第3話 月面開放

ページ名:コフ 7-10

 

 

 僕は月兎のフレンズ、名前はルナ。初めて出会った██という名前のフレンズに名付けてもらったんだ。月兎と聞くとメルヘンな感じを思い浮かべるヒトは多いかもね。でも、この体はすっごく不便だ。僕は月が出ているとき以外、とても眠くなる。こういうタイプのフレンズは僕が初のようだ。どうして、月が僕の活動に影響があるんだろう?幸い、月は昼でも出ているから、他のフレンズと遊ぶこともできる。が、昼間でも、日光が強くなったり月が雲に隠れても異様なほどの眠さに襲われる。とても生活しづらい。だって、フレンズのみんなと長く遊ぶことができないし…

 

 それと、僕は野生開放ができない。いや、やり方がわからないとでもいうべきなのかな?友達のリーナは「生まれて間もないから仕方ない」と励ましてくれるけど、ハンターのヒグマはもちろん、ドジっ子のサーバルだって、戦いが苦手なトキや博士だって野生開放はできるのに。

 以前、博士にダメもとで聞いてみた。それのやり方を聞くために。博士が言うには「あなたは思い込みが強すぎるのです!できないできないと考えすぎなのですよ。もっと気を楽にするのですよ。」らしいけどそんなこと言われたってできないものはできないんだ。どんなに落ち着いても、集中しても野生開放はできなかった。

 …才能がないんだろうか。正直それは困る。ただでさえ、今までと違う進化したセルリアンが増えてきたっていうのにいつまでも守られっぱなしじゃ██にもリーナにも迷惑をかけ続けることになる。

 

 でも彼女達は...「できることはみんな違う。だからこそ、力を合わせるんだよ!」そういって僕を守ってくれてた。力が十分に発揮できない僕を。月が出ているとき以外、とてつもない睡魔に襲われる僕を。

 

 ある日、リーナと██が僕を起こしてきた。珍しいな、新しいフレンズでも生まれたのか?うーん、でも眠い。きっと月が隠れているせいだろう。

 …事態は予想よりも深刻だった。セルリアンの大群が押し寄せ、ハンターでも処理が間に合わなくなっているのだそうだ。少しでも数を減らすため、みんなちりじりに逃げたようだ。無事だといいが最悪、僕も戦わなければいけないらしい。よく見るともうすっかり夜だ。昨日、雨が降っていたからかまだ空は雲で覆われている。

 …ん?あれ、なぜ僕はこんな街灯一つない暗闇の中で彼女たちの顔や空がはっきり見えるんだ…?

 

 先を行くリーナと██の足が止まった。少しして、僕も異変に気付く。

しまった、囲まれた…!

 

 が、倒しきれない相手ではなかった。僕自身、野生開放ができないだけで、戦えはする。この調子で数を減らしていけば、みんなとまた合流できるかもしれない。

 

そんな考えは____甘かった。

 

 突如現れたセルリアン。大きな口を持った、巨大なセルリアン。こいつには私の攻撃が効きそうにない。しかも、僕に気付いて僕を食べようと大きく口を開けて迫ってくる。リーナたちは少し離れている。助けを呼べそうにない。こいつを倒すなら、私がやるしかない…!

 一か八か、全力で野生開放しようと試みる。しかし、何も起きなかった。何も変わっていない。あぁ、僕はこのまま食べられてしまうのだろうか。

 そのとき、背中に鈍い痛みが走った。何が起きたのかわからず、木に叩きつけられる。背中が焼けるように痛い。リーナの声が遠くなっていく。そして自分の意識が遠くなっていくのを感じた。でも、気絶するよりも先に、██があいつに喰われるのを見た。噛み砕かれるのを、見てしまった。

 

 そうか、██は私を庇ってくれたんだ…!不甲斐ない僕を庇って…彼女は…!!

 

………心の中で、ふつふつと怒りが湧いてくる。自分の弱さのこともあったし、なにより██やリーナはいつも僕を助けてくれた、励ましてくれた。そんなかけがえのない友人の一人を失ってしまった。もうこれ以上失うわけにはいかない!

 

 くそ!もう一回だ!!野生開放!回復でも、攻撃力アップでもなんでもいい!

僕は…彼女の助けになりたい!そう考えた時、願った時、空が明るくなるのを感じた。僕はそれにびっくりして空を見上げた。すると、雲から綺麗な満月が顔を出していた。

 

(あなたは思い込みが強すぎるのです!

…といっても、お前は自信の活動に月が関係してたり、なにかと前例がないのです。だから、そこまで気にする必要はないですよ。)

 

 ふと、博士の言葉が脳裏を横切る。

 

 …もう一度、やってみよう野生開放。今ならできる気がする。

その時、僕の体が輝き始めた。



 

____そうか、満月はすでに僕を導いてくれていた。




 

 響き渡る轟音。何が起きたのか理解できなかった。

しばらくして、リーナが駆け寄ってきた。

「すごいな!ルナ!やればできるじゃないか!あのセルリアン達をやっつけるなんて!さすがはわたしの親友だぜ!」

 

…これを僕がやったのか?僕が?

 

「ところで、██はどこに行った?さっきから姿が見えないんだが…?」

 

その時自分は、今まで憧れだった野生開放が一気に怖くなった。

 

 それからしばらくして、女王が倒されたと風のうわさで聞いた。これでもう戦う必要はない…そう…もうパークには……平和が訪れたのだ。僕が野生開放する必要は何もない。でも最近は普段の生活にも違和感を感じるようになった。

 

いつからだろう?自分の体に異変を感じ始めたのは…

 

あの時、リーナは僕を褒めてくれた。だけど…

 

いや、考えるのはよそう。僕は…いえ、私は______







 

  























 

    









 

            ただの月兎

Tale

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