暗闇の記憶

ページ名:暗闇の記憶

ここは、何処なんだろう?

いつものように野山を飛んでいたはずなのに

何かに引っかかって、急に身体が動かなくなって

気がついたら真っ暗闇にいた・・・

時折伝わる振動、どこかへ向かっているの?

聞いたこともない音、そして知らない声が聞こえる

 

 

何?

突然、目の前が明るくなった

あたしはビックリして、思わず大きな声で鳴いていた・・・

喉が枯れるかと思った

そのうち、疲れたあたしは鳴くのをやめた

身体がとても暑くなっていた、苦しい・・・


・・・?冷たい?

身体に水がついている、雨・・・?

違う、水を吹き付けられてるんだ

やめて・・・今度は、寒い・・・

 

ここで、ようやく自分がいる場所を見回した

けどよくわからない、まわりには枝のようなものがたくさん

隙間はあるけど、狭くて出られそうもない

いつもの、明るくて、気持ちのいい場所じゃない

知らない場所だ、こわい・・・

いやだ・・・ここから出して・・・おねがい・・・

 

 

 

 

あたしが何かから自由を奪われてから

そんなことの繰り返しだった

生きている心地がしなかった

食事には困らなかったが、食欲なんて当然なかった

自分よりもずっと大きな、見たこともない生物がたくさんいた

・・・時々、笑っているのが分かる

なにか楽しいことでもあったのかな?

あたしは少しも楽しくはなかった

枝に囲まれたこの小さな空間で

暗闇に閉じ込められ、明るくなったら鳴いて

そして冷たい水を吹き付けられ・・・

このままあたしは死ぬんだろうか

 

 

 

 

その日はいつもと違った

いつも笑っている生き物達が、騒いでいる

怯えている、怒っている

いつもとは違う声も聞こえる

こっちも怒っているように聞こえた

とても怖い・・・

でも、その時のあたしには動く気力もなかった

 

そのうち、怒りの声は止んだ

視界は明るいままだが

身体に伝わる振動から、どこかへ向かっているのだろう

今度はどこへ?・・・いや

もう、どこだっていいや・・・

 

 

 

 

いつの間にか眠っていたみたい

まだ振動は続いている、今回は長いなぁ・・・

脚に何か赤い輪っかがついてるけど、コレ、何だろう?

ふと、周りの空気が暖かい事に気がついた

心地が良い、そう感じたのは久々だった

 

・・・?

枝の隙間が大きくなってる?

外に出られる・・・?

この狭い場所から、出られる?

そんな思いが、あたしに力をくれた

今しか、ない・・・!

力いっぱい、羽ばたいて

あたしは枝に囲まれた場所から抜け出した

外は見覚えのない野山だったが、そんなことはどうでも良かった

あの狭い場所から、離れたかった

 

その一心だった・・・でも、長くは飛べなかった

急に力が抜けていくのがわかった

よく寝ていたはずなのに、眠い・・・

あぁ・・・身体が落ちていく・・・

地面が迫っている・・・どうすることも出来ない・・・

せっかく出られたのに、死んじゃうのかな・・・

そんなことを思いながら

あたしの意識は、ココで途絶えた・・・

 

 

 

 

 

 

メジロ「・・・うわぁ!」

あたしの突然の声で

まわりのみんながビックリしたようにこっちを見ている

メジロ「あれ?・・・え?」

もしかして、寝てた・・・?

状況を整理したい、けど

まず、とりあえず、謝っとこ

メジロ「ご、ごめんなさ~い・・・」

記憶を遡ってみる・・・

そうだ、レストランそらのあじに来て、パフェを食べて

お腹いっぱいになって、それから・・・

じゃぁ、さっきまで見ていたアレは何だったんだろう?

夢?だとしたら、嫌な夢だなぁ・・・

何人かのフレンズがまだ心配そうにこっちを見てる・・・

いや、もう大丈夫です!

寝ぼけてました!笑ってごまかせ!

メジロ「え、えへへへ・・・」

バツの悪そうな顔をしつつ窓に視線を移していくと

あ、日が傾いてる

もう帰ろっと!

 

今夜は、いい夢が見れますように!

~終~
 

+あとがき-

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

このお話は、メジロが本土で保護されたのちジャパリパークへ輸送されフレンズ化するまでの過程を描いたものです。
自然の中で生きて来ているので「網」とか「ケージ」とか「ヒト」とかはおそらく知らないだろうと考え
人間も含め人工物の名前は出さず自然にあるものでなんとか置き換えて表現してみましたが、伝わりましたでしょうか。

以下は解説です。

カスミ網によって捕らえられて鳴き合わせに参加させられたメジロ。
周りが明るくなると鳴き出すという習性を利用するため、鳴き合わせ直前までは暗い箱に入れられ
また鳴き終わるとメジロの体温は上昇するので、鳴き合わせ後は霧吹きなので水をかけ強制的に冷却されます。
(メジロの捕獲・飼育、カスミ網、鳴き合わせ、昔は普通に行われていたようですが現在はどれも違法なものです。)
「横綱」を目指すために飼育され、何度も鳴き合わせに参加させられている中で保護団体に救出され
ジャパリパークで引き取られることになったメジロ。
パークに着いてからの陸路で偶然ケージの扉が開いてることに気が付き、なんとか脱出に成功するも
長くケージ内に監禁されたうえ無理やり鳴かされ続けたことで体力がなくなっており、途中で力尽きて落下してしまいます。

ご都合主義、落下した先にサンドスターの欠片が残っており、そこに接触してフレンズ化、という流れ。

そしてメジロ本人は夢だと思っています、自分の身に起きていたことだったとは欠片も思ってません。
生まれたときから、気がついたらパークにいた、そんな認識です。
嫌な記憶は封印される、みたいな感じにしようと思って書いていきましたが
そもそも動物時代の記憶を持っているフレンズって結構少ないみたいな書かれ方何処かでしてたような・・・?

深夜の思い付きをガーッと書いただけのものを、あとがきも含め最後まで読んでくださった方々
重ね重ねありがとうございました。
お話を作るのはニガテな私ですが、また何か書いた時は何卒よろしくお願いします。               -執筆者:MDアクス


Tale

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