私とサンタとプレゼント

ページ名:Amami rabbit 1

 

 

 

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こちらはアマミノクロウサギのアニマルガールが生まれてからクリスマスを楽しむまでの体験を文章化し、読みやすいよう、章ごとに分けて掲載しております。
一部の章において、専門的な知識や当職員にしかわからない場面が存在することから、アニマルガール本人の了承のもと、添削を行っています。ご理解・ご協力をお願いいたします。
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生まれた日と、その時のたくさんの初めてを、これに綴ろう。
怖くなったとき、寂しくなったとき、勇気がほしいときに、思い出せるように。

 

私は、フレンズさんとガイドさんのおかげで……。

サンタさんに出会えて、いっぱいプレゼントをもらったんだ。

 

1. はじめての私(クリックで開く)1. はじめての私(クリックで閉じる)

 

暗い。

何も見えない。

……ううん、違う。
目を、閉じているだけ。
開けば、光が見える……そんな暗闇。
それが、今見える景色と、わかること。

 

「……??」

 

目を開くと、左に青色、右に茶色。
空と、土だ。横たわっている、と理解した。

どうしようか。

 

「……んっ……と。」

 

とりあえず、このままだと死んじゃうから、起き上がることにした。

体に変な……異常とかは感じない、動く元気はありそうだ。
しいて言えば、どれくらい横たわっていたのか分からない、ちょっぴり重い……そんな感じがする。

 

(……。)

 

あたりは、静かだ。
誰もいない、私しかいない、孤独……そういった思いが湧いてくる。

緑……木々に囲まれている。
あと、ちょっぴり寒い。

どうして、私はここにいるんだろう。

 

"ここに居てはいけない"

 

そう、感じた。
なぜ?

 

"それは、ここだと何が出てきて、私を"

"私に、ひどいことをするかもしれないから"

 

逃げなきゃ。
安全なところへ。
襲われない、どこかへ。

 

前に足を踏み出す。

 

「どこか……どこ、かな……。」

 

しかし、一歩、二歩と踏み出して、自分の状況を思い知った。

 

"ここは、どこですか?"

"私は、なんですか?"

"どうして、ここにいるんですか?"

 

どうしようもない疑問が浮かぶ。

 

"なんで" "どうして" "こわい" "私は"

 

そんな思いが、駆け巡って──

 

 

 

2. はじめての水2. はじめての水

 

──しばらくして、水辺にたどり着いた。

思えば起き上がってから、何一つ口にしていない。

 

気づけば、水を口に含んでいた。

 

(水……良かった、美味しい……。

……私……何も考えてなかった。
そのまま歩き続けてたら……。)

 

ある程度のどを潤し、ようやく冷静になったところで、そう思った。
ひたすら歩き回った上でカラカラになってしまったら、逃げるも何もないのだ。

ほっと一息つく。

 

(……ここは……。)

 

水辺だ、誰かが水を飲みに来るかもしれない。
そしたら、ここがどこなのか聞ける。
安全な場所を知っているかもしれない、私のことを知っているかもしれない、わたしのことを……。

 

"食べようとするかも、しれない"

 

そう思った瞬間、いや、そう思ったときには、あたりが恐ろしく感じていた。
私を救ったこの水辺でさえ、怖いと感じてしまうほど、恐怖を感じていた。

 

"苦しい" "怖い" "助けて"

 

身体が震える。

頭が痛む。

寒くて、痛くて、こわい。

 

"助けて"

 

……けれど、震えと痛みは意外とすぐに収まった。

水辺は、私を襲わない。
木々も、地面も、空も……私を襲うことはない。
そんなの、当然だ。

そんな当然のことにすらおびえて、何に助けを求めているのだろう。

なんて考えるとおかしく思えた。
乾いた笑いが、自然とこぼれてくる。

 

「ふ、ふふっ……ふ……ひ、ぐ……っう……。」

 

涙とともに。
力とともに。
弱音とともに。

 

「なんで……?なんで、私……こんな、目に、遭うの……?」

 

目の前が暗い。
立ち上がる前の、目を開く前のときのように……そのときよりも暗い。

そんな暗闇が広がったと認識するより早く、何も考えられなくなった。

 

 

 

3. はじめての声3. はじめての声

 

体が揺れる。
音が聴こえる。
なのに暗い。

 

(……?揺れ、てる?)

 

揺らされている……そう感じる。
なぜかはわからない。

あと声。
声が、聞こえる、聞かされている。

 

(だ、れ……?)

 

さっきより暗いのは、誰かがいるからだろうか。

……誰かが、いる?
誰が、どうして?

 

「……き、なぁ……、……したら……」

(……あ。)

 

まさか。

 

「……に、た、うが……て、わた、ちか、じゃあ……」

 

鼓動が、頭に鳴り響く。
息が、苦しい。

 

「っあ、あ……!」

「あ!きこえま、か?えっ、大丈夫で、か?」

 

怖い、目を開きたくない、でも何か、どうにか……。

 

「……苦しそう?ええと……うーん……。
んー……あ、そうだ。」

 

体が動かない。
逃げようにも、怖くて何も浮かばない。

 

(……?)

 

頭に何か、動くものが乗った。

ゆら、ゆら……と、ほんのり揺らされる。

なんだろう。
なぜか、呼吸が落ち着いて──

 

「よし、よし……。どこか、痛いのですか?よしよし……。」

 

何がなんだか分からなくて、目を開ける。

 

「……ん……?」

 

思っていたよりすんなりと見えた景色には、しかし何も……木々くらいしかない。

森の中だ、としか分からなかった。

 

(上のほう……頭、なに……?)

 

気がついた?そんな声が聞こえる中、私は上を向く。

垂直に見える地面、水平に伸びる木々、そして……。

 

「……手?」

 

おそらく頭から離れたのだろう、そんな手が浮いていた。

 

「ええと、気分は?私の声、聞こえてます?」

 

声の方を見ると、そこには──

なぜか怖く感じない"人"がいた。

 

 

 

4. はじめてのフレンズ4. はじめてのフレンズ

 

彼女に促され、水辺にあった切り株に腰かけた。
彼女は、私が落ち着くまで静かに待っていた。

 

落ち着いた頃、私から声をかけてみた。

 

「あ、あの。ご心配、おかけしました。えと……。」

「いいんですよ、元気そうで何より。」

 

この人、は。私を食べたりしないだろうか。

 

(多分、小さいから大丈夫。ううんでも、見かけによらず危ない人かも……。)

 

「……ううん、別の意味で元気なさそうですね……?」

「あっ、えと、だい、大丈夫……です……。」

 

でも、なんだか安心する。初めて出会った人……のはずなのに。

 

「わた、私……その、何がなんだか、わからない……というか。」

「わからない……?あっ。
名前、言って無かったですね。」

 

──名前。

 

(そうだ、私は誰なんだろう。)

 

「私は、ウグイスっていいます。
あなたは……。」

「……その……私、ええと、ウグイスさん。
私、自分が何かも、わからないんです。」

 

ウグイス。
聞いたことがある、知っている……気がする。

 

「もしかして、生まれたばかり……なのかもしれませんね。」

「生まれた……?」

「はい、ん……ええと、私もあまり詳しくないのだけど。
私たちは、いつの間にかこの姿で生まれるんです。
ガイドさん……私たちフレンズに詳しい人が、教えてくれました。」

「ガイド……さん、フレンズさん?」

「困りました~……近くにガイドさんとか、いないかな……?」

 

(よくわからないけど、私やウグイスさんのような人と、それとはまた違う人がいる……のかな。
怖い……私みたいな人だって、まだウグイスさんにしか、会えてないのに。)

 

「その、ガイドさん?って、怖いですか……?」

「怖い?」

「う……その、私、いっぱいいっぱいだから、ウグイスさんも、怖くて……ええっと、ごめんなさい……。」

「……。
まさか、私なんかを怖がるなんて……。
ふふ、よっぽど怖がりなんですね……驚きです。」

 

こんなに小さいのに。

彼女はそう言って笑った。

 

怖い、と言ったけれど、姿を見るまでに比べたらそんなことはなく。
むしろ見知った人が居て安心した、そんな気持ちなのだ。

 

(初対面……だと思うけどなぁ……。)

 

「見た印象だと……ウサギ、のフレンズさんかしら。
縦長の耳で、ちょっとふわふわした格好ですし。
あれ?でもしっぽが見当たらない……?」

「しっぽ……ん、と……あ、これかも。」

 

私の後ろにある、小さなふわふわ。
多分、これがしっぽなのだと、なんとなく思った。

 

「あら……ほんと。
でも、すごく小さいんですねぇ。」

「ウサギ……ウサギ……はい、多分、ウサギかも……。」

「……自分を知るにしても、とりあえず一度、ガイドさんに会ったほうが良さそうですね。
動けますか?」

 

動くことはできるだろうが、正直、あまり動きたくはない。

 

「色々、疲れちゃってます……。
ど、どれくらいかかりそうです?」

「そうですね……私が高いところから誘導して……んー?」

 

彼女は、考え込むように唸って。

 

「けっこう……かな……。」

 

そんな結論を出した。
けっこうって、どれくらいなのだろうか。

 

 

 

5. はじめての相談5. はじめての相談

 

(どれくらいかはわからないけれど、あまり、動きたくない……かも。)

 

動いてしまったがために、見知らぬ人に出会ってしまったとしたら……その人が食べようとしてきたとしたら……。
そんなことを考えてしまう。

 

(見知らぬ人に会いに行くために、見知らぬ人を怖がるなんて、変だよね……。)

 

"見知らぬ人が、怖い"

 

こんなこと思うのは、私だけなのだろうか。

 

「本当は、近くにガイドさんが居ないか探して、ここまで来てもらうのが早そうですけど……ここに居てもらうのも、危なそう……。」

「……あの。」

「あ、はいはい?」

「ウグイスさんは、私が怖くありませんか?」

 

少しの間、彼女は考えて、そして答えた。

 

「……うーん……あまり考えないで、声をかけちゃいましたから。
多分、怖くなかったですね。」

「……私、きっとガイドさんに会う前に、逃げちゃいます。」

「……。」

「怖いんです。
襲われたり、食べられたりするんじゃ、ないかって。
さっきも、そうして、倒れちゃって。」

 

弱音が溢れてくる。
こんなこと、ウグイスさんに言っても仕方ないのに。

 

「急に、何も知らないまま、わかんないところに、一人で、静かで……。
突然、何かが来るかもしれなくて、それが良いものなのか、悪いものなのかも、わからなくて、それで……。

……どうして……?

