登録日:2014/12/03 (水) 00:44:00
更新日:2023/12/21 Thu 13:41:17NEW!
所要時間:約 11 分で読めます
▽タグ一覧
vs 富士見ファンタジア文庫 小説 ライトノベル 打ち切り 警察 ヒーロー 改造人間 sf ヴァーサス 麻生俊平 流出技術 鷹匠次郎は改造人間である 超科学特殊捜査班 硝音あや
ヒーロー・アクション・ドラマの究極進化系
『VS-ヴァーサス-』とは富士見書房より出版されたライトノベルである。
著者:麻生俊平
イラスト:硝音あや
【概要】
謎のテロ組織の襲撃を受け、瀕死の重傷を負った主人公が流出技術と呼ばれるオーバーテクノロジーを用いて改造人間となり、
流出技術の悪用を防ぐ警察組織の一員となって犯罪者に挑むSFアクション小説。
流出技術、絶滅研究所、超科学特捜班など浪漫溢れる設定を盛り込みつつも、組織やヒーローに法的な制約が付きまとうなど敢えて外す事で物語に現実味を与えており、
主役以外の登場人物の大半が成人(主に警察や自衛隊関連)、組織間の軋轢や当時の社会問題も盛り込むなどライトノベルとしてはやや硬派な部類に入る作風が特徴。
意欲的な作品だったが無念にも打ち切りとなってしまい、多くの伏線を残したまま全5巻で物語は終了となった。
【あらすじ】
近年、急激に増加してきた凶悪なテロ事件。その多くは流出技術と呼ばれる超科学技術を悪用したものであった。
事態を重く見た政府は、流出技術犯罪に対処すべく、警察内に新たな部署を創設した。
Superior Scientific Special Search Squad―超科学特殊捜査班、通称『VS』。
これは『VS』のメンバーとして、理不尽な犯罪者たちに立ち向かう、少年と少女の物語である。
自衛隊員だった兄をテロ事件で失ったばかりの高校生・鷹匠次郎に、兄の同僚だったという女性が接触してきた。
彼女の口から語られる兄の死の真相、絶滅研究所と流出技術の存在に次郎は衝撃を受けるが、
直後に鷹匠家を襲撃した高熱と光を纏った人間―高エネルギー人間の存在がその真実を実証する。
妹と逃がすために瀕死の重傷を負う次郎。
その時、彼を助けた出したのは紺と銀の色を纏った超人であった。
【登場人物】
鷹匠次郎
主人公。高校2年。
高エネルギー人間の襲撃を受けて瀕死の重傷を負うが、「V1ユニット」を移植した事で一命を取り留め、
高エネルギー人間に復讐するために特殊技能者としてヴァーサス(超科学特殊捜査班)に加入する。
真面目な性格だがやや直情的で頭に血が上りやすく、自身を含めて家族が流出技術犯罪に巻きこまれたという事もあってか
有事の際はコマンダーとの対立や命令違反も多い。
また死んだ兄や自分と同じ特殊技能者である蒼と自分を比較して落ち込んだり嫉妬したりする事も多かったが、
ヴァーサスでの活動を通じて少しずつ成長していく。
古流武術の経験者でありV1ユニット起動中の立ち居振る舞いにもその動きを取り入れている。
水城蒼
次郎と同い年の少女。
ヴァーサス所属の特殊技能者「S1」で次郎のトレーニングコーチ役。
ヴァーサス所属以前は次郎の兄、勝也と共にSLCATに所属していた。
常に無表情で冷静沈着、かつ生真面目な上に融通も利かず心の機微にも疎い。
一方で心の中では人々を守りたいという信念を強く抱いており、次郎とは衝突しながらも互いに欠かせないパートナーとして関係を構築していく。
防衛省関係者からはとある理由から存在そのものを危険視されており、V1である次郎がいなければ行動の自由が著しく制限されてしまう。
霧島真琴
次郎が中学時代に通っていた古流武術の道場の娘。
次郎よりも輪をかけて一直線な性格であり、彼曰くガサツで大雑把な性格。
本人は知らないが高エネルギー人間が鷹匠家を襲撃するカモフラージュとして実家の道場に放火したため、
東京で新しい道場を開くという父に従って上京する。
鷹匠未沙樹
次郎の一つ下の妹。
高エネルギー人間の襲撃に巻き込まれてPTSDとなり、祖父母の家に引き取られる。
元々は明るく注目される事を好む性格だったが、事件後は家に閉じこもって友人達とも疎遠となり、
次郎が唯一の拠り所となっている。
竜胆寺那智
ヴァーサスの最高司令官にして自称「世界第二位の天才」。警察職員からは「コマンダー」と呼ばれている。
ヴァーサスにおける超科学解析及び犯罪への使用はほぼ全て彼女の知識と判断によるため、ヴァーサス内ではほぼ絶対的な存在。
豪放かついい加減で、時に人を食ったような発言や下世話な話題も平気で振ってくる。
魔女のようとも表現される特徴的な外見と共に、彼女を知らぬ人間に奇異な印象を与えているが、時折放たれる鋭利な言葉は容赦なく真理を突く。
一方で、その発言や時に冷酷とも言える判断から良くも悪くも周囲に敵を作りやすい。
春日潔
三十代前半の警視。東大法学部卒のキャリア組。
