ルナ オリジン・ストーリー

ページ名:月の石

PM4:29  アメリカ__とある宇宙研究施設___


窓に夕日がさす。

私の名前はヴェスタ。
...数年前から予定していた計画を実行するときが来た。
これが成功すれば奴らの野望を阻止できる。

私は自分の研究室を出て、胸元に隠している小型の通信機をオンにした。

「行動に出る。実行点P0510。五分後に地点Eに合流可能だ。以上。」

盗聴されている可能性も考慮して軽く暗号を混ぜながら彼女に伝える。
P0510とはPM5:10つまり時間を表している。
地点EのEはEntranceのEだ。

そして予定通り、5分後に私は研究所の玄関についた。
すでに彼女___イザベラはそこにいた。

「ほんとにやるつもりなの?」

不安げに彼女がそう聞く

「あぁ...もう決めたことだから。それに、奴らの思い通りになれば今後、人類は滅亡の危機に陥るだろう。」

大げさね。と彼女がため息をつく。

「大げさなんかじゃないさ。人類滅亡だなんてかなり低く見積もってる。
...日本の海域に突如出てきた謎の島々。あの書類はみたか?動物が人になるんだと。」

「みたわよ。動物が人間と同じ体格になり、知能も得る。そうなったらもはや人間が要らなくなるってことをいいたいの?」

「そうじゃない。...いや、それもあるがそこは日本がなんとかするだろう...そんなことより私が懸念してるのは...」

ふぅ、と一息置いて再び話始める。

「日本には”ヨウカイ”と呼ばれるUMAみたいなものが伝承として昔から残されているようだ。噂によれば、それも人になるらしい。」

「それが?普通の動物が人になるのと危険度はさほど変わらないんじゃないの?」

「大変わりさ、たとえば、アリでさえ人くらいのサイズになると車一台は軽々と持ち上げる。なーんてことも言われてるレベルだ。しかし、しかしだ、
実在しない、想像だけで創造された生命体の力は果たして限界があるのか?」

「それはわからないわ。私生物の授業だけはさっぱりだったもの。」

「いいか、私が懸念してるのはそこだ。仮に力に上限がなかったとしよう。利用しないやつがいないと言い切れるか?」

「あぁ、そういう。なるほど、それで理解したわ。あなたが”月の石”を狙う理由が。」
「日本だと月の模様は兎に見えるらしいからね。...って、真っ先に利用しようとしてるの、あなたじゃない」

「違う!私は世界を救いたいだけだ!奴らにに悪用されても!善良な想像生命体がいれば最悪の事態はまぬがれるだろう!目には目を!剣には剣をだ!」

ふふっそんなことわかってるわよ、と彼女が冗談めかして笑う。

「それにしても、どうして月兎なの?アメリカにだってスカイフィッシュやら獣人やらいろいろあるじゃない。」

「それだって結局生き物じゃないか。ありとあらゆる可能性を考慮して、だよ。」

「つまり?」

「想像上とはいえ、たかだか生物。そんなやつらが月に勝てると思うか?」

ヴェスタはにやりと笑った。

「よし、それじゃあ計画通りに行こうぜ。時間が迫ってきている。」

 



ヴェスタが想像していた以上に事態の急変は遅かった。
ヴェスタは計画通り月の石を盗むことに成功した...そして日本、というより例の島に渡るのも簡単だった。
あそこはどうやら動物園のような場所にするつもりらしく、そのために地形や自然環境を調べるために研究員がたまに出入りしているようだ。
そこで私は地形の研究者という名目で船を借り、夜に上陸した。ここまでくれば計画はほぼ成功かと思ったが大きな誤算があった。


「いたぞ!追え!」

「まじかよ...!」

奴らも来ていたことだ。

私は近くの森に走りこむ。
私はそこでケースから月の石を取り出し、ポケットに入れた。
ケースを陰に隠し、それを囮に逃げるつもりだ。


それから数十分後、山の麓で私は奴らにつかまった。

「さあ、月の石を渡せ、貴様には無用の長物だろう。」
「動物が人の姿になる。ほかの人間はそのような個体をフレンズと呼んでいたが...」
「あれは神の化身だ。自然破壊を続けてきた人間に制裁を与えるべくこの世に降り立った。」
「我々の崇高な未来を貴様のような異文化人に阻止されてたまるものか」

などと彼らは口々にわけのわからないことを口走り始める。

「なにわけのわからねぇことを...人間に制裁だと?ならお前たちも死ぬんだな!」

「愚かだな。我々は神から制裁を受けて死ぬことに何の抵抗もない。」

絶体絶命のピンチ、か。

私があきらめようとしたとき、ポケットが光だす。

「なんだ!この光は!」
「貴様!いったい何をした!」

そうか、これがそのフレンズ化というやつか...

「勝った!この石はもう石ではない!貴様らの望み通り!」

『悪を制裁するものが生まれる!』

その後、一瞬光ったかとおもえば、おおきな耳を持った白い少女がそこに立っていた。

 


 

「君たちは...誰?」

優しい声で私たちに問いをかける。すぐさま私はそれに答えた。

「こいつらは人間を滅ぼそうとしている!俺はそいつを防ぐためにここに来た!」

さあ、吉と出るか凶とでるか。
すると、少女は再び問いを投げかけた。

「それはほんとうなの?」


「あぁそうだ!人間はいままで自然破壊を繰り返してきた!人間はいずれ罰せられなければならない!」
「愚かな人間はあなた様のようなものから制裁を与えられるべき!」
と、奴らが口々に答える。

すると、彼女は大きなため息をついて

「あぁ...もうわかったよ...つまり”それ”が望みなんでしょ?」

といった。...凶だったか......?

すると彼女の口から予想だにしない言葉が発せられた。

「月は出ているか」

場が凍る。先ほどまでの優しい口調とは違って威圧するような口調だ。

瞬間、彼女の姿が消えた。


否、その表現は正しくない。彼女はそこから一歩も動いていない。

彼女は巨大化したのだ。圧倒的な質量を持つ生命体。ここまでとは...

それにしても、今日は見事な満月だった。

 

 

 

 

 

 


ヴェスタ34歳__死亡。
いのちのみほしの人間たち__死亡。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が持ってきた月の石は、もう一つあった。


Tale パーク外

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