すごく、怖い……ん、です。
……うっ……周りっ全部……うぅ……!

 

涙まで、内から溢れてきた。
止まらない。

 

「……フレンズも、ガイドさんも、フレンズに悪いことなんてしませんよ。
だから、大丈夫……なんて、言うことは簡単ですけどね。」

 

困りながらも、ウグイスさんは答えてくれる。

 

「ウグイス、さんは……どうでした?
生まれた、とき……とか。」

 

「んー……と。

私が生まれたのは……だいぶ前です。
そのときは、他のフレンズに連れられて、ガイドさんにすぐ会えました。
怖かったかどうかは、うーん……怖かったですね。」

「……。」

「でも、その人たちは優しかったですよ。

ここについて教えてくれましたし、私に合った暮らしも見つけられて……今は好きなことをしています。

あぁ、そうですね。
初めての人には、それなりにおびえる……というか、どんな子なんだろうって緊張とかはします。
私はウグイスですからね、警戒心が強いのだとか。

ガイドさんや他のフレンズに会うの、今は抵抗があるかもしれませんけれど……きっと慣れますよ。」

「……はい。」

 

(どのみち、生きている以上は、誰かと会うんだから……ウグイスさんが大丈夫だと言う人なら、偶然出会う人よりも大丈夫、かな。)

 

「な、なるべく……逃げないように、します。」

「ふふ、じゃあ……どうしましょうか。
移動します?私が呼んできます?」

「えと……じゃ、じゃあ、一緒に行きます。
道中、誰かに会ったら逃げちゃうかも……ですけど。」

「わかりました、それでは……。」

 

そう言うと、ウグイスさんは飛んだ。
辺りに気を付けながら進んでくれるのだろう。

 

「ついてきてくださいね~!」

「は、はい~!」

 

 

 

6. はじめてのガイド6. はじめてのガイド

 

ウグイスさんは、ウグイスさんなりに知っていることを教えながら移動してくれた。
遠くを眺めて、少し低めのところに戻っては、私にお話ししてくれた。

ここは、ジャパリパーク。
フレンズさんとガイドさんと、他に色々な人がいる島。
今日はクリスマス・イブ、サンタさんがプレゼントをくれる日。
美味しいものの話、綺麗な所の話……。

 

そんな話をして、10分程歩いただろうか、ウグイスさんが急に進行を止めた。

 

「ど、どうかしました~?」

「あ、ええと~……み、見つけちゃいました~。」

「見つけ……なにをです~?」

「ガイドさんですよ~!」

 

ガイド。
フレンズじゃない人。

 

「あ……。」

 

ウグイスさんが下りてきた。

 

「ど、どうします?」

「ど、どうするって……その……。
……会わなきゃ、ですから。」

「……じゃあ、案内しますね?」

 

私は頷いた。
怖いけど、ウグイスさんに会った時のように、怖くないかもしれないし……。

 

 

(……ガイド、さん……。)

 

「……うぅ……。」

「だ、大丈夫ですよー……この辺です。
あ、いました。」

 

そこには、目立たない色をした格好なのと、しっぽが見当たらない以外、ウグイスさんとあまり違わない人がいた。
向こうの方をじっと見つめている。

 

「すいません、ガイドさーん!」

「ひっ……!」

「って、ウサギさん!?」

 

ああ、やっぱり隠れてしまった。

 

「?」

「あっ、ええと……ガイドさん、ですよね?」

「えー……はい、そうですよっ。
どうしました?」

 

ウグイスさんは、ガイドさんにお話ししてくれている。
私は、木の後ろで震えていた。

 

「……なるほど。
そのウサギさんはどちらに?」

「た、たぶん隠れちゃいました……。」

「とてもシャイなのか、警戒心が強いのか……そうですねー。」

 

もともと、そういう性格なのだとしたら……誰かに会うたびに、おびえなきゃいけないのだろうか。
ウグイスさんも、ずっと一緒にいるわけではないだろう。

私はどうしたらいいのだろう。
どうしたいのだろう。

 

「あのー。」

っひゃあああーっ!?

ひゃうううぅっ!?

 

いっいいいつの間にか、う、後ろにににに……!?
どっどど、どうしよう怖い怖い!!

 

あっ、ごごごめんなさい!怖がらせちゃいましたね!

あああ泣かないでください!ごめんなさい!」

ごめんなさいごめんなさいぃ襲わないで食べないでぇ!!

襲いません食べません!!大丈夫ですからあああ!!

 

「あ、あの~……お二人とも、落ち着いて……ね?」

 

私が少し落ち着いたのは、ガイドさんがとりあえず離れてくれてから。

 

(ふ……うぅ……!!)

 

震えと涙は収まらなかった。

 

 

 

7. はじめてのなまえ7. はじめてのなまえ

 

「うーん……。
ごめんなさい、私が知ってる限りではわかりませんでした。」

「そうですか……残念ですね。」

 

ウサギであること。
フレンズで知られているウサギの中でも、耳や手足、特にしっぽが小さいこと。
おんたい?あねったい?辺りにいるどうぶつということ。

あと、色々。

 

「私は、この後向かわなければいけないところがあります。
だから、近くの施設に行ってもらうのが良いですね。
お力になれなくて、ごめんなさい。」

「い……いえ……。」

「だから、あの~……そろそろ慣れて、近づいてくれませんか?」

「ごご、ごめんなさい……。じ、自分でもどうにかしたいのですが……。」

「そこはほら、勇気です!さあ!」

「ゆ、勇気……。」

「それで治るものですかね……?」

 

近づくのはともかく、お話はできるのが救いだった。
今にも逃げ出したいのは変わりないけど。

 

「あ、もう夕方……。」

「あら、ウグイスさんは寝る時間でしたか?」

「まだですけど、ええと、本当は帰りの途中で……。」

「えっ、あ、ごめんなさい!」

「い、いえいえ~私が勝手に付き添っただけですので……。」

 

さっきまで青かった空は、もう赤くなってきていた。
私も眠くなるだろうか。

 

「どうしましょう、一緒にケーキとか食べるんだって、とりのこたちに呼ばれちゃってて。
たまには騒ぐのも、いいな……とか。」

「ふふ、楽しそうですね。
まあ私は、こんな日でもこうして……パークの見回りとかしなきゃ、ですけどね。

そういうことなら、彼女は私が施設近くまでお連れしますよ。」

 

それは困る。

 

「あっあの、私……ひっひとりで大丈夫です!」

「うう、つれないですね……というか、それで施設についたとしても、中に入れますか?
きっと見知らぬ人だらけですよ。」

「あぅ……。」

「この辺りで、フレンズが集う場所とかあると良いのですけどね……。」

「フレンズさんなら平気……なのかな?」

「そうでも……ないかも。」

「むむ、ウグイスさんは平気……元の動物が面識あったとか、ですかね。
そうであれば、十中八九日本のけもの。

……あなた、アマミノクロウサギさんですね。」

 

「アマミノクロウサギ……。
それが……。」

 

私の名前。
アマミノクロウサギ

 

「とすると、たしか夜行性で……そう、だからおびえてたりするのかも。」

「……?」

「アマミノクロウサギは、元々外敵の少ないところに住んでいたんです。
ですが、マングースをはじめ、人間が連れ込んだどうぶつによって個体数が減少し……あっ。」

 

あまりこういう話はしちゃいけなかったんです。
そうガイドさんは告げた。

多分、私の元のどうぶつが、襲われたりした経験とかがあったのかも。

 

「えーっと、こほん。

アマミノクロウサギとなれば、適したエリアはここでよさそうですね。
たしか、堅果性……堅い木の実とかを食べられるのが特徴の一次消費者、草食です。

どうでしょう?」

 

そう聞かされて、なんとなく自分の身体がなんとなくわかった。

 

「はい、アマミノクロウサギ……。
私については、なんとなくわかりました。」

「ガイドさん、ありがとうございます。」

「いえいえ~たまたまわかっただけですし、もっと詳しい人に聞くことも必要かと。
とはいえ、とりあえずは安心ですね。」

 

 

 

8. はじめての勇気8. はじめての勇気

 

「さてと、あとは、住処と定着……くらい、ですね。」

「やっぱり、どなたかと助け合えるのが良さそう……かと。」

「助け合いはできるとしても……確かに怖がりすぎですね。
安全に暮らせるまで、時間かかりそうかな……。」

 

(ウグイスさんとは、怖がるまもなく会えて。
このガイドさんとは、ウグイスさんが居てくれたからお話しできた。

これからは、一人……出会う前に逃げちゃうんじゃ、ないかな……。)

