インセプション(映画)

登録日：2020/08/16 Sun 10:40:32
更新日：2024/05/20 Mon 13:54:01
所要時間：約 7 分で読めます

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『インセプション(INCEPTION)』とは、2010年に公開された米映画。
他人の頭の中に夢を通じて入り込んで「アイデア」を盗み、植え付ける者たちの任務を描くサスペンス・アクション大作である。

概要

本作は「夢」の持つ不条理さ、自由性を圧倒的なビジュアルを以て鮮明に描いており、特に中盤以降の物理法則を無視したアクションシーンには称賛の声が寄せられた。
また、夢と現実が入り混じる複雑なストーリー構成もまた、「夢」の持つ不可解さを示したものであると言える。

監督・脚本は『ダークナイトトリロジー』のクリストファー・ノーランで、本作は『ダークナイト』と『ダークナイト ライジング』の間に製作された。
主演はかつて「美形俳優」として一世を風靡し、徐々にそのイメージから脱却しつつあった名優レオナルド・ディカプリオ。
その他、渡辺謙、ジョゼフ・ゴードン＝レヴィット、マリオン・コティヤール、エレン・ペイジ、トム・ハーディ、キリアン・マーフィーといった実力派キャストが集結。
今作でその名を爆発的に高めた俳優も多く、キャストの何人かはノーランの次回作『ダークナイト ライジング』でも起用されている。

第83回アカデミー賞には撮影賞、視覚効果賞、音響編集賞、録音賞を受賞し、作品賞、監督賞にもノミネートされている。

ストーリー

妻に先立たれ、子供と離れて世界中を飛び回っている男・コブ。
そんな彼の仕事は、他人の「夢」に侵入し、その中から「アイデア」を盗み取るフリーの産業スパイだった。
ある日彼は、日本人起業家のサイトーの夢の中に入るが、そこで自分の仕事を見抜かれてしまう。
サイトーは、彼の腕を見込んで、他人の夢に「アイデア」を植え付ける「インセプション」の仕事を依頼する。
成功すれば、家族とまた一緒に暮らせることを約束されたコブは、その危険な仕事を承諾。
腕利きの職人たちを集め、インセプションの準備を進めていくコブ。ターゲットは、大企業の御曹司。
やがて、飛行機の中でターゲットを眠らせ、作戦は開始された。
だが、「インセプション」の仕事は想像をはるかに超えていた。さらに、死んだコブの妻モルが、彼を誘惑し翻弄する。
作戦は果たして成功するのか……。

登場人物

吹き替え声優は映像ソフト版、日曜洋画劇場版の順。

• ドム・コブ

演：レオナルド・ディカプリオ／吹き替え：内田夕夜、浪川大輔
夢の中から「アイデア」を盗み取ることに長けた「抜き取り屋」で、フリーの産業スパイをしている。
仕事と依頼には忠実なプロフェッショナルであるものの、本心では離れて暮らしている家族の身を案じ続けており、切迫した心を隠し続けている。
かつては妻のモルと共に夢についての研究をしており、その最中で夢の中に入り浸っていたが、そのせいで妻の心を病ませてしまい、先立たれてしまった。
妻殺しの容疑をかけられた彼は子供たちと離れて暮らしており、いつか必ず家に帰ることを望んでいる。
愛用しているトーテムは「独楽」。

• サイトー

演・吹き替え：渡辺謙
日本人の大企業の社長。
コブの「抜き取り」のターゲットにされていたが、とっくに彼の仕業と見抜いており、逆に彼をスカウトする。
ライバル社の跡継ぎに会社の相続を放棄させることで経済戦争に勝つべく、コブに「インセプション」を依頼した。
成功の暁には彼の犯罪歴を抹消し、家族との再会を約束する。
インセプションの作戦にも「観光客」として立ち会わせるのだが、第一階層にて銃撃によって重傷を負ってしまう。

• モル・コブ

演：マリオン・コティヤール／吹き替え：五十嵐麗、冬馬由美
コブの妻で、既に故人。
コブと共に夢の中に潜り続ける中で夢と現実の区別がつかなくなってしまい、心に鍵をかけるうちに本来の「夢」と「現実」を入れ替えて解釈してしまう。
それ以来、しきりに彼女にとっての「現実」＝「夢」へと帰ることを望み、最後は夫の目の前で飛び降り自殺した。
それからコブは彼女の幻影に苦しめられ続け、夢の中で彼の反映意識として登場し、夫の仕事を妨害し続けていく。

