K博士「それでは! プラナリア君の寿命獲得を祝しましてぇええええ!!!」
「「「「「カンパーイ!!!」」」」」
K博士「いやー良かった良かった! まさかこんなにも早く寿命を手に入れられるなんてね!」
プラナリア「ありがとうございます! これで私は不死身じゃないんですね!」
パーク壊滅、火山噴火の影響によりサンドスター自体がそもそも変化をきたしている。
この場いるフレンズは動物開放はおろか元になった動物の特性そのものが無くなっている。
K博士「そうとも! これから限りある命を生きたまえよ! 私なんて健康予防にマスクまでしてるもの!」
プラナリア「はい! マスク美人というやつですね!」
噴火直後サンドスター濃度が急激に上昇している為、空気が汚染され人間はマスク必須。
マスクっていうのは【ガスマスク】の事。
クマムシ「素晴らしきかな我が神よ! これは運命、運命だ! 今日こそ素晴らしい日など他にない!」
Tレックス「おめでとうございます、プラナリアさん!」
たにし「お、おめでとう! もう私感動で泣きそう……!!」
プラナリア「わ、私もですよぉたにしちゃぁああん!!」
K博士「あはははは! いいねぇいいねぇ今日はうんと食べたまえ呑みたまえ! なんせ……そう、なんせ」
K博士「私達は! ジャパリパーク壊滅の被害でラボに閉じ込められているのだから!」
クマムシ「…………」
プラナリア「…………」
Tレックス「…………」
たにし「…………」
K博士「…………ごめん、これは流石に不謹慎なジョークだったね。素直に謝るよ」
Tレックス「ついていい嘘とダメな嘘があります。博士」
この場にいる全員は『ネガティブな真実を言わない』というルールの元動いている。
ついていい嘘とは、ポジティブな事。
ダメな嘘というのは、現実の事を言う事。
K博士は、つい普通のブラックジョークのつもりで、ラボに閉じ込められているという『真実』を言ってしまった。
今は『この場は絶望的な現実ではない』という嘘の元に成立している空間であり、ネガティブな本来の真実は『ダメな嘘』となる。
K博士「さっきのは重たいジョークとはいえ、まぁ何だ。ジャパリパーク壊滅事件、サンドスターの暴走から始まった歴史的悪夢からはや一週間。長いものだね、沢山の命が喪われた、沢山のモノが壊れた」
K博士「私達がのうのうと生きていられるのも、全部……運が良かったからだ」
K博士なりに、それがさも自分たちだけは助かったというニュアンスで真実を語る。
空気も汚染されつつ全員次第に弱り果てて水も食糧も無いのに、一週間も保ったのは奇跡という意味。
今ここに居る全員が飲まず食わずで、衰弱しほぼ瀕死。
ただ死に際がそれではあまりにも悲しいという事で、前述の『ルール』や後述の『酒』で楽しく最期の時を迎えようとしてる。
さながら、まだパーク壊滅しておらず毎日楽しく過ごしていた日常を演じている。
プラナリア「でも、そのおかげで私は寿命を得られました。失ったばかりではありません、救いもありました」
クマムシ「大いなる神のおっしゃる通りだ。スクラップビルドという言葉もあるだろう」
たにし「不滅の炎は燻る事は無い、よ?」
Tレックス「そうです、それに私のように絶滅しないだけマシです」
K博士「ははっ、みんなありがとう。私は君達と会えて本当に幸せだよ! さ、今日は祝いだ祭りだ!」
たにし「おー!! で、でも……これ、お酒? フレンズが呑んでも大丈夫?」
K博士「あはは! 私を誰だと思っているんだい? 天才だよ! フレンズ用のものがあるとも! 勿論、人間も呑める!」
ラボに閉じ込められた、という意味は、物理的に扉が開かないとかではなく、周囲に活性化した強力なセルリアンが多く居る為、もう迂闊に出歩けなくなったという事。
博士たちが今いる場所はラボの地下であり安全だが、外に出ればいくらフレンズでも弱っている今太刀打ちできない。
だから、せめて死ぬ前にアルコールで楽しく死のうという事で、廃墟と化したラボ(地上部分)を探索し、K博士の作成した酒を集めてきた。
それは、パーク壊滅前にK博士が万が一にと作成し隠していた酒。
その効果は、フレンズや人間が呑んでも問題ないのは勿論の事、酔いが回れば回るほど死に近づき、酩酊状態で眠るように死ねる『安楽死用の酒』。