 

「ど、どうしたらいい、のかな……。」

「勇気です、さあ!」

「あ、あはは……。」

「うう、勇気……が、頑張ります……。

そういえば、えと、ウグイスさん、時間……。」

 

「あっ。」

 

やっぱりというか、ウグイスさんは少し危なっかしい気がする。
私に言えたことじゃ、ないけれど。

 

「私は、とりあえず大丈夫ですから。
また会えたら、うれしいです。」

「……良かったです。
次会った時は、きっとゆっくりお話ししましょうね。」

「はい!」

「私はまだ避けられちゃってますし、離れた方がよさそうですね?」

「……大丈夫、なんですかねぇ。」

 

笑いながら、ウグイスさんが飛び上がる。

 

「そうだ、ウサギさん。」

「はいっ?」

「私の場合は、警戒心が強い……なのかもしれませんけれど。
実際、本当に勇気が大切なんだと思うのですよ。

『いざ行かん 雪見にころぶ 所まで』。
ちょっと都合よく解釈すると、転ぶかもと思いつつも、雪を見に行くために気持ちを引き出して、歩き出している俳句です。

歩き出さなかったら転ぶことはないでしょう。
けれど、何かをするってことは、何かしら危ないことはつきもので……それと同時に、良いことが待っているんです。

だから、勇気を出してみてください。」

 

それっぽいことが言いたくなっちゃいました、と照れるウグイスさんが、飛んでいく。
さようならと、手を振りながら。

 

「……。」

 

いつの間にか、ガイドさんもいない。
そういえば、名前を聞いていなかった。

また会えるだろうか。

 

(勇気、かぁ……。)

 

自分でも、なんとかしなければと思う。
けれどガイドさんのことを思い出すと、やっぱり震える。

ウグイスさんとはお話ができても、いつも会えるってことはないだろう。

 

静けさに包まれる。
空も、辺りも暗い。

また、不安になってきた。

 

(せめて、ほかにどんなフレンズさんがいるのか、聞きたかったな……。)

 

今更になって後悔しながら、とりあえず目立たなそうな場所を探す。

 

 

10分程歩いただろうか。
さっきの場所よりは奥深い、静かな所に行きついた。

 

(……?)

 

少し遠くから、何かが地面に落ちた音がした。

何かあったのかもしれない、そう気になり、向かってみることにした。

 

(この辺だと、思うけど……。)

 

目の前には、それなりに高い山がある。
ここから何か落ちたのだろう。

 

(石とか、かなぁ……。)

 

そう思い、隠れられそうな場所を探しに戻ろうとした時だ。

 

……ない……

 

(……ひっ……こ、声?)

 

誰か、いる。しかし、辺りを見回しても人影はない。耳を澄ましてみる。

 

「……れか……

……けて……。」

 

人を探している、のだろうか。
遠くからで聞こえにくいけど、『助けて……』そう言っているみたいだ。

もし私以外に誰もいないなら、私しか助けられないのではないか。

私は声の主に、何があったのかを聞くことにした。

 

「……どうしたんですか……?」

 

だけど、知らない誰かがいると思うと、声が出せない。
それどころか、逃げ出したいくらいだ。

誰かが危ない状況なのに。

 

(だって、もし、その人が私を食べたり襲ったりする人だったら……。

……でも……。)

 

ふと、先ほどの話を思い出した。
私には勇気が必要だと、二人は教えてくれていた。

今が、勇気を出す時じゃないだろうか。
今、助けを求めてる誰かを見捨ててしまったら、勇気を出す機会は二度とない、そんな気がする。

 

(怖いけど、やらなくちゃ……!)

 

「ど、どこに居ますかー……?」

 

返事はない。
前に進みながら、さっきより大きな声をあげる。

 

「……すいませーん!どこに居ますか~!

「っ、だれ……?誰かいるの!?」

「ひぅっ!?」

 

上の方から、返事が来た。
のは良いが、やはり怖い。

ひとまず、辺りに気を付けつつ声の方に向かう。

 

「え……えと、どちらに、いますか……?ど、何方ですかー!

「わたし、ここの、上の方を通っていたら……滑り落ちちゃって!い、今……木の枝に、ひっかかってる。
わたしは、ガイド!」

「が、ガイドさん?崖に……。」

 

(ガイドさんなら……だ、大丈夫……大丈夫だから……。)

 

そう言い聞かせ、私は上の方を向きながら探した。

 

(いた……!)

「が、ガイドさーん……。」

 

落ちたらどうなるか考えたくないほどの、高い所にガイドさんはひっかかっていた。

 

(そういえば、どうやって助ければいいんだろう。)


ウグイスさんみたいに飛べるわけでもないし、高さがあって手が届かない。

 

「わた、私、どうしたらいいですか……?」

「こ、この近くに、一緒だったガイドさんが、いるはず……だから。
その人を……。」

 

ミシ……

 

ガイドさんの方から、枝の軋むような、嫌な音がした。
もし、この高さから落ちてしまったら……それを想像してしまう。

 

「……やだ落ちたくない……助けて……。」

 

(あ……。)

「いや…………うぅ……!」

 

 

目が覚めて、一人で歩き回ったとき、助けてほしくて、怖くて、泣いていた。

ガイドさんも、同じだ。

 

私は、もうあんな思いはしたくない。
誰かにも、させたくない。

 

「がっ、ガイドさん!待っててください!わた、私がいるから!大丈夫!

 

 

 

9. はじめてのともだちと9. はじめてのともだちと

 

 

上に向かって、自然と大声が出ていた。

 

(そうだ、私が……助けるんだ。助けてもらったように。)

 

私に出来ることを考える。

ガイドさんを探そうにも、何処にいるかわからない。
探してるうちに落ちてしまうかもしれない。

 

(ウグイスさんなら、近くのガイドさんを見つけられるのに……。
残念だけど、私に羽はない。)

 

そもそも、ついさっきまで自分について知らなかったのに、何が出来るかなんてわからないはずだった。

 

(……あ……そういえば、さっき……。)

 

"アマミノクロウサギは、高低差の大きい斜面をよく登っていましたから"

"フレンズ化で強化されているでしょうし、崖くらいでも登れたりしそうですね"

 

アマミノクロウサギについて、ガイドさんにそう教えられたことを思い出す。

 

(もしかして、登れる?)

 

そう思い、崖に手を掛けてみる。
ひょいっと登ることができた。

 

(これなら、行ける……!)

 

「ガイドさん!今そっちに行きます!」

 

 

踏み留まれそうな場所を渡りつつ、ガイドさんに近づいていく。

手が届きそうな所まで来た。
枝はまだ折れてないが、ガイドさんは静かに震えていた。

 

(間に合った、良かった……。)

 

「あのっ!えと、私に掴 ま っ ……?」

 

ここでホッとしたからか、気付いてしまった。

私の目の前にいるのは、見知らぬ人。
何をするかわからない人に、自分を掴ませようとしているんだと。

 

(……!あぁあああっ!怖い!今になって……!

 

登ることが出来ると気付いたときは、『おぶったりして助けられる』、そう舞い上がっていた。
でも結局、怖いのは変わらなかった。

 

「っ……ぁ……そ、の……。」

「……?あ……ウサギの、フレンズさん……?」

 

私が戸惑っていると、こっちに気付いたようだ。

 

「だ、だめ……落ちちゃう……。」

 

私の事を言っているのだろう。
確かに、普通の人……フレンズなら、ここに留まることも困難だと思うと、私が心配になるのかもしれない。

 

「がが、ガイドさん!つ、つっ……」

 

"掴まって"
その一言で、多分なんとかなるのに。

 

ギッ……ギギギ……

 

「あ……。」

 

枝が割れ、目の前にあった姿が遠退いていく。

 

だめっ……!

 

手を伸ばす。

 

目の前の少女も、手を伸ばす──

 

 

互いに落ちることはなく、崖に留まった。
けれど、一人を掴んだまま上に上がることも、下に降りるのもままならないのが現実だった。

 

「あ、う、ウサギさん……ありがとう……。」

 

いや、それ以上に……。

 

ああぁ!どっどどどうしよぅ!!

「ひぃっ!?」

 

色々限界だった。

 

(ひぎゃあああ!だめ!いやぁ!こわいこわい!)

 

崖よりも人が怖いというのも、ある意味で図太いと思う。

でも、怖いものは怖いのだ。

 

「ててってっ手をははは離さささ!!あぁぁ!」

「ううっウサギさん、泣かないで!どっどうしたの?!」

 

(ゆゆゆゆゆ!ゆっ勇気!そう!勇気出て!お願い!)

 

ぼろぼろと涙が出るなか、一周回ってなんとかしようと思った。
手を離したい思いもあったが、そこはぐっと堪えた。

ただ、やはり二人分の重さを片手で耐えるのは無理だ、すぐに限界が来た。

 

「おおお願いがっ、ガイドさん!せなっ背中ににに!」

「えっ待って?どう……せ、背中に?掴まるの?」

 

(手っ手を離す前にしてくれるととっでもそれもっと近くににに!?)

 

ガイドさんはひとまず、私の腰辺りにしがみついた。
私は両手で崖に掴まる。

 

(あっ、す、すごい。こんな状況だけど、だだ大丈夫!怖いけど!怖いけれど!)

 

怖いけど怖くない、不思議な感覚。
自分の手が光っている。

 

(……え!?ひっ光ってる?)

