幻落の終幕

ページ名:幻落の終幕 idola

「あ''ーーー……今日も疲れたあ。」

 

 

今日もいつも通り玄関で靴を脱ぎ、
疲れた身体を布団に落とす。

手にはビニール袋をぶら下げ、中には何やらビールやらカップラーメンやらを下げ。

 

 

「ふあー…………眠くなってきたなあ。」

 

 

それらを放り投げる先のソファには服がだらしなく掛けられており、中身はあまり跳ねることなく座席の上にぼふんと乗る。

電気はつけることなく、夜の月明かりだけを窓から部屋に入れて。

おしゃれな雰囲気を出しているつもりでも部屋は汚れていて。

テレビは暗いままだが、電源を入れればすぐにゲームができるようになっている。

テーブルの炭酸とポテチは、今が徹夜戦前である証。

夜通しの戦に備え、昼間は家で寝ているはずだったのだが。

 

 

「いやー、なかなか楽しかったー。」

 

 

けもノートから流れてくるお店の情報に釣られて、思わず外に駆け出してしまった。

あんなに美味しそうなパンケーキが画面の向こうで積み重なっていては、いてもたってもいられない。

 

 

「今度はあれも食べたいな。あの……はちみつの……。」

 

 

「…………。」

 

 

ぐううぅうぅぅぅ。

 

 

「あ、あれ。おかしいな?」

「さっき食べたばっかりなんだけど……嫌になっちゃうなあ……。」

 

 

そうやって、食いしん坊な自分を鼻で笑い飛ばす。

 

 

「ふーー…………♪」

 

 

 

今日も楽しかった。

何もかもがいつも通りだ。

 

 

 

ゆっくりと身を起こす。

 

 

「さてとー。」

「よっし。今日は決戦の日。」

「ちゃんと、念入りに準備しなきゃね。」

 

 

そう言って、

私は、

部屋の片付けを始める。

 

 

「うひゃー。改めて見ると、なかなかに悲惨だなあ。」

「いつの私がこんなにしちゃったって言うんだろー……?」

 

 

自分で生活しやすいように……

徹夜でゲームがしやすいように、

お風呂から上がったあとの布団への導線を遮らないように、

友達が急に来てもひとまず座れるスペースが確保出来るように配置された物たち。

 

それらを一つ一つ手に取り、

ごちゃごちゃに服が詰まっているケースやら、

自分の部屋にしては割と整理されている棚やら、

この日のために引っ張り出してきた大きなゴミ袋やらに、次々と放り込んでいく。

 

 

「あー…………これはいいや。」

 

 

あまり着なくなった服は、ゴミ袋に。

あまり使わなくなったゲームも、ゴミ袋に。

あまり使わなくなった携帯電話ですらも、ゴミ袋に入れてしまった。

 

 

「ははは……数ヶ月前の自分が見たら、どう思うかな。」

「なにしてんのー!……って、叩かれちゃうかな。」

 

 

部屋を綺麗にする箒もちりとりも雑巾も持ってはいないが、

散らばっていた衣服やゲームソフトを整えたり捨てたりしただけでも、見違えるほどになった。

 

 

「……うーし!終わったあ!!!」

「うっわー。めちゃくちゃ綺麗……!この部屋ってこんなに広かったの!?」

 

 

こんなに広かったらここに扇風機置けるじゃーん、なんて呟きながら、部屋を一周してみる。

 

 

「どれどれ、何が残ったかな。」

 

 

彼女がいつも大事なものを置いている、棚の上には。

友達と撮った写真が額縁に入れられている。

よるめんやの割引チケットが並んでいる。

3時間も並んでやっと手にした、その当時では新作だったゲームの初回限定盤パッケージが飾られている。

 

 

「…………。」

 

 

腕を組み、壮観を目に焼き付けて。

 

 

「…………。」

 

 

だんだん、視界がぼやけてそれらが見えなくなってくると。

 

 

「っ……いけないいけない、これから大事な時だってのに。」

 

 

