登録日:2019/01/05 (土曜日) 07:48:57
更新日:2024/03/28 Thu 13:30:30NEW!
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伊坂幸太郎 サスペンス ギャング 超能力 神奈川県 横浜市 銀行強盗 小説 実写化 クライムノベル 陽気なギャングが地球を回す
「ロマンはどこだ?」
『陽気なギャングが地球を回す』は伊坂幸太郎作のサスペンス・ミステリー小説。
4人の特殊能力を持った男女がロマンの為に銀行強盗を行うが何故かアクシデントに巻き込まれてしまう……というのが大まかなストーリーになっている。
舞台は横浜市。
見もふたもないことを言うと日常系ルパン三世。
もしくは日常系オーシャンズ11.
伊坂幸太郎作品の中でも人気作品であり続編として『陽気なギャングの日常と襲撃』及び『陽気なギャングは三つ数えろ』がある。
あらすじ
成瀬は嘘を見抜く名人、さらに天才スリ&演説の達人、紅一点は精確な体内時計の持ち主
——彼らは百発百中の銀行ギャングだった……はずが、その日の仕事に思わず誤算が。
逃走中に、同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯と遭遇。「売り上げ」ごと車を横取りされたのだ。
奪還に動くや、仲間の息子は虐め事件に巻き込まれ、死体は出現、札付きのワルまで登場して、トラブルは連鎖した! 最後に笑うのはどっちだ!?
ハイテンポな知恵比べが不況気分を吹っ飛ばす、都会はギャング・サスペンス!
(NON NOVEL版あらすじより抜粋)
登場人物
ギャングたち
ロマンを求める4人の銀行強盗たち。全員が特殊な能力を持っている。
4人が偶然席を合わせた映画館で爆破事件が起こり、その事件をそれぞれの能力で解決したのが出会い。
その後銀行で偶然再会したがそこで立てこもり強盗事件が起こる。死神にでも取りつかれているのだろうか?
半日後に救出されたがそれ以来成瀬は『世の中には犯罪らしい犯罪が必要なんだ』と考えるようになり、賛同した三人とロマンの為に銀行強盗を始めることになった。
〇成瀬
主人公。嘘を見抜く能力を持っている。バツイチその1。愛称は『成さん』
普段は市役所に勤めている37歳の公務員。基本的に冷静であり動揺することもほとんどないため仲間内からはかなり信頼されている。
さらに響野から「あいつは絶対、解説を読んでいるんだ」と言われるほど用意周到で計算高く、相手の行動を先読みすることに長けている。曰く相手の10歩先まで読んでいるらしい。
読んだうえで相手の策略に引っかかったように見せかけて裏でその上を行く策略を立てるというのが彼の基本戦略であるため、読者が成瀬たちのピンチにハラハラしていたらそれ自体が作戦だった、というのはこのシリーズではよくあること。
要するに「計画通り!」を地で行く人。
嘘を見抜く能力は相手の仕草や表情で嘘を割り出すというもの。相手が初対面だろうが凄腕の詐欺師だろうが成瀬に嘘をつくことは不可能。超能力の域に達している気がする。ただ「喋らなければ嘘は見抜けない」「どのような嘘をついているのかは分からない」など制約はある。しかし成瀬のクレバーさも相まって制約があっても十分チート能力になっている。ちなみに成瀬に嘘をつかなかったのは離婚した奥さんだけらしい。
嘘を何でも見抜いてしまうため他人とコミュニケーションをとれなくなる、という創作はよくあるが成瀬にはそのような一面は特に見られない。成瀬がメンタルの強い人間というよりも、単純に彼がアラフォーに近いため能力について割り切っているのだろう。
タダシという息子がいるが生まれつき自閉症を患っている。生活とタダシの今後を考えた結果、現在は離婚した奥さんの元で育てられている。ただ不和で別れたというわけではないので未だに関係は良好である。
〇久遠
スリの才能を持った青年。
