登録日：2020/10/08 (木) 00:31:4
更新日：2024/05/23 Thu 10:35:50NEW!
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概要
首都圏治安警察機構とは押井守のライフワーク的作品群ケルベロス・サーガに登場する架空の警察組織である。通称首都警。
サーガの舞台であるドイツに敗れたもう１つの日本において戦後の首都圏の治安維持を目的に創設され、その中核を担う特機隊の活躍を中心に描かれている。
ただ、サーガの発端である紅い眼鏡では上記のような設定はされておらず、主人公等が所属していた部隊も警視庁の一部隊という扱いであった。
その後、翌年に連載されていた漫画「犬狼伝説」にてドイツに敗れた戦後日本や首都警の基本的な設定が確立され、後の作品もそれらを概ね踏襲している。
尤もケルベロス・サーガはいずれの作品もパラレルワールド的に世界観が独立しているようなシリーズなので、大まかなところは一緒でも作品毎に細かな食い違いが散見されることが多い。
本項目の記述も幾らか全作品に共通でないものが含まれることをご留意頂きたい。
創設経緯
第二次世界大戦でドイツに敗れた日本は「高度経済成長」の名の下に強引な経済成長を推し進め、戦後の復興と国際社会への復帰を図っていた。
その弊害で失業者の群れが都市部へ大量に流入し、街の至るところがスラムと化して凶悪犯罪が増加。加えて「セクト」と呼ばれる過激派の反政府勢力が台頭し、従来の自治体警察では対応しきれない程に治安が悪化していた。
政府は国家警察への再編を目論む自治警を牽制すると共に自衛隊の治安出動を回避すべく、第三の武装勢力として新たな治安組織の発足を模索する。
そして自治警や自衛隊等への折り合いを経て、活動範囲を首都圏に限定した「首都圏治安警察機構」が誕生した。
組織
人員・権限・活動範囲
首都警は国家公安委員会に直属する国家警察であり、人員もトップから末端に至るまでの全員が国家公務員である。
その権限は非常に強力なもので、首都圏の治安に関わる騒擾に際しあらゆる管轄を優越して発動される。
また、首都警が取り締まりを行う事案は銃器を使用する武装強盗やテロ事件・大規模な暴動等に限定されており、殺人や窃盗、交通違反等の取り締まりには一切関知しない。
各部署
- 総務部
会計、警務、文書、装備を担当。
機構の維持管理を行う部署。
- 警備部
執行部隊である特機隊を擁し、警備の管理や計画・爆発物対策・災害対策等の実力行使を担当。。
検察や自衛隊といった警察畑とは独立した人員で構成されている。
- 公安部
捜査や情報収集を担当する部署で、初動捜査を行う公安特科隊(通称:作戦課)や捜査部門の公安局を擁している。
人員は警備部とは対照的に警視庁出身者が多くを占めている。
- 首都警養成学校
特機隊員の養成を行う。
特機隊
首都警の執行部隊にして中核を成す部隊。
正式名称は「特殊武装機動警備大隊」「特殊機甲大隊」等々作品によってややバラツキがある。
プロテクトギアと呼ばれる黒一色の強化装甲服とドイツ軍から払い下げられた重火器で武装してセクトや暴力団といった犯罪集団を制圧していき、一時は治安の番人としての栄誉を欲しいままにした。
が、セクトとの闘争が市街戦の様相を呈するようになると次第に世論から非難を浴びるようになり、更には取り締まりの軸を実力行使から捜査活動へ転換するよう主張する公安部とも対立。時代の流れの中で徐々に孤立を深めていった。
関連組織
自治体警察
日本は占領軍の統治を受けるに当たり、警察組織も大きく刷新することになった。
人口5000人以上の自治体が保有する自治体警察とそれ以外の町村部を管轄する国家地方警察の設置である。
民主的な警察として始まったものの前述の治安悪化や組織間の確執等の弊害が生じ、警察法の改正で警察庁・都道府県警体制へと移行した。これらは首都警の設置と合わせて行われたものである。
自治警の上層部は管轄を踏み越えて行動する首都警を苦々しく思う者が多く、特機隊への批判的な世論にかこつけて首都警の解体と国家警察への再編を目論んでいる。*1
セクト
特機隊の宿敵である過激派の反発政府勢力。