• アーサー

演：ジョセフ・ゴードン＝レヴィット／吹き替え：土田大、松田洋治
コブの相棒を務め続けている「ポイントマン」。
理知的な性格であり、計画立案や格闘、銃撃でコブのアシストを手広く行う。
モルのことで苦しみ続けるコブの身を案じている。

• アリアドネ

演：エレン・ペイジ／吹き替え：冠野智美、白石涼子
コブの恩師・マイルスの教え子の女子大生。
夢の「設計士」として、ターゲットを誘い込む「夢の迷路」の設計を行った。
コブと日々を過ごしていくうちに、彼とモルの過去を知ることとなり、彼の心に寄り添うことを望むようになる。

• イームス

演：トム・ハーディ／吹き替え：咲野俊介、平田広明
人の心に付け込むことに長けた詐欺師。
夢の「偽造士」として、夢の中でターゲットに近しい人物に変装しターゲットの誘導・刷り込みを担当。
軽薄でいい加減な性格なため、アーサーとはそりが合わない。

• ユスフ

演：ディリープ・ラオ／吹き替え：木村雅史、江川央生
ターゲットを眠らせる鎮静剤を処方する「調合士」。
彼の薬を求めて多くの人間が夢の中に入り続けているほどの評判である。

• マイルス教授

演：マイケル・ケイン／吹き替え：小川真司、糸博
コブの恩師の大学教授。
アリアドネを紹介し、彼女の実力に太鼓判を押す。
危険な仕事であるインセプションについて警告する。

• ナッシュ

演：ルーカス・ハース／吹き替え：川中子雅人、勝杏里
序盤でコブと組んでいた男。
サイトーにバレかけたため全てを白状し、コブの雇い主に裏切り者として突き出されてしまった。

• ロバート・フィッシャー

演：キリアン・マーフィー／吹き替え：三木眞一郎、小山力也
インセプションのターゲットとされた男。
大企業社長の息子であり、やがては父の跡を継ぐこととなっている。
だが、親子仲は険悪で父からの愛を受け取らずに成長していった。
やがて父の死によって、葬儀のため向かった機中でコブたちのインセプションに遭い、夢の中で様々な形で翻弄される。

• モーリス・フィッシャー

演：ピート・ポスルスウェイト／吹き替え：丸山詠二、納谷悟朗
ロバートの父で大企業の社長。サイトーの商売敵である。
常に息子に厳しく当たり、ろくに愛情を注いでこなかった。
近年は病床に伏し、息子に「失望した」と言い遺し逝去した。

• ピーター・ブラウニング

演：トム・ベレンジャー／吹き替え：石塚運昇、谷口節
モーリスの右腕を務める重役。ロバートの名付け親で彼からの信頼も厚かった。
夢の中で利用すべく、イームスが変装して彼に刷り込みを行う。

• フィリッパ

演：テイラー・ギア／吹き替え：諸星すみれ、釘宮理恵

• ジェームズ

演：ジョナサン・ギア／吹き替え：関根航、金田朋子
コブの娘と息子。
母親の死以来、父と離れて祖母と共に暮らしている。
彼らと最後に会えなかったことがコブの心残りなのだが……。

用語集

• 抜き取り（エクストラクション）

人間の頭の中にある「アイデア」を盗み見る技法。
夢の中に入ることでその中に大切に保管してある「アイデア」を強奪する。
コブが主に産業スパイの一環として行っている。

• 植え付け（インセプション）

抜き取りとは反対に、人間の頭に別の「アイデア」を植え付け、考え方を変えさせる技法。
対象者本人が「自発的にその考えに至った」ように見せかけなければならず、
抜き取りに比べて深い階層に潜らなければいけないため難易度が非常に高く、失敗すればリスクも大きい。

• 階層

人間の夢には深層心理に行くにしたがって夢の中の夢に行く構造となっている。
下階層に行くほど体感経過時間が長くなる。(現実世界の10時間が第1階層では1週間、第2階層では6ヶ月、第3階層では10年)
作中、作戦を繰り広げる夢は以下の通り。

