Donate(ドネイト、MtG)

ページ名:Donate_ドネイト_MtG_

登録日:2010/05/26 Wed 01:53:58
更新日:2023/11/20 Mon 11:11:50NEW!
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mtg 相手は死ぬ 化石 コントロールデッキ 見たくない donate 無害な申し出




【Donate】はマジック・ザ・ギャザリングのデッキのひとつである。




《寄付/Donate》(2)(青)
ソーサリー
プレイヤー1人と、あなたがコントロールするパーマネント1つを対象とする。そのプレイヤーは、そのパーマネントのコントロールを得る。



ウルザズ・デスティニーで登場した青のレアカード。こちらのパーマネントを相手に渡すので、アドバンテージを失ってしまう。そのため、相手に不利益をもたらすものを渡すのが基本。


登場当初はその微妙な能力にネタとして使われた事はあったが、評価も低く、カスレア扱いであった。




これが発掘されるまでは……





《Illusions of Grandeur》 (3)(青)
エンチャント
累加アップキープ(2)(あなたのアップキープの開始時に、このパーマネントの上に経年(age)カウンターを1個置く。その後あなたがこの上に置かれている経年カウンター1個につきアップキープ・コストを1回支払わない限り、それを生け贄に捧げる。)
Illusions of Grandeurが戦場に出たとき、あなたは20点のライフを得る。
Illusions of Grandeurが戦場を離れたとき、あなたは20点のライフを失う。



日本語訳が存在していなかった古きエキスパンション、アイスエイジ*1のレア。再録禁止カードなので今後も日本語訳は登場しないだろう。
日本語訳するとすれば「威厳の幻想」(Wisdom Guild訳)。
当時のトッププレイヤーだったZvi Mowshowitzが「このカードを使うヤツはお子様なのさ」と言ったことが無駄に有名だが、これは後述のコンボが考えられる前の話である*2
なにせ一時的に大量にライフを得て、じゃあ何をするんだよという話なのである。しかも累加アップキープのせいで維持が非常に難しく、いつかは夢から覚めてしまう。こういったところからカスレア扱いされていた。
一応同期のカードに《ネクロポーテンス》こそ存在したが、当時は何が書いてあるかよくわからなかったから《ネクロ》でカードを使えるようになるのが次のターンからという関係上、どういう風に使っても動きが非常にもっさりとしてしまう。つまりZviでなくとも「こんなもん使ってるやつの気が知れない」カードだったのだ。
使ってみると「強くなった!夢だった……」という気分が味わえる実にフレーバーに溢れたカードなのだが、だからなんなんだよという話。Zviの言う「お子様」というのは、こういうフレーバーを楽しむ層を「ごっこ遊びから卒業できていない」と揶揄する言葉だったのかもしれない。


が、これを《寄付》で他のプレイヤーに押し付ければ「ライフだけ得て、後のデメリットを全て相手に押し付ける」というカードに化ける。
相手が《Illusions of Grandeur》の累加アップキープを払えなくなるか、《ごまかし》等のバウンス呪文で手札に戻すかで一気にライフロスさせる、一撃必殺のコンボである。
これを使ったデッキはキーカードから名前をとって【Donate】と呼ばれるようになった。2枚コンボに加えてバックアップ体制も整った、非常に強力なデッキである。


キーパーツが両方ともコントロールに長けた青な上に、当時両方のキーカードが使用できた環境にはマジック史上最強の打ち消し呪文と名高い《「意志の力》を始めとするサポートカードが充実。
また青い呪文のコストを軽減する《サファイアの大メダル》を投入して早いターンでコンボを決める事も可能と隙の無い構成で、エクステンデット環境において常にトップメタとして君臨し続けた。
本来の能力である「ライフを回復する」というところも決して飾りではなく、追い詰められた時の延命手段として1~2ターンほど維持してキーパーツを引けることを祈るという目的にも用いられた*3
初期型はさらにこれもまた登場時はカスレアだった《ネクロポーテンス》を積んだ【ネクロ・ドネイト】という形が多く、開始数ターンでキーカードが揃い猛威を振るった。
当時を知っているプレイヤー曰く「マジック黎明期は闇に支配されていた」と回顧するほど。


弱点はライフ回復。20点ライフロスによる一撃必殺コンボという性質上、1点でも回復されると一撃では死ななくなる。
緑系デッキがサイドに《スパイクの飼育係》を入れていたのはこのドネイト対策のため。
コンボ対策のカウンターを有し、《給食スリヴァー》でいくらでもライフの種を用意できた【カウンタースリヴァー】はアンチドネイトとして有名だった。


その後ローテーションでドローソースである《ネクロポーテンス》を失い、苦しくなった【ドネイト】が新たに手にしたのはあの青い悪魔こと《変異種》。
コンボ→コントロールの変形サイドボードもある【青単ドネイト】こと【トリックス】として再びエクステンデッドの表舞台に立った。
更にはサイドボードからでなく、メインから《変異種》投入という【モリカツ・トリックス】なんかも出た。