月の光は、無情にも全ての水滴を輝かせる。

涙の数は、目で数えられてしまう。

 

 

「なんで…………っ……片付けの時は、大丈夫だった、のに……な……。」

 

 

しゃがみこんでしまっては最後。

立ち堪えどうにか咽び泣きを抑えながら、後ろを向く。

 

 

「……大丈夫。」

 

「…………。」

 

「もう、大丈夫。」

 

 

ぱんっ。

頬を両手で、涙を共に打ち止める。

 

 

「ふふーん。」

「今回のゲームは奮発して買ったものだからね、途中で寝落ちしないようにしなきゃ。」

「あっとー、そうだった。このゲームは、そんな心配も要らないんだった。」

「やー、偶然手に入ってよかったー。ネットで調べたら超レアものらしいからさー。」

 

 

徹夜の証であったはずの炭酸とポテチは、もうテーブルには残っていない。

代わりにぽつりと置かれているのは、

 

 

「こんなのが欲しかったんだよー。」

 

 

小さな瓶。

 

 

「これを夢見てる人は世の中にたくさんいるんじゃないかな?」

 

 

その瓶を手に取り、指の中で回す。

 

 

「なんてったってこれは。」

 

 

 

 

''ゲームの世界に入れる魔法のドリンク''なんだから。」

 

 

 

 

内容物の冷たい感触が、手のひらに心地よく伝わる。

 

 

「これがあれば、あのOBOの世界に行けるってわけだね。」

 

 

光に通してみたりして、液体の煌めきをゆっくりと味わう。

 

 

「うぅーっ、考えただけでわくわくしてきた。」

 

 

ころころと手中で転がる瓶を眺めながら、向こうの世界について想像を膨らませる。

 

 

「武器は何を握ろうかな。魔法とか撃ってみたいけど……ここはやっぱり剣かなあ……!」

「最初の街でゆっくり過ごすのもいいけど、やっぱり戦ってこそだよね。レベリングとかもしなきゃかなあ。」

「あー、あとはあとは、向こうの料理も美味しそうなのがたくさんあったなあ!効果がそこまで強くないから使わないものばっかりだったけど、食べてみたら美味しいのかなあ!」

「うははあぁ……♪」

 

 

一通り想像し終えると、ようやく。

 

 

「まあ、どれもこれも飛んでみないとわかんないよね!」

 

 

瓶に貼ってあるラベル通りに、手順を進めていく。

 

 

「さてとー。じゃ、いきますかあ。」

「使い方はとっても簡単。」

「いち、ゲームの電源を入れる。」

 

 

リモコンのボタンを押す。

テレビの画面が明るく照らされ、タイトル画面が表示される。

聞きなれた音だ。

 

 

「に、ここで、ゲームによっては、飛んでみたい場所まで主人公を移動させる必要がある。」

「……ふむ?」

「ん……基本的にはゲームの主人公に転移するが、その他NPCに転移することも可能である。その場合、NPCが画面に映っている必要があるため……。」

「え、これすごい。NPCにもなれるの。」

 

 

コントローラーを握り、スティックを傾けて街を走り抜ける。

次の街に着くまでにはそこまで時間はかからなかった。
移動速度を装備で上昇させていた恩恵だ。

 

 

「じゃあ……スタイルが良い、このお姉さんにしようかな。」

 

 

主人公の隣にその女性を並べ、一度コントローラーを置く。

 

 

「これで、このぽよぽよお腹ともおさらばだね。」

 

 

にやにやと嬉しそうな表情の裏すらも照らしてしまう月の光を恨みながら、次の手順も読む。

 

 

「で?…………おっ。」

「そしたら、さん。目を閉じて、これを飲む。」

「この時、ゲーム内の世界観をじっくりと思い浮かべてから飲むこと……。」

「ふっふーん。このゲーム何時間やったと思ってるのさ、そんなの簡単だね。」

 

 

キャップは簡単に開く。

勢いよく口元まで運び込み、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        「それじゃ、さよなら。」

 

 

 

 