 

理由はわからないけど、身体が軽く感じる……というより、掴む力が強くなった気がする。

 

「のっ登れそうなので、登ります!つつっ掴んでてって!」

「あ、う、うん。よろしく……?」

 

一手二手と軽々登り、すぐに道に出た。
そこから数歩進み、そこでへたりこむ。

 

「はぁっ……はぁっ……ふぅ~……。」

「すごい……ウサギさん、力持ちなのかしら……?」

「えっえへへ……っ!あぁっ!せなっ背中……!!」

「背中っ?……あっ!ごめんね!」

 

後ろの少女は、慌てて私から離れる。

 

(そっ、そうだ。ガイドさん。)

 

「だだ……大丈夫ですか?えと、怪我とか……。」

「わたしは、大丈夫。服は破けちゃったけど……ウサギさんは?」

「あっはい……!」

 

「ありがとうね、ウサギさん。その……本当に。
死んじゃうかと思った……。」

「良かった、です……。なんか、手が光ったら登れるようになって……。」

 

あーっ!いた!新人さん、大丈夫ですか?

 

「いやっ!……あ、ガイドさん……?」

「……私、そんなに嫌われることしました……?」

 

さっきお話ししたガイドさんが、また何処からか現れた。
やっぱり、怖い。

 

「むー……そっちの新人さんにはそんなに近づいて……ってほどでもないですね。
いえ、これでも近い方だったり……?」

「あ、あの。ガイドさん……。」

「あっ、そうでしたね。あなたの端末から反応が途絶えたので、この辺りを探していたのですが……。」

「さっき、落としちゃって。」

 

よく分からない話が続いた……私はこっそり離れたところに座っていた。
そういえば、どっちもガイドさんだけど、名前はあるのだろうか。

 

(私は、アマミノクロウサギで……二人は、ガイドさん……?)

 

「では、せっかくなのでウサギさんに決めてもらいますか!」

ぁうぇ!?

「ええっと、わ、わたしがお話ししたほうがいいんじゃ?」

「……はい、先輩はいじけて見てまーす……。」

 

「えーと、わたし、実は記憶がないところがあって……自分の名前がわからないの。
なんて、急にウサギさんに伝えても困ると思うけど……。

ええと、それで、名前を付けてもらいたくて。」

「な、なんで私が……?」

「あー……なんか、事情があるみたいなんだけど、わたしにもわからなくて。」

 

先輩の方のガイドさんを見ると、頭の横に斜めのピースサインをして、ウインクをしながら『てへぺろ』と言っている。

 

「い、嫌……かな?」

「私、今日生まれたみたいなんで、名前とかあまり……。」

「あーあー、名前は、好きなものとか、生まれた日とか、特徴とかで決めちゃっていいと思いまーす。
あ、発見者の名前を付けるのもいいですね!」

「……。」

 

名前……何か。

 

(崖とか?)

 

いや、それはないだろうと自身につっこむ。

 

「あ、あまりしっかりした名前じゃなくても……自分の名前、思い出すまでのあだ名とか、そんな感じで……。」

 

「……好きなもの……生まれた、日……。」

「あ、今日はクリスマスイブですね、サンタさんとかどうでしょう?」

「……じゃあ、えーと……イブさんで……。」

「じゃあって言いながらスルーするんですね、わかります。
ぐすん。」

「イブ……わたしの名前。

ありがとう、ウサギさん。」

「えぇ、本当にそれでいいんですか?」

「ウサギさんが決めてくれたのなら、それでいいの。
命の恩人だし……。」

「恩人だなんて、そんな……。」

 

『あ、そうだ』と先輩のガイドさんがつぶやく。

 

「この子、今のところ担当区域とか決まってないんですよ。
そして、ウサギさんはだいぶ怖がりで、他のアニマルガールとなじむのには時間がかかる……と思われますね。

どうでしょう、しばらく行動を共にしてみては?」

「ん……と。
確かに、なんというか、さっきは背中に掴まってもらいましたけど、吹っ切れて大丈夫でした。」

「なんですと……背中ですと……?いつの間にそんな仲に……じゃなくてですね、イブさんは記憶を失ったのは最近で、彼女について知ってる人は少ないんです。
私も忙しくて、行く当てがなかったんですよ。
それなりに他の案もありますが、これが一番だとガイドさんとしては思います。」

「なんか、強引って感じね。」

「ええ、ウサギさんに話しかけたとき、普通に近づいたら逃げられると思って、ドッキリで動けなくしよう

とか、考えるくらいには強引だと自負してますっ!」

 

むちゃくちゃだけど……。

 

(……一人で、色々知ったりするなんて、私にはできなかった。
私みたいに、誰かに一人でさまよってほしくない。
おんなじように困っているフレンズ、ガイドさんには……。)

 

「あのね、ウサギさん。」

「ひゃ……あぅ、はい!」

「ぼんやりと覚えていることが、あってね。

わたしは、自由に生きたいって思っていたみたいなの。
それも、一人じゃなくて、優しい人たちと……。」

「……。」

「だから……その、ウサギさん。
あなたさえ良ければ……。」

 

──わたしの、おともだちになってくれないかしら──?

 

 

 

10.はじめてのクリスマス10.はじめてのクリスマス

 

それから、ガイドさんから連絡用の端末、というものをイブはもらった。
その子?は声を発しながら、何をするものでどう触ったらいいのかを教えてくれた。

近くには施設があったので、今日はそこで眠ることにした。

 

(思えば、私……色んなことがあったなぁ。)

「ねぇ、ウサギさん。」

「あっえっと……はい……!」

「あなたが色々な人に警戒しちゃう体質なのは聞いてるの。
でも、少しずつ仲良くなっていけば、いいと思うのよ。

だからね、わたしもあなたに名前をつけたいの。
イブみたいな、素敵な名前を!」

 

よく考えると、出会って間もない、まだ何も知らない人と、お話しできているのも不思議だ。
といっても、あのガイドさんより気持ちが少し楽なだけで、ウグイスさんほども近くにはいれない。

 

「名前……でも、私はアマミノクロウサギって名前が……。」

「ふふ、それじゃあわたしは、ヒトって名前になるのかしら?
そうじゃなくて、あだ名……愛称ってやつね。」

「あい、しょう……。」

「ウサギさんは、やっぱり、わたしと仲良くしたくなかったかしら?」

 

それは違う、と首を振る。

 

"ともだちになってほしい"

 

そう言われて、嬉しかったのだ。
ただ、ともだちが私を食べたりしないかが気になったりするけど。

 

「じゃあ、じゃあね……うん。

ミウ

奄美のミと、ウサギのウよ。」

 

"ミウ"

 

聞いてて、心地のいい名前だった。

 

「……ぁ……ぇと、あ、ありがとう……ございます……。」

「うん!こっちこそありがとう、ミウ!」

 

 

それから、お互いのことを話し合ったり、「近づける練習!」と称して、さっきの機械を触って、のーとってものに自己紹介をしたり。

私は、気が付いたら、眠っていた。

 

 

「……きょ……!」

 

「ウ……ーん!」

 

「こんにちは、ウサギさん!」

「んひゃぁうっ!?」

 

ウグイスさんのお顔が、目の前いっぱいに広がっていた。

すごくびっくりした、けど、初めて会った時もこれくらい近かった気がした。

 

「はじめまして、わたしはトキっていうの。」

「ひっ……!」

「あぁ、やっぱりだめですか……。」

「ガイドさんの言う通りだったわね、なんとかって島の、元のフレンズあたり以外にはすごく抵抗するの。
でも、お歌で仲良くなれば大丈夫かしら?」

「あ、ちょっとそれは~」

「~~♪゛♪♪゛」

 

 

 

そして気づいたら、とりのフレンズさんのパーティーに混ざっていた。
もちろん、隅っこで震えながら。

 

「ご、ごめんなさいね……あなたのことをお話したら、「ウサギは寂しがり屋で、一人だと死んじゃうのです。」とかなんとかで救出するぞとか盛り上がって、イブは中断に……。」

「そそっそ、そ、それでで、き……今日にに??」

 

話に聞いていた美味しいものをいくつか食べて、少し……臆病が治った、せめてそうあってほしいと思いつつ、トキさんに連れて帰してもらった。
歌で気絶してるうちに。

 

 

そして……。

「おかえり。
クリスマスのケーキ、いただいちゃったんだけど……一緒にどうかな?」

「二次会ってやつですね。
あ、私もご一緒していいですか?」

「ここでもクリスマスソングを」

「そっそれは止めてぇ~!!!」

 

生まれてから一日で、私はサンタさんにたくさんプレゼントをもらった。
いい子にしたからだよ、って、周りのサンタが、プレゼントが笑ってくれる。

いい子になる……勇気を出すのは難しいけど、こんなに素敵なひとときが訪れるなら……。

私がこれを覚えている限り、これからはきっと──

 

 

 

 

 

 

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こちらが実際の記録となります。
なお、検閲により添削した箇所は下記にある8の一部と9から11の内容でございます。

 

生まれた日と、その時のたくさんの初めてを、これに綴ろう。
怖くなったとき、寂しくなったとき、勇気がほしいときに、思い出せるように。

 

私は、フレンズさんとガイドさんのおかげで……。

サンタさんに出会えて、いっぱいプレゼントをもらったんだ。

 

1. はじめての私1. はじめての私

 

暗い。

何も見えない。

……ううん、違う。
目を、閉じているだけ。
開けば、光が見える……そんな暗闇。
それが、今見える景色と、わかること。

 

「……??」

 

目を開くと、左に青色、右に茶色。
空と、土だ。横たわっている、と理解した。

どうしようか。

 

「……んっ……と。」

 

とりあえず、このままだと死んじゃうから、起き上がることにした。

体に変な……異常とかは感じない、動く元気はありそうだ。
しいて言えば、どれくらい横たわっていたのか分からない、ちょっぴり重い……そんな感じがする。

 

(……。)

 

あたりは、静かだ。
誰もいない、私しかいない、孤独……そういった思いが湧いてくる。

緑……木々に囲まれている。
あと、ちょっぴり寒い。

どうして、私はここにいるんだろう。

 

"ここに居てはいけない"

 

そう、感じた。
なぜ?