4人の中では最年少となる20歳の青年。何気にプライベートが謎になっている。雪子に言わせれば『青二才を代表するかのような呑気さと優雅さを兼ね備えていた』という無邪気で少し子供っぽい性格である。ギャングたちの清涼剤。響野との掛け合いは漫才と言ってもいいレベルであり『陽気なギャング』シリーズの醍醐味であると言える。
動物をこよなく愛しており銀行強盗後はニュージーランドで羊と戯れている。そして仲間以外からよく勘違いされているが彼にとって優先順位は人間より動物であり共存とかそういうことはあまり考えていない。「動物を苦しめる人間は死ねばいい」という苛烈な考えを持つ。
……謎すぎるプライベートも相まって実はかなりミステリアスな青年。
スリのテクニックは天才的であり、彼とぶつかったらポケットの中身は全て消えていると思ったほうがいい。そして盗まれたとも気が付かない。「盗る」のみならず「入れる」技術も一流。作中でスリを見破れたのは成瀬のみ(しかも成瀬でも能力の併用でやっと分かったという程)。
ミステリーというジャンル上、とりあえず何かアイテムを奪える久遠の能力は作品自体と相性がよく、ギャングたちの切り込み隊長役となっている。というか久遠がいなければ詰んでいたという場面も多い。
〇響野
演説の達人。そして本シリーズ屈指のネタキャラ。
成瀬とは高校時代から腐れ縁。普段は妻の祥子と共に自営業で喫茶店をやっている。しかしコーヒーを淹れるのは何故かヘタクソで基本的に祥子に任せている。
一人称が「私」の自信過剰で尊大な言動を好む変人。能力を抜きにしても喋ることが大好きであり、よく相手が辟易するまで喋っている。喋ることが生きがいらしい。同時に嘘つきであり成瀬からは「出会ってから本当のことより嘘をついた数の方が多い」と言われている。ちなみに祥子にプロポーズを承諾された時には「どうせ、いつもの出鱈目でしょ?」と言われた。ひでぇ……。
演説の達人だがぶっちゃけ一番役に立っていない。というのもこの作品はミステリーであるため嘘を見抜いて情報を集める成瀬、スリで事件関連品を集められる久遠、体内時計と色々応用の効く雪子に比べると、探偵パートでは使い道が殆どない。
ついでに言うと演説は響野のこだわりであり絶対必要というわけでもない。
ボクシングインターハイ準決勝ノックアウト負けという格闘技術の方が役立っているように見える。
というか仲間内からも微妙に小ばかにされている。愛されているとも言えるが。さらに言えば呆れられているとも言えるが。
最新作「陽気なギャングは三つ数えろ」でとある調査を有能な女性に手助けしてもらった際本人がその場にいないにもかかわらず「響野さんと代わってもらおうか」と言われていた。ひでぇ……。
ただ演説能力自体は高く、伊坂幸太郎特有の言い回しと豊富な知識量も相まって話がコロコロ変わって結局何が言いたいのか分からないのに聞き入ってしまう演説は一見の価値あり。しかも殆どアドリブらしい。
喫茶店のマスターで能力者というとアイツっぽいが特に関係はない。
〇雪子
紅一点。精密な体内時計を持っている。バツイチその2
成瀬以上に冷静な性格の女性であり、息子の慎一が関わらなければ仲間内でも滅多に喜怒哀楽を表に出すことはない。どこぞのペットショップ店長よりはマシだが……。
家族環境が結構ハードでそれが恐らく上述の性格の原因になっている。まず幼少期両親は非常に冷たく所謂ネグレクト状態であった。時が経ち結婚するも夫の地道は小物クズヘタレの3コンボであった上に借金から失踪したため雪子と慎一は借金取りに追われることになり夜逃げすることになる。こうした経緯から慎一のことは溺愛しており、良くも悪くも彼女のアキレス腱。
またこのような自分で何とかしなければ生きていられない環境にいたため、大体のことは自力で何とかできる反面人に頼ることが苦手。というよりも頼り方が分かっていない。
コンマ単位の精密な体内時計を持っており『出産までにかかった時間』『信号を渡るまでの時間』『数えようと思った時間』などをブレることなく正確に、かつ同時並行で行うことが出来る。学生時代はこの能力のせいで周りから少し浮いていたらしい。
