幻影-オリジン・1

ページ名:ファントムオリジン1

 

 

 

「これ、こっちに置いとけばいいですか?」

「ああ、頼むよ」

 

その日、ヒガシシラカワ未確認動物館では、今朝届いた研究資料や物品の整理が行われていた。
その中には、新たに持ち込まれたUMAの物とされる遺物なども含まれていた。

「これは...エメラ・ントゥカ?」

「そりゃモケーレ・ムベンベの亜種だな。 同一ともいわれるが」

「こっちは...ウエッ、グロブスターの体組織...臭いそうだ...」

 

 

職員たちが整理を続けている時だった。

 

 

「...あの、西村さん。 最近アニマルガールってまた増えたんですか?」

「ん? 増えたのは研究資料だけだぞ?」

「でもさっき、廊下を見た事ないアニマルガールが歩いてましたよ? ジェヴォーダンのあの子とは全然違う子でしたけど」

「何?
 ......おい、すぐに館内を探させろ。 研究資料にサンドスターが当たったかもしれん」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

―私は一代限りだ。

―私が死ねば、「ファントムキャット」という種も潰える。

 

―...いや、私はもとより『種』として存在していない。 『イギリスに現れる正体不明の肉食獣』という、実体のない噂が
  実体を持ってしまったのが私。 私が死んだところで、生態系には何の影響も及ばないし、やがて忘れられるだけ。

 

―私は、何のためにこの身体をもって生まれたんだろう。 こんな意味のない『生』を続けるなら、死んだ方がいいかもしれない。

 

 

 

 

「...ん?」

「...お?」

 

「...っ!? 何だお前は!」

「えっ...僕なんか悪いことした? たまたまここに来ただけなんだけど...」

「...そうか、すまない。 少し勘違いした」

 

―振り向いたら大きなかばんを背負った男と鉢合わせた。 こっそり忍び寄っていたのかと警戒したけど、違ったらしい。

 

「...ひょっとしてフレンズかい? 君」

「まぁ、そんなところ。 ...あんまりジロジロ見ないでほしいんだけど」

「おいおい、話してる時は相手を見るもんだよ。 僕は背中で語れるほどの男じゃないぞ?」

「...」

 

「人に見られるのは嫌いか?」

「まじまじと見られるのは嫌だね。 私みたいな無価値なのを見るくらいなら他に行ってきた方がいいし」

「無価値? おいおいそりゃ勘違いだよ」

「勘違い?」

「どっかの偉人の受け売りになるけど、『この世に無意味な命なんてない』って言葉もあるんだ」

 

 

―偉人...だからどうした。 頭の上から振りかけられる言葉なんぞ信じていたら自分の事が出来なくなる。

 

 

「私の事も知らないでよくそんな事が言えたもんだね」

「そういえば知らないな...何のフレンズなn...」

 

 

―私は何故だか、そうせずにはいられなかった。
  気づいたら、その男の胸ぐらをつかんで木に押し付けていた。

―頭の中が熱い。 とにかくこいつを黙らせたい。

 

 

「お、おいおい...」

私に関わろうとするな! 何も知らないくせに偉そうに、馴れ馴れしい口をききやがって...!」

 

 

 

―それだけ言って、私はそこから『跳んだ』。

 

―今思えば、この時点で既に「ヒント」は出ていたのかもしれない。

 

―それを知る由は、その時の私にはなかった。

 

―ただ、その場から消えたかった。 頭の中が沸騰しそうで、いてもたってもいられなかった。

 

―私の事など、誰も理解してくれない。 この世に理解者など存在しない。

 

―私と関わるなんて、無駄だ。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

―...やれやれ、また随分なフレンズに会っちまったもんだなぁ...。

 

―あんなの見つけたら、説得したくてたまらなくなるじゃないか。 ...いや、僕の喋り方だと口説きになっちゃうかな?

 

「...ん?」

 

―なんか知らない男が二、三人...俺を見てる?

 

 

「...よう、おたくら、なんか僕に用かな?」

 

 

「...汝は、『アニマルガール』が神の使いであることを知っているか?」

「え? いや、そりゃ初耳だな...」

「では...汝はアニマルガールが神の使いであることを信じるか?」

「...ちょっと信じられないかな。 彼女たちの能力は一応科学的にも説明がついてr」

 

 

「罪人だ、『救済』せねば」

「うむ、来てもらおうか」

「えっ、なんだちょっと待っt  ぎッ―」

 

―しまっ、スタンガンか...! やば...

 

 

 

「...沈静化しました」

「よし、連れていくぞ」

 

 

 

~続く~


tale 負の遺産

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