刹那の信頼 (前編)

ページ名:setuna_memo_1

僕は忘れない
君と過ごした時間を・・・


皆の記憶が掠れきって、忘れ去られたとしても
僕は決して忘れない。


君の声、温もり、そして何よりその瞳・・・
君が教えてくれた大切なコト


もう出会うことはない・・・
だから“またね”は言わない。


たとえ奇跡が起きたとしても・・・


それじゃぁ、さようなら・・・
ミドリ・・・・・・。














―――ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ、ピピ、カチッ・・・・・・・


セツナ「ん・・・ぐぐぐ・・・んぉぉ~~っ・・・!」


7時を指した目覚ましのアラームを止めノビをする青年、雪鳴遊立(セツナ ユウダチ)。


セツナ「やけに暗い夢を見たなぁ・・・まぁ今日休みだし別にいいけど」


ここはジャパリパークの試験解放区と呼ばれる区域。セツナはここで特殊動物飼育員というのをやっている。「北部ひとのさき先端教育学院」と呼ばれる教育施設に通い、卒業することで試験解放区での永住権を得られる。この男は先日卒業し、ここに住む権利を得た。


セツナ「冷蔵庫空っぽ・・・コンビニにでも行くかぁ」


冷蔵庫を開けるも、職員用の寮から移ってきたばかりでろくに食べ物がなかった。
顔を洗い歯を磨き、着替えようとして・・・ふと飼育員用の上着に目が止まる。


セツナ「・・・一応、ね。」







店員「いらっしゃいませー」


近所のコンビニに入る。試験解放区は、人の住む都会とそう大差ないのだ。


セツナ「さて、手軽に肉まんでも・・・ん?」


レジ横の肉まんケースには、肝心の肉まんが無かった。


店員「申し訳ありません。先程来客したアニマルガールさんが全てお買い上げされて・・・」


そう言って頭を下げる店員。たぶん噂のキツネだろうな・・・。てかお金足りたのかな?
仕方がないので、おにぎり数個とお茶2本とジャパまんを買ってコンビニから出た。


セツナ「人気(ひとけ)のない朝。偽ることなく、ありのままに独り言を言えるこの至福の時間・・・静寂は僕を癒してくれる。」


公園のベンチに座り、特に意味のない独り言を呟く。
だが、そんな刹那のひと時はかき消された。コンビ二袋に手を伸ばしたその時―――


ピリリリリリ、ピリリリリリ、ピリリリリリ・・・・ピッ


セツナ「はい、セツナです・・・・・・・・・はい?」









―――午前10時。


隊長「これより、○○地帯の調査を開始する。」


これは、今から未開の危険地帯へ足を運ぼうとしている調査チーム。
そして僕はギリギリ手の空いているという理由で、補欠という名の休日出勤を余儀なくされた、無名の職員。


セツナ「どうしてこんなことに・・・」


おかげで朝に喉を通ったのは、おにぎり1個のみ。ストレスで胃の穴から消化されたおにぎりが出てきそうだ。


なぜ嫌がるかといえば、実は昨日から、どこかに逃げていた動物の捜索の為にパーク中をくまなく彷徨いていた。おかげで筋肉痛なのだ。


隊長「どうした、具合でも悪いのか?」
セツナ「あっ・・・いえ。全然平気です。まだまだ若いですから」
隊長「うむ。元気があっていいな君は!」
セツナ「ははは・・・」


おわかりだろうか。僕は上の人には逆らえないタイプだということを。パークに来て1年になるが、まだまだ新米の域を脱していない。そろそろ後輩になる新人も来そうだというのに、これはマズイ。




そんなこんなあって、調査対象の危険地帯に来てしまった。
隊長のほかにレンジャーやハンター、アニマルガールも付き添いで来ている。調査中、万が一セルリアンと遭遇すれば、頼れるのはハンター達だけ。


ここでの僕の仕事は、この地帯の植物・土・川の水の採取だ。パークの開拓はまだまだ必要段階にある。僕のような管轄の違う飼育員でも駆り出さないといけない。頭では理解できても、重労働なので結構キツイ・・・。


セツナ「NOと言える男になりたいのぉ~~~・・・」








―――正午。事件が起こった。セルリアンが出没したのだ。


ハンター「連携で倒す。いくぞ!」
アニマルガール「はい!」


ぱっかーーーん!


ハンターとアニマルガールの見事な連携で、次々とセルリアンが倒される。
だが今回の敵には、DA(ダークハンター)と呼ばれる黒いセルリアンがいる。こんなのに遭遇するなんて、なんてツイていないんだろう。


セルリアン「・・・!」
セツナ「!!」


戦いに気を取られていたら、死角から別のセルリアンが突進してきた。


セツナ「うおっ!?」


間一髪で避ける。しかし・・・・


ドササササササッーーー!!!


セルリアンが樹木にぶつかった衝撃で、避けた先の足場が崩れはじめた。気付いたときには僕は落下していた。


セツナ「うわぁーーーーーーーッ!!!」











―――――目が覚めると、うっそうとした森の中だった。相当な高さの崖で普通なら即死コースだったが、運がイイ事に木々がクッションになり怪我をすることはなかった。


セツナ「ヤバいかも・・・熊に襲われたりしたら・・・・!」


セルリアンどころではない。野生の熊も、無防備な人間からすれば驚異だ。
必死に耳を欹(そばだ)て、水源を探る。川にいけば何とかなる、そんな気しかしない。一刻も早くチームの元に戻らなければ・・・・!








たどり着いた川の向こうには、アニマルガールがいた。その子は―――――。



続く。



Tale

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