傾け

 


『待ってよ!!!!!』

 

 


「っ……。」

 

 

 

『なに、してるのさ。』


「だから、ゲームの世界に入って……。」


『バカ!!!!!』


「馬鹿って……。あなただって、前に入ってみたいって言ってたくせに。」


『あれは冗談だってことがわかんないの!?』


「冗談?」


『当たり前じゃない!!!』


『向こうに行っちゃったら、もう誰にも会えなくなっちゃうんだよ!!』


「そんなの」


『こんな部屋で過ごしてて、頭がおかしくなっちゃったの?』


「こんな部屋?」

「ああそうだ。さっき片付けたんだよ。ほら、綺麗でしょ?」


『綺麗ってなにが?見えないの?』


「え?」


『服なんてあちこちに散らばってるし、ゲームソフトはそこらじゅうに転がってるし!!』


「っ!!」


『片付いてるなんて言えるのはあの棚くらいなもんじゃない!!!』


「ねえ」


『……なに、なんなの?』

『あなたは何がしたいの?』


「それはあなたにも分かりきってることでしょ?」


『わかんないよ!!』


「嘘つき。」

「私は今から、このお姉さんになるんだよ。私とは違うむちむちの身体で、酒場で男の人たちと」


『見せてよ。』


「………何言って」


『どれのことなの?この、って言われても。』

『テレビ暗いまんまじゃわかんないよ。』


「……。」

「それ以上は」


『それに!!!』

 

 


「……。」


『それに、さあ……。』


「やめてよ?」


『……。』


「やめて。」


『ねえ。』 


「お願い。」


『ゲームの世界に入るなんて』


「黙って」

 

 

 

『そんな薬あるわけないじゃん!!!』

 


「 黙 れ よ !!!!」

 

 

『………………っ!!!』

 


「知ってるよ。」

「そんなこと知ってるよ!!!!!」

 

 


激昴の中転がり落ちる瓶のラベル。

黒く塗りつぶされた下からは、

 

 


  ドクロの片鱗が覗く。

 

 

『わかってるなら、どうして!!』


「死のうとしてんだよ!!」


『だからなんで!!!』


「こんなとこで生きてけるわけないじゃん!!あなた馬鹿なの!?わかんないの!!?」


『馬鹿……って…………。』


「食べ物もないし、水道も電気もガスだって止まってるし、近くの建物は地震で全部崩れて……!挙句の果てに外は凶暴なセルリアンだらけでさあ!!!」

「はは。私はイエネコだっての。サバイバルの知識なんてどこにもないのに。」


『……。』


「それをネットで調べるにも、回線が途切れてるんじゃどうしようもないしね。」


『……そんなのはいいから、さ。』

 

 

『瓶、捨ててよ。』

 


月明かりが、彼女の部屋を照らす。

 

今日もいつも通り玄関で靴を脱ぎ、
やつれた身体を布団に落とす。

手には空のビニール袋をぶら下げる。ビールもカップラーメンも、数日前に切らしている。

 

「……。」

 

それらを放り投げる先のソファには血が滲んでおり、その上の服にも赤が広がっている。爪の跡から漏れた綿が布の外まではみ出ていて、ぼふんと座る度に白く宙に舞う。

電気はつくことなく、夜の月明かりだけを窓から部屋に入れて。

おしゃれな雰囲気を出しているつもりでも、部屋から漂う死の香りからは逃れることは出来ない。

テレビは暗いまま、電源のボタンをいくら押しても暗いまま。

テーブルの炭酸とポテチは、今夜食べるはずだった最後の食料。

動く気力もなく、昼間から薬を口に放り込んでは布団で眠っていた。

 

「……。」

 

けもノートから流れてくる友人の避難状況を最後に見たのは、何週間前のことだろうか。

あんなに辛そうな友人の助けを乞う声が画面の向こうで響き渡っていては、いてもたってもいられない。

 

「……。」

 

…………。

ゴオオォオォォォ。

 

「…………。」

「嫌だよ。」

 