 

"それは、ここだと何が出てきて、私を"

"私に、ひどいことをするかもしれないから"

 

逃げなきゃ。
安全なところへ。
襲われない、どこかへ。

 

前に足を踏み出す。

 

「どこか……どこ、かな……。」

 

しかし、一歩、二歩と踏み出して、自分の状況を思い知った。

 

"ここは、どこですか?"

"私は、なんですか?"

"どうして、ここにいるんですか?"

 

どうしようもない疑問が浮かぶ。

 

"なんで" "どうして" "こわい" "私は"

 

そんな思いが、駆け巡って──

 

 

 

2. はじめての水2. はじめての水

 

──しばらくして、水辺にたどり着いた。

思えば起き上がってから、何一つ口にしていない。

 

気づけば、水を口に含んでいた。

 

(水……良かった、美味しい……。

……私……何も考えてなかった。
そのまま歩き続けてたら……。)

 

ある程度のどを潤し、ようやく冷静になったところで、そう思った。
ひたすら歩き回った上でカラカラになってしまったら、逃げるも何もないのだ。

ほっと一息つく。

 

(……ここは……。)

 

水辺だ、誰かが水を飲みに来るかもしれない。
そしたら、ここがどこなのか聞ける。
安全な場所を知っているかもしれない、私のことを知っているかもしれない、わたしのことを……。

 

"食べようとするかも、しれない"

 

そう思った瞬間、いや、そう思ったときには、あたりが恐ろしく感じていた。
私を救ったこの水辺でさえ、怖いと感じてしまうほど、恐怖を感じていた。

 

"苦しい" "怖い" "助けて"

 

身体が震える。

頭が痛む。

寒くて、痛くて、こわい。

 

"助けて"

 

……けれど、震えと痛みは意外とすぐに収まった。

水辺は、私を襲わない。
木々も、地面も、空も……私を襲うことはない。
そんなの、当然だ。

そんな当然のことにすらおびえて、何に助けを求めているのだろう。

なんて考えるとおかしく思えた。
乾いた笑いが、自然とこぼれてくる。

 

「ふ、ふふっ……ふ……ひ、ぐ……っう……。」

 

涙とともに。
力とともに。
弱音とともに。

 

「なんで……?なんで、私……こんな、目に、遭うの……?」

 

目の前が暗い。
立ち上がる前の、目を開く前のときのように……そのときよりも暗い。

そんな暗闇が広がったと認識するより早く、何も考えられなくなった。

 

 

 

3. はじめての声3. はじめての声

 

体が揺れる。
音が聴こえる。
なのに暗い。

 

(……?揺れ、てる?)

 

揺らされている……そう感じる。
なぜかはわからない。

あと声。
声が、聞こえる、聞かされている。

 

(だ、れ……?)

 

さっきより暗いのは、誰かがいるからだろうか。

……誰かが、いる?
誰が、どうして?

 

「……き、なぁ……、……したら……」

(……あ。)

 

まさか。

 

「……に、た、うが……て、わた、ちか、じゃあ……」

 

鼓動が、頭に鳴り響く。
息が、苦しい。

 

「っあ、あ……!」

「あ!きこえま、か?えっ、大丈夫で、か?」

 

怖い、目を開きたくない、でも何か、どうにか……。

 

「……苦しそう?ええと……うーん……。
んー……あ、そうだ。」

 

体が動かない。
逃げようにも、怖くて何も浮かばない。

 

(……?)

 

頭に何か、動くものが乗った。

ゆら、ゆら……と、ほんのり揺らされる。

なんだろう。
なぜか、呼吸が落ち着いて──

 

「よし、よし……。どこか、痛いのですか?よしよし……。」

 

何がなんだか分からなくて、目を開ける。

 

「……ん……?」

 

思っていたよりすんなりと見えた景色には、しかし何も……木々くらいしかない。

森の中だ、としか分からなかった。

 

(上のほう……頭、なに……?)

 

気がついた?そんな声が聞こえる中、私は上を向く。

垂直に見える地面、水平に伸びる木々、そして……。

 

「……手?」

 

おそらく頭から離れたのだろう、そんな手が浮いていた。

 

「ええと、気分は?私の声、聞こえてます?」

 

声の方を見ると、そこには──

なぜか怖く感じない"人"がいた。

 

 

 

4. はじめてのフレンズ4. はじめてのフレンズ

 

彼女に促され、水辺にあった切り株に腰かけた。
彼女は、私が落ち着くまで静かに待っていた。

 

落ち着いた頃、私から声をかけてみた。

 

「あ、あの。ご心配、おかけしました。えと……。」

「いいんですよ、元気そうで何より。」

 

この人、は。私を食べたりしないだろうか。

 

(多分、小さいから大丈夫。ううんでも、見かけによらず危ない人かも……。)

 

「……ううん、別の意味で元気なさそうですね……?」

「あっ、えと、だい、大丈夫……です……。」

 

でも、なんだか安心する。初めて出会った人……のはずなのに。

 

「わた、私……その、何がなんだか、わからない……というか。」

「わからない……?あっ。
名前、言って無かったですね。」

 

──名前。

 

(そうだ、私は誰なんだろう。)

 

「私は、ウグイスっていいます。
あなたは……。」

「……その……私、ええと、ウグイスさん。
私、自分が何かも、わからないんです。」

 

ウグイス。
聞いたことがある、知っている……気がする。

 

「もしかして、生まれたばかり……なのかもしれませんね。」

「生まれた……?」

「はい、ん……ええと、私もあまり詳しくないのだけど。
私たちは、いつの間にかこの姿で生まれるんです。
ガイドさん……私たちフレンズに詳しい人が、教えてくれました。」

「ガイド……さん、フレンズさん?」

「困りました~……近くにガイドさんとか、いないかな……?」

 

(よくわからないけど、私やウグイスさんのような人と、それとはまた違う人がいる……のかな。
怖い……私みたいな人だって、まだウグイスさんにしか、会えてないのに。)

 

「その、ガイドさん?って、怖いですか……?」

「怖い?」

「う……その、私、いっぱいいっぱいだから、ウグイスさんも、怖くて……ええっと、ごめんなさい……。」

「……。
まさか、私なんかを怖がるなんて……。
ふふ、よっぽど怖がりなんですね……驚きです。」

 

こんなに小さいのに。

彼女はそう言って笑った。

 

怖い、と言ったけれど、姿を見るまでに比べたらそんなことはなく。
むしろ見知った人が居て安心した、そんな気持ちなのだ。

 

(初対面……だと思うけどなぁ……。)

 

「見た印象だと……ウサギ、のフレンズさんかしら。
縦長の耳で、ちょっとふわふわした格好ですし。
あれ?でもしっぽが見当たらない……?」

「しっぽ……ん、と……あ、これかも。」

 

私の後ろにある、小さなふわふわ。
多分、これがしっぽなのだと、なんとなく思った。

 

「あら……ほんと。
でも、すごく小さいんですねぇ。」

「ウサギ……ウサギ……はい、多分、ウサギかも……。」

「……自分を知るにしても、とりあえず一度、ガイドさんに会ったほうが良さそうですね。
動けますか?」

 

動くことはできるだろうが、正直、あまり動きたくはない。

 

「色々、疲れちゃってます……。
ど、どれくらいかかりそうです?」

「そうですね……私が高いところから誘導して……んー?」

 

彼女は、考え込むように唸って。

 

「けっこう……かな……。」

 

そんな結論を出した。
けっこうって、どれくらいなのだろうか。

 

 

 

5. はじめての相談5. はじめての相談

 

(どれくらいかはわからないけれど、あまり、動きたくない……かも。)

 

動いてしまったがために、見知らぬ人に出会ってしまったとしたら……その人が食べようとしてきたとしたら……。
そんなことを考えてしまう。

 

(見知らぬ人に会いに行くために、見知らぬ人を怖がるなんて、変だよね……。)

 

"見知らぬ人が、怖い"

 

こんなこと思うのは、私だけなのだろうか。

 

「本当は、近くにガイドさんが居ないか探して、ここまで来てもらうのが早そうですけど……ここに居てもらうのも、危なそう……。」

「……あの。」

「あ、はいはい?」

「ウグイスさんは、私が怖くありませんか?」

 

少しの間、彼女は考えて、そして答えた。

 

「……うーん……あまり考えないで、声をかけちゃいましたから。
多分、怖くなかったですね。」

「……私、きっとガイドさんに会う前に、逃げちゃいます。」

「……。」

「怖いんです。
襲われたり、食べられたりするんじゃ、ないかって。
さっきも、そうして、倒れちゃって。」

 

弱音が溢れてくる。
こんなこと、ウグイスさんに言っても仕方ないのに。

 

「急に、何も知らないまま、わかんないところに、一人で、静かで……。
突然、何かが来るかもしれなくて、それが良いものなのか、悪いものなのかも、わからなくて、それで……。

……どうして……?

