Pauper(MtG)

ページ名:Pauper_MtG_

登録日:2015/02/04 Wed 14:02:18
更新日:2024/01/12 Fri 10:29:06NEW!
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mtg コモン 魔境 magic online pauper



Pauper(パウパー)とは、TCG『Magic:the Gathering』のフォーマットのひとつ。
元々はデジタル版の『Magic Online』発祥のフォーマットだが、現在は公式フォーマットとして紙媒体でもサポートされている。




概要

このフォーマットの主題はコモン限定戦。つまり「最低レアリティで収録された経験を持つカード」のみでデッキを組んで戦うというもの。


そんな貧乏の極致といえるフォーマットのデッキなんて弱いのばっかなんじゃないの?と思ったそこのあなた。
まずPauperの【赤単バーン】(火力でひたすら相手のライフを攻めるデッキ)の主力カードをご覧いただきたい。


  • 《稲妻》(1マナ3点、しかもインスタント。モダンやレガシーなどでおなじみの言わずと知れた汎用火力の最高峰。)
  • 《稲妻の連鎖》(↑の調整版。1マナ3点ソーサリーで、撃たれた側が赤赤を支払えばコピーして撃ち返せる効果付き。)
  • 《批判家刺殺》(ソーサリーの3マナ3点だが、同ターン中に既に相手本体にダメージを与えていたら1マナ3点になる。)
  • 《溶岩の撃ち込み》(本体にしか撃てないソーサリーだが、やはり1マナ3点。)
  • 《裂け目の稲妻》(3マナ3点。ただし待機経由で唱えればタイムラグは発生するもののこれまた1マナ3点。)
  • 《火炎破》(山を2つを生贄に捧げれば0マナ4点。これと上記の1マナ3点火力2枚で山2枚から計10点もっていける。)

などなど。


……あれ?これレガシーのデッキだっけ?


コモンのみとはいっても、一度でもコモンで収録されたことがあればどんなに昔のカードでも使用できるのである。
確かにコモンには《神の怒り》のような派手なカードや《悪斬の天使》のような1枚で劣勢を覆せるようなパワーカードこそ少ない。
しかし長いMtGの歴史上、最低レアリティ故に基本で堅実、そして強力なカード達がコモンには数多く存在するのである。
あの《対抗呪文》も《暗黒の儀式》も《怨恨》も、全てコモンであるのだ。


レアリティの都合上「プレインズウォーカー」や「バトル」といった後出のカードタイプを持つカードは現状一切使えない。
このことと往時の名カードが多く使えることから「古き良きマジック」「昭和のマジック」*1などと呼ばれることも。


最低レアリティ限定のフォーマットということもあって、参入費用が(比較的)安いことも特徴のひとつ。
一部の希少だったり高需要なものを除けばほとんどのカードが非常に安価。
(相対的に)高額なカードをガン積みにしたガチデッキを組んでも、かなり安く組めてしまったということもしばしば。
「いろんなデッキで遊んでみたいけど、予算が……」
「広いカードプールでデッキを考えたいけど、モダンやエターナルは高くつくし……」
という人でも是非とも参戦しやすいフォーマットである。


……しかし、そのトップメタ環境はレアの暴力に痛めつけられた他フォーマットのプレイヤーが羨むような温い環境ではない。
実際はカードプールの大元がエターナルである事から、小規模なレガシーといえるほどのストイックな環境である。
上記の【バーン】がほぼレガシーの如く組めるように、動けるデッキの動き方は他のフォーマットと比べても遜色ない。
それでいてレアの暴力に甘えることが出来ないため「雑なアド取りができない」ことが多く、資産差や雑なプレイで強引に勝利することもできない。
つまり勝ち抜くにはプレイングと環境理解が高い精度で求められるという、安くで始められる割にはかなり上級者向けの環境であるのだ。
実際同じデッキリストを使っても使用者によって強さに残酷なレベルの差が出たり、強いプレイヤーの解説が全く理解できないなんてこともある。
特に青系の【クロックパーミッション】は他フォーマットの経験者ですら「俺には使いこなせない」と匙を投げることも珍しくない。