的確な頭脳と高い交渉能力を持ち、ヴァーサスの副署長的な存在として他部署との交渉を行う。
法的に際どい立ち位置にあるヴァーサスがその権限を問題なく行使できるのは彼の交渉力によるところが大きい。
また組織内での対人関係の調整も自主的に行っており、次郎にとっては良き相談役となっている。
三輪要
陸上自衛隊三等陸佐。
ベリーショートの二十代後半の女性で、警察の組織であるヴァーサスと防衛省との連絡係。
冷静で感情を表に出さないが、国防に対する思いは強く確かな信念を抱いている。
防衛省の関係者で蒼の現在の処遇に心を痛めている数少ない人間でもあり、
不器用ながらも次郎や蒼を気遣うなど言動に反して心根は優しい。
鬼怒原姫子
二十代後半の女性。
交渉事が多い春日に対して、実際に現場での指揮を執る警部補。
事件の捜査だけでなく、有事の際は銃を持って最前線に立つ事も多い。
みんなから「おキヌさん」と呼ばれる。春日と並ぶ、次郎の相談相手。
伴友彦
ヴァーサスの科学スタッフのチーフを務める、二十代後半の男性。
コマンダーの影に隠れがちだが彼自身も優秀な研究者であり、V1やS1の調整や訓練、装備の手配、
犯罪に用いられた流出技術の解析などその仕事は多岐に渡る。
次郎曰く、スポーツクラブのインストラクターのような雰囲気のイケメン。
鷹匠勝也
次郎の五つ上の兄で、陸上自衛隊員。
2年前に北海道の旭川駐屯地で発生したテロ事件で生き残り、それが契機となって対テロ対策要員として訓練を受けていた。
しかし、次郎たちが事件に巻き込まれる一週間前にテロで亡くなってしまう。
性格は真面目で堅物(デートをしたことがない)、勉強もスポーツも得意だったらしい。
彼の存在は次郎と蒼のそれぞれに何らかの影響を残している。
水島苑子
流出技術によって改造された高エネルギー人間の1人。
鷹匠家を襲撃し、次郎の両親を意識不明の重体に陥らせる。
その後は仲間と共に生き残った次郎や未沙樹の命を狙うもヴァーサスの介入で失敗し、
次郎がV1として改造されるきっかけを作ってしまう。
シリーズを通して敵対する犯罪者であり、改造人間特有の万能感からか尊大で挑発的な発言が多い。
一方で図星を突かれると冷静さを欠き、自身に有利な状況を作り出すために必要以上に相手を挑発して墓穴を掘る事も多い。
【用語解説】
流出技術
絶滅研究所で研究されていた技術の通称。体系外技術と呼ばれる事もある。
作中では既存の技術体系から外れた研究者個人の才能の産物でしかない技術と定義されており、
新種のウィルスやナノテクノロジー、それらを応用した人体改造、果ては言語に頼らない思索方法など、
自然科学の枠に収まらない独創的な技術の数々。
これらを用いた犯罪やテロに対して各国は独自に対策を講じており、
日本では体系外技術対策法という形で限定的ながらも流出技術による改造人間(厳密には特殊技能士)の実戦投入を行っている。
絶滅研究所
未来創造研究所とも呼ばれる研究機関であり、本作のキーパーソンの1つ。
才能に溢れる若き天才達を集めて設立された研究ネットワークであり、「人間の可能性を追求する」という目的の下、
各自がそれぞれの得意分野において様々な研究・開発を行っていた。
その中でも特に重要な研究内容だったのが『SEAL』と呼ばれる改造人間であった模様。
10年前に多国籍軍によって制圧されたが、一部の研究者はそれを逃れて潜伏し、今もどこかで自身の研究を続けている。
ヴァーサス(VS)
正式名称『Superior Scientific Special Search Squad(超科学特殊捜査班)』。
頭文字のSを取って5S(ⅤS)をアルファベットに置き換えて発音している。
前身となったのは警視庁の科学特捜班であり、SLCATとの合流を機に改名。
主な活動内容は流出技術を用いた犯罪の捜査と解決、及び対抗技術の開発。
SLCAT壊滅後は警視庁の一部署として臨海地域に本部ビルを構え、
主戦力として通常の捜査員以外に特殊技能者V1とS1を保有している。
流出技術が関わっていれば殺人から万引きまであらゆる犯罪がヴァーサスの担当となるが、
言いかえれば所轄の管轄を無視して捜査に介入できるという事も意味しており、その在り方に不満を持つ者も多く、
法的にも常にギリギリの綱渡りを強いられている。
SLCAT
正式名称『高度テロ対策総合研究所』。汽車ネコと呼ばれる事もある。
旭川駐屯地のテロ事件をきっかけに、防衛省のテロ対策部署と警視庁の科学特捜班が合流して発足した機関。
名目上は警視庁の科学捜査部署だが実質的には自衛隊のテロリズム対策研究機関であり、
対テロ対策要員の訓練や新技術の開発、対抗策のノウハウ構築を行っていた。
水城蒼や鷹匠勝也もここに所属していたが、高エネルギー人間の襲撃にあって壊滅。
その後は科学特捜班の面々がヴァーサスとして独立する事になった。
