第7話 奇妙な歯車

ページ名:アレフ 1-2

 

ホートクエリア__北東の森__

 

 現地に到着した。監視カメラで確認されたセルリアンはまだ見えない。私たちの今回の任務はイザベラの護衛だ。彼女はここにフレンズがいないことを確認しつつ、セルリアンの情報をできる限り集めることが目的の様だ。それにしてもセルリアンか。アレには嫌な思い出しかない。何事もなければいいのだが…

 

「あれ?職員さん?」

 

 ふと、横から声が聞こえる。声が聞こえた側を見てみると、そこには四人のハンターがこちらに向かって歩いてきていた。

 

「えぇ、私はイザベラ。今回の件の調査を頼まれてね。」

 

「ふ~ん、そうなの?なんなら、私たちもご一緒しようか?」

 

「ありがとう、でも大丈夫よ。今はこの子たちもいるから。」

 

そういってイザベラは私たちを紹介する。

 

「そういえば、ここら付近でフレンズは見かけなかった?」

 

「見てないよー」

 

「そう、ありがとう。あなた達も気を付けてね。」




 

__ハンターたちと別れてから30分後、イザベラが足を止めた。

 

「どうしたの?」

 

「…いたわよ。」

 

イザベラの先を見てみると、銀色のセルリアンが15~17体いた。こいつらが恐らく例の新種だろう。私も見たことがない。数で群れるタイプのものだろうか?それにしても__

 

「まるで歯車ね。」

 

イザベラも、私と同じことを考えていたようだ。そう、奴らは一体一体が歯車のようになっていて、それがすべて連結しているように見えた。そして、そのうちの一体と私は目が合った。しかし、襲ってくるわけでもないようだ。

 

「さ、帰るわよ。」

 

「え、調査はいいの?」

 

「姿を視認できただけでも十分よ。それに思ったより数が多いわ。この薄暗い森の中で戦うのは不利でしょう。」

 

「わ、わかった。」

 

こうして私たちは踵を返して進んできた道を戻ったのだが…

 

「不味いわね…!」

 

 あと少しで森を抜けられる、といったところで別の銀色のセルリアンに見つかってしまった。数はおおよそ10体程だ。先ほどより少ないが、それでもかなり多い。

 そうこうしていると、奴らの二匹が連結し、こちらに向かってくる。

 

「戦うしかないか…!」

 

 私はフレンズ固有の武器である水を具現化する。フレンズ固有の武器というのは、フレンズ化する前の情報がもとになってることが多く、河童である私は水。鳥であったヤマドリは羽飾りのナイフ。そして月兎のルナは杵、といった感じだ。

 

「ヤマドリ!リーナ!奴らの後ろに石があるわ!二人で挟み撃ちにするよう立ち回って!」

 

「わかった!」

 

 ヤマドリが空を飛ぶ。手には既にナイフを持っているようで、あれで攻撃するつもりだろう。よし、それなら…!

 

 私はいくらか水を生成した後、それを歯車に向かって飛ばす。これが海水ならセルリアンは簡単に倒せるのだが…これはただの水だから、そこまで期待はできない。

水がセルリアンに当たると、彼らの動きが鈍くなった。その隙にヤマドリが空からナイフを二本投げて、セルリアンを倒す。

 

「やった!」

 

「よし!いいぞヤマドリ!」

 

 さて、残り8体…こんな感じで上手く倒せていけばいいが…と、先ほどまで群れがいた場所を見ると、既に歯車のセルリアンは全員姿を消していた。

 

「あれ?どこいっちゃったんだろ…?」

 

 と、ヤマドリもそれに気が付いたようだ。

 

「もしかしたら、数に何か原因があるのかもね。例えば10体以下になると戦闘の石がそがれる…とか。」

 

「え、じゃあ私たちは…」

 

「…とりあえずは帰還するわよ。私たちの目的は彼らを殲滅することじゃないわ。兎に角、今は情報だけ持って帰ってあとはパークに判断を任せましょう。」

 

 私とヤマドリは、イザベラの案に従い、そのまま帰還することにした。


 

LAS支部__会議室__

 

 LASに戻ってきた。この後イザベラと支部長さんの所に行って報告をして私たちの護衛は終わりだ。

 

「ただいま帰還しました。」

 

「おぉ、イザベラ。待っていたぞ。それと、二人とも彼女を護衛してくれてありがとう。」

 

「いえいえ、ここで保護してもらってる恩返しですよ。」

 

「はは、それはありがとう。でも決して無理をしてはいけないよ。」

 

「勿論です。」

 

「さて、報告を聞こうか。」

 

「はい、まずは__」

 

 イザベラは見てきたことを推測を交えて話した。セルリアンに似つかわしくない銀色のボディ。群れは15~17体のものと私たちが戦闘した10体のもの。おそらく、群れは10体以上で構成されていて、それ以下になると、逃げることを優先すること。

