登録日:2012/07/23 Mon 08:30:30
更新日:2023/10/05 Thu 12:25:37NEW!
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人魚姫とは、ハンス・クリスチャン・アンデルセンによって1836年に発表された童話。
ディズニーのリトルマーメイドの原典にもなった世界的に有名な作品だが、悲恋の代名詞な物語でもある。
これは、フラれ続けて生涯独身を貫いたアンデルセンの自己投影と分析する声も。
デンマークの首都コペンハーゲンには人魚姫のブロンズ像があり、現在でも有名な観光名所。世界三大がっかりスポットとも言われる
ただし、芸術テロの標的として何度も被害を受け、その度に修復されているという。
具体的には首を取られたりブラジャーやパンツを描かれたりした。
●目次
【あらすじ】
クリック?
クラック!
今日のお話は『人魚姫』
ふかーいふかーい海の底に、人魚の王国がありました。
いつも平和で鯛やヒラメが舞い踊り、絵にも描けない美しさです。
そこを治める王様には、それはそれはとても可愛らしい6人のお姫様がいました。
人魚姫(本名不明)はそんな6姉妹の末っ子でした。
ただでさえ美人魚揃いの姉妹でしたが、その中でも一際麗しく、心優しく穏やかな子。
そんな彼女の夢は、陸に上がること。
人魚の王族は、15歳になったら海面に上がることが初めて許されます。
先に15歳になった姉たちは、猫かわいがりしている末っ子に地上世界の色々な話を聞かせてくれました。
未知の新世界への憧れは日増しに強くなり、人魚姫は早く早く大人になりたいと願うようになっていきました。
ある晩のこと。
ようやく15歳の誕生日を迎えた人魚姫が海上にプハッっと顔を出すと、大きな豪華客船が一艘浮かんでいました。
そこではある国の若い王子様の誕生日パーティーが行われていました。
好奇心からこっそり船の中を覗いた人魚姫は王子様を目にし、なんて美しい人だろう、と思いました。
人魚姫の心に恋の嵐が吹き荒れましたが、するとどうでしょう。
文字通りハリケーンが到来し、船はあっけなく転覆してタイタニック号さながらに沈没してしまいます。
その余波を受けて王子様は海へ投げ出されてしまいました。
ですが、水中となれば人魚の土俵。
人魚姫は溺れて気を失った王子様の所まで泳ぎ、彼の頭が水に沈まないように必死に支えながら長時間海を漂流しました。
明け方になるとようやく嵐は収まり、人魚姫は浜辺まで王子様を運び、ゆっくりと寝かせます。
丁度その時、丘の上の修道院から朝の礼拝に出てきた娘が現れ、倒れている王子様を見つけました。
目を覚ました王子様はその娘に微笑むのですが、人魚姫の存在に全く気づいてはいません。
岩陰に隠れていた人魚姫はとても悲しい気持ちになりましたが、王子様が無事ならそれでいいと思い、海へと帰って行ったのでした。
しかし、人魚の国に帰ってきても人魚姫は王子様のことが忘れられません。
王子様によく似た大理石の少年像を抱きしめ、自分を慰めていました。
どうにかしてもう一度逢いたいと、毎日海の上へ上がりましたが王子様の姿を見ることはできません。
思い詰めた人魚姫は、何か知恵を借りようと恐ろしい魔女の元へ行くことにしました。
獰猛な怪物たちが棲む暗黒の海を抜け、ようやく訪ねた魔女は人魚姫が何も言わないうちからその願いを知っていました。
尾ヒレを足に変える薬は確かに作れます。
ですが、歩く度に激痛が走り、しかも王子様が他の女性と結婚すれば体が泡になって消えてしまうというデメリット付きです。
さらに魔女は代価を要求してきました。
「薬が欲しけりゃ声をよこすだわさ!」
迷わず人魚姫は綺麗な声を差し出してしまいました。
実は、近年の研究でこの魔女は案外ガラスのハートだったのではないかという説もあります。
「足くらいタダでやればいいのに。可哀想に。情け知らず! ケチンボ!」とでもまくし立てれば、
涙目になって無償で薬をくれた可能性があるそうです。
そんなこんなで人魚姫は浜辺へ上がると、一息に魔女の薬(アシガハエ~ル)を飲み干しました。
たちまち魔女の言った通り、全身を鋭い痛みが走り、人魚姫は気を失ってしまいます。
翌朝、足を得た人魚姫が目を覚ますと、なんと王子様が心配そうに自分の顔を覗き込んでいたのです。
王子様は色々と問いかけてくれましたが、声を失った彼女に答えることはできません。
けれども王子様はそんな人魚姫を丁重に扱い、お城へ連れて行きました。
もう人魚姫は昔のように歌うこともできませんでしたが、その代わりに軽やかな足取りで誰よりも美しく踊ることができました。
もっとも、それは足を襲う激痛に耐えながらのダンスだったのですが。
これには王子様も大絶賛し、人魚姫を大層気に入っていつも傍に置くようになりました。
ただし、妹のような存在として寵愛していたに過ぎません。
王子様は海で溺れた自分を助けてくれた女性が忘れられず、ずっと探していたのです。
一応、人魚姫が自分を愛していることは察しており、「君の姿はあの人に似ている。このまま見つからなければ妻にしてあげよう」と約束しました。