ヴィンテージや統率者戦と並ぶ魔境でありながらその内情は外部にはあまり知られておらず、参戦して初めて知るプレイヤーも多い。
多くのプレイヤーは「このカードコモンだったの!?」と驚くところから始まるだろう。


また、カードプールの増加と環境への影響の頻度が他のフォーマットに比べても高い。
これは他のフォーマットにも影響を与える通常のセット以外にも、カードの再録に主眼を置いたセットでもカードプールが増えうるからである
そういったセットが発売される度に、レアリティが変更されて使用可能になるカードが増える、いわゆる「コモン落ち」が発生するのだ。
カードの再録のみのはずである「マスターズ・シリーズ」で環境の激変を気にするのもPauperの恒例行事である。
これによって

  • スタンダードでは他の陰に隠れて空気だったが、Pauperでは定番カードになった出世組(《流浪のドレイク》《ディンローヴァの恐怖》など)
  • 他環境の名カードがついにPauperデビュー(《暴走の先導》《僧院の速槍》など)

というのがそこそこ発生する。
しかし中には

  • レアからコモンに落ちたが鳴かず飛ばずだった……(《皇帝クロコダイル》《野生の末裔》など)

なんてのもある。
ここ最近は1年で出る大型エキスパンションが4つになった事に加え、「モダンホライゾン・シリーズ」や統率者戦用セットといった特殊セットも増加。
ユニバースビヨンドやジョークセットといった所からも環境クラスのカードが出てくるなど、環境の変化も激しいものとなっている。


コモン限定戦とはいえ、環境に対する悪影響から禁止カードもそれなりの数が存在する。詳しくは個別項目で。
フリースペルとストーム関連の禁止が複数枚存在するのは、これもまたMtGの繰り返された過ちである歴史の象徴……なのかもしれない。





フォーマットの歴史


長らく公式では『Magic Online』上のみでサポートされ、紙媒体では非公式フォーマット扱いであった。
その時代では、使用できるカードは正確には「『Magic Online(MO)』でコモンでリリースされているカード」であった。
例えば《トーラックへの賛歌》は紙ではコモンとして印刷されているが『MO』ではアンコモンの収録しかされていないため使用できなかった。
正直使えなくて助かったが
逆に《尊大なワーム》や《堂々巡り》は紙ではコモンとして印刷されたことはないが、『MO』ではコモンで収録されたことがあるため使用可能であった。
おかげで当時のPauperでも往年と同じような【マッドネス】が組めた。


その後2019年7月から遂に公式フォーマットに昇格。
公式化に際しデジタルと紙媒体両方で基準を合併統一、「『MO』か紙のどっちかでコモン収録されていれば使用可能」となった。
これにより意外なカードが使用可能になったりした。ちなみに《トーラックへの賛歌》は公式化と同時に当然のように禁止入り(上記個別項目参照)。
公式フォーマットということはモダンやスタンダードと同じ扱いであり、店舗イベントやプロの世界大会にも参戦する可能性があるということである。
今後の展開が期待される。


なお、公式フォーマット化前後でリリースされた『Magic: The Gathering Arena(MtGA)』においても、そちら限定のコモンが何枚か存在する。
それらについては基準として合併されず、公式で使用不可になっている。
Pauperはデジタルである『MO』由来ということもあって「同じオンラインの『MtGA』だけ区別するのか?」という点で議論も発生したりした。
しかし、『MtGA』では『MO』と異なりイベントなどでのプレイ中にデッキに完全な外部からカードを加える動きが存在しうる。
このように加えられるカードには、『MtGA』以外ではコモンでないカードがデータ上コモンとして扱われてしまうことがあった。
他にも色々と議論点はあったようだが、特にこれが問題視され『MtGA』は基準として数えないことになった模様。
該当カードにはかの《剣を鍬に》も含まれており、もし解禁されていたら相当な環境変革が起こっただろう。