そうやって、無力な自分を爪で削り飛ばす。

手首からは止めどなく滴る。

 

「私は今から死ぬんだよ。」

 

今日も楽しかったふりをして。

何もかもがいつも通りである、幻覚と一緒に。

 


『死んだら、お友達とも会えなくなっちゃうんだよ。』


「はあ?」


『どこかに逃げてるお友達もいるかもしれない。その子たちに会えなくなっても』

 

「あんたさあ!!!」

 

 

 

『……!』


「いつまで現実見ないようにしてるの?」


『現実を見てないのはあなたじゃ』


「みんな死んだじゃん!!!!目の前で!!!!」


『っ、みんなじゃ、ないっ』


「死んだよ!!!みんな!!!生きてるわけないよ!!!こんな窓の外でどうやって逃げるって言うのさ!?」


『でも、死んじゃったところを見たのは、みんな、じゃない……。生きてるみんなは、今もどこかで』


「……………………。」


『生きてる……から。』

 

「じゃあ。」

 

「どうやってここからみんなを探すの。」


『それは……!』


「どの道ここから出たら死ぬんだよ。だったらここで死んでも一緒だよ。」

 

 

『確かに、そうかもしれないけど』

 

 

 

 

「そうやって折れるから、薬なんか飲んじゃうんだね。」

「そろそろ終わりでしょ。あなた。」

 

『……。』

 

 

 

*     *     *

 

 

 

それは、突然起きた。

 

「っ!!??」

 

座っていても吹き飛ばされてしまいそうな揺れ。

家具にしがみついても、その家具ごと壁にぶつかってしまう、そんな地震。

 

「わ、っぐ…………っにゃあああああ!!!??」

 

テレビや携帯からは気味の悪い警報音が大音量で鳴り響き、
赤い文字で「警告」を照らす。

 

「は、はぁっ……ぁ、んあ''ああああ…………っ!!!」

 

割れる窓ガラスに身を痛めながら揺れが収まるのを待つも、そのまま3分は経過しようとしている。

 

「はあ''っ……ぁ、は…………っぐ!!」 

 

激しい揺れの中、足元に携帯が転がってくる。

 

「!」

 

片手で壁に掴まりつつ急いでけもノートを開くと、

 

「…………え?」

 

 

 

物凄い勢いで流れていくタイムラインが、災害情報で溢れ返っていた。

 

「なに、これ。」

 

遅すぎる避難勧告。

二次災害の情報。

電車は一本残らず全て停止しているらしく、横転している車両の画像すらも流れていく。

 

「は………………???」

 

あまりに現実離れしすぎだ。

頭が追いつかない。

 

「あ、みんな……みんなは……。」

 

嫌な予感がし、通知欄を覗き込むと。


数十件にも及ぶ数の声が届いていた。


無事を知らせる声、自分を心配する声、避難が終わったという声。


そして、


助けを求める声。

 

「ーーーーーーっっ!!!!!」

 

揺れは収まらない。

立ち上がるだけで、身体は右に左に大きくバランスを崩す。

 

「待ってて……今行くから…………!!」

 

そんなことは知らない。

気にしてなんかいられない。

すぐさま割れた窓から飛び降り、体型変化を使いながら助けのあった方へ走り出す。

 

 

 

*     *     *

 

 

「あ" あ” あ” あ” あ” あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! ! ! 」

 

友人の声を確認しようとすると、行方不明者数の情報まで目に留まる。

莫大な数だ。一体試験解放区に住む人の何割にあたるのだろうか。

 

「っ……げぼっ……がああっ…………!!!!」

 

ガラスの破片が変なところに刺さっているのか、吐血が収まらない。

体力の消費も激しい中、がむしゃらに身体を光らせる。

 

出し惜しみはしない。

 

 

「着い………………た…………ぁ”……!」

 

 

滑り込んだ住宅街。

燃える瓦礫、逃げ惑う悲鳴。

 

 

 

 

足元を見ると、血が流れていた。

 

「………………。」

 