すごく、怖い……ん、です。
……うっ……周りっ全部……うぅ……!

 

涙まで、内から溢れてきた。
止まらない。

 

「……フレンズも、ガイドさんも、フレンズに悪いことなんてしませんよ。
だから、大丈夫……なんて、言うことは簡単ですけどね。」

 

困りながらも、ウグイスさんは答えてくれる。

 

「ウグイス、さんは……どうでした?
生まれた、とき……とか。」

 

「んー……と。

私が生まれたのは……だいぶ前です。
そのときは、他のフレンズに連れられて、ガイドさんにすぐ会えました。
怖かったかどうかは、うーん……怖かったですね。」

「……。」

「でも、その人たちは優しかったですよ。

ここについて教えてくれましたし、私に合った暮らしも見つけられて……今は好きなことをしています。

あぁ、そうですね。
初めての人には、それなりにおびえる……というか、どんな子なんだろうって緊張とかはします。
私はウグイスですからね、警戒心が強いのだとか。

ガイドさんや他のフレンズに会うの、今は抵抗があるかもしれませんけれど……きっと慣れますよ。」

「……はい。」

 

(どのみち、生きている以上は、誰かと会うんだから……ウグイスさんが大丈夫だと言う人なら、偶然出会う人よりも大丈夫、かな。)

 

「な、なるべく……逃げないように、します。」

「ふふ、じゃあ……どうしましょうか。
移動します?私が呼んできます?」

「えと……じゃ、じゃあ、一緒に行きます。
道中、誰かに会ったら逃げちゃうかも……ですけど。」

「わかりました、それでは……。」

 

そう言うと、ウグイスさんは飛んだ。
辺りに気を付けながら進んでくれるのだろう。

 

「ついてきてくださいね~!」

「は、はい~!」

 

 

 

6. はじめてのガイド6. はじめてのガイド

 

ウグイスさんは、ウグイスさんなりに知っていることを教えながら移動してくれた。
遠くを眺めて、少し低めのところに戻っては、私にお話ししてくれた。

ここは、ジャパリパーク。
フレンズさんとガイドさんと、他に色々な人がいる島。
今日はクリスマス・イブ、サンタさんがプレゼントをくれる日。
美味しいものの話、綺麗な所の話……。

 

そんな話をして、10分程歩いただろうか、ウグイスさんが急に進行を止めた。

 

「ど、どうかしました~?」

「あ、ええと~……み、見つけちゃいました~。」

「見つけ……なにをです~?」

「ガイドさんですよ~!」

 

ガイド。
フレンズじゃない人。

 

「あ……。」

 

ウグイスさんが下りてきた。

 

「ど、どうします?」

「ど、どうするって……その……。
……会わなきゃ、ですから。」

「……じゃあ、案内しますね?」

 

私は頷いた。
怖いけど、ウグイスさんに会った時のように、怖くないかもしれないし……。

 

 

(……ガイド、さん……。)

 

「……うぅ……。」

「だ、大丈夫ですよー……この辺です。
あ、いました。」

 

そこには、目立たない色をした格好なのと、しっぽが見当たらない以外、ウグイスさんとあまり違わない人がいた。
向こうの方をじっと見つめている。

 

「すいません、ガイドさーん!」

「ひっ……!」

「って、ウサギさん!?」

 

ああ、やっぱり隠れてしまった。

 

「?」

「あっ、ええと……ガイドさん、ですよね?」

「えー……はい、そうですよっ。
どうしました?」

 

ウグイスさんは、ガイドさんにお話ししてくれている。
私は、木の後ろで震えていた。

 

「……なるほど。
そのウサギさんはどちらに?」

「た、たぶん隠れちゃいました……。」

「とてもシャイなのか、警戒心が強いのか……そうですねー。」

 

もともと、そういう性格なのだとしたら……誰かに会うたびに、おびえなきゃいけないのだろうか。
ウグイスさんも、ずっと一緒にいるわけではないだろう。

私はどうしたらいいのだろう。
どうしたいのだろう。

 

「あのー。」

っひゃあああーっ!?

ひゃうううぅっ!?

 

いっいいいつの間にか、う、後ろにににに……!?
どっどど、どうしよう怖い怖い!!

 

あっ、ごごごめんなさい!怖がらせちゃいましたね!

あああ泣かないでください!ごめんなさい!」

ごめんなさいごめんなさいぃ襲わないで食べないでぇ!!

襲いません食べません!!大丈夫ですからあああ!!

 

「あ、あの~……お二人とも、落ち着いて……ね?」

 

私が少し落ち着いたのは、ガイドさんがとりあえず離れてくれてから。

 

(ふ……うぅ……!!)

 

震えと涙は収まらなかった。

 

 

 

7. はじめてのなまえ7. はじめてのなまえ

 

「うーん……。
ごめんなさい、私が知ってる限りではわかりませんでした。」

「そうですか……残念ですね。」

 

ウサギであること。
フレンズで知られているウサギの中でも、耳や手足、特にしっぽが小さいこと。
おんたい?あねったい?辺りにいるどうぶつということ。

あと、色々。

 

「私は、この後向かわなければいけないところがあります。
だから、近くの施設に行ってもらうのが良いですね。
お力になれなくて、ごめんなさい。」

「い……いえ……。」

「だから、あの~……そろそろ慣れて、近づいてくれませんか?」

「ごご、ごめんなさい……。じ、自分でもどうにかしたいのですが……。」

「そこはほら、勇気です!さあ!」

「ゆ、勇気……。」

「それで治るものですかね……?」

 

近づくのはともかく、お話はできるのが救いだった。
今にも逃げ出したいのは変わりないけど。

 

「あ、もう夕方……。」

「あら、ウグイスさんは寝る時間でしたか?」

「まだですけど、ええと、本当は帰りの途中で……。」

「えっ、あ、ごめんなさい!」

「い、いえいえ~私が勝手に付き添っただけですので……。」

 

さっきまで青かった空は、もう赤くなってきていた。
私も眠くなるだろうか。

 

「どうしましょう、一緒にケーキとか食べるんだって、とりのこたちに呼ばれちゃってて。
たまには騒ぐのも、いいな……とか。」

「ふふ、楽しそうですね。
まあ私は、こんな日でもこうして……パークの見回りとかしなきゃ、ですけどね。

そういうことなら、彼女は私が施設近くまでお連れしますよ。」

 

それは困る。

 

「あっあの、私……ひっひとりで大丈夫です!」

「うう、つれないですね……というか、それで施設についたとしても、中に入れますか?
きっと見知らぬ人だらけですよ。」

「あぅ……。」

「この辺りで、フレンズが集う場所とかあると良いのですけどね……。」

「フレンズさんなら平気……なのかな?」

「そうでも……ないかも。」

「むむ、ウグイスさんは平気……元の動物が面識あったとか、ですかね。
そうであれば、十中八九日本のけもの。

……あなた、アマミノクロウサギさんですね。」

 

「アマミノクロウサギ……。
それが……。」

 

私の名前。
アマミノクロウサギ

 

「とすると、たしか夜行性で……そう、だからおびえてたりするのかも。」

「……?」

「アマミノクロウサギは、元々外敵の少ないところに住んでいたんです。
ですが、マングースをはじめ、人間が連れ込んだどうぶつによって個体数が減少し……あっ。」

 

あまりこういう話はしちゃいけなかったんです。
そうガイドさんは告げた。

多分、私の元のどうぶつが、襲われたりした経験とかがあったのかも。

 

「えーっと、こほん。

アマミノクロウサギとなれば、適したエリアはここでよさそうですね。
たしか、堅果性……堅い木の実とかを食べられるのが特徴の一次消費者、草食です。

どうでしょう?」

 

そう聞かされて、なんとなく自分の身体がなんとなくわかった。

 

「はい、アマミノクロウサギ……。
私については、なんとなくわかりました。」

「ガイドさん、ありがとうございます。」

「いえいえ~たまたまわかっただけですし、もっと詳しい人に聞くことも必要かと。
とはいえ、とりあえずは安心ですね。」

 

 

 

8. はじめての何か8. はじめての何か

 

「さてと、あとは、住処と定着……くらい、ですね。」

「やっぱり、どなたかと助け合えるのが良さそう……かと。」

「助け合いはできるとしても……確かに怖がりすぎですね。
安全に暮らせるまで、時間かかりそうかな……。」

 

(ウグイスさんとは、怖がるまもなく会えて。
このガイドさんとは、ウグイスさんが居てくれたからお話しできた。

これからは、一人……出会う前に逃げちゃうんじゃ、ないかな……。)

 

「ど、どうしたらいい、のかな……。」

「勇気です、さあ!」

「あ、あはは……。」

「うう、勇気……が、頑張ります……。
そういえば、えと、ウグイスさん、時間……。」

「あっ。」

 

「私は、とりあえず大丈夫ですから。
また会えたら、うれしいです。」

「……良かったです。
次会った時は、きっとゆっくりお話ししましょうね。」

「はい!」

「私はまだ避けられちゃってますし、離れた方がよさそうですね?」

「……大丈夫、なんですかねぇ。」

 

笑いながら、ウグイスさんが飛び上がる。

 

「そうだ、ウサギさん。」

「はいっ?」

「私の場合は、警戒心が強い……なのかもしれませんけれど。
実際、本当に勇気が大切なんだと思うのですよ。

『いざ行かん 雪見にころぶ 所まで』。
ちょっと都合よく解釈すると、転ぶかもと思いつつも、雪を見に行くために気持ちを引き出して、歩き出している俳句です。

歩き出さなかったら転ぶことはないでしょう。
けれど、何かをするってことは、何かしら危ないことはつきもので……それと同時に、良いことが待っているんです。

だから、勇気を出してみてください。」

 

それっぽいことが言いたくなっちゃいました、と照れるウグイスさんが、飛んでいく。
さようならと、手を振りながら。

 

「……。」

 

いつの間にか、ガイドさんもいない。
そういえば、名前を聞いていなかった。

また会えるだろうか。

 

(勇気、かぁ……。)

 

自分でも、なんとかしなければと思う。
けれどガイドさんのことを思い出すと、やっぱり震える。

ウグイスさんとはお話ができても、いつも会えるってことはないだろう。

 

静けさに包まれる。
空も、辺りも暗い。

また、不安になってきた。

 

(せめて、ほかにどんなフレンズさんがいるのか、聞きたかったな……。)

 

今更になって後悔しながら、とりあえず目立たなそうな場所を探す。

 

10分程歩いただろうか。
さっきの場所よりは奥深い、静かな所に行きついた。

 

(……?)

