Aの真偽と存在定義は意味がある

ページ名:AはAで意味がある

 

【ラボにて】


クマムシ「……謎のフレンズ?」

Tレックス「はい。クマムシさんにその調査を依頼したいのですが」

クマムシ「構わん。誰かの役に立つこともまた世界平和への一助となるからな!」

Tレックス「そう言って戴けると有り難いです」

クマムシ「ちなみに、謎のフレンズというのは新種なのではないか?」

Tレックス「その可能性も否定出来ないのですが……それでは説明もつかないことが何点かありまして」

クマムシ「説明できない……新種のフレンズの解析が間に合っていない……という意味ではなく?」

Tレックス「それが、そのフレンズは『パークを出入りしている』と情報があるのです」

クマムシ「パーク外に!? それは最優先で止められる……というかサンドスターの供給はどうやって……」

Tレックス「それ故に謎のフレンズなのです。その他にも、そのフレンズは発見者の女の子と暮らしているようで……」

クマムシ「人間と同棲するフレンズは珍しくないが……それはパークに限った話だしな。監視カメラには?」

Tレックス「当然のように映っていませんでした。ひとまず我々はこのフレンズを【擬態】が得意で、尚且つ今のフレンズから進化した次の世代じゃないかと推測しています」

クマムシ「我々は……ということは、パークの主な関係者には」

Tレックス「『不具合』の皆さんが全力で隠ぺいに走っています。ただそのフレンズを知るのはその少女のみ、そして人の口に戸は立てられません」

クマムシ「K博士はこの事をなんて?」

Tレックス「それが……騒動になりかねないのに『気にすることはない』と」

クマムシ「妙だな、未確認のフレンズなんて喜んで飛びつきそうなものだが」

Tレックス「今はその気分でない可能性も大いにあります。しかしK博士の気が変わるのを待っていては手遅れになりかねません」

クマムシ「……だな。よし、早速その少女に話でも聞いてみるとしよう、今何処に?」

Tレックス「すでにラボの前に待機してもらってます」

少女「はじめまして! フレンズさん!」

Tレックス「もう来ていましたね」

クマムシ「見たところまだ幼いが、少女の親の許可はどこまで?」

Tレックス「全任されています。『不具合』には交渉の得意な者がいますので」

クマムシ「そうか。よし、ならばパークを少女と共に歩むとしよう」

Tレックス「それはなぜ? ラボで話を聞くくらいでよいのでは?」

クマムシ「まだまだ頭が固いぞ! この美しき世界の元、母なる大地の上でなくては真実はそこに影を落とすというものだ!」

Tレックス「申し訳ありません、私にはピンと来ないですね」

クマムシ「世界平和を願って我らと共に来るか? であればこの意味も理解できるだろう!」

Tレックス「私は世界の平和よりも、日常の平和を守っていきたいので」

クマムシ「それもまた世界平和だ。私も我らが偉大なる神も貴様の祈りを待っているぞ!」

Tレックス「前向きに善処し機会があればぜひともチャレンジしてみたいですね」

クマムシ「貴様、断り方がオブラートに包み過ぎでは」

Tレックス「これが企業のデフォルトです。更にマルチタスクで上からの無茶な要求にも答えねばなりません」

クマムシ「さすが一人ブラック企業」

Tレックス「いや照れますね」

クマムシ「照れるポイントか!? ま、まぁそれはそれとして、ゆくぞ少女よ。お前にパークを見せてやろう」

少女「うん! れっつごー!」

 

 

 

【少女と行動し数時間後】

 