V1
正式名称『VANGUARD1』。起動のためのキーワードは「Actiation」。
SLCATが流出技術犯罪に対抗するために開発した生体パーツの装着員の通称。開発者は竜胆寺那智。
生体パーツを移植する事で人間のポテンシャルを引き出す事を目的に開発されており、
その実験機としての側面もあって量産を度外視した高性能な仕様となっている。
本来の装着員は鷹匠勝也であり彼の専用機として調整されていたが、SLCATの壊滅によって勝也が死亡したため、
遺伝子的に適合率が高い弟の次郎が装着員となる。
起動時は体色が白と濃いベージュに変化し強化外装が形成されるが、本来の装着員ではない者が移植を受けたため、
全体的なデザインのバランスや変化の度合いが左右で微妙に異なっている。
身体能力だけでなく感覚器も強化されており、紫外線や磁力線などの感知、可聴域を超える音の聞き分けも可能。
一度見聞きした情報を適宜読み出して脳内で再生、解析する事もできる。
また強化外装は次郎の意思で剣や盾、ロープなどに変化する多機能補助器具『Vツール』として使用できる。
特筆すべきは補助知脳による学習と適応であり、経験を積む事で射撃の弾道補正や予測射撃、
水中活動の最適化や一度受けた攻撃に対する耐性の獲得など、高い拡張性を有している。
また携行火器として可変弾頭を発射できるスレッジハンマー・マークⅢを使用する。
S1
蒼が自身に施された流出技術によって変化した姿。起動のためのキーワードは「Be a shield」
V1のように機械的・外科的な処置が施されておらず、流出技術によって心理的に肉体の能力を引き出された姿の模様。
非常に謎が多い能力であり、『SAVIOUR1』という名称も便宜的に与えられた者に過ぎない。
起動前との肉体的な違いは体色が紺と銀に変化した事と髪の毛がセンサーの役割をしているくらいであり、V1のように強化外装は有していないため、
戦闘方法は徒手空拳による肉弾戦とSLCAT時代から愛用しているスレッジハンマー・マークⅡ(V1が使用する銃の旧世代機)による射撃が主となる。
またイオノクラフトにより単独での飛行も可能。
B要員
強化薬剤によって身体能力を強化された自衛隊の隊員。
対テロ対策要員として一定の成果を上げてはいるが、流出技術によって肉体を改造された人間には敵わず、
作中での役目は専らヴァーサスのサポートである事が多い。
高エネルギー人間
通称Rタイプ。
機械や燃料に頼らず、生身の肉体から粒子加速器並の熱量と光を発する事ができるように改造された人間の通称。
人体を容易に消滅させ、鉄をも容易く溶解させる熱量を発するだけでなく、その熱を棒状の武器に変化させて振るう事ができるなど、
物理法則を無視した数々の能力でヴァーサスの前に立ち塞がる。
これといった弱点こそ持たないが、能力を発動している間は常に全身から熱と光を発しているため、
武器の所有はおろか衣類の着用すらできないという制約がある。
水島苑子を始めとして多数の個体が登場し、シリーズを通して戦う事となる。
【余談】
打ち切りが決まった際、著者は予定していた結末を描けない事に対して自棄を起こし、
忘れ去られるくらいなら最低・最悪の印象でも記憶に残る結末にしようと前巻までの伏線を全て投げ、
社会防衛のために怪物化した小学生を殲滅し、ヴァーサスが解散するというシナリオ案を構想した。
その後、担当編集から窘められた事で思い直し、次郎と蒼のボーイ・ミーツ・ガールとして第5巻を書き下ろしたとの事。
追記・修正をお願いします。
[#include(name=テンプレ2)]
この項目が面白かったなら……\ポチッと/
#vote3(time=600,2)
[#include(name=テンプレ3)]
▷ コメント欄
- この作品の項目ができるなんてなあ…いい仕事をしてくれた。いい作品だったから、講談社あたりに拾ってもらってリブートとかしないかなあ… -- 名無しさん (2014-12-03 07:52:47)
- 萌えラノベが流行ってた時代だったからな -- 名無しさん (2014-12-03 20:21:46)
- マジで何らかの形で復活してほしいわ ライダー好きにはたまらん -- 名無しさん (2014-12-03 21:48:14)
- 残りのSEALの属性とか気になるなぁ。木が出てきたから五行説と陰陽で7体なのかね。 -- 名無しさん (2014-12-04 02:05:15)
- ↑ 五巻で、「風・木・水・火とS1を除いてあとふたつ」という言及があるから、七体は確定。S1がなにに相当するかはわからんが、残りは金や光、雷とか、かなあ… -- 名無しさん (2014-12-04 07:57:54)
#comment
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