また若い頃に夜な夜なドライブをしていたため車の盗み方と操縦技術も天才的である。特にドライビングテクニックは凄すぎてギャグになっている。
実は慎一をダシにして輸送車襲撃犯に脅されている。襲撃犯とぶつかったのは偶然ではなく、雪子がドライビングテクでわざとぶつけた。雪子を脅し事故を装って成瀬たちの現金を奪い取るのが彼らの策略だった。
周辺人物
〇祥子
響野の妻で、実質的な喫茶店の店主をやっている。明るくはつらつとした性格であり、響野を黙らせることが出来る数少ない人物。ちなみにかなりの美人であり背は結構高く、また三十路半ばだが非常にスタイルがいいらしい。
ちなみに『アヒルと鴨のコインロッカー』の主人公・椎名の叔母であるらしく作中でチラホラ名前が出てくる。椎名には包装力の高い女性として懐かれているようだ。まああんなのが夫だったら自然と器は大きくなるだろう。
〇慎一
雪子の愛する中学生の息子。ギャングたちからも愛され様々な知識を教えられている。結構なイケメンで正義感も強いという主人公気質なところがある。だがそのせいで虐めに巻き込まれかけている。事件自体には関わらないが、事件解決の重要なキーパーソン。
〇田中
引きこもりで肥満体系の技術者。合鍵から盗聴器まで大体なんでも作れるためギャングたちから重宝されている。作中でもフラッシュレスカメラや中から開けれない車である『グルーシェニカー』など変なものをつくっていた。過去に暴行された経験があるため若者が大嫌いで、特に久遠は無視するようにしている。
ちなみに伊坂幸太郎作品にはよく足を怪我している田中という人物が登場するが関連は不明。
〇警察官にコスプレした男
名前通り。冒頭に登場する。
警察が大好きであり、グッズを集めたりつくったりして、それだけで飽き足らずコスプレして職務質問をしていた。
だが通りすがりの成瀬に嘘を見破られ、久遠に偽の警察手帳を盗まれる。要するに序盤の能力説明のためのかませキャラ。……と見せかけて終盤意外な活躍をする。
ちなみに成瀬は「君は人を呼び止めて『警察ですが』と言って、職務質問をしているんだろ? それは嘘じゃないか。『警察のようなものですが』と言えばセーフだが」と言っていたが職務質問をして個人情報を集めていた時点で官名詐称となるので気を付けよう。
敵
〇神崎
現金輸送車襲撃強盗犯のリーダーにして、今作のボス。
地道曰く『狡猾で残酷な相手』。多重債務者をパシリとして扱って犯罪を起こし、場合によってはその後に口封じのための殺すという地道評に違わぬ外道な男。成瀬ほどではないが先読みが得意であり、策略で成瀬たちを窮地に追い込んだ。……逆に言えば先読みの巧みさは成瀬に劣るのだが。
成瀬たちの奪った現金をさらに奪った張本人であり、金を奪い返すために対決することになる。
〇地道
雪子の元夫。小物クズヘタレ。雪子に言わせれば『薄っぺらい男』。
典型的な負け続ける癖にギャンブルをやめられないタイプであり、とんでもない額の借金を抱え込んでいた。そして雪子と慎一を捨てて夜逃げしてしまう。
しかもそれで考えを改めたというわけでもなく、またギャンブル漬けの日々を送り、しかも違法な場所から金を借りてしまったらしく神崎の手伝いをさせられていた。
ギャンブル依存症で自分の首を絞め続けている癖に生への執着が強く、そのためなら手段を選ばない。具体的に言うと雪子たちが銀行強盗を画策していると知り、速攻で神崎に売った。
ヘタレであり思慮も浅いので目先の事しか考えられない。具体的に言うと一応許そうとした成瀬たちを神崎怖さから速攻で売った。もう死ねよ……。
伊坂幸太郎作品のいつもの悪役とは違う意味でヘイトを稼ぐ存在。
〇林達夫
神崎に脅されていたひとり。響野の人間観察によれば『ずるずるの人』で主体性なく生きていった結果最悪の道を選んでしまうタイプらしい。計画終了後は地道によって殺されてしまった。ちょっとかわいそう。
銀行強盗のやり方