第1階層：雨の市街地
ロバートを誘拐し、金庫の鍵を開けさせるよう脅迫。しかし、防衛本能によって警備隊の銃撃に遭う。
第2階層：ホテル
敢えてロバートに夢の中であることを話し、第3階層に潜るよう仕向ける。第1階層の混乱(雨や乱暴な運転)の影響を受ける。
第3階層：雪山の病院
厳重な警備に守られており、中にロバートの頭の中の「金庫」がある。

• キック

夢から目覚めるために外部の人間に強い衝撃を肉体的に加えてもらうこと。
物理的に「落としてもらう」ことが効果的である。

• トーテム

夢の中に入る際に混乱しないように、夢と現実の区別をつけるために持ち込む小物。
その人にとって特徴的な形であることが推奨される。
コブは独楽(回転し続けたら夢、止まったら現実)、アリアドネはチェス駒。

• 夢の設計

複雑な階層の夢を設計するには優れた想像力、発想力が必要不可欠であり、劇中ではコブがアリアドネに「1分でどれほど複雑な迷路が書けるか」という形でテストを行なっていた。
慣れてくると夢を自在にコントロールできるが、夢と現実の混乱が激しくなるため、記憶を基に夢を設計することは控えた方が望ましい。

• 虚無

夢の中で死亡した場合、普通の場合は目覚めるだけだが、鎮静剤等で深い眠りに入っていると落ちる最下層のこと。
形のない混沌とした夢だが、かつて虚無の中で夢を設計したことのある者がいれば形は残り続ける。

余談

• 劇中でコブ達が夢から覚める合図として流れる楽曲は、フランスのシャンソン歌手エディット・ピアフの「水に流して（Non, je ne regrette rien）」。
  ちなみに、本作の出演者の一人であるマリオン・コティヤールは映画『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』でピアフ役を演じたが、同楽曲の使用は実は企画初期から決まっており、本作にマリオンが出演する事になったのは偶然の一致である。
  その他、本作の冒頭やスタッフクレジットのラストで流れるBGMは、その「水に流して」をスロー再生したものがベースとなっている。
  現在（2023年時点）YouTubeには比較動画が挙がっているので、興味ある方は一度試聴してみるのもいいだろう。

独楽を回して倒れた方のみ、追記・修正お願いします。

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▷ コメント欄

• かつて日曜洋画劇場で放映された際、右上に○○階層と字幕が表示されていて、今主人公達がいる所がどこなのか分かりやすかった。…正直シュールだった。 -- 名無しさん (2020-08-16 10:51:02)
• 当然だがあれは評判悪かったよなぁ。確かに初見じゃ混乱するが、その「騙される」部分がこの映画の大きな魅力なのに -- 名無しさん (2020-08-16 13:47:32)
• トーテムの信頼性って何？コマが止まるのも夢の可能性があるんじゃ？ -- 名無しさん (2020-08-16 16:12:05)
• こういう視聴者がいるから階層表示なんて興醒めなことが歓迎されるんだよなぁ…… -- 名無しさん (2020-08-17 11:55:46)
• 自己言及的になるが、トーテムには信頼性があるという信頼こそが、トーテムに信頼性を生み出してるんだろう。トーテムに信頼を置いてない人間にとってはたぶん全く意味が無くなってしまうと思う。 -- 名無しさん (2020-08-19 17:24:34)
• ストーリー自体は90年代に流行ったオカルト映画チックなものだけど、ノーラン監督ならではの重厚かつハードボイルドな演出と実力派俳優の演技で映像化したからこそインパクトがデカかった。　映像面はドクター・ストレンジにも影響を与えているだろう。 -- 名無しさん (2020-08-20 06:14:15)
• 傑作。　アーサー　アリアドネ　イームス　ユスフがひたすら頑張っていた映画。　コブはお荷物だった。 -- 名無しさん (2020-08-21 23:24:07)
• なぜか本場アメリカの予告だと謙さんほぼ写ってないんだよな、決して端役というわけじゃないと思うんだが -- 名無しさん (2020-08-21 23:44:20)

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