色ごとの特徴

元々白は良く言えば万能、悪く言えば器用貧乏な色である。
Pauperではその悪い面ばかりが目立ちがちで、何かしら尖った強みのある他の色と比べてこれといった特徴が少ない。


だが決して弱い色というわけではない。

  • 《未達への旅》や《忘却の輪》といった優秀な除去
  • 《虹色の断片》や《心優しきボディガード》のようなクリーチャー保護手段
  • かの《戦隊の鷹》をはじめとした白お得意の優良ウィニークリーチャー

これらにによって特に【白ウィニー】は安定した動きができる。
特に近年の新規戦力である《スレイベンの検査官》は1マナのくせに1/2で手掛かりトークン1つまでついてくると、ちょっとおかしい強さ。


その中でも、

  • 強力なトークン生成呪文である《金切るときの声》を軸にした【白単トークン】
  • 《ラゴンナ団の先駆者》などの「英雄的」持ちクリーチャーを強化呪文やオーラで支援する【白単英雄的】

などがよく結果を残している。
最近では毎ターンドローができる新システム「統治者」になれる《宮殿の歩哨》を軸にした動きが強力。
赤と組んだ【ボロスキティ(ボロス統治者)】系が上記のカードを主軸に結果を残している。


その他にも対単色デッキ最終兵器である各種防御円もコモン。白を含むデッキのサイドボードにはよく積まれている。


Pauperのメタゲームの話になると必ず【青単】の名が挙がってくるほど、この環境の青は強い。


冒頭でも挙げた《対抗呪文》が対抗馬である《意志の力》や《マナ吸収》が存在しないため現役。
それ以外の打ち消しも充実しており、

  • クリーチャー限定かつ3マナだが、キャントリップでアドバンテージを取れる《除外》
  • ややマイナーだがなかなか厄介な時間稼ぎができる《記憶の欠落》
  • スタンダードなど他環境でも常連な《呪文貫き》《軽蔑的な一撃》《否認》

など、デッキに合わせて様々な打ち消しが使える。
この豊富さから、必然的にパーミッションの要素を含んだデッキが多くなる。


クリーチャーに関しても、

  • あらゆる環境で猛威を振るいまくった青の1マナ最強生物筆頭、「デルバー」こと《秘密を掘り下げる者》
  • 打ち消し能力でアドバンテージを取れる《呪文づまりのスプライト》
  • 1/3で攻撃を受け止めつつ優秀なインスタント・ソーサリーを探す《ボーラスの占い師》
  • 飛行クリーチャー達を種にハンドアドバンテージを稼ぎまくる《深き刻の忍者》
  • 使い捨てだったり重いかったりするが、出すだけでハンドアドバンテージを稼げる《熟考漂い》

など、コモンながらアドバンテージ面で優れた奴らを大量に擁している。


さらに、

  • 《思案》《定業》といったモダンで禁止されているキャントリップ付きライブラリー操作
  • レガシーで青絡みなら必須のドロースペル《渦まく知識》

まで備えており、アド取りや手札の質の安定化にかけては右に出る色はない。


単色としての弱点はクリーチャー除去に乏しいことだが、

  • アドバンテージを失わないバウンスである《排撃》
  • タフネス1限定ではあるが青では貴重なマイナス修整効果を持つ《海賊の魔除け》
  • 正確には無色のアーティファクトであるが、それゆえに青でも使える優秀除去の《鋸刃の矢》

など、弱点を補う手段も少なくない。
それでも基本的に除去は赤か黒と組んでそちらに任せることがも多い。


何と言っても除去の色である。
特に布告系が充実しており、

  • ライフロス付きの《ゲスの評決》
  • フラッシュバック付きの《チェイナーの布告》
  • 自軍も巻き添えにするが1マナと軽い《無垢の血》

など、よりどりみどり。
対象を取る単体除去も、

  • スタンダードな黒以外除去である《破滅の刃》
  • 一部のクリーチャータイプ持ちには効かないが、黒を含むものにも対処できる《夜の犠牲》
  • 【黒単】ならば大物をも仕留めるマイナス修正を生み出す《汚涜》