それが自分のものでないことはすぐにわかった。

なぜなら、その血は目の前の崩れた家の中から広がってきていたからだ。

 

通知によると、友人はこの家に留守でいたらしい。

 

「………………っ待ってて…………。」

 

「んぎぎぎぎぎぎっぎぎ……ぎぎ……ぎ………………あ"ああああああああああああ!!」

 

腕が千切れそうになりながら、その激重を退けようとする。

一つ、また一つと瓦礫を奥に吹き飛ばす度に、身体の限界が近づいている感覚があった。

 

「ふう”ーーっ…………ふう”ーーーーーーっ………………がふっ。」

 

自分と友人の血の匂いが混ざり合って、何が何だか分からなくなる。

意識が混乱を来しているのは家を出る前からだったが、今では正気さえも失いかけそうなほどだ。

 

 

 

がらっ。

 

「………………は……っ。」

 

 

「……………………!!??」

 

 

やっと。

 

やっと見つけた友人の身体は。

 

 

 

 

っ……あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ” ! ! ! ! ! 

 

 

 

 

狂い乱れる中に届いた新たな通知音が、私をなんとか現世に引き戻す。

 

 

 

「………………行かなくちゃ。」

 

 

端末を確認すると、家を出てから既に二時間が経っていた。

 

 

 

*     *     *

 

 

 

「…………ははははは!」

「すっごいこれ!取り放題だあ!」

 

コンビニに立ち寄る猫は、床に転がった品物を見て高笑う。

 

「どれも私の好きな種類ばっ…………かりだね!!」

 

乱雑にリュックの中に品物を詰め込み、さらに奥まで進む。

このリュックも、自分のものではない大型だ。

 

「好きなだけ……お金払わなくても、好きなだけ食べられる……。」

「天国かな。こんなに酷い有様になっちゃったけど、やっぱりここは天国なのかな!」

 

満足するまで店内を貪ると、もう自動で開くことはないその扉を通り抜ける。

 

「あはは…………ははははは…………ははは……!!」

 

緑色のジャージを、

怪我をして溢れた自分の血と、

助けられなかった友人の血で真っ赤に染めて。

 

壊れたような笑い声を、曇り淀んだ空に響かせる。

 

「次はあの病院かな。」

 

 

*     *     *

 

 

「もう消えるんだね。」

「今回は短かった。」

「前はもっと楽しくて、もっとうざいおせっかいだったはずなのに。」


『物足りないんだ。』

『何錠飲んだのか知らないけど。』


「あなたがどれだけ私を止めても、無駄だよ。」

「ねえ。」

 

「サバンナちゃん。」

 

『お願い。死なないで。』


「嫌だ。」


『いずれ死んじゃうことになっても、自分からなんて、そんなことしないで。』


「あとどれくらい飲めばあなたは消えるかな。」

「それももうないけど。」

 

『お願い。』

 

 

 

『あと少しで助けが来るから。それまで耐えて。』

「消える前はみんなその文句。聞き飽きたよ!!

 

がんっ。

 

ビールの缶を思い切り投げる。

幻覚はふっと消え、缶はがらんからんと玄関の四角に収まる。

 

 

「…………はあ。興ざめ。」


「最期くらい楽しく逝きたかったのに。」


「や、まだ。間に合う。大丈夫。」

 

 

ばごんっ。

 

玄関のドアが思い切り歪む。

 

 

「セルリアン……とうとう嗅ぎつけたかな。早くしなきゃ。」

 

 

「いち、ゲームの電源を入れる。」

「に、ここで、ゲームによっては、飛んでみたい場所まで主人公を移動させる必要がある。」

「さん。目を閉じて、これを飲む。」

 


「せーのっ。」

 

 

 


がつんっ、かっ。

 


ぎぎぃ、ばがんっ。

 


からころころ。

 

 

絶える音と、破る音が、重なる。

 

 


登場人物

筆者: idola
お読みいただきありがとうございます。


tale クライシス・オブ・ジャパリパーク 負の遺産 試験解放区

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