……『大好きですよ千恵ちゃん』って。ほんと趣味悪いよね、最初から知ってたんだ、名前」

田沼「だけど、名前言わないままの私に合わせて……ずっと嘘ついてて、勝手に察したんだよ、私を」

田沼「だから……だから嫌いなんだ。知ったようにただ笑う奴が。全部言わないでさも当然のように誰かのために動く偽善者が」

田沼「それで……結局いなくなる。残った私を置いて……いなくなるんだ」

プラナリア「…………千恵ちゃん」

田沼「…………なに?いつの間に大人モードになってるの、やめてよ、抱きしめないでよ苦しいんだよ」

プラナリア「……よく、頑張りましたね」

田沼「…………っ。……知ったように、言わ……っ、ないでよ……」

プラナリア「えぇ」

田沼「嫌いだ……みんな、みんな……嫌いだ……っ」

プラナリア「えぇ。」

田沼「…………ぐっ、私は、泣かない。からっ。私は弱くない……っ」

プラナリア「知っていますよ……」

田沼「……っ…………っ」

プラナリア「…………」

田沼「…………」

プラナリア「……」

田沼「…………ぇ。ねぇ」

プラナリア「なんですか?」

田沼「……アンタは、死って。何だと思う、不死身のアンタは、死をどう思ってるの」

プラナリア「……そんなもの、決まっています。死とは……明確な終わりです。それをどう思うかなんて、本人が決めることで、第三者が強制することじゃありません」

プラナリア「死は救いである必要は無く、幸福である必要もない。死は悲しい場所でなないというのも、本人が選び自覚するもの。……第三者は、ただ静かに耳を貸すだけで良いのです、それ以上の干渉は冒涜です」

プラナリア「そして……」

田沼「?」

プラナリア「死は。誰かの時間へのバトンタッチです」

田沼「…………詭弁だね」

プラナリア「ふふっ、修道女ですから」

田沼「……もういいよ、その、ありがとう。ちょっとスッキリした……かも」

プラナリア「それは何よりです。では」

田沼「何処に行くの?」

プラナリア「私達の家族の所へ。です」

田沼「……ふん、私は、まだ認めてない。……けど」

プラナリア「おや」

田沼「アンタの手くらいなら、取ってあげる……」

プラナリア「ふふっ。では帰りましょうか」

老婆「そうだねぇ」

プラナリア「え」

老婆「yeah」

プラナリア「ええええええええええええええええええええ!!!!??」

老婆「大成功ぅうううううううううううううううう!!!!!」

田沼「いえぇええええええええい!!!ババア最高!!老いぼれのくせに!」

老婆「何いってんだい!まだまだ現役だよクソガキ!!」

プラナリア「え、え?えどういう、え!!?」

田沼「だから言ったでしょ。昔から嘘が得意って」

プラナリア「うぇええええええええええ!!?」

田沼「騙されたな!バーーーーカ!!」

プラナリア「あははっはははっははははっははは!!!めっちゃ騙されたぁ!あははははは!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「翌日」


田沼「あ。」

峰岸「ふふっ、コミケの手伝い、よろしくお願いねん♡」

 


Tale

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