クマムシ「――――さて、次はどこに向かう?」

少女「んー、休憩」

クマムシ「ではこのままベンチに腰をかけているとしよう」

少女「はぇー。すっごい疲れたぁ。やめたくなるよぉ歩くの」

クマムシ「であるならおぶってやろうか?」

少女「やだ! 世界平和祈らないといけなくなるもん!」

クマムシ「良いか迷える子羊よ、世界平和を望むことは生物としての宿命でありこれこそ神の……おっと、防犯ブザーはやめてもらおうか」

少女「宗教には気をつけろって、お父さんが言ってた」

クマムシ「い、いやこれは宗教でなく。崇高な使命を……防犯ブザーは時に暴力になるぞ!」

少女「クマムシのお姉さん何か他のフレンズより危険……私のロリセンサーがビンビンだよ……!」

クマムシ「小学校低学年とは思えないボキャブラリーだな」

少女「次はどこのエリアに行くの?」

クマムシ「そうだな。これまでで気になったフレンズがいればその種類に関連した場所を案内しよう」

少女「んー、シロイルカのフレンズとか可愛かった!」

クマムシ「ほうほう、それと?」

少女「顔がおもっくそ怖いフレンズもいた!」

クマムシ「あれは人間だ。わかりやすく言えば警備組織の偉い人みたいな感じだな」

少女「あの手は何人の血をすすっているの?」

クマムシ「パークを何だと思っているんだ啜っていない。少なくとも人の目があるところでは。他には?」

少女「カメラでめっちゃ撮ってる盗撮の人!」

クマムシ「それも人間だし、あれはカメラマンというんだ」

少女「それと婚期逃してそうな関西弁? 京都弁? のフレンズ!」

クマムシ「人間だな。きっと世界平和を願えば出会いもあるだろうに」

少女「後はね、胸が平らで垂れる乳もない老婆!」

クマムシ「あれはこのパークで一番えらいんだぞ、なんださっきから攻撃的なワードは」

少女「ほら子供は純粋だから」

クマムシ「素直と悪意を履き違える大人にならないようにな。やはり世界を愛する心が足りていない!」

少女「あ! あと気になるフレンズいた!」

クマムシ「ほう?」

少女「白衣着て笑いながら全力疾走してた眼鏡の! 最後にはアクロバティックにパフォーマンスもしてたフレンズ!」

クマムシ「……あれは仕方ない」

少女「仕方ない!?」

クマムシ「大きな風や、突如起こる火事、みたいな災害と同じだ」

少女「よくわかんないけど?」

クマムシ「その反応が正解だぞ。しかしさっきから人間ばかりじゃないか! その他のフレンズは?」

少女「えーと、アホウドリのフレンズとか可愛かった!」

クマムシ「そうだな。あの純粋無垢さは求心力に長けている」

少女「蛇の、なんかお嬢様みたいなフレンズも可愛かったなぁ」

クマムシ「私も初めて見たが、あの高貴さは確かに人を引きつけるものだ」

少女「あと……なんのフレンズかわからないけど、愛ゆえで共依存に持ち込めそうなフレンズ!」

クマムシ「語彙の鋭さが増したが抑えていこうな。あと共依存はやめておけ洒落になっていない」

少女「後は……ライガー? っていうちょろそうなフレンズ! ヒモ飼ってそうな!」

クマムシ「純粋さとはこうも酷いか……!!」

少女「料理が上手そうな元気いっぱいのフレンズも良かったね、童貞殺しそうな服が似合う」

クマムシ「だからそれは人間だ!」

少女「それとね、一番好きだったのは。こうして私の話をちゃんと聞いてくれる狂信者のフレンズ」

クマムシ「私の事か!? 狂ってなどいない! 私はただ世界平和の為に地道な活動を! というかさっきから偏見が過ぎないか?」

少女「想像力豊かと言ってほしいね!」

クマムシ「……ふむ。なぁ少女よ、今日見たり話をしたフレンズの中で、いつも会っているという『フレンズ』に似た動物はいたか?」

少女「ううん? あの子はなんか見るたびに形とか変わってるから。あ、そうだ! あの子ね! このあいだね!」

クマムシ「わかったわかった。聞いてやるから膝の上に乗るんじゃない」

少女「居心地いい……特に後頭部」

クマムシ「……お前は将来大物になるよ」

 


 

Tレックス「博士、『不具合』の」

K博士「それはもう終わっているよ、いつものクラウドに送っといた!」

Tレックス「助かります。……あの、ちょっとよろしいですか?」

K博士「『謎のフレンズ』かい?」

Tレックス「その通りです。今はクマムシさんに協力を要請しているのですが……」

K博士「だったら尚の事安心だろう? いつもの面子の中では一番子供の扱いが上手いからね」

Tレックス「しかし……謎のフレンズの正体も特性も未だわからず……」

K博士「私は気にしなくていいって言ったのにー」

Tレックス「ですが……」

K博士「君のパークを守らんとするその心意気は評価しよう。ただ、そうだね、今回ばかりは字面をそのまま受け取ってしまってはだめだよ」

Tレックス「というと……?」

K博士「なに、簡単な事だ。そうだね……少女が見ているのは、少女が見えているのは、ただの友達だよ」

Tレックス「友達?」

K博士「きっと想像力が豊かなんだろう、一つの物事にあれやこれやと解釈や想像を働かせる子供特有の冴え渡る能力がいかんなく発揮されたんだろう」

Tレックス「……あ、あぁ。なるほどそういう……確かに、友達、フレンズです」

K博士「だろう? クマムシ君も、その少女と話していれば見えてくるんじゃないかな、不可視のフレンズがさ」

 

 

少女「それでね! それでね!」

クマムシ「おっとそれまでだ」

少女「え? 私のお話つまらなかった?」

クマムシ「違う。見ろ、お前の両親が迎えに来たぞ」

少女「……やだ、だってあんまり家にお父さんもお母さんもいてくれないんだもん」

クマムシ「それは愛だ」

少女「愛?」

クマムシ「そう。お前という。娘という唯一の世界を守らんとする素晴らしい愛なのだ」

少女「あんまり遊んでくれないのに……?」

クマムシ「あぁ。気になるのなら聞いてみればいい、そのほうが早い」

少女「あの子と一緒に?」

クマムシ「そのフレンズは…………いや、そうだな。秘密の友達にしておけ」

少女「秘密の?」

クマムシ「そうだ。家族の愛があれば友情という愛もある、分け隔てなく先ずは愛してみるがいい、世界は色とりどりで愛せるものにあふれている」

少女「? よくわかんない!」

クマムシ「分かるときが来たら、そのフレンズを思い出して懐かしむといい。お前に寄り添った……愛で出来た友達を」

少女「んーー?? あ、もう行かなきゃ、じゃあねクマムシのお姉さん!」

クマムシ「またいつでも遊びに来い! そして世界平和を共に歩もう! わかった! 防犯ブザーはもうやめような!?」

少女「あの子にもよろしく言っとくね!」

クマムシ「あぁ! その子にも世界平和について説くがいい!」

 

 

Tレックス「ではこの事をわざわざ伝えなくても」

K博士「問題ないだろう。クマムシ君なら上手くやっている。だから心配する必要もない、よく聞く一過性の話じゃあないか」


K博士「子供の見る、子供だけに見える…………『イマジナリーフレンド』なんて。……うん、たしかにそれも、友達《フレンズ》だ」

 


Tale

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