K博士「因みに、筋肉仮面と峰岸女史は先に酔いつぶれたし、田沼千恵君はそもそも未成年だから私直々に送ってった! お酒は20歳になってから! ただしフレンズは除く!」
「「「「「さ、呑むぞー!!」」」」」
他の『不具合』のメンバーは死に絶え、酔いつぶれたというのは『毒で自殺した』という意味の隠語。
筋肉仮面は最期までこの状況を打開できる特効薬を開発していたが、結果間に合わず服毒で死亡。
峰岸は、酔いつぶれたのではなく、酔って潰れた。服毒したが量が足りず死ねない時に落石で物理的に潰れた。
田沼千恵だけは、たまたまラボから離れ救助が間に合う場所に居て、『パークの外はひとりぼっちでラボの皆が家族だからこの場に残って一緒に死ぬ』と言う彼女を無線越しでK博士が『お酒は20歳になってから』と、無理やり送り出した。
これからこの地下で始まるのが、つまるところの『服毒による集団自殺』
一時間後
プラナリア「しかし凄い料理とお菓子の数ですよねぇー! ジュースもたくさん! よくここまで揃えましたね!」
K博士「そりゃそんなの一言でカタがつく。私、天才だからー! あは、ははははははは!!」
そもそも、現実には酒しかない。
これはプラナリアの気の利いた優しい嘘。つまり、ついていい嘘。
たにし「博士、ちょっと酔ってる? 酩酊に来たりし悪夢は平気?」
クマムシ「二日酔いの事か? それなら全く心配ないぞ……ああ分かっている! ティラノよ、アルコールには私も気を付けよう」
Tレックス「……心配ですね。アルコール摂取は祝い事に欠かせないとはいえ、怪我をしないように」
たにしは率先して呑むK博士が先に死ぬのではないかと心配している。
クマムシは、二日酔い=死という暗喩が、酒も入っているし衰弱しているのもあって読み取れず『どうせ死ぬのだから二日目は無い』という意味で心配ないと言ったが、それをTレックスに目線で咎められる。
アルコールには気を付けようとは、失言をしないようにという事。
Tレックスの言う怪我=失言。
プラナリア「痛った!! 小指ぶつけたあああああ!!」
クマムシ「神よおおおおおおおおお!!!!」
たにし「うわあああああ人気アイドルのおみ足に傷があああああああ!!!」
K博士「あははははは!! フラグ回収はっや!! あはははははは!!!!」
Tレックス「はぁ……。だからあれ程……いや、まぁ今日は無礼講としましょう」
K博士「一人だけ呑みすぎなのでは?」
Tレックス「いや、私は皆さんがたくさん呑んでるから……」
プラナリア「はいそれ許しませーん! はい! 私が呑んで! 呑んで! そーれトリスメギストス!! ごくごくごく!」
クマムシ「私も! ごくっごくっごくっ……けふぅ……あぁ、これは良いものだ!」
K博士「そりゃそうだ! 私直伝の調合だから! 信頼と実績のK博士クオリティ!」
K博士以外のフレンズは全員『自分たちが先に死んでも、何とか博士を最後の一瞬まで生かせたい』という示し合わせがある。
救助の可能性を最期まで捨てず、自分が先に犠牲になって一人でも多く生きて欲しいという事から、フレンズは我先にと毒を呑んでいる。
プラナリアの『それ許しません』は、一人だけ先に死なせないという事。
たにし「へゃー私ちょっと、結構キテるよねぇー」ぐびぐび
K博士「ん? ……? あ、そうか! 酔っぱらってるのか! 一瞬気付かなかった!」
Tレックス「博士呑みすぎです、全部私が呑みやす!」
プラナリア「私だってー!」
クマムシ「私もだ! すべて呑みつくしてやる!」
K博士「馬鹿ッ!! そんなに呑むなッ!! わ、私の分が!!」
ここで博士の本気の言葉が出る。一瞬本気で止めようとして、慌ててテンションを戻した為、わ、私、と噛んだ。
そんなに呑むなは、そんなに早く死のうとするなの意味。別れたくないというK博士の本心が垣間見えた。
たにし「へへぇ、博士ぇ。めっちゃ眠い……」
K博士「……? もしかして、もうダウン? え、一時間だよ!? 早くない!?」
たにし「いやぁアルコールいいよ! ほんと良かった! でももう無理限界死ぬ……」
K博士「またそんな事言っちゃってー。まだまだ君の中二病も発揮していないしこれからガンガン本当の自分見せるチャンスじゃないか!」
たにし「博士ぇ……」
