とどろく轟音。彼女が野生開放してから、そのこぶしが振り下ろされるまでわずか一秒を切る。
その白い想像生命体___月兎のフレンズは...”荒地”に降り立った。
「あぁもう...!危うく死ぬところだったじゃない!」
その声を上げたのは”白い”月兎ではなかった。
___黒い月兎...
「まったく!あんたは昔っからそうよね!」
___月は...
「いっつも超然とした態度とっちゃって...隕石を引き寄せて身代わりになってる私のことも考えなさいよ!」
___表と裏が存在した...!
「ふん...いいわ。ちょうどいい機会だし...今までの恨みは晴らさせてもらうわ。」
辺りが再び静かになる。
静寂の檻を破ったのは”白い”方だった。
「別に...それはあなたがたまたま”裏側”だったけでしょ...私だって太陽の光に直当たりするのつらいんだから...」
「へぇ、言うじゃない。...かかってきなさいよ。さっきの巨大化。まだできるでしょう?今夜は満月よ。...この力、月面開放とでも名付けるべきかしら」
「戦う必要なんてないと思うけど...」
「もちろん戦うことに意味なんてないわ。これは私の憂さ晴らしよ。」
「えぇ...」
「こないなら...こちらから行かせてもらうわよ!月面開放!」
そう黒い方が叫ぶと彼女の体が光で覆われる...そしてその光は天高く舞い上がった。
白い方はその光に気を取られ、光の飛んでいった先...空を見上げていた。
しかし何も起こらない。
不思議に思って彼女は黒い方に話しかける。
「戦うんじゃなかったの?」
「もちろん戦うわよ。私とあんたじゃ能力が違うだけ。ほらほら、今のうちに月面開放したら?」
そういって黒い方は人差し指を上に向ける。
その時だった。
地上から一切の光が消える。感覚としては、何かが空を覆った感じだ。
再び空を見上げると...そこに先ほどまでの星空や満月はなかった。
(星や月が消えた...?いや......違う!あれは...)
空を覆うほどの巨大な隕石___!
それを悟った瞬間、白い方は声を張り上げる。
「馬鹿!世界を破壊する気!?」
「だから言ったじゃない。はやく月面開放しなよ。」
「くっ...!」
白い方が再び巨大化する。そして両手で隕石を止めようとする...が
「あ、いうの忘れてたけどさ。それ、”落ちてきてる”んじゃなくて”私に引き寄せられてる”から軌道そらしたり受け止めたりはできないぞ~
...ま、どうせ聞こえないし関係ないか。」
(重い...!重すぎる...!!隕石ってこんなに重いものなの?)
(し、しまった...重みで私が沈みかけてる...!こうもしてられない...受け止められないのなら...!)
再び轟音が鳴り響く。白い方が隕石を破壊したのだ。
そして再び月兎は元に戻る。
黒い方はいまだニヒルな笑みを浮かべている。
「はぁ...はぁ...これで満足?」
「あら、意外。やるじゃない。さすがは森を荒地に変えるだけのパワーはあるわね。それで...」
『2個目はどうするのかしら?』
「!?」
空には先ほどと大差のないレベルの隕石が接近していた。
「あぁ!もう!」
三度目の巨大化。あたりの森だった風景はもはや見る影もなく、殺風景になっていた。
こんどは受け取る態勢を取らず、左手で標準を定め右手には拳を作っていた。
あの人間たちを仕留めた音速を超えるパンチだろう。
あ~あ、つまんないと、黒い方はぼやきながらその場を後にした。隕石は残り10個ほど落ちてくるが、それもすべて破壊されておしまいだろう。
このまま続けても無駄と悟ったのか、彼女は荒地からすでに姿を消していた。
あの男の世界平和を叶えるのはどちらの月か。
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