多色型としては天才プレイヤー・カイ=ブッディが生み出したウィニー対策、ライフゲイン対策として《火/氷》、《シヴの浅瀬》、《Volcanic Island》が投入されたタッチ赤の【Donate】をもって、このデッキは完成したと言えるだろう。


その後、《Illusions of Grandeur》がエクステンデット環境からレギュレーション落ちし、【Donate】はトーナメントから姿を消した。
《Illusions of Grandeur》の調整版である《凡人の錯覚》を使ったタイプのものも登場したが、「ライフロスが10点」「累加アップキープが存在しない」といったところから非常に効率が悪く、まったく大成しなかった。
一方で【バーン】など、エンチャントに触れるのが苦手なデッキを相手にした際のサイドボードとしては用いられた。


【Donate】は3枚のカスレアにより構成され、どんなカードもいつトップレアに化けるかわからないという前例を作った歴史的なデッキである。
機会があれば、是非一度プレイしていただきたい……と言いたいところだが、ぶっちゃけそんなに楽しいデッキではない。
コンボの分かりやすさ、カスレアを組み合わせたら大化けしたというロマン、プロプレイヤーの名言のような華々しい歴史はあるものの、動き自体は2枚コンボと非常に淡白である。
使用者からすら評価がいいわけではなく、グランプリ京都00を「ネクロ・ドネイト」を使って藤田剛史は、インタビューで「ネクロは実力を度外視したゲームを作り出す。禁止にするべき」とまで言っている*4
そもそも《寄付》自体が別のカスレア*5になんとか使い道を与えよういう発想から生まれたカードなので、似たような性質を持っているこのカードと組み合わせれば活躍するのは当たり前なのである。
もちろんトーナメントを席巻するほど強くなるのは予想外だったかもしれないのだが、真実はいつもいまひとつ。



構築済みデッキ「統率者」の赤白青に《寛大なるゼドルー》という、起動効果で対戦相手一人に寄付を行うカードが登場した。
そのためマナさえあれば、《Illusions of Grandeur》を発動→《ゼドルー》で相手に押し付ける→バウンスで20点を2度実行すれば死亡確定。


これを他のプレイヤー全員に行えば…もう言わなくても分かるな?


因みに《寛大なるゼドルー》は伝説のクリーチャーであるため、統率者指定すれば出すのは楽。



ただし統率者戦は初期ライフが40点なのでこのコンボを1回成功させたところでライフが初期ライフの半分減るだけ。つまり上述の《凡人の錯覚》とやってることが大して変わらない。
そのためゼドルーは採用しても《Illusions of Grandeur》は採用しないレシピも多い*6



さて、この手の「自分のパーマネントを相手に押し付ける」という能力は後に赤の役目になったようで、直接的なリメイクとして《無害な申し出》が、起動型能力として《バザールの交易商人》が、他にも《兵員の混乱》《世界混ぜ》のようにコントロールを入れ替えるカードが登場している。
特に交易商人と申し出は同スタンダード環境に特殊敗北条件を持つカードが共存していたため、それらとのコンボデッキが考案されている。



《バザールの交易商人》は《不死のコイル》というカードと組んだデッキが考案された。


Bazaar Trader / バザールの交易商人 (1)(赤)
クリーチャー — ゴブリン(Goblin)
(T):プレイヤー1人と、あなたがコントロールするアーティファクトかクリーチャーか土地を1つを対象とする。前者は後者のコントロールを得る。
1/1


Immortal Coil / 不死のコイル (2)(黒)(黒)
アーティファクト
(T),あなたの墓地にあるカードを2枚、追放する:カードを1枚引く。
あなたにダメージが与えられる場合、そのダメージを軽減する。これにより軽減されたダメージ1点につき、あなたの墓地にあるカードを1枚追放する。
あなたの墓地にカードが無いとき、あなたはこのゲームに敗北する。


これを押し付けて、《ボジューカの沼》《大祖始の遺産》で墓地を吹き飛ばせば勝利というもの……なのだが、そもそも《不死のコイル》自体がかなりニッチなカード*7なので非常に使いづらい上、当時はクリーチャーに対する除去が非常に強かったので大成することはなかった。



《無害な申し出》は【悪魔の契約】というデッキでスタンダード環境で実績を残している。


Harmless Offering / 無害な申し出 (2)(赤)
ソーサリー
対戦相手1人とあなたがコントロールするパーマネント1つを対象とする。そのプレイヤーはそのパーマネントのコントロールを得る。


Demonic Pact / 悪魔の契約 (2)(黒)(黒)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、以下からまだ選ばれていないもの1つを選ぶ。

  • クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。悪魔の契約はそれに4点のダメージを与え、あなたは4点のライフを得る。
  • 対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを2枚捨てる。
  • カードを2枚引く。

