カーテンから明るい日の光が漏れ、窓際のベッドで寝ていたこの部屋の主が目を覚ます。
「ん...はぁぁ...」
彼女が時計を見ると時刻は9時をすでに回っていた。
「しまった...寝すぎた......」
そうつぶやいたとき、辺りが騒がしいことに気付く。なにか行事でもあったかしら、と思いつつ部屋のカレンダーを見る。彼女が寝てから数日以内にこれと言って大きなイベントはない...が、イザベラが以前言っていた『大掃除』のことを思い出した。
(そういえばLASって、冬も毎日観測だの報告だので忙しいから大晦日前の掃除ができない...だからできるときにやっておく...んだっけ...?まだ頭がぼーっとするなぁ...)と思いつつも彼女は部屋のドアに手をかけ少し開けて顔を外に出す。多くの職員が何かしらの荷物を移動させたり掃除をしていた
すると食堂の方から衛が歩いてきていた。
「...よう...起きたか。見ての通り大掃除中でな。宿舎と支部の入り口前に大量のゴミの山があると思うが...まぁ気にしないでくれ。」
じゃあな。とそれだけ言って彼は奥の方に歩いて行った。そのあとで彼女ははっとする。
(しまった...リーナ達のことを聞いとけばよかった...)
昼過ぎ、彼女は気分転換に散歩に出かけることにした。
結局リーナ達にはあの後食堂で出会った。話によれば私が寝た次の日はあいにくの雨で月が出ていなかった。
新月だったのもあるが、彼女は丸一日寝ていたことになる。どうりで体が重いわけか...と思い、気晴らしに散歩に出かけようとした彼女だったが、LAS前にいまだ残っている大量の粗大ごみの中に奇妙なものを見つけた。
(これは...何...包帯...?)
そこには包帯らしきものでぐるぐる巻きにされた”何か”があった。
「おーい!ルナ!私もいっしょに散歩に行くよ!」と、リーナがルナに駆け寄る。
ついでに聞いておこう、とルナはリーナに「これは何?」と指をさして尋ねる。
「え...こんなもの...LASにあったかなぁ...?」
「あなたが知らないってことは、特に大したものでもなさそうね。」
ほら、そんなに重要なものだったら私たちに触るなとか注意入るでしょ。職員から、とルナは人差し指を”それ”に向けてリーナに確認を取る。
「あぁ、確かにそうだな。先週の宴会で職員たちもバカ騒ぎしてたし、なんかの道具なんだろうな。芸とか、そういうの。」
互いに納得し、とりあえずは”それ”をそこに置いたまま彼女らはLASの裏手にある湖に向かった。
「そういえば、ヤマドリは?」と、ふいにルナが口を開く。
「あぁ、大掃除手伝ってるよ。あいつ、おせっかいだからな。」
あぁ、なるほど、とルナは納得する。
「そういえば、二人きりになるのも随分久しぶりね。セントラルにいた頃以来かしら?」
「なんだよ急に。お前らしくないな。」とリーナが失笑する。
別に、なんだっていいじゃない。とルナがそっぽを向く。
「そうだ、ナリモンにはいつ行く?最近アポロ関連でピリピリしてるからさ。行くなら近いうちに行っちゃおうぜ。」
「いいわね。あそこには知り合いが何人かいるし、もしかしたら協力してくれる人がいるかも...」
「...ルナ......”休息”だぞ...?」
「え...あ......」と、彼女は数日前に組んだナリモンへの楽しい旅行がいつの間にかアポロを倒す味方探しという殺伐としたものに変わっていたことに気付く。
「やっぱりか!なんでお前は戦うことしか頭にないんだよ!もしかしてまだ寝ぼけてるだろ!この三年寝兎め!」
とリーナに茶化されてルナは
「うるさいなぁ!僕は真剣に悩んでたんだよ!どう考えてもアレは僕らだけじゃ倒せないでしょ!」
「ルナ」
「なに!!」
「素が出てる。」
「あぁぁぁもう!」
「へぇ~、ルナちゃんの素かぁ...みたかったなぁ...」とヤマドリが残念そうにつぶやく。
「見なくていいわよ!」
「いや、あれは自業自得だし...」リーナが先ほどのことを思い出して再び笑いそうになる。
「あんたねぇ...!...で、ヤマドリ、リーナと話し合ったんだけど行くのは来年にしたわ。」
「お、なんで?」
「いやさ、ナリモンに行った後その流れでアポロ退治しに行くことになったんだ。」
「へ~。確かにその方が行ったり来たりしなくてすみそうだね~」
と、彼女ら三人は仲良く話していたが......
「守野さん大変です!!」
「なんだ、どうした……?」
「実は…」
「何?職員が一人いない?」
LAS内部では不穏な空気が...
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