成瀬の『奪って逃げる。その間に警報装置を押させない』というシンプルかつ堅実な考えから生み出された銀行強盗成功作戦。とにかく警察に目を付けられる前に逃げるというのが一番重要。
①下準備として偽装工作を入念におこなう
当日に使う車を盗み、偽ナンバープレートを田中につくってもらう。成瀬自身が用意周到な人間の為この段階から丁寧におこなわれる。
②雪子を待機させ3人で銀行内に侵入する。
サングラスに帽子、頬にガムテープという服装で銀行に入る。露骨に怪しいが通報に踏み切れるほどではない、という絶妙なラインのファッションを選ぶのがポイント。人々の注意をガムテープに引きつけ顔を覚えにくくさせる細かい工夫も。
ちなみに駐車場に待機していては足が付くため、雪子は周辺の道路を走りながら待機し、終了時間になったら入り口前に向かう。体内時計とドライブテクを持つ雪子だからこそできる技。
③響野が天井に発砲し銀行強盗開始
制限時間は4分。それ以上だと警察に捕まる可能性が高くなる。
響野が銀行の中央で演説を開始して周囲の注意を集めている間に成瀬と久遠が金を奪う。「通報したらこちらでもわかるので絶対にするな」と釘をさしておくのも忘れずに。
ちなみに響野の拳銃はとあるルートで手に入れた実銃だが、それ以外はモデルガン。ひとつ本物があれば自然と残りも本物だと思われるものである。
④金を奪う
久遠が責任者から鍵を盗み、成瀬が能力でそのうちどの鍵が金庫の鍵か問いかける。成瀬が「これか?」と問いかけ相手がどう答えようと嘘を見抜けるため最終的にどれが金庫の鍵か割り出されてしまう。後は奪ってバッグにしまうだけ。
⑤逃げる
やるだけやったら捕まる前に逃げる。ここまでジャスト4分。あっさりと終わり過ぎて銀行強盗が起きたとは銀行内にいた人しか気が付けない。
ちなみにそこまで能力使ってなくね? と思った方もいるかもしれないが、これは伊坂幸太郎が能力を考えてからその能力でいかに銀行強盗を成功させるかと逆算して物語をつくったため。
余談
2006年に映画化している。90分と比較的短い上映時間であるため慎一の虐め関連のシーンなど削られた箇所は多い。
原作に比べると海外コメディを意識した要素が目立つ。あと成瀬のテンションが妙に高い。
だが成瀬と雪子のラブロマンスや、アクションをやりたいが故のカーチェイスシーンなど原作からは盛大に乖離したオリジナルシーンが多いため、評価はあまり高くない。
ただ、原作を見ていなければ一本のコメディ映画として楽しめるという意見もあるため、そこら辺はまあ人それぞれだろう。
ちなみに刊行当初から「オーシャンズっぽい」と言われていた本作だが、映画版のキャッチコピーは「オーシャンズ11に満足できなかった人へ」だった。
ロマンあふれるギャングっぷりのため作中の横浜市内では割と知名度の高い存在らしく『チルドレン』の登場人物・鴨居が彼ららしき銀行強盗について触れるシーンがある。
ちなみに『ラッシュライフ』において新興宗教の教祖・髙橋が4人の出会うきっかけになった劇場爆破事件について言及している。
雪子は少し怒った顔になると「どうしてあたしには教えてくれなかったの?」
「ああ」成瀬が制帽を被りなおした。
「君の電話は盗聴されていたから、詳しい説明はできなかった。それに」
「それに?」
「君を驚かせて見せたかった、というのもある」
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- 伊坂作品項目が立ってるのを見るたびに自分の気づかなかったクロス要素に驚かされる -- 名無しさん (2019-01-05 11:00:52)
- 劇場版微妙なのかー -- 名無しさん (2019-01-06 09:22:33)
- 能力に頼らずしっかりとした準備からコツコツと計画を立てるなんて真面目な強盗団だなやっていることは不真面目だけど -- 名無しさん (2019-01-07 04:48:45)
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