 

少し遠くに、何かを感じた。
地鳴りというか、何かが地面を鳴らした……そんな感じだ。

 

怖いけど、だからこそ気になったから、向かってみることにした。

 

(ひっ……ガイド、さ……ん?と……?)

 

そこには、ガイドさんみたいな人と、黄色い何かがいた。

何か、すごく危ない……そんな気がして、でも。

 

(あ、足……震え、て……動け……ない。)

 

"怖い"

 

身体が、逃げるように警告する。
それ以上に、恐怖が私を縛る。

 

目の前に見えるそれは、黄色い何かがガイドさんを襲っているところだった。

さっきのガイドさんとは、恰好が違うガイドさん。
それが、液体のようなアレに、飲み込まれているように見える。

 

「た、け……!ぁ……!!」

 

そんな中、何かを叫んでいるガイドさん。
きっと、助けを求めているのだ。

 

"逃げなきゃ、私も──"

”──アレに、食べられる

 

(そうだ、逃げなきゃ。)

 

「て!いやっ……!」

 

(あ……あ……。)

 

だ、か、助けて!!

 

"逃げよう"

あんなのに、何かできるとは思えない。

 

(私には、何も……。)

 

「こ……わい……ぁ……。

……、……!」

 

(……

 

私は、走っていた。

 

 

 

9. はじめての勇気9. はじめての勇気

 

「あ、あ、えと!そ……の……。」

 

(……どうしよう。)

 

勢いで、出てきてしまった。
あの人の声が、思いが、一人だった時の私に似ている。
そう思ったら、一歩踏み出していた。

その先は、考えていなかった。

 

ぐるり。

アレがこっちを向いた。
目のようなものが、私を見つめて──

 

「……ぁ……ど、どうし……っ!?」

 

アレは、急にこっちへ向かってきた。
地面を這って、大きな体がまっすぐ来る。

 

「こ、来ないで!その人離してぇ!

 

あとずさりながら、それでも叫ぶ。
まったく反応がないあたり、言葉が伝わらないみたいだ。

怖くて涙が出る。
でも、不思議と足は逃げようとしなかった。

あの人は……誰かを呼んでいた。
私とは違って、自分から探していた。
私と同じような思いを、叫びながら。

 

私が、私がいるから!だっ大丈夫、だから!

 

目の前にまで、アレが迫る。
泣きながら、私は逃げずになんとかできないか探していた。

アレを叩いてみても、とてもじゃないが離してくれそうにない。
私の方が少し早いとはいえ、相手が大きくて脇には回れない。

だんだん、何もできないのではと思えてきてしまう。

 

「あ、あ……。」

 

気持ちだけがはやる、やっぱり誰か呼ぶべきだっただろうか。

 

「ど、どうしたらいいの……うぅ……。」

 

気が付けば、周りが山に囲まれていた。

 

「ガイドさん、もうちょっと……もうちょっと待ってて……。」

 

追い詰められているのは明らかだ。
なのに、今はガイドさんの心配しかしていない。

 

 

(……私、少しでも、勇気……出せたのかな……。)

 

さっきまでの自分を思い出す。
襲わない相手に怯えていたのに、いざ襲う相手の前では怯えていないなんて変な私だ。

アレが目の前に迫る。
体の一部みたいなのが、私の方を向いて開く。

 

(……ああ、私も食べられちゃうのかな。

せっかく、勇気出せたのに。)

 

声が聞こえる。

 

うらああああ!!!

 

──ギィン

鈍い音が響いた。
あの変なアレが、少しよろけている。

 

「そこの!大丈夫か!?」

 

声の先には、フレンズさんが立っていた。

 

 

 

10. はじめてのキラキラ10. はじめてのキラキラ

 

どすん!
アレは同じ角度に戻った。

 

「なんでお前、こんなところにいるんだ?そこの人間はなんだ?」

「に……人、間?」

「あぁ、巻き込まれたって感じなのか。
そんなこと言ってる場合じゃないな!おい!こっちだ!」

 

アレに呼びかけているのだろう、けれどアレは反応しない。

 

「あ、あの!中のガイド……さん?助けてください!」

「とーぜん!それがオレの役割だ!」

 

ギィン!
またアレが傾く。

でも少しずつ、私に近づいている。

 

「おい!まだ来ねーのか!?」

「なな、なにが……じゃなくて、来てるっ……!」

「そこまでだよー、セルリアン!」

 

──ピシィン!

甲高い音が鳴り、"セルリアン"と呼ばれたアレがまた傾く。

 

「おそらく、機械や重機の類ね。」

「ね、ナメクジみたいでしょ?」

「ナメクジとか機械とかわかんねーけど、どーすんだ!?
どうやってアレを壊す?」

「何度も言っているでしょう、こいつらには石があるの。
それを叩くのよ。」

「ぱこーん、ってね~。」

「どこにあるんだ!?」

「そんなの、今から探すんだよー。」

「なんだよ、カッコつけてきたくせに!」

「言い争いしてる暇じゃないですよ、早くしとめましょう。」

 

人が増えて、何が何だかわからないしすごく怖い。
誰かは私を食べるかもしれない。

 

(……じゃなくて!今一番危ないのは、食べられてるあの人、だから!)

 

自分を奮い立たせる。
何か、石とかをぱこーんしたらいい、とか言っていた。

 

(石……石……。

……そういえば、何か……。)

 

さっきから、時々地面が鳴っていた。
何かが地面に叩きつけられる音。

 

「この口の、後ろの下!」

 

「え?」

「あ~!こっちにないならそっちにあるよねーうんうん。」

「……それ、回り込まなきゃいけないじゃない。
この山登れるの?」

「オレは斜面とか木なら大丈夫だ!」

「……同じく、ここまでの急斜面は無理です……。」

「ん~ボクはいけるけど、戦い向きじゃないのは知ってるでしょ?」

「……それ、手詰まりじゃない!」

 

(あの人は、ガイドさんっぽい……?)

 

「……仕方ないわ、ラ―テルはこいつが遠ざからないよう待機。
私たちは裏から山を登って回り込みましょう。」

「賛成です。
さ、行きましょう。」

「おいっ!奥のあいつも食べられるぞ!?」

「だから急ぐんじゃない、ちょっと考えたらわかるでしょ。」

「ユウ、喧嘩売ってるのか!」

 

「ねえねえ、ウサギの君。」

「ひゃい!?」

 

いつの間にか、飛んでるフレンズさんが上にいた。

 

「君、戦えたりしない?このままだと助けられないし、食べられちゃうけど。」

「えっあっその……で、でも私、何もできないし……。」

「ふーん……まあ、すぐ助けられるから、多少記憶とかなくなるだけだもん。
辛抱してね。」

 

記憶が、なくなる。

それはどれくらいだろうか。
この襲われた間くらいだろうか、ガイドさんと会ったときまでだろうか、それとも──

 

ごんっ

壁だ。
アレとの距離が、もう無い。

 

"食べられる"

「い、嫌っ……!」

 

口が私にかぶさる。

 

──ウグイスさんの顔が、ガイドさんの顔が、捕まった人の顔が、次々思い浮かぶ。

 

(ああ、食べられちゃうときって、こんなことを思い出すんだ……。
これらを、忘れちゃうんだ……。

短くて、怖くて、寂しかったひととき。
だけど、たくさんのものがもらえたひととき。
怖がりな私でも、誰かのために、何かをしようとできたひととき。

──なくなっちゃうんだ。)

 

"それでいいの?"

"諦めちゃうの?"

"忘れちゃうの?"

 

(──そんなの)

 

……嫌だぁっ!!

 

思い出が光る。
ウグイスさんが、ガイドさんが、あの人が、これまでの全部が、キラキラ光って──

 

ぅりゃああああっ!!

 

ぎぎっ……バァン!!

 

口が裂けた。
そこの奥に、あの人……小さな女の子がいる。

 

"助けて"

 

その言葉を思い出す。
ほんのちょっとの勇気すら、さっきまでは湧かなかったのに。

この子のために、怖さなんて吹っ切ってこれた。

 

「とど、いて……!」

 

光る両手が、黄色い液体をかき分けていく。
少女に、触れる。

 

 

 

11. はじめてのともだちと11. はじめてのともだちと

 

ぱっかーん。

 

擬音で表すと、そんな感じの音が聞こえた。

 

「いくら私でも、石がむき出しになっていればこれくらいねー。」

「すげーな、ゆる!」

「ふふ、とーぜん!
もっと褒めてもいいんだよ、ラ―テル。」

 

声のする方を見ると、さっきのフレンズさんが二人、お話をしていた。

あの子は、どうなったんだろう。
ゆっくり起き上がる。

 

(……。)

 

隣にいた。
……襲ってこない、よね?