K博士「……はぁ、しょうがない。この天才に借りを作るとは中々いい度胸じゃないか!」
Tレックス「仮眠室ですか?」
K博士「あぁ。世話のかかる子だよ! ぷんすか!」
たにし「うぅ……博士ぇ、ありがとう……」
K博士「ならずっとお礼を言っていたまえ。だが、あんなにはしゃげる君を見れて良かったよ! またいつでも起きて宴会に加わるといい!」
たにし「…………」
たにしは自分の死を悟って、なんとか最期の力を振り絞りお礼をいいつつ『日常』を演じ切って死んだ。
博士は『死』というのを最初は子供の様に受け入れられず引き留めようとするが、『博士ぇ……』に篭められたたにしの感情と想いを汲み取りまた日常を演じる。
いつでも起きて、は、K博士なりの別れの言葉。
その意味は『また一緒に遊ぼうね』
たにしが中二を発動していないのは、日常を演じるうえで最期くらいは素の自分でお別れを言いたかったから。
最初に自分が死んで他の人を生かそうと強く決断していた。
ありがとう、というのは、引きこもりの自分を外に連れ出してくれてありがとう、の意味。
K博士「うわ寝たよ、速攻寝たよ、私の言葉シカトか!? 天才だよ私!?」
クマムシ「なぁ博士、たにしはこの部屋に寝かせておくのもいいんじゃないか? ほら、そうしないと仲間外れみたいじゃないか」
たにしの身体は既に消えているが、クマムシは宿直室に向かわせるという『設定』に変更を申したてている。
たにしの行動と勇気に敬意を払ったのもあるが、本当は死んでも一緒にいたいという『寂しさ』の現れ。
ここで、世界を救うと言っていた自分が先に誰も救えなかった事を想い、次に死ぬのは自分だと覚悟する。
プラナリア「あー! クマムシちゃん良い事言った! 良い事言ったよ今!!」
K博士「流石は見た目は軍人中身は優しきママだね! あはははは!!」
クマムシ「誰がママだ!! まったく!」ぐびぐびぐび
Tレックス「しかし似合っていると思います」ぐびぐびぐび
K博士「ちょっと!? 私の!! それわーたーーすいーーのーーー!!」
クマムシ「私のモノは私のもの、貴様のモノも私のモノだ!!」ぐびぐびぐび
プラナリア「あーーーー!! 私のも奪っちゃ駄目ですよ!!」
Tレックス「……!! 返して下さい、それは私のアルコールです!」
クマムシ「く、くくあはははははははは!! あはははははは!!」ドサッ
K博士「あーあ、完全にやっちゃった。ほら、立てるかい?」
クマムシ「貴様の手は借りん! と、言いたいところだがぁ……肩を貸してくれるか」
K博士「断る」
クマムシ「なんだと!?」
K博士「いや完全に外に涼みに行こうとしてたから。寝るならここでたにし君とセットで寝なさい!!」
クマムシ「まだ私は寝んぞ」
クマムシは死ぬ瞬間を見せたくない為、隙をつく為わざと転び手を貸してもらって外に出ようとしていたが、それをK博士に看破されてしまう。
まだ寝ないは、まだ死なないという意味。だが本当は、もう死ぬ間際。
K博士「いいや君はもう限界だ、脚ふらっふらだし」
クマムシ「むぅ」
K博士「君は君なりに頑張っていたんだろう? 必死に盛り上げて盛り上げて。それだけで十分だよ、ゆっくりおやすみ」
クマムシ「……世話をかけるな、博士。ありがとう」
K博士「正直デレるの遅いと思う。まぁけど、君はまさしく……アイドルだったよ!」
プラナリア「よくがんばりました! クマムシちゃん! ほんとに、がんばりましたね! 最高です!」
クマムシ「…………」
まさしくアイドルだったとは、辛さを最期までおくびにも出さなかったクマムシの姿勢を評したもの。
偶像としての評価ではなく、その在り方の称賛。
プラナリアは、こんな自分を慕ってくれたクマムシを想い、次は自分の番だからという意味も込めて別れの言葉を言っている。
K博士「ねぇこのコッチがデレたら寝るシステムなに? 天才の私を愚弄するとはいい度胸じゃないか!」
プラナリア「こっちがデレ損ですねぇ」ぐびぐび
Tレックス「しかし気持ちよさそうに寝ていらっしゃるので良いのでは」ぐびぐび
K博士「いじめかな? 私の分全部かっさらう気なの!? ちょっと!?」
プラナリア「あははははは!! 私は今日の宴会の主役です! つまり! 一番多く呑む権利がある!!」
K博士「異議あり! 主役だからこそ早期退場は許されないよ!!」