・あなたはこのゲームに敗北する。


毎ターン「4マナにしては破格の能力」を得られるが、いつかは命をもって代価を支払うという悪魔との契約を示したカード。「カードを作るのは君だ!」の選考案を開発部が気に入ったらしい。
敗北以外の3つの能力を使った後のこのカードを《無害な申し出》で対戦相手に押し付け、アップキープの開始時に敗北させるというもの。散々遊んで支払いはお前にツケとくぜ!って感じのギミックである。
敗北能力が誘発する前にバウンスで再利用したりなど、このコンボに固執しなくとも普通のコントロールデッキとして振る舞うことも多いという結構多芸なデッキだった。
パイオニアやモダンなどでドネイト風のデッキを作るのなら、このギミックに頼ることになる。理念が派手でわかりやすいためか、ヒストリック環境でもこのセットが再録されている。



また、《寄付》することを前提にしたカードも登場した。


Bronze Bombshell / 青銅の爆弾人形 (4)
アーティファクト クリーチャー — 構築物(Construct)
青銅の爆弾人形のオーナー以外のプレイヤーがそれをコントロールするとき、そのプレイヤーはそれを生け贄に捧げる。そのプレイヤーがそうした場合、青銅の爆弾人形はそのプレイヤーに7点のダメージを与える
4/1


当然だがこんなもんを奪うプレイヤーなんているわけがないので、何らかの方法で相手に押し付ける必要が出てくるというジョニー向けのカードである。
《寄付》のような使い霧のカードでは2枚コンボで7点ダメージと非常に効率が悪いので、もっと派手な方法で相手に渡したいところ。



現在(2021年)にもなると完全に化石のようなデッキだが、本家ドネイトはカジュアルレガシーで時折使っているプレイヤーがいる。
キーパーツが青なので《渦まく知識》《意志の力》などの優良カードが使えるし、コンボに耐性を持たないデッキを食い物にできるので地味に強い。ライフ回復に弱いと言っても、レガシーはフェッチランドでライフを1~3点くらい削っていることが多いので射程圏に入る。
そしてキーパーツ自体が比較的安価なので、レガシーのカードのパーツがそろっている人が気晴らしや一発ネタで組むにはちょうどいいのである。
他にもバベルのギミックのひとつとしてこのドネイトコンボを搭載している型もあり、ドネイトは形を変えながらもひっそりと生き続けている。



しかし《寄付》ならまだしも、なんでこんな一発ネタみたいなデッキで単独項目が立っているんだろう……?



この記事を追記するヤツはお子様なのさ。



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  • 何がひどいってネクロ→イリュージョン→ペイ20でfow握りますね^ ^っていう… -- 名無しさん (2014-04-29 21:41:36)
  • ネクロが来たら大体勝てる。黒の儀式でマナはいくらでも手に入るし -- 名無しさん (2014-04-29 22:42:01)
  • ネクロドネイトがくっそ強かったから有名だけど、基本は2枚コンボだろ。サファイアを積んだ後期型とネクロの初期型はかなり異なるデッキ。前者は一発死があるパーミッション、後者は完全なコンボデッキ。それに、ネクロが紙扱いだった時代から何年もたってできたデッキなのに前例はない。あと、Illusions of Grandeurは古いからいい値段してたけど、寄付が値段的な意味でトップレアになったことも無い。 -- 名無しさん (2014-10-05 11:19:03)
  • カスレア+カスレア=トップメタというのはマジックの奥深さの良い例よね -- 名無しさん (2014-10-05 11:25:21)
  • そもそもカスレアという概念、一理無い(青ざめた月は除く -- 名無しさん (2015-02-06 11:47:59)
  • Illusions of Grandeurは単体ではどう考えても使い道がないのだから「このカードを使うやつは~」ってなるのは当然だろう。登場時と環境が変わったんだから揶揄するなら単体で活躍させてから言え。…逆にイージーウィンだからそのまま通用するともいえるのか?ネクロ時代は特に。 -- 名無しさん (2015-04-27 01:24:59)

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*1 《寄付》が登場したウルザズ・デスティニーのちょうど4年前に発売されたセット
*2 この記事の初版には「コンボが考案される前」という記述がなかった。どうも当時はそういった断片的な情報から「Zviが【ドネイト】に気づけなかった」というネタとして好まれていたようである。
*3 開発班は本来はこういう使い方を想像していたのかもしれない。アイスエイジのカードには「テキストが無駄に複雑で実用性は皆無」というものも多かった。「テキストはあんまり複雑にしない」という教訓を開発班に与えたセットである。
*4 これは主に《ネクロポーテンス》に関する評価だが、カスレア3つという華々しさに対してゲーム的には割としょうもないデッキだったことも示している。
*5 《Sorrow's Path》。カスレアの項目に説明されている
*6 ついでに初版登録日である2010年当時に同じ用法で使うのなら《Thought Lash》の方が断然強い。こちらは本来の使い方ではないとされ、2011年9月にエラッタされてしまった。
*7 一応当時のスタンダードで【カニ蘇生】というデッキのサイドボードにバーン対策で用いられた

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