 

「あ、起きたね。」

「ひぐぅっ!?」

 

つい近場に逃げてしまった。
さっきの飛んでるフレンズさんなのに。

……ん?

 

「あ、あれ?」

「……君、瞬発力もなかなかだけど、その山をそんなに早く登れるの、すごいね~。」

 

そういえば。

 

"アマミノクロウサギは、高低差の大きい斜面をよく登っていましたから"

"フレンズ化で強化されているでしょうし、崖くらいでも登れたりしそうですね"

 

ガイドさんにそう言われたことを思い出す。
多分、気づいていても登って脱出はしなかった……と思うけど。

 

「なによ、あなた野生開放できたのね。
ならさっさとやりなさいよ、もう……。」

「でも、あの堅いセルリアンを割るなんて。
力の強いウサギ……には見えないけど。

サンドスターをたくさん使ったんじゃない?」

 

セルリアン、サンドスター。
多分、さっきまでの何かと関係があるのだろうけど。

 

「……で、こいつは何かしら。
来園者にしては……こんな時間にこんなところに来るなんて、怪しいわね。」

「らい、えん?」

「ありゃ、もしかして生まれたてだったとかかな。
それなら色々わかんないのも仕方ないけど……。」

「とりあえず、捕らえましょうか。」

 

(……!?)

 

「まっまってください!」

 

考えるより先に、身体が動いた、口が開いた。
そのまま、この人たちとあの子の間に躍り出た。

 

「……何のつもりかしら?」

「こ、この人……助けてって、い、言ってたんです。
怖いって、助けを求めてて……。」

「……。」

「な、なあ。
別にオレたち、その子を食べるとかはしないぜ?

セルリアンに食べられた奴は、良くないことが起きるかもしれないんだ。
それが何か、なんか調べるだけだって!」

「で、でも……。」

「でもじゃなくてね、あなたのためなの。
邪魔されたら、私はあなたを

襲わなきゃいけなくなるの。

それでも、いい?」

「っ……!」

 

"怖い"

"怖いけど、守らなくちゃ"

 

「……退く気、ないみたいね。
それなら──」

 

「わーっ!わーわーっ!待ってくださーい!」

 

聞き覚えのある声が響いて、そこからガイドさんが来た。

 

「ふぅ、お疲れ様。
あとは私がやるから、見回りに戻ってくださいね!
その方が楽でしょう?この子ごと捕まえるよりね。」

 

少し、間があって。

 

「……ふん。
仕事、サボらないでよ。」

 

いくわよ。
と、あのガイドさんとフレンズさんたちはどこかに行った。

そして、さっきのガイドさん、が。

 

(……あ、ああ……。)

「えっちょっと待ってください、一応助けたのに怖がられてるんですか私?」

「う、ご、ごめんなさい。」

「……ま、いいですけどね。
で、さっきの話は本当で、その子に変なこととか起きてないか、調べないといけないんです。

それに、あなたにも同行を……あら?」

 

傍らで何かが動いた。

あの子だ。

 

「起きちゃいましたか……まぁそのほうが……。」

「……??あ、あの……?」

「Hi,こんばんは。
気分はどうですか?自分のこと、わかります?」

「……わたし……?
あれ、なんで……たしか、あれ……?」

 

ちなみに、わたしは怯えて後ろに下がっていた。

 

「ええ、あなたはパークのガイドとなるために、色々なエリアを回って……といっても、覚えてないですよね?」

「わたし、誰なのかしら……?どうして何もわからないの?」

「それが、私もわからないんですよねー。
あなたは、記憶喪失……」

 

私にはよくわからない話が、しばらく続いた。

 

「で、アマミノクロウサギさん?どうでしょうか?」

「ひっ……?な、なんで、すか?」

「ガイドさん、そろそろいじけちゃいますよー?
まあそれはさておいて。
この子、名前がないんですよね。」

「は、はい。」

「聞くところによると、あなたがこの子を助けたそうですし……何か考えてくれませんか?」

「えっえっ……でも……。」

 

(そんな、突然……名前……。)

 

確かに、名前がわからないと困るのはわかる。
実際、わかるまでは困っていたのだ、自分がわからなくて。

 

「……あ。」

「?」

「今日は、クリスマス・イブ。

だから、イブで……。」

あんty……むしろサンタさんでは?上から落ちてきたんですしね。」

「えーっと、あの……。」

 

あの子が口を開く。

 

「ガイドって言っても、わたし、どうしたらいいの?」

「ふふふ、大ー丈夫です!

身を挺してまで守ってくれたこのフレンズさんと、だいたい一緒に暮らせばいいんです!
この子は生まれたばかり、あなたは記憶喪失、どちらもパーク見習い。
どうですか?」

「強引……なんですね、ガイドさん。」

「あなたに話しかけたとき、普通に近づいたら逃げられると思って、ドッキリで動けなくしよう

とか、考えるくらいには強引だと自負してますっ!」

 

むちゃくちゃだけど……。

 

(……一人で、色々知ったりするなんて、私にはできなかった。
私みたいに、誰かを一人でさまよってほしくない。
おんなじように困っている人でも、フレンズでも……。)

 

「あのね、ウサギさん。」

「ひゃ……あぅ、はい!」

「ぼんやりと覚えていることが、あってね。

わたしは、自由に生きたいって思っていたみたいなの。
それも、一人じゃなくて、優しい人たちと……。」

「……。」

「だから……その、ウサギさん。
あなたさえ良ければ……。」

 

──わたしの、おともだちになってくれないかしら──?

 

 

 

12. はじめてのクリスマス12. はじめてのクリスマス

 

それから、ガイドさんから連絡用の端末、というものをイブはもらった。
その子?は声を発しながら、何をするものでどう触ったらいいのかを教えてくれた。

近くには施設があったので、今日はそこで眠ることにした。

 

(思えば、私……色んなことがあったなぁ。)

「ねぇ、ウサギさん。」

「あっえっと……はい……!」

「あなたが色々な人に警戒しちゃう体質なのは聞いてるの。
でも、少しずつ仲良くなっていけば、いいと思うのよ。

だからね、わたしもあなたに名前をつけたいの。
イブみたいな、素敵な名前を!」

 

よく考えると、出会って間もない、まだ何も知らない人と、お話しできているのも不思議だ。
といっても、あのガイドさんより気持ちが少し楽なだけで、ウグイスさんほども近くにはいれない。

 

「名前……でも、私はアマミノクロウサギって名前が……。」

「ふふ、それじゃあわたしは、ヒトって名前になるのかしら?
そうじゃなくて、あだ名……愛称ってやつね。」

「あい、しょう……。」

「ウサギさんは、やっぱり、わたしと仲良くしたくなかったかしら?」

 

それは違う、と首を振る。

 

"ともだちになってほしい"

 

そう言われて、嬉しかったのだ。
ただ、ともだちが私を食べたりしないかが気になったりするけど。

 

「じゃあ、じゃあね……うん。

ミウ

奄美のミと、ウサギのウよ。」

 

"ミウ"

 

聞いてて、心地のいい名前だった。

 

「……ぁ……ぇと、あ、ありがとう……ございます……。」

「うん!こっちこそありがとう、ミウ!」

 

 

それから、お互いのことを話し合ったり、「近づける練習!」と称して、さっきの機械を触って、のーとってものに自己紹介をしたり。

私は、気が付いたら、眠っていた。

 

 

「……きょ……!」

 

「ウ……ーん!」

 

「こんにちは、ウサギさん!」

「んひゃぁうっ!?」

 

ウグイスさんのお顔が、目の前いっぱいに広がっていた。

すごくびっくりした、けど、初めて会った時もこれくらい近かった気がした。

 

「はじめまして、わたしはトキっていうの。」

「ひっ……!」

「あぁ、やっぱりだめですか……。」

「ガイドさんの言う通りだったわね、なんとかって島の、元のフレンズあたり以外にはすごく抵抗するの。
でも、お歌で仲良くなれば大丈夫かしら?」

「あ、ちょっとそれは~」

「~~♪゛♪♪゛」

 

 

 

そして気づいたら、とりのフレンズさんのパーティーに混ざっていた。
もちろん、隅っこで震えながら。

 

「ご、ごめんなさいね……あなたのことをお話したら、「ウサギは寂しがり屋で、一人だと死んじゃうのです。」とかなんとかで救出するぞとか盛り上がって、イブは中断に……。」

「そそっそ、そ、それでで、き……今日にに??」

 

話に聞いていた美味しいものをいくつか食べて、少し……臆病が治った、せめてそうあってほしいと思いつつ、トキさんに連れて帰してもらった。
歌で気絶してるうちに。

 

 

そして……。

「おかえり。
クリスマスのケーキ、いただいちゃったんだけど……一緒にどうかな?」

「二次会ってやつですね。
あ、私もご一緒していいですか?」

「ここでもクリスマスソングを」

「そっそれは止めてぇ~!!!」

 

生まれてから一日で、私はサンタさんにたくさんプレゼントをもらった。
いい子にしたからだよ、って、周りのサンタが、プレゼントが笑ってくれる。

いい子になる……勇気を出すのは難しいけど、こんなに素敵なひとときが訪れるなら……。

私がこれを覚えている限り、これからはきっと──

 

 

 

 

 


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Tale ナカベ シズケサの密林

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