破防法を適用されかけた社会主義政党「人民党」は武装闘争を唱え続けた幹部らを党から一掃し、平和路線に転換。追い出された者たちは右翼活動家と迎合してそれぞれ独自の政党を作り上げ、所属者や傘下の活動家らが「セクト」と呼ばれるようになった。
ドイツ軍から流出した拳銃や短機関銃、手榴弾等を入手し、警察機関との武力衝突を繰り返した。
自衛隊
「第三の武装勢力」として特機隊を警戒しており、自治警程に険悪な仲ではないものの、その関係は微妙なものである。
首都警が関わった事案
四谷暴動
平和的だった労働争議がセクトの扇動によって激しい暴動に発展。
要請を受けて介入した特機隊と暴徒に混じったセクトが武力衝突し、多数の死傷者を出した。
この頃から特機隊は世論の指弾を浴びるようになる。
千住事件
翌年に安全保障条約の改正が行われることを受けて、セクトの活動家が爆弾を盾に千住の工場に立て籠った。
特機隊の突入によって犯人は検挙され人質は救出された。
特機隊はこの成果によって失いつつあった威信を回復するきっかけを見出だしたが、反安保闘争の勢いを鈍らせるには至らなかった。
ルフトハンザ機ハイジャック事件
セクトの一派である「日本人民革命党」から除名された幹部がベルリン行きルフトハンザ666便をハイジャックして乗員乗客105人を人質にとり、党幹部の釈放を要求した。
この事件の前日にドイツ大使館が占拠される事件が発生したが、これはハイジャックを準備する時間を稼ぐ為の陽動だったと見られている。
特機隊のベテラン隊員で「悪魔の三人組」と呼ばれた都々目紅一・鳥部蒼一路・鷲尾翠の三名によって犯人グループは制圧され事なきを得る。
なお、特機隊が空港に到着した際に空港警察隊と指揮権・管轄を巡って口論を交わし、挙げ句の果てに白昼堂々とお互いに銃を向け合う異常事態事態が発生。
現場となった空港ビル内は避難中の利用客でごった返しており、互いの確執を公衆の面前に晒す結果となった。
パルク事件
ドイツのローランド・パルク大統領秘書官が外交特使として羽田空港から都内を移動中に反独派のデモ隊と遭遇。
警備に当たっていた警視庁機動隊が排除を試みるも逆に突破され、特使の車が取り囲まれてしまう。
後方で待機していた特機隊が即座に割って入るが、またもやデモ隊にまぎれたセクトとの銃撃戦に発展。
セクトの制圧と特使の救出には成功したものの、死傷者を出した責任を問われた首都警は武装解除の上で解体が決定的される。
ケルベロス騒乱
武装解除と解体に反発した特機隊が、大隊長・巽志朗主導の下、武装蜂起。自治警部隊との交戦を経て警視庁の本庁舎を占拠した。
政府は自衛隊の治安出動を決定。強化服装備の普通科部隊が出動し、巽以下の隊員を射殺。
首都警訓練学校に籠城した部隊も警視庁の部隊に制圧された。
こうして一時は治安の番人としての栄誉を独占した首都圏治安警察機構の歴史は幕を閉じる。
首都警の重要人物とその後
安仁屋勲
警備部長で病身の本部長の代わりに組織を束ねている。
自民党タカ派議員の木村篤太郎とは旧知であり、後に衆議院議員を務める。平成5年死去。
室戸文明
公安部長。
内務省警保局や警視庁公安部を経て首都警に加入。
首都警解体後は警察疔警備局長や公安調査庁長官を歴任し、辣腕を振るった。
昭和60年イギリスで事故死。
巽志郎
特機隊の大隊長。
立ち塞がる者あらばこれを撃てというスローガンの下治安回復に努める。
部下を率いてクーデターを主導するが、駆けつけた自衛隊によって射殺された。
半田元
特機隊の副長。
占領軍のG2(情報部)で対敵防諜を行った経歴を持っており、特機隊の内部に非公然の防諜組織「人狼」を結成していたとされる。
ケルベロス騒乱以降は消息不明。
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*1 史実でも戦後すぐのころに設置されていた。戦前のフランス式の中央集権型の警察機機構から変換が図られたのだが、費用は自治体持ちであったため負担が大きく廃止されている。現在でも制度の下となったアメリカやこの作品のモデルケースであっただろうドイツでも一部だが存続している。
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