プラナリア「えー? 私はもう結構満足ですけど? 寿命ももらって、祝ってくれて。そもそもクマムシちゃんと活動もサポートしてくれて、もう充分です」
K博士「プラナリア君……って、そんないいムード出しても呑ませるか!! それ私んだ!!」
プラナリア「あははははは!! それじゃおやすみ博士! 二度と私達の目の前に現れないでください!」
K博士はこの時点で既に、フレンズたちの思惑に気付いて『ルール』に抵触しないように引き留めている。
内心ではフレンズの想いを汲み取りたいが、どうしてもいなくなって欲しくないという思いが勝ってしまっている。
プラナリアの『もう二度と私達の目の前に現れるな』は、死んだ私達に会わないよう無事に生きてくださいという祈り。
最期の最期までプラナリアは、シスターとして誰よりも他のメンバーの生存を祈っていたことの証。
Tレックス「……凄いセリフ残して寝ましたね」ぐびぐび
K博士「……私がデレる隙も無かった。プラナリア君は、なんだかズルいな」
Tレックス「……けぷ。これで最後ですか」
K博士「…………もう分かってたけど、全部呑んだのかい」
Tレックス「むふー。私自身、自らを褒める事はあまりないですが、これは頑張ったと言えるでしょう」
K博士「これはじゃない。全部だ、君もたにし君もクマムシ君もプラナリア君も。全員、頑張ってない人なんていない」
Tレックス「それは……嬉しいですねぇ」
K博士「君酔ったらそうなるの!? ……この天才K博士が圧倒されまくりだな今日は……」
Tレックス「……博士」
K博士「なんだい? 先に言うけど、寝たら承知しないよ。私一人じゃないか、え、なにこの宴会。ボッチで楽しめと!?」
Tレックス「…………」
Tレックスは何も言わず満足そうに消えている。
『……博士』の一言に、今までありがとう、や、どうか生きてくださいという全ての『感情』を篭めている。
本来の彼女ならそれらすべてを言葉で説明するが、他のフレンズ消滅と演技を見て、言わなくても想いは伝わるという事を最期に学びそれを実直に実行した。
最期まで残れたのは、誰のかの為に動きたいというTレックスの基本信念に基づいたもの。
ワーカーホリックは最後の最期までその仕事であり生きがいを全うした。
K博士「まー、私の手なんか握っちゃって! そんなあざとさで私が赦すとまぁ許せちゃうよなぁ。ちょっろ! 私ちょっろ!」
K博士「もおおおおおおお!!! 私だけ呑み足りないんですけど!! ど!!」
K博士「今日は無礼講って言ったのがまずかったか……私の分も残しておいて欲しいな! もう!」
K博士「……っていうか、確か、最後に残った人が後片づけして帰るだっけ?」
K博士はここで泣いている。
誰もいなくなり、意地を張る必要がなくなったため。
後片付けして帰る、は。最期に残った人がこの一連の『芝居』をまとめてねという意味。
最期まで楽しいどんちゃん騒ぎだったと、どうにかして『誰か』に伝えて遺すという役目。
そうすれば、自分たちの『嘘』は『真実』として伝える為、結果的に『あの騒ぎは幸せしかない日常だった』という事になるから。
幸せな嘘は最期まで幸せなままで、という思いから。
K博士「…………さては、皆で口裏合わせてたな? 私が残るように仕向けたな?」
K博士「あははははははははは!! あっはっはははははははははは!!!」
K博士「――――全く。そんな事、私が気づかないとでも思ったのかい?」
K博士「偉人を超えた英傑、天才の中の天才たるこの私が、その程度の企みなど看破して当然だよ。全く君らは本当に……」
K博士「さて。隠していた『ボイスレコーダー』は機能しているかな? ……お、あったあった」
K博士は事前にうっすらと自分が『生かされる』事に気付いていた為、こっそりボイスレコーダーを設置していた。
K博士「えーハローハロー! 今日は……いや、ネタバレはやめておくか」
K博士「さて。あとは……そうだね、遊び心として『ヒント』をあげよう。無論後述する『ルール』には則らないフェアな提示だ」
K博士「『ヒント』私達の宴会は本物だ」
K博士「『ヒント』このお酒は私特性のお酒、フレンズにも人間にも呑める。アルコールが回れば寝落ち確定だ。泥酔すれば2日は起きないレベル」
