リヴェンジャー

ページ名:リベレーター_ファントム

 

 

「...おや、これは初めまして。 あなたはフレンズですか?」

 

あのフレンズと出会ったのは、キョウシュウの山の中だった。

出で立ちはどことなくライガーに似ていた。恐らくネコ科の猛獣のフレンズなのは間違いないと、この時既に確信していた。

 

「...そうだけど。あなたもなの?」

「ええ、私はジャワトラ。 『リベレーター』と名乗っています」

「解放者...何を思ってそう名乗っているの?」

 

リベレーター...あいつは確かに言った。

 

「...この島から、人間を一人残らず駆逐して、島を―という思いですよ」

「...は?
 またぶっ飛んだことを言うフレンズだね...無茶苦茶でしょうそれは」

「いいえ、理にかなっていると私は確信しています。
 我々ジャワトラ、いえ、動物の多くは人間によって滅ぼされてきました。 動物たちにとって、人間は敵なんです。
 これ以上他の種が滅ぼされる前に、私が、滅ぼさなければならない」

 

私は正直、呆れた。 人間に滅ぼされたから人間を滅ぼす、それじゃあ人間とやってることが変わらない。

 

「...で、滅ぼした後は?」

「この島を人間のいない、動物とフレンズの楽園にします。 人間のいない世界こそ理想ですが、さすがにそれは私一人では不可能なので、島で同胞を探しているんですよ。 どうですか?あなたも...」

 

「...馬鹿らしい」

 

私は思わずそう言い放った。 あいつは驚いていた。

 

「人間を滅ぼす? じゃあこの島を私たちが過ごせるように手を加えたのは誰なんだい?
 私は頼っちゃいないけど、フレンズの多くは人間に頼ってるし、人間が手を加えないと保てない環境っていうのもある。
 あんたも知識があるならわかるでしょ?」

「...ほう」

 

あいつの目つきは少し鋭くなっていた。

 

「ではあなたは滅ぼされてもいいというのですか」

「人間だって動物の一種でしょ?つまりこれは『生存競争』よ」

「同族を好き好んで殺す動物は人間だけでしょう!最早異常です! だから私は...」

「あんたさ...頭硬いって言われないの?」

 

あいつは不意に押し黙った。 そして、

 

「...そういえば、あなたが何のフレンズだか聞いていませんでしたね」

「あら、名乗ってなかったかしら。 私はファントム、エイリアン・ビッグ・キャットよ」

「...ああ、なるほど」

 

 

その目つきが、一気に狂暴になっていた。

 

 

「人間によって空想の中に作り出された、存在しない獣のあなたなら、人間の方が信頼できるのでしょうね!」

 

そして突然、あいつは襲いかかってきた。 私は当然応戦したけど、あいつの『素早さ』には驚いた。
私が時々戦うセルリアンなんかとは訳が違う。 あれは『狩りの獲物を見る目』だった。

 

「速いな...!」

 

けものプラズムによって指先に作り出された『爪』を避け、私は攻撃の機会を窺った。
あいつの攻撃は大振りに見えて、驚くほど正確だった。 ...考えてみれば、ジャワトラは密林で生きてきた猛獣、獲物を確実にとらえるために狩りの技を磨き上げたのだろう。

でも、私の前で『素早さ』は無意味に等しい。 あいつには恐らく、私の眼が光った直後に―

 

「...ごはっ!?」

 

―私が一瞬でカウンターを叩き込んだのが見えただろうね。

 

「そんな程度で人間を駆逐するなんてね」

「...小癪な...!」

 

瞬間移動。 歩いていける範囲にしか移動できないけど、高さのない攻撃をしてくる相手には有効な野生解放。
おまけに一回一回のサンドスターの消費はそこまで多くない。

 

「...おっ!?」

 

二発目が防御された。思わず声を出して驚いた。 あいつはその勢いで反撃してきたけど、私は逆にカウンターを喰らわせて吹っ飛ばしてやった。

 

「...驚いた、二発目でもう対応してくるなんてね」
「舐めないでください糞猫...私は赤道圏最強の狩人、あなたのような人間と共に歩もうとするようなフレンズは粛清対象です」
「ふーん、じゃあ早く粛清しな。 やれるものならね...」

 

そこまで言った時、携帯電話が鳴った。
私のじゃなくて、あいつの物だった。

 

「...はい、私ですが? ...あらあら、そうなんですか。
 ええ、すぐに向かいますので。 では」

 

「なんだ、勝負はお預け?」

「ええ、ちょっとこちら側で問題が発生したものですから...ですが、あなたは許すことは出来ません。
 必ず、私の手で殺してあげましょう...」

 

 

...その時あいつが一瞬だけ見せたあの眼...まさに『魔眼』だった。
本能的に恐怖を感じる程の、殺気と威圧と、とにかく圧するモノがめちゃくちゃに詰め込まれたような視線。

私がそれに驚いているうちに、あいつはいなくなっていた。

 

 

...あいつは倒さなければならない。でも『殺してはいけない』。

あいつはまだ、人間を知らない。 自分を殺した人間しか知らないから。

 


Tale 負の遺産

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