など選択肢は豊富。
「ダブルマスターズ(2XM)」でのコモン落ち以降は伝説以外を除去できる《喪心》が幅を利かせている。
伝説のクリーチャーはほぼアンコモン以上にしか存在しないため、ほぼ1マナ軽くて色拘束も薄い《殺害》として利用できる。


それ以外にも、

  • 相手にも1点撃たせてしまうが2マナと軽いティム効果持ちである《クォムバッジの魔女》
  • Pauperでは貴重な、特にタフネス2以上を除去できるものとしてはほとんど唯一の全体除去である《墓所のネズミ》
  • 繰り返し使えてフィニッシャーにもなる《エヴィンカーの正義》
  • フィニッシャーにもなる強力ドレインである《堕落》と《堕落の触手》

……と、【黒単コントロール】=クリーチャー絶対殺すデッキとでも言わんばかりの充実ぶりである。
破壊耐性やプロテクション(黒)クリーチャーへは《損ない》や《完全無視》などの追放除去まで完備。


クリーチャーも優秀で、

  • 「テーロス・ブロック」構築でも大活躍したドレイン筆頭マン《アスフォデルの灰色商人》
  • 相手のドローを1回止めつつ手札の枚数を減らせる《騒がしいネズミ》
  • カードを引きながら2/2が立つ《ファイレクシアの憤怒鬼》

など、CIPでアドバンテージを稼ぎ出せるクリーチャーを多く擁する。


そして何よりの強みは、Pauper界では最強クリーチャーとも言える《グルマグのアンコウ》。
実質1マナ5/5はもはや壊れの域。火力ではほぼ落とすことができず、黒でゾンビなため同型の黒の除去にも耐性が多い(《喪心》でちょっと薄れたが)。
回避能力こそ持たないがそこは黒、相手のクリーチャーをすべて消し去ってしまえば良い。


黒のもう一つの代名詞であるハンデスも、

  • 《強迫》や《村八分》などの軽量ピーピングハンデス
  • Pauper界の《トーラックへの賛歌》こと《精神ねじ切り》

など、よりどりみどり。場も手札もズタズタにしてやろう。
なお本家《トーラックへの賛歌》は前述の通り使用不可である。


ライフロスがあるとはいえ優秀なドローソースの《血の署名》や《夜の囁き》も使える。


なお《カーノファージ》や《吸血鬼の裂断者》のような優秀なスーサイドウィニーや、かの《暗黒の儀式》もコモンである。
そのため往年のような【黒単スーサイド】を組むこともできる。
現状では爆発力で【赤単】に、安定感で【白単】に見劣りし環境に食い込むには力不足気味ではある。
しかし今後登場するコモンや未発見のシナジーで化けるポテンシャルは十分に秘めており、今後が期待されるアーキタイプである。


ちなみに黒い《忘却の輪》こと《土牢/Oubliette》は「ダブルマスターズ(2XM)」での再録&日本語名追加までPauperで高いカードとして有名であった。
古いカードゆえに処理が複雑で再録が難しかったのである。


冒頭でも例として出したように、火力の質はエターナルにも見劣りしない。
《稲妻》や《稲妻の連鎖》のような1マナ3点火力も数多く、果ては【赤単】最強の切り札である《火炎破》まで使える。
《ケルドの匪賊》や《火花の精霊》のような歩く火力まで加えて特化した際の攻撃力は他の追随を許さない。


《炎の斬りつけ》や《炎の稲妻》《電謀》のようなコントロール向けの火力もそこそこ存在し、多色デッキで力を発揮している。
そして青いカードへの最高レベルのメタカード、《赤霊破》と《紅蓮破》までも使える。青は青で《青霊破》と《水流破》があるが……


一方、クリーチャーの質は全体的にそんなに高くはない。
しかし部族シナジーの強力なゴブリンの多くがコモンであり、それらを軸にした【赤単ゴブリン】はロードこそ存在しないが高い爆発力を持つ。


