第1話 新たな嘘

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今日、LAS支部に本部から派遣されてくる職員がいるらしい。

 名はAthena。アメリカ生まれだそうだが、生まれて間もなく親に捨てられてしまい、LASが日本で育てた15歳の少女だそうだ。つい先ほどまで会議室で彼女の自己紹介兼説明会を行っていた。昼も過ぎているので、ほとんどの職員は食堂に向かっていったが、会議室にはイザベラと衛が残っていた。

「あら、ルナじゃない。こっちにいらっしゃい。」

イザベラが気付いて私を呼び掛ける。会議室に入ると、奥の方に見慣れない少女がホワイトボードに絵をかいていた。
なかなか上手だ。風景の絵だ。彼女がAthenaだろうか?噂によると相当な問題児らしいが、とてもそうは見えない。

「紹介するわ、彼女がAthenaよ。」

イザベラに名前を呼ばれてAthenaがこちらに振り向く。私も軽く挨拶しておいた。

「初めまして、私は月兎のルナよ。よろしくね」

すると、Athenaは目を輝かせて「わぁ!この子がフレンズ?!本当に耳が生えてる!」と、声を上げたのちに、

「初めまして!LAS幹部のAthenaです!気軽にあーちゃんって呼んでね!」

 礼儀正しく挨拶を...って、その歳で幹部?
疑問に思っていると衛が

「おい...そうやって他人を騙すな...幹部なんかLASにないだろ。」

 と、Athenaにため息をつく。この様子だとこれが初めてではないようだ。
なるほど、虚言癖でもあるのだろうか?

「すまないな、ルナ。この子はどうしても他人に嘘をついたり悪口を言ってしまう性格でな...許してやってくれ」

と、申し訳なさそうに衛が謝る。

「はぁ...それは別にいいんだけど...ご飯は食べたの?食堂が閉まっちゃうわよ?」

 そう聞いたのは、あと一時間弱で食堂が閉まることを会議していた人たちに伝えてくれとおばさんに頼まれたからだ。
私はとっくに食べ終わり、あらかた職員たちにも伝わってるとは思ったが...一応だ。

「あら、もうそんな時間かしら。Athena、行くわよ。」

 はーいとAthenaが後に続く。衛さんはというとすでに食べ終わってはいたが、イザベラに呼ばれたので会議室で会話してたとのことだった。

 三人が会議室を出た後、私はホワイトボードに描かれた絵を見ていた。杉の木、湖、青い空...それにしても上手く描かれている。これだけを見ると、やはり普通の女の子に見える。虚言癖があるとはいえ、問題児はいくら何でも言い過ぎではないのだろうか?それとも、まだほかに私の知らない何かが...?

 と、色々考えてはみたが、私は昨日の"アポロ"と名付けられたセルリアンとの戦闘の疲れが込み上げてきた。
あの後、事情聴取だなんだで3時間みっちり小部屋に閉じ込められたままだったし...
 久しぶりに昼寝でもしようかと自室に向かった。私の生活リズムは、基本月に依存する。人間でいうところの太陽が昇ったら起きて、沈んだら寝る的な感覚に近い。昼夜逆転している人間もいるようだが。


目覚めは最悪だった。

自室の扉は蹴とばされ、勢いよく開いた。何事かと思って飛び起きたらそこにはAthenaがいた。

「やぁ!ルナ!昨日のセルリアンとの戦闘でお疲れだって!?私が全治一か月でも治らないような深い傷を与えてあげようか!?」

「あっ、まって、イザベラ!引っ張らないで!いたっ、痛いってば!わかった!悪かった!私が悪かったよ~」

 なんだったのだろうか、あっという間の出来事だった。
いきなりAthenaが入ってきて、イザベラが連行して...

...

 いや、ちょっと待て。なぜAthenaがセルリアンを知っている。私のような女王襲撃時からいるフレンズや、当時の職員は知ってて当然だが彼女が知っているのはどういうわけだ。セルリアンは極秘情報なハズでは...

 

これからは、いつも以上に騒がしくなりそうだ。

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