登録日:2020/09/13 Sun 17:27:19
更新日:2026/09/22 Tue 14:47:38NEW!
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マラリア(Malaria)は、熱帯〜亜熱帯地方に多い寄生虫病の一種。
蚊が媒介する感染症の代表格である。
概要
細菌やウイルスによる病気ではなく、原虫と呼ばれるとても小さな寄生虫によって引き起こされる病気。
病原体となるマラリア原虫はハマダラカ(羽斑蚊)属の蚊が媒介しており、マラリア原虫を保有している蚊に刺されることでヒト(人間)に感染する。
マラリア原虫はヒトの体内ではまず肝臓に寄生し、ここで増殖した後、赤血球に寄生し、これを破壊することで高熱や溶血性貧血を起こす。
インフルエンザと違ってヒトからヒトにうつることはない。
アフリカをはじめ中南米や東南アジア、インドなどの熱帯〜亜熱帯地方を中心に流行しているが、中国や韓国・朝鮮半島、中東の一部の温帯地方でも流行がみられる。
日本でも戦前までは国内で流行していた(特に北海道、東海・北陸、近畿、沖縄で多発していたとか)。また、日本史の重要人物だと、初めて武士による政治を行った平清盛や、僧侶の一休宗純の死因はマラリアだったと言われている。
しかし戦後に入ってからは激減しており、1960年以降は国内で発生した症例は報告されていない。というのも現在、日本本土にはハマダラカ属の蚊は生息していないためである(ただし石垣島や宮古島、西表島にはコガタハマダラカが生息しているため、国内発生する可能性がゼロになったわけではない。)*1。
ただし現在でも海外旅行から帰ってきた人が現地で感染し、帰国後に発症するというケースが年間数十件報告されている。
ヒトに感染するマラリア原虫*2は5種類(熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリア、サルマラリア)ある。
最も重症化しやすく致死率が高い熱帯熱マラリアはアフリカの熱帯地域に多い。一方、アジアなど他の地域に多い三日熱マラリアは比較的軽症で致死率は低いが、慢性化しやすいと言われている。
サルマラリアは2004年に発見された新種で、ヒトとサルの両方に感染する。症例は少ないが重症化しやすく致死率が高い。
日本ではあまり馴染みのない病気だが、実は世界では毎年2億人が感染し、そのうちの100万人以上が亡くなっている重大な病気である。
結核やエイズに次いで3番目に甚大な被害を出している病気であり、この2つとマラリアを世界三大感染症と呼んでいるのである。
マラリアの被害の90%以上はアフリカの熱帯地域で発生している。また、マラリアで亡くなる人は免疫力の弱い6歳未満の小さな子供が多い(大人はマラリアに対する免疫を持っていることが多いため致死率が低い。)。
致死率が非常に高い感染症としてエボラ出血熱が有名だが、死亡者数に関して言えばエボラ熱よりマラリアのほうが遥かに多いのである。
マラリアはペスト(黒死病)や天然痘、インフルエンザ(流行性感冒)と並び大昔から存在する、世界史(歴史)的にも重要な病気の一つである。
かつてはヨーロッパでもマラリアが流行し、ローマ帝国の滅亡の原因の一つであったとも言われている。
あとマラリアの語源は「悪い空気」を意味する古いイタリア語に由来している。というのも当時、マラリアは空気感染する病気と考えられていたため。
ちなみにマラリアは田舎の農村部で流行することが多く、逆にデング熱は都市部で流行することが多い。
これはマラリア原虫を媒介するハマダラカは農村部に多く生息するため。一方、デングウイルスを媒介するヒトスジシマカ(ヤブカ)は都市部に多く生息している。
あとハマダラカは夕方から夜にかけて活動するが、ヤブカは主に日中に活発になる。
症状
潜伏期間は結構長く、感染から発症までに1〜2週間程度かかる。
最も重要な症状は高熱である。40℃近い熱を出して急激に発症する。
三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアでは一旦熱が下がるが、一定時間経過後に再び体温が急上昇する。三日熱や卵形マラリアでは48時間おきに、四日熱マラリアでは72時間おきに周期的な発熱発作を繰り返す。
熱帯熱マラリアとサルマラリアでは高熱がずっと続く状態になる。
マラリアで発熱するのは、マラリア原虫が赤血球を破壊する際に毒素を産生するためである。
他、悪寒、戦慄、胃腸症状(腹痛、嘔吐、下痢)もみられる。
ただしインフルエンザと違って咳や鼻水・くしゃみはほとんどみられない。
熱帯熱マラリアやサルマラリアの場合、発症から24時間以内に治療しなければ、後述の重篤な合併症を引き起こして死亡することもある。未治療の場合の致死率は25%以上で、非常に高い。
三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアは致死率は低いが、放置すると慢性化する可能性がある。
合併症
熱帯熱マラリアやサルマラリアでは以下のような危険な合併症を伴いやすい。
脳マラリア
マラリア原虫に寄生された赤血球が脳の血管を詰まらせるために起こる(脳梗塞)。
意識障害や言語障害などがあらわれ、最終的には昏睡を起こして死に至る。
急性腎不全
腎臓の血管が詰まることで、腎臓の機能が著しく低下し、尿が出なくなる。
毒素が溜まると全身に中毒症状があらわれる(尿毒症)。
溶血性貧血
赤血球が大量に破壊されることにより、重度の貧血に陥る。
血中に溶けたヘモグロビン*3が尿に混じるため、赤黒い尿(血尿)が出る。そのため別名は黒水熱(こくすいねつ)。
皮膚や目が黄色くなる黄疸もみられる。
播種性血管内凝固症候群(DIC)
全身の血管に血栓ができることで血小板が消費され、血液が止まらなくなる。
鼻血や内出血(あざ)の他、胃腸から出血すると吐血や下血(血便)もみられる。
また、血栓による多臓器不全もあり、非常に危険な状態である。
治療
マラリア原虫をやっつける薬(抗マラリア薬)を服用する。
ただし、抗マラリア薬にはたくさんの種類があり、感染した地域や原虫の種類によって投与すべき薬は異なる。
特に熱帯熱マラリアやサルマラリアは病気の進行が非常に早いため、早急に治療が必要である。
症状が似ている病気が他にもたくさんある(細菌性赤痢、腸チフス、ペスト、デング熱、A型肝炎、エボラ熱など)ため、診断には血液検査でマラリア原虫を検出することが必要である。
マラリアはインフルエンザやエボラ熱のようにヒトからヒトにうつる病気ではないので、必ずしも隔離の必要はない。
もっとも、症状が重くて入院というのは十分あり得るが。
ちなみに旅行者が帰国後にマラリアを発症した可能性がある場合、海外旅行をしたことを必ず医師に伝えること。というのも日本の医師はマラリアの診察経験が少ない場合が多く、そうしないと手遅れになってしまうリスクが高いからである。
予防方法
海外旅行中に蚊に刺されないようにするのが一番の予防策である。
長袖、長ズボンを着用し、肌の露出は控えるように。
虫除けスプレーも有効である。
また、出発前に事前に抗マラリア薬を飲んでおくという手もある。
…ただ副作用も強いので、必ず医師と相談すること。
追記、修正よろしくお願いいたします。
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*2 実はマラリア原虫は他の動物(サル、リス、コウモリ、ニワトリ、ヘビ、トカゲなど)に感染する種類も一部存在する。
*3 赤血球に含まれるタンパク質。酸素運搬で重要な役割を果たす。
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