第2話 芽生え

ページ名:第2話 芽生え

朝。
目覚ましの音が鳴る数分前に、俺は目覚めた。

ふとスマホをみるとメールが一通届いていた。「誰からだろう?また翔太からか?」と思いつつベッドから起きて目を覚醒させる。
そしてもう一度通知の欄を見てみるとそこには『エトランゼ』の文字がみえた。

__あのエトランゼさんから!?

俺は今ので完全に眠気が吹っ飛んだ。エトランゼといえばLAS情報伝達チームのリーダーだ。普段は世界中を旅してるからそうそうお目に掛かれる人物じゃない。
旅をするというより世界中を移動せざるを得ない人だが、とにかくそれは置いといてメールの内容を確認した。

『ジャパリパークに来ちゃった✨鋼夜君、案内ヨロシク』

だそうだ。あれ?俺...メアド教えたっけ??
ていうか...なんで俺なんだ...?

エトランゼさんとは前に一度だけであったことがある。背が高くて、すらっとしたイメージの女性職員だった。5年くらい前に俺はパソコンの使い方を教えてもらいたくて、彼女に聞きに行ったことがある。
それを今でも覚えてくれていたのだろうか?

とりあえず俺は『ホートクエリアのLAS支部で待ってます』とだけ送っておいた。


そして食堂に向かった。そこにはすでに翔太が飯を注文していた。

「おーーっす!鋼夜、ここのメシは朝もうまいぜ!」

「おはよ。ていうかお前昨日俺を置いて逃げただろ」

「あははー何のことかなー」

くそ、顔が笑っていないじゃないか。まったく。

「とりあえず、俺も何か注文するか___」

と、席を離れようとしたとき誰かが俺の左腕に抱きついた。
突然のことだったのでバランスを崩す。

「おわっ!?」

「やっほー!こーやっ!おはおはー!」

左腕に抱き着いてきたのはAthenaだった。昨日の晩もそうだったがAthenaは俺にやたら積極的に接してくる。
理由は後で聞いたが、Athenaがここにきて最初に打ち解けた人だから、らしい。
まあ歳は近いし幼馴染のようなものだろうか。

「いてて...あぁ、Athena、おはよう」

「ふふー」

あぁ...重い...早く離れてくんねーかな...Athenaとの関係は本部にいた時からだったが、もしかして本当に寂しかったのはAthenaだったのでは...?
いつもに増して辺りが強い気がするのはそのせいなんだろうか。Athenaとのこの微妙な関係は一度誤解されたらそれを解くのは至難である。

「イチャイチャするなら向こうでやれよな」

と翔太に指摘される。

「別にそういう関係じゃないんだけど」

「えぇー!鋼夜君!!私は別に気にしてないけど!!」

「今そういう冗談はいらないよ...てかそろそろ離れて...」

と、Athenaを腕から引きはがしつつ俺はカウンターに向かった。

(ちぇ...今回のは嘘じゃないんだけどな...)


 



午前9時過ぎ、まさかの出来事が。

「やあ鋼夜君、元気そうで何より。」

「あの...エトランゼさん...こっちに来るの早すぎじゃないですかね...」

今日の朝、メールを送ってきたエトランゼさんがすでに来ていたのだ。

「ん?あぁ、それはメールを送ったのがホートクに来てからだったからね。それと君たちは今修学旅行中だったっけ?私も同行するよ。」

「あ、そうだったんですか...えと、それはまたなぜ?」

「まーまーそんなのどうでもいいじゃない鋼夜。」

バレー部の唯があまり興味なさそうに言う。

「いや...俺も気になる...」

と優斗。

「ま、理由としては大したことじゃないんだけどね。社長がAthenaの様子をついでに見て来いっていうからさ。あの子は今ここにはいないようだけど、元気かい?」

「朝から元気だったよな」

「なんで俺を見るんだ」

「あぁ、そういえばいちゃついてたね」

「いやだからあれはいちゃついてないし...」

「...!そういえばあの子と鋼夜君って付き合ってるんだっけ?」

「エトランゼさんまで...別に付き合ってないですよ...多分

「ん?」

「いえ、何も言ってないです」

別に俺はAthenaが嫌いなわけではない。嫌いなわけじゃないんだけど...なんか...ううん...言葉でうまく表現できないが
少なくとも俺とAthenaはそういう関係ではなかったはずだ。多分。


Tale

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