K博士「『ヒント』ジャパリパーク壊滅は一週間前に本当に起こっている。ひどい有様で汚染されてない箇所は何処にもない程だ」
K博士「『ヒント』私はマスクをしているよ」
K博士「『ヒント』一番重要なのはティラノ君の言葉の中にある、ある言葉。それはあるルールによって成り立っている」
K博士「これだけでは全容は把握できないが、軽くなら推理できるかな?」
K博士「さて――――私は幸せ者だ、と。そんな独り言を言ってみたりしちゃおうか」
K博士「……これから言う言葉は、多くは語らない。ただ、記録として残しておいて欲しい」
K博士「私は……」
K博士「今日は人生で最高の一日で……これ以上ないくらい幸せだった」
ここまでが、ルール無視。いわゆる地の文。舞台の外。
K博士「いいかい? 一応勘違いしちゃう人もいそうだから付け加えるけど、規則を守って則って礼儀ただしく言うけれど」
K博士「これはバットエンドじゃない――――ハッピーエンドさ!」
K博士「シリアスでなくギャグだよ。そこのところお忘れなく」
規則を守って則ってというのは、これから『ルール』に沿うよ、という意味。
K博士はここで、ついてもいい嘘を言っている。
つまりこれは全て嘘だという説明。しかし本心では言っておらず本人もフレンズ含め本当にハッピーエンドだと思っているので、二律背反の何が何だか分からないようになっている。
このK博士の独白全てはK博士の遊び心であり、シリアスもポップも嘘も真実もごちゃまぜになっている。
最期に自分が遺せるものは何かと考えた際に、ちょっとした遊び心で、このボイスレコーダーを聞いた人を混乱させるためにやった。
遊び心とはK博士の基本原理であり、毎日どったんばったんおおさわぎしていたという『日常』を表現している。
◇
田沼千恵「…………さて、仮眠終了。仕事仕事」
私はすっかりぴったりになった白衣に身を通す。
あくびが上手く出ないから花粉症って事にして――――席から立った。
事件から数年後のシーン。
田沼千恵は死んだK博士の遺品である宴会場から発見された『白衣』を身に着けており、ようやくぴったりになったという事は、白衣自体が自分の身体のサイズに合ったという事と、K博士の白衣を着られるぐらいには能力的に成長したという暗喩。
仮眠中に見ていたのは、まだパークか健在だった頃の夢。その為、寝起きで目から涙があふれていた。
しかし涙が出るという事はあの『宴会』が悲しい事だったと認める事になってしまうので、涙(悲しみ)を誤魔化す為に、仮眠終了(さっきのはただの夢だから気にするな)仕事仕事、と気分を切り替えている。
そして、涙自体を隠すために、あくびを出そうとするが出ず、花粉症のせいにした。
席から立ったは過去との決別の暗示だが、涙は出てしまっている為割り切れてない。
しかしそれでもめげずに前へ前へと進む人間の強さを描いている。
破滅を前にしても人間は強く前へ向けるという、バットエンドとハッピーエンドの融合。
まとめると。
この話は、パークが崩壊し、もうこれいじょう生きられないほど衰弱しきったK博士らは、最期くらい楽しく終わろうと『日常』を演じた『集団自殺の話』
自決用の酒しかなく、ゆえに食事のシーンやお菓子を食べるシーンは無い。
しかしその中で最期まで希望を諦めず、自己犠牲でお互いにお互いを生かし合うが結局全員助けが来ずに死ぬ。
K博士は生き残り奇跡的にもう一日耐えるが、希望は届かず助けはこないまま死ぬ。
唯一の救いは田沼千恵であるが、あくびが上手く出ないというのは身体的機能の『異常』であり、近い将来の『死』を暗示している。
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クライシスのカノンにおいて最初の作品投稿と解説、お疲れ様です。K博士の設定や言動がとても好みでよく作品を拝見させていただいていました。このTaleと解説を読み終わり、「K博士」の名前である以上「民川はなび」は目覚めなかったのだろうかと解釈し、より悲しい気持ちになりました。いつも素晴らしい作品をありがとうございます。これからもひっそりとファンとして読ませていただきます。
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