 

「ふむ、それで、君たちは実際に戦ってみてどうだった?」

 

「えっと…攻撃のパターンは少ないけど、数が多くて厄介って感じかなぁ?」

 

と、ヤマドリ。私も実際そんな感じの印象だ。でも、一つ気になることがあった。

 

「私もおおむねそれに賛成…でも…」

 

「何かあったのかね?」

 

「え、えっと…最初の群れに遭遇した時、そのうちの一体と目が合ったんですけど…襲ってこなかったので…最初はそこまで危険なセルリアンじゃないのかなって…」

 

「なるほど…目を合わせても襲ってこなかった、か。イザベラはこれについてどう考える?」

 

「そうですね。私は…彼らに縄張り意識があるものと推測します。」

 

「縄張り意識?」

 

「はい、最初の群れを発見したとき私達との距離は十分に離れていました。しかし次の遭遇では彼らが不意に現れたため、彼らからすると縄張りに入ってきた侵入者、ということで攻撃されたのかもしれません。」

 

「わかった。後日、このセルリアンの対策についてパークから指示があるだろう。君たちはゆっくり休んでいてくれたまえ。」

 

「はい!わかりました!」

 

そういって私たちは会議室を出た。


 

次の日の朝__

 

朝日が突き刺すようにまぶしい。どうやら昨日寝る前にカーテンを閉め忘れたようだ。起き上がると、ヤマドリはまだ寝ていたが、ルナは起きていた。

 

「あら、おはようリーナ。昨日はどこに行ってたの?」

 

「おはよう。あぁ、昨日は新種のセルリアンが出たって騒ぎがあってさ。イザベラが調査しに行くことになって、私たちはそれの護衛さ。」

 

「なるほどね…で、どうだった?」

 

「え?何が?」

 

「新種のセルリアンの強さよ。まぁその様子だと大したことなかったんでしょ?」

 

「まぁね、攻撃パターンとか少なそうだったし動きもそこまで早くなかったからなぁ…あ、でもめちゃくちゃ数は多かったなぁ。」

 

「へぇ、じゃあ|脅威度レベルは2ぐらいかしら?」

 

「たぶん。でもルナなら一瞬で倒せるレベルだったよ。」

 

「よしてよ。しかもそれ、満月の時の話でしょう?」

 

「はは、どうだか。」

 

「まったく…」

 

 たわいもない話をしていると、部屋をノックする音が聞こえた。多分イザベラだろう。はいと、返事をして出る。

 

「おはよう、リーナ。昨日のセルリアンの対策書が出たからあなたにも渡しておくわ。齟齬があったら教えてね。」

 

 それじゃ、とだけいってイザベラは眠そうにその場を去る。それにしてもずいぶんと早いんだな。対策書が完成するのって。

 

「ねぇリーナ。私も見たい。」

 

ルナがそう言い寄ってくる。べつに隠すことでもないし…

 

「あぁ、いいよ。」

 

その対策書には”ギアーズ”と名付けられたセルリアンの写真が貼ってある。

 

「毎度思うけど、パークの人たちのネーミングセンスって…」

 

「それにしても随分奇抜な色ね。本物の歯車みたい。」

 

 その対策書には__

 

CEL-2-055/CP、通称"ギアーズ"はパーク内各地の建物の跡などの暗い場所で観測されます。主な特徴として銀色の歯車のような姿をしており、背後には数字のようなものが書かれていますが、何を示しているのかは定かではありません。今のところ確認した番号は1~18です。

 

 ギアーズは通常、特に害のある行動をとりません。友好的というわけでもなく、彼らに光を浴びせたり、必要以上に近寄った者に対しては非常に攻撃的です。このことから、光を嫌っていて非常に強い縄張り意識があることが推察されます。加えて、彼らは絶対に単独で行動する姿を見せません。必ず10体以上で群れが構成されています。群れに上限もあるようで、今のところ30体以上で行動する姿は目撃されてません。弱点である石は本体の裏側に位置しています。その上、数が多いため単独での撃破は困難と予想されます。

 

 最近は都市部でも発見されるようになっており、一般客の目につかないよう迅速な排除が要求されます。万が一人目に付きやすい場所でギアーズを発見した場合、カバーストーリー『パーク内メンテナンス』等を使用して発見地点から半径██m~██mの範囲で一時封鎖を行ってください。

 

と書いてあった。

 

「最低でも10体か、確かにこれは面倒ね。」

 

「しかも、これを見る限りホートクエリアに限らずパーク内各地にいるのか。」

 

「そういえば、数字が書いてあるって言ってるけど、リーナたちが見たのは何番だったの?」

 

「えっと、確か……」


 

「11番、だったかな?」

 

 


Tale

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