そして「モダンマスターズ2017(MM3)」で《炎樹族の使者》のコモン落ちにより、ついに【スライ】や【レッドデックウィンズ(RDW)】が成立した。
【緑単ストンピィ】との違いは火力の存在と速攻持ちの多さ。最速3ターンキルを誇るスピードは過去の【スライ】を上回りかねない。


ただ古くからの【赤単】の宿命として、ピンポイント対策に非常に弱い。
ライフゲインやプロテクション、防御円などでいとも簡単に凌がれてしまうという弱点も持ち合わせている。
一番の対策は、それらを使われる前にさっさとに倒してしまうことだろうか。


ドラゴンなどの赤の花形ファッティは基本的にアンコモン以上である関係上、大型クリーチャーはパッとしなかった。*2
しかし「統率者レジェンズ(CMR)」で続唱&速攻持ちの6マナクリーチャーという期待の新星《乗り込み部隊》が登場。
赤緑系の【続唱ランプ】といったデッキ等で用いられている。


言わずと知れたクリーチャーの色。なんとあの甲鱗様もコモン、つまりPauperで使用可能である!《ウラモグの破壊者》?何のことかな?


真面目な話をするなら、《怨恨》をはじめとした優秀なサポートで小型クリーチャーをバックアップする【緑単ストンピィ】がメタの一角を占めている。
強化先も、

  • 緑単ならほとんど無視できるデメリットで1マナ2/2の《イラクサの歩哨》
  • 《怨恨》と相性抜群で布告対策にも最適な1マナ不死持ちの《若き狼》

など優秀なクリーチャーには事欠かない。こちらもやはり《炎樹族の使者》の登場で大幅に強化された。
「ストリクスヘイブン(STX)」以降はクリーチャーを生け贄にすることで2マナで出せる5/4の《湿地帯のグロフ》を高速着地させるタイプも登場した。


またマナの扱いが上手く多色化がしやすい他、

  • モダンなどでおなじみ【Zoo】のエースである《野生のナカティル》
  • 基本土地タイプが全て揃えば3マナ5/5という他の環境基準で見ても驚異のサイズで出てくる《マトカの暴動者》
  • 上記のカードを1枚でサポートできる《ナイレアの存在》

などを擁するため、これらを組み合わせつつ各色のパワーカードを組み込む【ドメインZoo】と呼ばれるデッキも成果を上げている。
これらを組み合わせつつ各色のパワーカードを組み込む【ドメインZoo】と呼ばれるデッキも成果を上げている。
手札補充用に青をタッチすれば土地以外ほぼレガシーそのまんまの【親和エルフ】、黒などと組むと【感染】も組める。


他にもPauperの軽量呪禁持ちは緑に多く、強力なオーラである《アルマジロの外套》や《天上の鎧》もコモンだったりする。
白や青と組んで【呪禁オーラ】もたびたび組まれる。


さらに緑といえばマナ加速。《不屈の自然》も《ラノワールのエルフ》も居る。
「統率者レジェンズ(CMR)」で続唱持ち7マナクリーチャーの《苛立つアルティサウルス》が登場して以降は、赤と組んだ【続唱ランプ】も活躍している。
《繁茂》や《楽園の拡散》と《東屋のエルフ》でマナ加速して素早く《ムウォンヴーリーの酸苔》に繋げ、土地破壊で相手を妨害しつつさらに加速。
《苛立つアルティサウルス》に繋げてアドバンテージとサイズで押し切る。
《ラノワールの幻想家》や《サルーフの群友》といったキャントリップクリーチャーもアドバンテージを失わない戦力として採用されている。
《苛立つアルティサウルス》→《乗り込み部隊》→キャントリップクリーチャーと続唱がつながって展開しつつ手札が減らないこともザラにある。