人魚姫は、この時点で彼の人間性を疑うべきだったかもしれません。
やがて、そんな王子様にもある国のお姫様との結婚話が舞い込みました。
王子様は結婚などできないと断りましたが、話は強引に進められ、とうとうお姫様に会う為に隣国へ赴く羽目になったのです。
さて、いざお姫様と対面した二人はそれぞれ唖然としました。
[[(ぎょっ!!(魚っ!!))>さかなクン]]
「ば…馬鹿な…私を魅了した女性がいるなんて……信じられない」
何を隠そう、お姫様は王子様を介抱したあの娘だったのです。
あの時、たまたま偶然お姫様は王族教育の一環として修道院で暮らしていたそうな。
何とも非現実的ですが、肝心なお姫様の方も最初の出逢いの時にグッときていたようです。
これでもう結婚は決まったようなもの。
[[「恩知らず! 浮気者! あんたも言ってやれ言ってやれ」>しあわせな人魚姫(ドラえもん)]]と抗議したい気もしますが、愛される方にも都合というものがあります。
愛されたからって、その人を一番に愛するとは限りません。
別の人を愛する自由だって勿論あります。
ですが、王子はとんでもなく無神経な台詞を人魚姫に言ってのけました。
「誰よりも私を愛してくれている君だし、私の幸せを喜んでくれるよね」
所詮顔が良いだけで、『王子様』であっても『人間』でなかったのでしょうか。
こういうタイプの治める国がどうなるか興味は尽きませんが、某アーサー王と同じく”人の心がわからない”君主に相違なかったでしょうね。
それからトントン拍子に縁談は進み、王子様とお姫様の結婚式はすぐに執り行われました。
結婚披露宴を抜け出し、一人寂しく打ちひしがれる人魚姫。
[[(好きって絶望だよね…)>砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない]]
すると、そんな彼女に海中から5人の姉が呼びかけてきます。
「王」
「子」
「を」
「殺」
「れ」
そう言って、姉たちは小さな短剣を人魚姫に渡しました。
これで王子様を刺殺して血を浴びれば、人魚に戻って海に帰れるという代物です。
妹の窮状を知った姉たちは魔女と取引し、自分たちの髪の毛と短剣を交換したのでした。
人魚姫は王子様とお姫様の寝室に忍び込み二人が眠っているベッドの横に立ちました。童話とは得てしてアダルトな暗喩を持つものですが二人ともグッスリ熟睡していて目覚める気配は全くありません。
よほど体力を消耗していた可能性が考えられます。
(約束したじゃない Happy Endじゃないの、もう あたしは 結ばれない)
震える手で短剣を握りしめ人魚姫は何度も王子様の胸へ振り下ろそうと試みました。
けれども、やっぱり人魚姫に愛しい王子様を傷つける事などできる筈がありませんでした。
短剣を海へ投げ捨てると、人魚姫は海へと身を投げて飛び込みました。
人魚姫の体は海中に差し込む太陽の光に照らされ、泡になって溶けていきます。
そんな彼女を『空気の娘たち』と呼ばれる精霊が迎えに来ました。
たとえ報われなくても、最期まで優しい心を失わなかった人魚姫は『空気の娘たち』になる資格を得たのです。
大気と一体化した人魚姫に、目を覚ました王子様とお姫様の姿が見えました。
人魚姫は二人のもとに舞い降りて、お姫様にさえ祝福のキスをし、そして王子様に微笑みかけます。
もっとも、その姿は誰の目にも映りませんでしたが。
そして、人魚姫は『空気の娘たち』と一緒に円環の理に導かれて雲の彼方へ昇っていきました。
『空気の娘たち』は300年間世界を見守り、人々の幸福の為に尽くすと、永遠の存在となります。
もしかしたら、人魚姫は今もあなたの傍に…。
~Fin~
気が付いただろうか?
人魚姫のお話は失恋と言えなくもないが、「新しい目標を見つけて進む」という別にバッドエンドではないオチである。
(これをバッドエンドというのなら、『ブレーメンの音楽隊』なども「ブレーメンにすら行けずに終わった悲劇」になってしまう。)
なぜか二次創作(翻案レベルも含む)では「失恋で人魚姫が自害(消滅)する悲劇の物語」とされたり、
わざわざ改変されて「王子様と結ばれてハッピーエンド」にされるものが多い。
アンデルセン作品の悲恋エンドというと『親指姫*1』や『空とぶトランク*2』などもあるのに、なぜ前向きな人魚姫を悲恋代表に…
???「ゆだった妄想にとりつかれ、一方通行の暴走をしたあげく、唯一の利点である美しさを台無しにするお姫さま!
書いていてたまらなく面白かったぞぅ!沸き立つジンマシンを堪えながら、リア充爆発しろ、と叫びたいのを堪えてな!」
「……まあ、なんだ、確かに、人魚姫はやりすぎた。あの時はついカッとなって書いた。反省している」
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*2 表題のトランクを失ったことで「主人公は二度と思い人の姫に会えませんでした」というまごうことなきバッドエンド。
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