「Athena!!お前!昨日も仕事さぼっただろ!!今日こそは逃がさないからな!」
「はーせーがーわー、私はさぼってなんかないよーー、ちょっと休息取ってただけだしぃ~」
「それをさぼってるっていうんだ!さあ早く持ち場に着け!!」
「...なんか、いつもよりピリピリしてない?大丈夫?ストレスたまってない?」
「ストレスはお前が原因だッ!」
と、いつもの雷が長谷川に落ちたところでAthenaはもう一度聞いた。
「...で、なんかここの雰囲気もけっこー重たくなってない?なんかあったの?」
「あ?あぁ、それはあれだろう。昨日の夜、監視カメラに不審者が映っていたからな。もしかしたらセルリアンの存在を知ってしまったかもしれん。」
「ん?不審者?てーことは...まぁ職員じゃないのよね。」
「そうだ、なにか心当たりはあるか?」
「うんにゃ、さすがにここまでノーヒントだと。」
「映像が残ってる。とりあえずそれを見てくれ。」
映像は夜のせいなのか暗くてよく見えないが、そこに一人の男が映った。服装は白がメインで濃い紫を添えた色合いだ。
あれ...この服装...どこかで...?
「この服装に見覚えはあるか?」
「さぁ...」
「これはいのちのみほしの宗教衣のようなものだ。」
「え?みほしん来ちゃったの?まずくない?」
「あぁ。彼らは要監視対象だからな。パークに入ってきたみほしの人間のデータはすべてこの書類にまとめられている。」
「え、そうじゃなくて。普通に入れちゃっていいの?」
「...ちゃんと『玄関』から靴をそろえて入ってきたものは誰でも平等にお客さんさ。『けものはいてものけものはいない』。そうだろう?」
「いやいやいや、何かあってからだと遅いでしょうに。月兎だっていないんだしさ。」
「...実のトコロ俺も同意見だ。だが、こいつらは...パークに入りたいと言って自分たちに関するデータを偽りなく提出してきたからな。
『私達はここで2週間観光をしたい。嘘は言わない。不安なら私たち5人に関するすべてのデータを差し出そう。それが本物であるかどうかも確認してもらって構わない。どうか入れてくれないか。ご検討を頼む。』
パークに来た目的も『少年の気分に戻って動物たちと触れ合いたい。あそこは疲れる』だしな...なんというか......みほしにも良い奴らはいるんだな。」
「あー、そういえばみほしんって宗派があるんだっけ?似たような考えでまとまった人間たちがあつまってさ。」
「らしいな」
「あ~...一応名前だけ見せてくれない?私さぁ...団体様のご案内任されちゃってるんだよねぇ~」
「ん?そんな話聞いてないぞ。」
「だろうねぇ...LASの話だし...」
思えばAthenaにいつものキレがない。どちらかというと顔に疲れが見えている。さぼっていないというのはあながち間違いでは無かったのだろうか。
「...そうか、とりあえず無理はするなよ。お前にはまだまだやってもらいたい仕事が沢山あるんだからな。」
「あれっ!!なんかいつもより優しいじゃん!!」
...はぁ、気のせいだったか。
いいから早く読め、とAthenaに名簿を渡す
Athenaはそれを受け取り、順に名前を追って5人の名前を確認する
【ワルター】
【ステファーノ】
【ミシェル】
【ラビ】
【イソロフィア】
「ふーん...なんだかまともな名前の人間がいないねぇ...」
と、Athenaは最後の名前を見て硬直する。
「まさか...こいつ...!」
Athenaはその紙を投げ捨て、先ほどの監視カメラの映像に向き直る。
「おい!書類は大事に扱え!!」
そんな長谷川の怒りの発言には耳も傾けず、Athenaは映像をまじまじと見ていた。
「ったく...そのなかの誰かがお前の知り合いか?」
Athenaは答えない。
「おい、聞いてるのか?」
「あぁ!もう、うるさいな!ちゃんと聞いてるよ!明日のデザートはプリンでしょ!」
「なにも聞いてねぇじゃねぇか!」
はぁ、とAthenaは柄にもなくため息をつく。
そしてゆっくりと立ち上がり、長谷川にだけ聞こえるようにこう言った。
「ラビには気を付けて」
「...!?」
一瞬のことであったので、長谷川は反応しきれずに固まる。
そして数秒後
「...!おいまて!ラビはお前の知り合いなのか!?」
そう言ったときには、すでにAthenaの姿はなかった。が、長谷川は机の上に見慣れない新聞記事が置いてあることに気が付いた。
それは英語で書かれている。アメリカの記事だろうか?裏には、手書きで『Athena』と書かれている。彼女の忘れ物だろうか?それにしても、彼女のあんな怖い顔は見たことがないな、とあっけをとられる長谷川であった。
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