……ここで緑が関わるPauperの奇妙な事例についても紹介しておこう。
実は、Pauperでは2022年後半あたりから「テーブルトップとデジタルの環境が異なる」という事件が起きている。
その主犯は『MO』で実装されていないジョークエキスパンション「Unfinity(UNF)」のカードを軸にした【緑単ステッカーストンピィ】なるデッキ。
その中の《Finishing Move》《Chicken Troupe》というカードが緑なのだ。
詳しい説明は省くが、この2枚が扱う「チケット」「ステッカー」というメカニズムは既存のクリーチャーのP/Tを上書きできる。
これにより、これまでの【ストンピィ】の「回避能力の難はサイズと格闘除去や《怨恨》でカバーする」という構築が変化。
回避能力を持つがサイズの小さい《シラナの岩礁渡り》《ジンジャーブルート》などが5/1になって殴りかかってくるようになった。
実際の動きはサイズアップ程度で物珍しいわけでもないのだが、ジョークセットすら環境を激変させるのは流石とPauperといったところである。


土地

何と言ってもスタンダードで禁止されていたアーティファクト土地が全部現役ウルザランドも全て揃っている
そのため【親和】【ウルザトロン】などのやや特殊なデッキも組める。
前者は2~3ターン目から0マナ2/2や0マナ4/4などがぼんぼこ飛び出してくる往年のムーブが今でも現役。
後者は大量のマナから普通の構築では見向きもされなかった《ウラモグの破壊者》が一躍フィニッシャーとして大活躍していたりする。
デッキタイプこそ他の環境でも見かけるものだが、他ではあまり見られないような光景が広がるのが面白いところである。
かつては【8post】も組めたが、《雲上の座》が禁止されたことで消滅した。


多色土地はタップインしか存在しない。故に多色デッキは他環境と比べてかなりスピードが落ちることに気をつけねばならない。
主なラインナップは以下のもの。

  • ゲインランドサイクル(出た時にライフを1点回復できる。)
  • 門サイクル(門の土地タイプを持つ。)
  • 氷雪タップインデュアルランドサイクル(氷雪タイプと基本土地タイプ2種を持つ。それぞれのタイプを参照するカードの恩恵orメタを受ける。)
  • 基本土地タイプ持ちタップインデュアルランドサイクル(上記のサイクルから氷雪を参照するカードの恩恵orメタを受けなくなった。)
  • バウンスランドサイクル(場の土地1つをバウンスしないと出せない代わりに2色のマナが1つずつ出せる。)
  • 興隆サイクル(土地固有の1色に加えて戦場に出るときに選んだ色のマナを出せる。2色デッキでは相互互換だがタッチ色への対応などで柔軟に使える。)
  • 橋サイクル(破壊不能を持つ2色のアーティファクト土地。)

早めのデッキではタップインデュアルランドの派生、遅めのデッキではバウンスランドが用いられる事が多い。
ただタイプによる作用などを気にしなければぶっちゃけ好みで決めても良い。どれも一定の需要を得て様々なデッキに用いられている。
特に橋サイクルは【親和】の隆盛に力を貸したほか、破壊不能を利用して《浄化の野火》を赤い《不屈の自然》のように使うデッキが登場した。


土地サーチのフェッチランドも《広漠なる変幻地》《進化する未開地》「ニューカペナの街角(SNC)」のサイクルの系7種が使える。
どれも基本土地をタップインで持ってくる。本家と比べれば微々たるものだが、これらでも便利である。


デッキタイプについて

コモンというレアリティの特性(=あまり複雑な効果は持たないことが多い)のためか、他のフォーマットのような瞬殺コンボデッキは組まれにくい。
かつては【ストーム】が猛威を振るっていたが、キーカードのほとんどを禁止され消滅した。
だがその後も皆無というわけではなく、【ファミリア】と呼ばれる無限マナコンボを軸にしたデッキが結果を残したことがある。
そちらは《フェアリーの大群》が禁止されて消滅したが、「エターナルマスターズ(EMA)」で何故かコモン落ちした《流浪のドレイク》を中心にして復活。
ドレイク・フリッカー】として大暴れし、2度の禁止改訂を乗り切った結果環境占有率が20パーセントを超えるレベルに。
流石にまずいと思われたのか、緊急制限改定で《流浪のドレイクが》禁止になり消滅した。
近年だと「モダンホライゾン・シリーズ」でまた【ストーム】系がやらかして禁止されたりもした。
現在では【Damned Combo】や【The Spy】などの瞬殺も可能なコンボがごく一部に存在している程度に落ち着いている。





余談


  • もしMtGを始めるにあたってのハードルが「値段」なのであれば、現在ではPauperより『MtGA』の方がおすすめである。
    前述のように値段の割りに魔境なので、知識も経験も浅い初心者が下手に手を出すとボロ負けしかしない恐れがある。
    • ちなみに『MtGA』でも実装範囲内でのパウパー構築イベントが行われる事があり、カジュアルな空気で楽しめる。
      たまに【嘆願者バベル】のように頭の悪いデッキが登場して話題になったりもする。

  • 元々非公式フォーマットであったためか、公式内だけでは十分な知識や分析が足りなかった時期があり、それによる禁止の遅れが発生したりもした。
    現在ではこれへの対策として、外部の愛好家などを招待して発足した「パウパー・フォーマット委員会」が存在する。
    • この形式のため、パウパーのみ禁止改訂の時期が少しズレている。
      また公式外のプレイヤーが関わっているためか、かなりズバッと踏み込んだ事が行われたりもする。*3
      他のフォーマットではヴィンテージですらまず起きない事であり、そういう意味でも魔境なフォーマットである。



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  • コモンデッキといいつつ、基本レガシーなので20年分の割といかれたカードが詰まってる。激励の合ったころの感染は二段攻撃をあげるのインスタントからの2ターンキルも可能。 -- 名無しさん (2015-02-04 22:12:57)
  • 下手したら宝船と昆虫人間禁止食らいそう -- 名無しさん (2015-02-05 13:53:36)
  • ナイナイ -- 名無しさん (2015-02-06 16:18:26)
  • こうやってみるとぶっ壊れてるコモンって結構多いんだな…怨恨とか虫とか鷹とか、安いから嬉しいけどさ -- 名無しさん (2015-02-18 03:57:46)
  • 青の壊れコモンの多さは異常 -- 名無しさん (2015-03-03 05:06:00)
  • 宝船逝きました... -- 名無しさん (2015-03-24 10:16:45)
  • デルパー君も逝くかなこれは -- 名無しさん (2015-03-24 10:44:12)
  • 大群逝った -- 名無しさん (2016-02-04 21:10:13)
  • まぁ金玉漂流は頭おかしいからね -- 名無しさん (2016-02-04 21:45:04)
  • ドレェェェェェェェェェェェェェイィィィク!!!!!!!! -- 名無しさん (2016-07-27 15:01:17)
  • ドレイクがもうすぐ逝くね -- 名無しさん (2016-11-07 19:57:58)
  • 稲妻がある以上デルバー許されないはない -- 名無しさん (2017-04-15 17:56:08)
  • チェンライ直したり今の環境に直したり完了 -- 名無しさん (2017-08-10 11:50:24)
  • PauperがPaperにやってきたぞー!ついにコモン構築戦として正式サポートされたぞー! -- 名無しさん (2019-06-28 20:30:39)
  • 記事名買えたいけどリンク修正がめんどい -- 名無しさん (2020-08-12 09:10:03)
  • mtgは平成4年生まれという記述がありますけど、平成5年生まれのカードゲームじゃないですか? -- 名無しさん (2020-08-12 13:55:35)
  • 統率者レジェンズ系の言及を追加。アルティサウルスは好きなファッティ -- 名無しさん (2021-05-13 17:36:14)
  • なおモダホラ2のせいでpauperでも「ぶっ壊れたカードに環境を蹂躙される」事態が起きた模様(そして基本土地ストライキ事件へ) -- 名無しさん (2021-09-17 16:19:02)

#comment

*1 一応言っておくが、MtGは平成5年生まれのカードゲームである。
*2 これは他の色にも多かれ少なかれある傾向である。
*3 「【イニシアチブ】が強すぎたので規制した」ということをゲームの細部にまで理由をつけて説明する、「《暗黒の儀式》がそろそろやばいと思うのでみんなのお気持ちを聞かせてほしい」とプレイヤー側に意見を募る、など。

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